家族3回線のうち1回線だけ格安SIMに乗り換えたら、節約額は期待の6割強どまりだった【ケーススタディ】
東京都郊外在住・45歳会社員の佐藤家(仮名)が、docomo3回線+ドコモ光の家族プランから自分の1回線だけ楽天モバイルに乗り換えたところ、年間節約額は期待していた約3.5万円ではなく約2.2万円にとどまった。原因は「みんなドコモ割」が3回線から2回線になったことで残る2回線の割引が縮小したため。乗り換え回線数別(1〜3回線)の世帯合計費用を検算し、家族割の「人数の壁」を明らかにする。
「え、思ったよりぜんぜん安くなってない」——佐藤さん(仮名・45歳・会社員、東京都郊外在住)が携帯料金の明細を見て最初に漏らした言葉だ。
家族3人(本人・42歳のパート勤務の配偶者・16歳の高校生の子)でdocomoのスマホを3回線契約し、自宅のインターネットもドコモ光。「格安SIMに変えれば年3万円は浮く」という話を聞き、まずは自分の1回線だけ楽天モバイルに乗り換えてみた。ところが1ヶ月後の請求額を見比べると、想定より節約幅が小さい。原因を家計簿アプリで遡って突き止めると、「みんなドコモ割」という家族割引の対象人数が3人から2人に減り、残る2回線の割引額が縮んでいたことが分かった。
乗り換え前:docomo3回線+ドコモ光の世帯コスト
まず乗り換え前の内訳を確認する。3回線とも「eximo」(無制限プラン、月額7,315円)で契約し、自宅はドコモ光(戸建てタイプ、月額5,720円)。docomoには2つの割引が用意されている。
| 割引名 | 内容 | 3回線の場合の割引額 |
|---|---|---|
| みんなドコモ割 | 家族回線数に応じた割引(1回線:割引なし/2回線:各550円/3回線以上:各1,100円) | 1回線あたり▲1,100円 |
| ドコモ光セット割 | 対象プラン契約者がドコモ光を利用している場合の割引 | 1回線あたり▲1,100円 |
この2つは併用でき、3回線とも両方の条件を満たしているため、1回線あたり合計2,200円の割引が入っていた。
```
1回線あたりの実質料金 = 7,315円 − 2,200円 = 5,115円
3回線分 = 5,115円 × 3 = 15,345円
ドコモ光 = 5,720円
世帯合計(乗り換え前)= 15,345円 + 5,720円 = 21,065円/月
```
「自分だけ」乗り換えた後の内訳
佐藤さんは自分の1回線だけを楽天モバイル(20GBプラン、月額2,178円)に乗り換えた。残る配偶者と子の2回線はdocomoのeximoのまま。ここで2つの割引の条件が変わる。
- みんなドコモ割:家族回線数が3回線→2回線になり、割引額が1回線あたり1,100円→550円に半減
- ドコモ光セット割:残った2回線は引き続きドコモ光を契約しているため、1,100円の割引は維持
```
残る2回線の実質料金 = 7,315円 − (550円 + 1,100円) = 5,665円
2回線分 = 5,665円 × 2 = 11,330円
楽天モバイル = 2,178円
ドコモ光 = 5,720円(変わらず)
世帯合計(1回線だけ乗り換え後)= 11,330円 + 2,178円 + 5,720円 = 19,228円/月
```
節約額は月1,837円、年間で22,044円。佐藤さんが乗り換え前に見積もっていた「自分の回線が5,115円→2,178円になるから、差額の2,937円×12ヶ月=年35,244円は浮くはず」という期待に対し、実際の節約額はその約62.5%にとどまった。差額の1万3,200円は、残った2回線の「みんなドコモ割」が550円ずつ縮んだ分(550円×2回線×12ヶ月)と正確に一致する。
乗り換える回線数によって「効率」が変わる
同じ条件で、乗り換える回線数を0〜3回線まで変えた場合の世帯合計費用を比較すると、家族割の「人数の壁」がはっきり見える。
| 乗り換えた回線数 | 残るdocomo回線 | 世帯合計/月 | 年間節約額 | 期待節約額(差額×回線数)との比率 |
|---|---|---|---|---|
| 0回線(乗り換えなし) | 3回線 | 21,065円 | ± 0円 | — |
| 1回線(本人のみ) | 2回線 | 19,228円 | 22,044円 | 62.5% |
| 2回線(本人+配偶者) | 1回線 | 16,291円 | 57,288円 | 81.3% |
| 3回線(家族全員) | 0回線 | 12,254円 | 105,732円 | 100% |
※2回線乗り換え時、残る1回線はみんなドコモ割の対象人数を満たさず割引0円(ドコモ光セット割の1,100円のみ適用)で計算。
表から読み取れることは明快だ。乗り換える回線数が少ないほど、1回線あたりの節約効果は目減りする。家族全員で同時に乗り換えれば期待どおりの節約額(年10.5万円)になるが、1回線だけでは6割強、2回線でも8割強にとどまる。これは楽天モバイルに限らず、ahamo・LINEMO・povoなどキャリアの家族割引・セット割引を使っている家庭であれば、同じ構造で起こりうる話だ。
なぜ佐藤家は「全員一斉乗り換え」を選ばなかったのか
数字だけ見れば家族全員での乗り換えが最も効率的だ。それでも佐藤家が段階的な乗り換えを選んだ理由は3つあった。
- 子どものスマホには見守り機能が必要——docomoのキッズ向け機能制限サービスを使っており、格安SIM側の対応状況を確認してから移行したい
- 配偶者のキャリアメールが仕事の連絡先として登録済み——乗り換え前に取引先への周知が必要
- 一斉解約による通信トラブルのリスクを避けたい——1回線ずつ試して問題がないか確認してから本格移行したい
このように「効率」と「移行のしやすさ」はしばしばトレードオフになる。数字上は不利でも、段階的な移行にはリスク分散の意味がある。佐藤家は最終的に、子の見守り機能の代替アプリが見つかった時点で配偶者の回線も切り替え、2回線乗り換え(年間節約額5.7万円)の段階まで進める計画にした。
家族割・セット割を使っている家庭が乗り換え前に確認すべきこと
- 契約中の家族割引・グループ割引が「回線数に応じた段階制」になっていないか(docomo「みんなドコモ割」、au「家族割プラス」、SoftBank「みんな家族割+」はいずれも回線数で割引額が変わる仕組み)
- 光回線とのセット割は、移行後も残る回線が引き続き対象になるか(多くの場合、光回線の契約者と同一グループであれば維持される)
- 乗り換え候補の格安SIM・サブブランドが、キッズ向け機能制限や留守番電話などの付帯サービスに対応しているか
- 全回線を一斉移行した場合と、1回線ずつ段階移行した場合の年間節約額の差を事前に試算しておく
自分の契約回線数・プランでの節約額は、格安SIM乗り換え節約額シミュレーターで確認できる。
よくある質問
この記事の数字の根拠は?
eximoの月額料金(7,315円)、みんなドコモ割(2回線550円/3回線以上1,100円)、ドコモ光セット割(1,100円、みんなドコモ割との併用可)、ドコモ光戸建てタイプ(5,720円)はいずれもNTTドコモ公式サイトの料金・割引条件(2026年時点)に基づく。楽天モバイル20GBプラン(2,178円)は同社公式サイトの料金プランを参照した。
au・SoftBankでも同じことが起きる?
はい。auの「家族割プラス」、SoftBankの「みんな家族割+」も、いずれも家族の契約回線数に応じて1回線あたりの割引額が変わる仕組みを採用している。具体的な割引額は各社・各時期で異なるため、乗り換え前に契約中のキャリアの公式サイトで「◯回線の場合の割引額」を確認しておくと、佐藤家のような想定外を避けられる。
光回線も一緒に乗り換えるとどうなる?
今回のケースでは光回線(ドコモ光)は据え置いたが、光回線ごと他社に乗り換える場合は、①光回線の解約金・工事費、②新しい光回線と新しい格安SIMの間でセット割が新たに組めるか、を別途確認する必要がある。楽天モバイルには自社の光回線とのセット割がないため、格安SIMと光回線を完全に切り離して考える家庭もある。
数字が実感と合わない場合は?
家族割・セット割の割引条件やプラン料金は各社が随時見直しており、本記事の金額は2026年時点のものである。契約中のプラン名・回線数によって実際の割引額は変わるため、正確な節約額は格安SIM乗り換え節約額シミュレーターに自分の条件を入力して確認してほしい。それでも差異が大きい場合はお問い合わせページから連絡できる。
関連シミュレーター
- 格安SIM乗り換え節約額シミュレーター — キャリア別の節約額を回線数込みで試算
- 通信費トータルシミュレーター — スマホ+ネット+固定電話の世帯合計を最適化
- 光回線プラン比較シミュレーター — 主要プロバイダの月額・セット割を比較
- 固定費総点検シミュレーター — 通信費以外の固定費もまとめて見直す
次にやること
- 家族分の直近の請求明細を並べ、現在適用されている割引の名称と金額をすべて書き出す
- 契約中のキャリアの公式サイトで「回線数が減った場合の割引額」を確認する
- 全員一斉乗り換え・段階的乗り換えそれぞれの年間節約額をシミュレーターで試算し、差額を把握したうえで移行方針を決める
「1人だけ試してみる」という進め方自体は悪くない。ただし、その1回線が家族割の対象人数を支えていた場合、残る家族の負担が静かに増えていることに気づかないまま数ヶ月が過ぎることもある。乗り換えの前に、まず今の請求書がどの割引で成り立っているかを確認しておきたい。