遺言書の作成費用はいくら?自筆・公正証書・秘密証書の費用比較と手続き
遺言書の作成費用を種類別に徹底比較。自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の費用・手続き・メリットを解説。公証人手数料の早見表、弁護士・司法書士・行政書士の報酬相場、法務局保管制度も紹介。
遺言書の作成費用、種類によって0円〜100万円の差
遺言書は「自筆証書遺言」であれば紙とペンだけで作成でき、費用は実質0円です。一方、「公正証書遺言」を弁護士に依頼すると30万円以上、信託銀行の遺言信託では100万円を超えることもあります。
しかし、安さだけで選ぶと形式不備で無効になるリスクがあり、高額なサービスが必ずしも必要とは限りません。この記事では、遺言書の種類ごとの費用・手続き・メリットを具体的な数字で比較し、あなたに最適な作成方法を見つけるための情報をまとめました。
遺言書の種類別比較
3種類の遺言書の概要
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成者 | 本人が全文手書き | 公証人が作成 | 本人が作成(手書き不要) |
| 費用 | 0円〜3,900円 | 1〜10万円以上 | 11,000円 |
| 証人 | 不要 | 2人必要 | 2人必要 |
| 保管 | 自宅 or 法務局(3,900円) | 公証役場(無料) | 自己管理 |
| 検認 | 必要(法務局保管なら不要) | 不要 | 必要 |
| 法的確実性 | やや低い | 非常に高い | 低い |
| 秘密性 | 高い | 内容は証人に知られる | 内容は秘密にできる |
| 利用割合 | 約60% | 約39% | 約1% |
自筆証書遺言の費用と手続き
費用
| 項目 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 作成費用 | 0円 | 紙・ペン・印鑑のみ |
| 法務局保管制度 | 3,900円 | 任意だが強く推奨 |
| 戸籍謄本等 | 450〜750円/通 | 相続人の確認に必要 |
| 不動産登記事項証明書 | 600円/通 | 不動産がある場合 |
| 合計 | 0〜5,000円程度 | — |
自筆証書遺言の書き方ルール
自筆証書遺言には厳格な形式要件があり、1つでも欠けると無効になります。
| 要件 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 全文自書 | 遺言の本文を全て手書き | パソコン・代筆は不可(財産目録のみPC可) |
| 日付の自書 | 年月日を正確に記載 | 「令和8年3月吉日」はNG |
| 氏名の自書 | フルネームを手書き | — |
| 押印 | 実印が望ましい | 認印でも有効だが実印推奨 |
| 財産目録 | PCで作成可(2019年法改正) | 各ページに署名・押印が必要 |
法務局保管制度(2020年7月開始)
法務局に遺言書を預ける制度で、以下のメリットがあります。
| メリット | 内容 |
|---|---|
| 紛失・改ざんの防止 | 法務局が原本を保管 |
| 形式チェック | 提出時に形式の確認を受けられる(内容の有効性は保証しない) |
| 検認不要 | 家庭裁判所での検認手続きが不要に |
| 通知制度 | 死亡後、指定した相続人に通知される |
| 費用 | 3,900円のみ |
自筆証書遺言を作成する場合は、法務局保管制度の利用を強くおすすめします。わずか3,900円で紛失リスクをなくし、検認手続きも省略できます。
公正証書遺言の費用と手続き
公証人手数料(法令で定められた料金)
公正証書遺言の公証人手数料は、遺言に記載する財産の価額に応じて決まります。
| 財産の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 11,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 17,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 23,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 29,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 43,000円 |
| 1億円超〜3億円以下 | 43,000円 + 超過5,000万円ごとに13,000円 |
| 3億円超〜10億円以下 | 95,000円 + 超過5,000万円ごとに11,000円 |
| 10億円超 | 249,000円 + 超過5,000万円ごとに8,000円 |
重要: 手数料は相続人ごとに計算されます。例えば、「妻に3,000万円、長男に2,000万円」の場合、妻分23,000円 + 長男分23,000円 = 46,000円が基本手数料です。
遺言加算
財産の総額が1億円以下の場合、上記の手数料に11,000円が加算されます(遺言加算)。
公正証書遺言の総費用シミュレーション
| 遺産額 | 相続人 | 公証人手数料 | 遺言加算 | 証人日当 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 妻のみ | 23,000円 | 11,000円 | 0〜20,000円 | 約34,000〜54,000円 |
| 5,000万円 | 妻+子1人 | 29,000円+29,000円 | 11,000円 | 0〜20,000円 | 約69,000〜89,000円 |
| 8,000万円 | 妻+子2人 | 43,000円+23,000円+23,000円 | 11,000円 | 0〜20,000円 | 約100,000〜120,000円 |
| 1.5億円 | 妻+子2人 | 69,000円+43,000円+43,000円 | 0円 | 0〜20,000円 | 約155,000〜175,000円 |
証人の手配費用
公正証書遺言には証人2人が必要です。
| 手配方法 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 知人・友人に依頼 | 0円(謝礼は任意) | 未成年者・推定相続人は不可 |
| 公証役場で紹介 | 1人5,000〜10,000円 | 公証役場に相談 |
| 弁護士・司法書士に依頼 | 遺言書作成費用に含まれることが多い | 専門家依頼の場合 |
秘密証書遺言の費用
| 項目 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 公証人手数料 | 11,000円(一律) | 内容に関わらず定額 |
| 証人2人 | 0〜20,000円 | 知人に頼めば無料 |
| 合計 | 約11,000〜31,000円 | — |
秘密証書遺言は「遺言の内容を秘密にしたまま、その存在を公証人に証明してもらう」方式です。ただし、利用率は全体の約1%と極めて低く、形式不備のリスクがある上に検認も必要なため、実務上はほとんど使われていません。
専門家に依頼した場合の費用比較
専門家別の報酬と対応範囲
| 依頼先 | 報酬目安 | 対応範囲 | こんな場合に |
|---|---|---|---|
| 行政書士 | 3〜10万円 | 遺言書の文案作成補助 | 単純な遺言で費用を抑えたい |
| 司法書士 | 5〜15万円 | 遺言書作成+不動産の相続登記 | 不動産を含む遺言 |
| 弁護士 | 10〜30万円 | 遺言書作成+遺産分割の助言+紛争予防 | 相続人間に争いの可能性がある |
| 税理士 | 5〜20万円 | 相続税の試算+節税対策の助言 | 相続税がかかりそうな場合 |
| 信託銀行 | 30〜150万円 | 遺言書作成+保管+遺言執行 | 高額な遺産、確実な執行を望む |
総費用の比較(公正証書遺言 + 専門家依頼)
| パターン | 公証人手数料 | 専門家報酬 | その他 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 自分で公証役場に依頼 | 5〜10万円 | 0円 | 証人代1〜2万円 | 約6〜12万円 |
| 行政書士に依頼 | 5〜10万円 | 3〜10万円 | — | 約8〜20万円 |
| 司法書士に依頼 | 5〜10万円 | 5〜15万円 | — | 約10〜25万円 |
| 弁護士に依頼 | 5〜10万円 | 10〜30万円 | — | 約15〜40万円 |
| 信託銀行に依頼 | 5〜10万円 | 30〜150万円 | — | 約35〜160万円 |
遺言書が必要なケース
必ず遺言書を書くべきケース
| ケース | 理由 | おすすめの形式 |
|---|---|---|
| 子供がいない夫婦 | 配偶者の兄弟姉妹に相続権が発生 | 公正証書遺言 |
| 再婚して前妻の子がいる | 前妻の子にも相続権がある | 公正証書遺言 |
| 不動産が主な財産 | 分割が困難、共有名義のトラブルが多い | 公正証書遺言 |
| 事業を承継させたい | 後継者に事業用資産を集中させる必要 | 公正証書遺言 |
| 法定相続分と異なる分配をしたい | 遺言がなければ法定相続分で分割 | 自筆 or 公正証書 |
| 相続人以外に遺贈したい | 遺言がなければ法定相続人のみに分配 | 公正証書遺言 |
| 相続人同士の仲が悪い | 紛争を予防する | 公正証書遺言(弁護士依頼推奨) |
遺言書がなくても大きな問題にならないケース
- 相続人が配偶者と子供1人のみで、特に揉める要素がない
- 財産が預金のみで、法定相続分通りの分配でよい
- 相続人全員が話し合いで合意できる関係にある
遺言書作成の手順
自筆証書遺言の場合
- 財産の洗い出し: 預金・不動産・有価証券・保険等のリストを作成
- 相続人の確認: 戸籍謄本で法定相続人を特定
- 分配方針の決定: 誰に何を相続させるか決める
- 遺言書の作成: 全文手書き、日付・署名・押印を忘れずに
- 法務局で保管: 保管申請書を作成し、本人が法務局に出頭
公正証書遺言の場合
- 必要書類の準備: 戸籍謄本、不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書等
- 公証役場に連絡: 事前に内容を打ち合わせ(電話・メール可)
- 証人2人の手配: 知人または公証役場の紹介
- 公証役場で作成: 公証人が内容を読み上げ、遺言者・証人が署名押印
- 正本・謄本を受領: 原本は公証役場で保管、正本と謄本を受け取る
よくある質問
Q. 遺言書は何歳から書けますか?
民法では満15歳以上であれば遺言書を作成できます。実務上は50代以降に作成する方が多いですが、30〜40代でも不動産を所有している場合や、小さな子供がいる場合は作成しておくことをおすすめします。
Q. 遺言書は書き直せますか?
はい、何度でも書き直せます。新しい遺言書を作成すれば、古い遺言書の矛盾する部分は自動的に無効になります。公正証書遺言を書き直す場合は、再度公証人手数料がかかります。定期的に(3〜5年ごとに)見直すことをおすすめします。
Q. この記事の費用データはどこから?
公証人手数料は「公証人手数料令」(法令)に基づく法定料金です。専門家の報酬は日本弁護士連合会・日本司法書士会連合会・日本行政書士会連合会の報酬アンケート調査および各事務所の公開料金を参照しています。数字が実感と合わない場合はお問い合わせください。
Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべき?
財産が預金のみで少額の場合は自筆証書遺言(法務局保管)で十分です。不動産がある場合、相続人が多い場合、紛争の可能性がある場合は公正証書遺言を強くおすすめします。公正証書遺言は公証人が関与するため法的に無効になるリスクがほぼなく、家庭裁判所の検認も不要です。費用差は数万円程度なので、安心を買うと考えれば合理的な投資です。
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