くらシム
ライフイベント

実家300km・要介護2の母が増やした『月7.2万円』。45歳・年収720万円会社員の家計再設計【ケーススタディ】

新潟の母が脳梗塞で要介護2に。横浜在住・45歳会社員が直面した『介護サービス自己負担+帰省交通費+介護用品』月7.2万円増。介護休業給付金・医療費控除・住宅ローン繰上返済停止の4手で家計崩壊を回避した6ヶ月の実録。

「お母さん、トイレで倒れて、いま救急車。」——2025年9月の夜10時。妻からの電話で、田中健司さん(仮名・45歳・横浜市・会社員)の生活は一変した。

新潟で一人暮らしをしていた72歳の母・トシ子さん(仮名)が脳梗塞で搬送された。一命はとりとめたが、左半身に麻痺が残り、要介護2の認定を受けた。健司さんと母の家は約300km離れている。当面は施設入所ではなく在宅介護を選択したが、その判断が毎月7万円超の家計負担として降りかかってきた。

この記事は、それから半年間、田中家がどのように「介護コスト」を吸収して家計を立て直したかの実録だ。同じ局面が突然訪れる可能性のある40代・50代の会社員にとって、参考になれば幸いである。

---

田中家のプロフィール

項目内容
健司(夫)45歳・東京都内のメーカー勤務・額面年収720万円
由美子(妻・仮名)43歳・パート(月13万円)・年収約120万円
息子中学3年・公立高校受験予定
居住横浜市郊外・築12年マンション(住宅ローン残債2,800万円・残期間18年)
母トシ子(仮名)72歳・新潟市・要介護2・在宅
世帯手取り月収約49万円
月の固定費住宅ローン12.5万円・教育費(塾)3.5万円・生活費22万円
月の貯蓄8万円(NISA 4万円+普通預金4万円)

健司さんの母は10年前に夫を亡くしてから新潟の実家で一人暮らし。数年前から軽い高血圧はあったが、自分で買い物にも病院にも行ける状態だった。「あと5年は大丈夫」と健司さんが油断していた矢先の出来事だった。

---

介護開始から30日で確定した「月7.2万円増」の中身

退院後、ケアマネージャーと面談しながらサービス利用計画を組んだ結果、トシ子さんの在宅介護にかかる毎月の負担は次のように確定した。

費目金額内訳
介護サービス自己負担(1割)18,000円デイサービス週3+訪問看護週1+訪問介護週2
介護用品・住宅改修の月割14,000円紙おむつ・パッド・歩行器レンタル・手すり工事費の36ヶ月分割
帰省交通費(健司分)40,000円横浜→新潟 月2往復・新幹線指定席(早割込み)
合計72,000円

毎月貯蓄に回していた8万円が、ほぼそのまま消える計算になる。さらに「父の急逝のときも母を一人にしてしまった」という後悔から、健司さんは月2回の帰省を即決した。妻の由美子さんは「私も新潟へ手伝いに行きたい」と申し出たが、息子の高校受験を考えるとそれは現実的ではなかった。

要介護2の区分支給限度額(19,705単位/月、約197,050円相当)を踏まえると、田中家のサービス利用は限度額の約60%。「もう少し使えるが、これ以上は自費で家政婦サービスを足すしかない」とケアマネに言われた状態だ。

母の介護費用がいくらになるかをざっくり把握したい人は、介護費用シミュレーター在宅介護費シミュレーターを使うと、要介護度・利用サービス・住居形態別の月額が瞬時に出る。健司さんも事前にこれで「想像していた額の1.5倍」と気づき、すぐに対策フェーズへ移った。

---

健司さんが半年でやった4つの対策

対策①:介護休業給付金で「実働7日分の収入」を取り戻す

退院から1ヶ月後の10月、健司さんは会社の介護休業制度を使い、通算10日の介護休業を取得した。雇用保険から出る介護休業給付金は、休業前の賃金日額の67%を補填してくれる。

健司さんの賃金日額は約14,000円(直近6ヶ月平均月給÷180)。

> 介護休業給付金 ≒ 14,000円 × 10日 × 67% = 約93,800円

この給付金は、対象家族1人につき通算93日まで、最大3回に分けて取得できる(2017年改正)。健司さんは「年内に10日、来年に20日、再来年に20日……」と計画的に消化する方針だ。

加えて会社の介護休暇(年5日・有給)も併用。これは給付金とは別枠で、急な通院付き添いや市役所での手続きに使える。介護離職を避けながら職場に居続けるための「制度の二段構え」だ。

介護のために働き方を変えたときの収入インパクトを比較したい人には、介護離職・休業の収入シミュレーターがわかりやすい。離職・休業・時短・サービス利用の4パターンで生涯収入と年金影響を試算できる。

対策②:医療費控除で年4.2万円を翌年取り戻す

介護関連の支出には、確定申告で医療費控除の対象になるものが意外に多い。具体的には次の3つだ。

  • 訪問看護の自己負担額
  • 紙おむつ代(医師が「おむつ使用証明書」を発行している場合)
  • 通院・施設見舞いの交通費(公共交通機関)

田中家ではこれらが年間で約21万円に達した。所得税の医療費控除は次の式で計算する。

> 医療費控除額 =(年間医療費 - 10万円)× 所得税率+住民税10%

健司さんの課税所得は約450万円で所得税率20%。

> (210,000 - 100,000)× 20% = 22,000円(所得税還付)
> 110,000 × 10% = 11,000円(住民税減)
>
> 還付+減税の合計:約33,000〜42,000円/年

「振込通知が来るまで実感がなかったが、確定申告書を1枚多く書くだけで4万円戻ってくる。これは大きい」と健司さんは振り返る。

対策③:住宅ローン繰上返済を「当面2年間」停止する

田中家の住宅ローンは残債2,800万円・残期間18年・固定1.1%。健司さんはそれまで年48万円の繰上返済を続けており、「この調子なら退職前に完済できる」と楽観していた。

しかし母の介護開始で、月の手元キャッシュは確実に減る。緊急時の流動性を優先し、繰上返済を一時停止することにした。

住宅ローン繰上返済シミュレーターで試算したところ、「2年間繰上返済を止めても、利息増加は累計約14万円」「ただし手元には96万円の現金が残る」という比較が見えた。利息14万円は確かに惜しいが、母に何かあったときに即動ける現金96万円のほうが圧倒的に重要、という判断だ。

対策④:介護保険料・公的サービスの上限を「使い切る計画」に変える

要介護2は区分支給限度額の60%しか使っていなかったが、半年運用して「やはりもう少し訪問介護を増やしたほうが、母が転倒するリスクが下がる」と判断。利用率を80%まで引き上げ、自己負担も月2.4万円程度まで増やすことに決めた。

トシ子さんは介護保険料を年金から天引きで支払い続けている。自分が払ってきた保険を、ためらわず使う——その意思決定こそが、介護保険制度を機能させる前提だ。

> 「使い惜しみして母が骨折したら、入院費のほうが何倍も高くつく」(健司さん)

母自身が将来支払う介護保険料の見通しを把握したい人には、介護保険料シミュレーターが役立つ。年齢・年収別に月額の保険料を計算できる。

---

6ヶ月後の家計バランスシート

半年運用してみた田中家の月次収支は次のようになった。

項目介護開始前介護開始後(対策実施後)
手取り月収49万円49万円(給付金は別枠で年間で計上)
住宅ローン12.5万円12.5万円(繰上返済停止)
教育費(塾)3.5万円3.5万円
生活費22万円22万円
介護関連支出0円7.2万円
月の貯蓄8万円3.8万円(NISAは半額継続)
年間ベースの取り戻し介護休業給付金 約9.4万円+医療費控除還付 約3.5万円

貯蓄ペースは半減したが、「介護で家計崩壊」も「介護離職」も避けられた。NISAの積立だけは止めずに月2万円残した。「ここを止めると20年後の自分が困る」と判断したからだ。

長期的にどう推移するかを把握するには、退職後の生活費シミュレーターでセカンドライフの基礎支出を確認しつつ、年金受給額シミュレーターで将来の年金見込みを並べておくと、現役時代の貯蓄ペース調整の目安が立つ。

---

同じ立場に立たされたら:最初の30日のチェックリスト

田中家の経験から、親の介護が突然始まったときの最初の30日でやるべきことを抜粋した。

  • [ ] 退院前カンファレンスでケアマネージャーを確定(病院のソーシャルワーカーが手配)
  • [ ] 要介護認定の申請(市区町村窓口、結果まで約30日)
  • [ ] 暫定ケアプランの作成(認定前でもサービス利用可)
  • [ ] 介護休業/介護休暇制度の社内申請
  • [ ] 親の年金・預金口座・保険証券・健康保険の所在確認
  • [ ] 介護保険被保険者証の到着確認
  • [ ] 通院・薬・診療履歴を1冊のノートに集約
  • [ ] 帰省交通費の家計枠を確保(年間予算)
  • [ ] 確定申告に向けた領収書ファイルの新設

---

FAQ

Q. 介護休業給付金はどのタイミングで申請しますか?
A. 休業終了後、ハローワーク経由で会社が申請する流れが一般的です。健司さんの場合、10日休業→2週間後に申請→さらに1ヶ月後に振込という日程感でした。給付金は休業中の賃金支払いがあると減額されるため、有給を使うか無給介護休業にするかは事前に勤務先と相談したほうが有利です。

Q. 介護のために転居や同居は検討しなかったのですか?
A. 検討はしましたが、母が「住み慣れた新潟で過ごしたい」と希望し、かつ息子が高校受験を控えていたため、当面は遠距離介護を選択しました。母の状態がさらに悪化した場合は、介護付き有料老人ホームか特養への入所を視野に入れています。施設の費用感は介護費用シミュレーターの「施設介護モード」で目安が立ちます。

Q. 帰省交通費は医療費控除の対象になりますか?
A. 介護される本人の通院に付き添う交通費(公共交通機関に限る)は対象になります。ただし、家族が「会いに行く」だけの帰省交通費は対象外です。線引きが曖昧なので、必ずカレンダーに「通院付き添いか面会か」を記録しておくと、確定申告時に判断しやすいです。

Q. 数字が実感と合わない場合は?
A. 介護費用は要介護度・地域・利用サービスの組み合わせで大きく変動します。シミュレーターは平均値ベースのため、ケアマネと組んだ実際のケアプランをもとに必ず再計算してください。違和感があればお問い合わせフォームからご相談いただければ前提条件を更新します。

---

まとめ

田中家の半年は、「介護で家計が崩壊する家」と「崩壊しない家」を分けるのが制度を知っているかどうかだと教えてくれる。介護休業給付金、医療費控除、区分支給限度額、繰上返済の停止——どれも単体では知っている人も多いが、「いつ・どの順で・どれくらい使うか」を整理して動けるかが分かれ目になる。

親が元気なうちに、自分の家計の中で「月7万円の追加負担を半年吸収できるか」をシミュレーションしておく。その一手間が、いざというときの判断速度を圧倒的に変える。

> 健司さんの最後の一言:「介護が始まる前に、母の年金・通帳・かかりつけ医・友人の連絡先を一冊のノートに書いてもらっておけばよかった。退院から1週間、それを聞き出すことに最も時間を奪われた。」

広告

関連記事

広告