ペアローン・連帯債務・単独ローンを35年比較|事務手数料は同額・控除差53万円を試算
借入5,000万円・金利1.2%で試算。定率型の事務手数料はペアローンでも合計110万円で単独と同額、増えるのは印紙税・登記費用の約6万円だけ。2026年入居の住宅ローン控除(省エネ性能別の借入限度額・子育て世帯の上乗せ)で控除額と実質コストを比較します。
夫婦で住宅ローンを組む3つの方法
共働き世帯が増え、夫婦で住宅ローンを組むケースが一般的になりました。選択肢は大きく3つあります。
| 方式 | ローン本数 | 控除 | 事務手数料 | 団信 |
|---|---|---|---|---|
| ペアローン | 2本 | 2人分 | 2本(定率型なら合計は同額) | 各自 |
| 連帯債務 | 1本 | 2人分(持分按分) | 1本分 | 主債務者のみ※ |
| 単独ローン(収入合算) | 1本 | 1人分 | 1本分 | 主債務者のみ |
※連帯債務はペア団信オプション(金利+0.18%程度)で夫婦両方をカバー可能
住宅ローン控除の差がポイント
住宅ローン控除は年末残高の0.7%を所得税・住民税から控除できる制度です。令和8年度税制改正で2030年12月入居分まで5年延長され、2026・2027年入居の借入限度額(1人あたり)と控除期間は住宅の省エネ性能で次のように決まります(国税庁タックスアンサーNo.1211-1・No.1211-3)。
| 住宅の区分 | 新築 一般世帯 | 新築 子育て・若者夫婦世帯 | 中古 一般世帯 | 中古 子育て・若者夫婦世帯 |
|---|---|---|---|---|
| 認定長期優良・低炭素住宅 | 4,500万円(年31.5万円) | 5,000万円(年35万円) | 3,500万円(年24.5万円) | 4,500万円(年31.5万円) |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円(年24.5万円) | 4,500万円(年31.5万円) | 3,500万円(年24.5万円) | 4,500万円(年31.5万円) |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円(年14万円) | 3,000万円(年21万円) | 2,000万円(年14万円) | 3,000万円(年21万円) |
| その他の住宅 | 対象外※ | 対象外※ | 2,000万円・10年(年14万円) | 2,000万円・10年 |
控除期間は「中古のその他の住宅」以外は13年。中古の省エネ住宅は今回の改正で10年→13年に延び、子育て世帯等の上乗せも新設されました。「子育て・若者夫婦世帯」は、19歳未満の扶養親族がいるか、夫婦のどちらかが40歳未満の世帯です。
※新築で省エネ基準を満たさない住宅は2024年以降入居で対象外(2023年末までに建築確認を受けたものなどは2,000万円・10年)。新築の省エネ基準適合住宅も2028年以降入居は原則対象外になります。
ペアローンにとって重要なのは、この借入限度額が夫婦それぞれに1人ずつ適用されることです。単独ローンだと「1人3,500万円まで」で頭打ちになる部分も、夫婦で分ければ2人分の枠を使えます。
借入5,000万円・夫600万円妻400万円の場合(シミュレーター実行値)
ペアローン比較シミュレーターの標準条件(借入5,000万円・金利1.2%・35年・持分は夫6:妻4・ペア団信+0.18%・新築ZEH水準・一般世帯)で13年間の控除合計を計算すると、次のようになります。
| ペアローン | 連帯債務 | 単独ローン | |
|---|---|---|---|
| 夫の控除(13年) | 約227万円 | 約228万円 | 約314万円 |
| 妻の控除(13年) | 約141万円 | 約141万円 | なし |
| 控除合計 | 約367万円 | 約369万円 | 約314万円 |
単独ローンでは、5,000万円借りても控除の対象になる残高は借入限度額の3,500万円まで(×0.7%=年24.5万円)。さらに夫(年収600万円)の所得税+住民税控除分の上限が年約24.2万円のため頭打ちになり、13年合計で夫婦分散より約53〜55万円少なくなります。ペアローン・連帯債務なら夫婦で分散することで控除枠を使い切りやすくなります。
住宅の性能でペアローンの差はさらに広がる
同じ条件で住宅の区分だけを変えると、単独ローンとの控除差は次のように変わります。
| 住宅の区分(一般世帯) | ペアローンの控除 | 単独ローンの控除 | 差 |
|---|---|---|---|
| 新築・ZEH水準(3,500万円) | 約367万円 | 約314万円 | 約53万円 |
| 新築・省エネ基準適合(2,000万円) | 約323万円 | 約182万円 | 約141万円 |
| 中古・その他(2,000万円・10年) | 約251万円 | 約140万円 | 約111万円 |
借入限度額が小さい住宅ほど、単独ローンは「残高2,000万円まで」で控除が頭打ちになるため、2人分の枠を使えるペアローン・連帯債務の有利さが大きくなります。逆に長期優良住宅や子育て世帯の上乗せ(1人4,500〜5,000万円)では、限度額より先に夫の税額枠(年約24.2万円)で頭打ちになるので、差はZEH水準と同じ約53万円のままです。
年収別・控除を使い切れる残高の目安
住宅ローン控除は「所得税+住民税の一部(課税総所得の5%・上限97,500円)」の範囲内でしか受けられません。令和8年分の給与所得控除・基礎控除(合計所得489万円以下104万円・655万円以下67万円・それ超62万円)で概算すると、年収別の上限は次のとおりです。
| 年収 | 控除上限(年) | 使い切れる年末残高の目安 |
|---|---|---|
| 300万円 | 約5.3万円 | 約760万円 |
| 400万円 | 約11.2万円 | 約1,600万円 |
| 500万円 | 約17.7万円 | 約2,530万円 |
| 600万円 | 約24.2万円 | 約3,460万円 |
| 700万円 | 約36.6万円※ | 約5,230万円※ |
| 800万円 | 約51.6万円※ | 約7,370万円※ |
※実際は借入限度額×0.7%(新築ZEH水準の一般世帯なら年24.5万円、長期優良の子育て世帯なら年35万円)でも頭打ちになります。夫婦それぞれの年収と借入シェアがこの目安に収まっていれば、控除を無駄なく使えます。
令和8年度税制改正で基礎控除が引き上げられた(令和7年分の68万・88万円→令和8年分104万円など)結果、年収600万円以下の人は所得税そのものが減り、住宅ローン控除で引ききれる上限も年1.6万〜3.6万円小さくなりました(年収600万円で約27.8万円→約24.2万円)。減税自体は手取りにプラスですが、「控除を使い切れずに余る」ラインが下がったため、収入が少ない側に借入を寄せすぎない配分がより重要になっています。
事務手数料・諸費用の差
ネット銀行の事務手数料は一般的に借入額の2.2%(税込)の定率型です。定率型は借入額に比例するので、2本に分けても合計は変わりません。
| 借入5,000万円(夫3,000万円・妻2,000万円) | ペアローン | 連帯債務・単独 |
|---|---|---|
| 事務手数料(2.2%) | 66万円+44万円=110万円 | 110万円 |
| 金銭消費貸借契約書の印紙税 | 2万円×2通=4万円 | 2万円(1通) |
| 抵当権設定の司法書士報酬(目安) | 4万円×2件=8万円 | 4万円 |
| 諸費用の合計 | 122万円 | 116万円 |
「ペアローンは手数料が2倍」と言われがちですが、定率型なら増えるのは印紙税と司法書士報酬の約6万円だけです。印紙税は国税庁の印紙税額一覧(No.7140)で契約金額1,000万円超5,000万円以下が1通2万円(5,000万円超は6万円)、ネット銀行の電子契約なら印紙税自体がかかりません。抵当権設定の登録免許税は借入額に比例するため方式による差はありません。
注意したいのは定額型(1本3万〜5万円程度+保証料)の銀行で、この場合は手数料そのものが2本分になります。ペアローンを組む銀行の手数料体系は必ず確認しましょう。
実質コストで比較すると(35年総額・シミュレーター実行値)
総返済額+事務手数料+印紙税・司法書士報酬−住宅ローン控除の「実質コスト」で3方式を比較すると、標準ケース(借入5,000万円・金利1.2%・35年・夫600万円妻400万円・新築ZEH水準)では次のようになります。金利1.2%は、日銀が2026年9月に政策金利を1.25%へ引き上げた後の大手銀行の変動金利(2026年10月:三菱UFJ 1.195%・りそな 1.24%・みずほ 1.275%など)を目安にしています。
| ペアローン | 連帯債務(ペア団信込み) | 単独ローン | |
|---|---|---|---|
| 総返済額 | 約6,126万円 | 約6,307万円 | 約6,126万円 |
| 事務手数料 | 110万円 | 110万円 | 110万円 |
| 印紙税・司法書士報酬 | 12万円 | 6万円 | 6万円 |
| 住宅ローン控除 | −約367万円 | −約369万円 | −約314万円 |
| 実質コスト | 約5,880万円 | 約6,054万円 | 約5,928万円 |
数字上の最安はペアローンです。控除が単独ローンより約53万円多く、増える諸費用は約6万円なので、差し引き約47万円お得になります。連帯債務はペア団信の金利上乗せ(+0.18%)で総返済額が約181万円増えるため、控除が約55万円多くても単独より約127万円割高になります。
連帯債務の+127万円は夫婦双方の死亡・高度障害に備える保障のコストです。ペアローンでも各自の団信は自分のローンしか免除しないため、「どちらに万一があっても全額なくなる」保障を重視するなら連帯債務+ペア団信、コスト重視ならペアローン、という整理になります。また年収600万円で5,000万円の単独借入は、金利1.2%・35年で年間返済額が約175万円(返済負担率約29%)と審査の上限に近く、借入可能額の面でも夫婦分散が必要になるケースが多いでしょう。
参考までに金利0.5%(以前のネット銀行の変動金利の水準)で同条件を計算すると、総返済額は約5,451万円で、ペアローンの実質コストは約5,213万円、単独ローンとの差は約42万円でした。金利が上がると返済総額は大きく増えますが、控除の差(夫婦分散のメリット)はほぼ変わりません。
団信(団体信用生命保険)の違い
| 方式 | 団信の適用範囲 | 万が一の場合 |
|---|---|---|
| ペアローン | 夫婦それぞれ | 亡くなった側のローンのみ免除 |
| 連帯債務(標準) | 主債務者のみ | 主債務者が亡くなった場合のみ免除 |
| 連帯債務(ペア団信) | 夫婦両方 | どちらが亡くなっても全額または半額免除 |
| 単独ローン | 主債務者のみ | 主債務者が亡くなった場合のみ免除 |
ペアローンの注意点は、片方が亡くなっても、もう一方のローンは残ること。残された側が返済を続ける必要があります。
どの方式を選ぶべきか
ペアローンがおすすめな人
- 夫婦ともに年収400万円以上で安定収入
- 借入額が大きく、控除を最大限に活かしたい
- 夫婦ともに長期的に働く予定
連帯債務がおすすめな人
- 事務手数料を抑えたい
- フラット35の利用を検討している
- ペア団信オプションで安心感も確保したい
単独ローンがおすすめな人
- 配偶者が専業主婦(主夫)またはパート
- 手続きをシンプルにしたい
- 将来的に配偶者の収入が不安定になる可能性がある
離婚リスクも考慮を
見落としがちなのが離婚時のリスクです。
- ペアローン: 2本のローンがあるため、物件の売却や名義変更が複雑
- 連帯債務: 連帯債務者から外れるには借り換えが必要
- 単独ローン: 比較的シンプルに対応可能
住宅ローンは最長35年の長期契約。ライフプランの変化も視野に入れて選びましょう。
あなたのケースをシミュレーション
借入額・夫婦の年収・持分割合を入力するだけで、3つの方式の住宅ローン控除額・事務手数料・実質コストを比較できます。金利や返済期間も調整可能です。
👉 ペアローン vs 連帯債務 比較シミュレーター で、あなたの年収・借入額での最適な方式をチェックしてみましょう。
よくある質問(FAQ)
この記事の控除額・手数料の前提データはどこから?
住宅ローン控除は国税庁タックスアンサーNo.1211-1(新築)・No.1211-3(中古)の令和8年4月1日現在の制度に基づき、2026・2027年入居として控除率0.7%・住宅の省エネ性能別の借入限度額(新築ZEH水準の一般世帯は1人3,500万円・13年)で計算しています。控除の上限となる各人の税額は、令和8年分(令和8年度税制改正後)の給与所得控除(最低保障74万円)・基礎控除(合計所得に応じ104万・67万・62万円)・社会保険料控除(年収の15%概算)で所得税を概算し、住民税からの控除分(課税総所得の5%・上限97,500円)を加えて推定しています。事務手数料は主要ネット銀行の定率型(各ローンの借入額×2.2%税込)、印紙税は国税庁No.7140の印紙税額一覧、司法書士報酬は1件4万円の目安です。金利1.2%は2026年10月の大手銀行の変動金利を参考にしています。団信の上乗せ金利(ペア団信+0.18%前後)は各行の公表値の目安です。
計算結果が実感と合わない場合は?
住宅ローン控除は各人の所得税・住民税の範囲内でしか受けられないため、年収が低いと控除枠を使い切れず、試算より少なくなります。また借入限度額(新築の省エネ基準適合住宅は2,000万円、長期優良住宅の子育て世帯は5,000万円など住宅性能と世帯で変動)、事務手数料の方式(定率2.2%/定額3〜5万円)、変動金利の上昇や繰上返済の有無で総コストは大きく変わります。正確な金額は必ず金融機関の見積もりでご確認ください。
ペアローンと連帯債務、結局どちらがお得?
標準ケース(借入5,000万円・金利1.2%・夫600万円妻400万円・新築ZEH水準)の実質コストは、ペアローン約5,880万円<単独ローン約5,928万円<連帯債務(ペア団信込み)約6,054万円です。定率型の事務手数料は方式で変わらないため、控除の差(約53万円)が諸費用の差(約6万円)を上回りペアローンが最安、連帯債務はペア団信の金利上乗せ(総返済+約181万円)が控除の差より大きくなります。連帯債務の上乗せ分は夫婦双方への保障のコストです。「借入可能額」「保障の厚さ」「実質コスト」のどれを優先するかで最適解が変わるため、シミュレーターでご自身の年収・借入額に合わせて確認してください。
片方がパート・専業主婦(主夫)でもペアローンにすべき?
いいえ。控除は各自の所得税・住民税の範囲内でしか受けられないため、収入が少ない側は控除を使い切れません。妻の年収0円で試算すると、ペアローンの控除は夫の分(約227万円)だけになり、単独ローン(約314万円)より約87万円少なくなります。この場合は契約・登記が2本分かかるペアローンより、単独ローンや収入合算のほうがトータルで有利です。
離婚した場合、ペアローンはどうなる?
2本のローンが残るため、物件の売却・名義変更・借り換えのいずれも手続きが複雑になります。売却額がローン残高を下回る「オーバーローン」だと売るに売れないケースもあります。長期の返済に入る前に、ライフプランの変化も見据えて方式を選びましょう。
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