退職後の健康保険|任意継続vs国保vs扶養を令和8年度の料率で2年比較【2026】
東京23区・年収500万円・3月末退職なら任意継続は2年約89.9万円、国保は約54.5万円、任意継続1年→国保切替で約50.2万円。2026年4月からの協会けんぽ料率・子ども・子育て支援金・国保料率、会社都合退職の軽減(給与所得×30/100)、扶養の130万円ラインまで年収別に解説。
退職後の健康保険は「3つの選択肢」と「2つの期限」
会社を辞めると、退職日の翌日に会社の健康保険の資格を失います。次の保険に入らないままでいると、病院の窓口で医療費を全額払うことになりかねません。選べるのは次の3つです。
| 選択肢 | 届出期限 | 保険料の決まり方 | 家族の保険料 |
|---|---|---|---|
| 任意継続 | 退職日の翌日から20日以内(遅れると加入できない) | 退職時の標準報酬月額×料率(全額自己負担)・上限あり | 被扶養者は0円 |
| 国民健康保険 | 資格喪失から14日以内 | 前年の所得+人数で年度ごとに決まる | 1人ごとに均等割 |
| 家族の扶養 | 家族の勤務先経由でなるべく早く | 0円 | ― |
扶養に入れる人は扶養が最安です。扶養に入れない人は、任意継続と国保のどちらにするか(または途中で切り替えるか)を2年間の総額で比べます。
2026年は比べ方が少し変わりました。理由は次の4つです。
- 子ども・子育て支援金が2026年4月分から上乗せされた(任意継続は標準報酬月額×0.23%、国保は所得割と均等割で別に計算)
- 協会けんぽの健康保険料率が下がった(東京9.91%→9.85%、大阪10.24%→10.13%)。介護保険料率は1.62%に上がった
- 国保の令和8年度の料率と賦課限度額が変わった(東京23区は医療分の限度額が67万円になり、合計の上限は113万円)
- 令和8年度税制改正で、2026年分の給与所得控除の最低額が74万円になった。退職した年の給与が少ないと、翌年度の国保がさらに安くなる
任意継続の保険料:計算式と月給別の早見表
任意継続の保険料は次の式で計算します。
> 月額保険料 = 標準報酬月額 ×(健康保険料率+介護保険料率+子ども・子育て支援金率)
在職中は会社が半分払っていましたが、任意継続では全額を自分で払います。そのかわり協会けんぽでは標準報酬月額に上限32万円があります(令和6年度までは30万円、令和7年度から32万円で、令和8年度も同じ)。上限は「退職時の標準報酬月額」と「前年9月30日時点の全被保険者の平均」の低いほうです。
月給別の任意継続保険料(協会けんぽ東京・令和8年度)
| 退職時の月給 | 標準報酬月額 | 40〜64歳(11.70%) | 40歳未満・65歳以上(10.08%) | 2年間(40〜64歳) |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 20万円 | 23,400円 | 20,160円 | 約56.2万円 |
| 25万円 | 26万円 | 30,420円 | 26,208円 | 約73.0万円 |
| 30万円 | 30万円 | 35,100円 | 30,240円 | 約84.2万円 |
| 35万円以上 | 32万円(上限) | 37,440円 | 32,256円 | 約89.9万円 |
※東京の料率は健康保険9.85%+介護1.62%+子ども・子育て支援金0.23%。大阪(10.13%)だと上限の場合は月38,336円です。
月給が32万円を超える人は、いくら高給でも保険料は同じです。ここが高年収の人に任意継続が有利になる理由です。
国保の保険料:「前年の所得」で年度ごとに決まり直す
国保料は「所得割(所得に比例)+均等割(1人ごとの定額)+平等割(1世帯ごとの定額。自治体による)」を、医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40〜64歳)・子ども・子育て支援金分の4つで計算して合計します。
東京23区の令和8年度の料率
| 区分 | 所得割 | 均等割(1人) | 限度額 |
|---|---|---|---|
| 医療分 | 7.51% | 47,600円 | 67万円 |
| 後期高齢者支援金分 | 2.80% | 17,600円 | 26万円 |
| 介護分(40〜64歳) | 2.43% | 17,800円 | 17万円 |
| 子ども・子育て支援金分 | 0.27% | 1,873円(18歳以上) | 3万円 |
所得割の対象は「給与所得−43万円」です。いちばん大事なのは、どの年の所得で計算するかです。
- 2026年度(2026年4月〜2027年3月)=2025年の所得(給与所得控除は令和7年分の式で最低65万円)
- 2027年度(2027年4月〜2028年3月)=2026年の所得(給与所得控除は令和8年分の式で最低74万円)
たとえば前年年収500万円の人が2026年3月末に辞めた場合、次のように計算します。
- 2026年度:500万円−給与所得控除144万円=給与所得356万円 → 356万−43万=313万円に料率をかけて年約49.2万円
- 2027年度:2026年の給与は1〜3月分の約125万円 → 125万−74万=51万円。所得が低いので均等割が5割軽減され、年約5.3万円
前年年収別の国保と任意継続(東京23区・単身・45歳・3月末退職)
| 前年年収(月給) | 任意継続 2年 | 国保 1年目 | 国保 2年目 | 国保 2年 | 任継1年→国保 |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万円(20万円) | 約56.2万円 | 約29.2万円 | 約2.5万円 | 約31.7万円 | 約30.6万円 |
| 400万円(25万円) | 約73.0万円 | 約38.8万円 | 約2.5万円 | 約41.3万円 | 約39.1万円 |
| 500万円(35万円) | 約89.9万円 | 約49.2万円 | 約5.3万円 | 約54.5万円 | 約50.2万円 |
| 700万円(45万円) | 約89.9万円 | 約70.5万円 | 約16.0万円 | 約86.6万円 | 約61.0万円 |
| 900万円(60万円) | 約89.9万円 | 約93.7万円 | 約22.3万円 | 約116.1万円 | 約67.3万円 |
※2026年の給与は前年年収の3ヶ月分、2027年以降は収入なしと仮定。地域が違うと金額も変わり、年収500万円の例は横浜市で国保2年約56.2万円、大阪府内で約66.3万円です。
この表からわかることは3つです。
- 単身で年収500万円くらいまでなら、最初から国保でも任意継続より20万円以上安い
- 年収700万円を超えると、1年目は任意継続のほうが安い
- ほぼすべての年収で、「1年目は任意継続→2年目(翌年度の4月)から国保」が最安かそれに近い
2022年1月から、任意継続は本人が申し出ればいつでもやめられます。資格がなくなるのは申出が受理された月の翌月1日なので、4月から国保に移りたいなら3月中に申し出るのがポイントです。
会社都合・雇止めで辞めた人は国保がさらに安くなる
65歳未満で雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇など)や特定理由離職者(雇止めなど)になった人は、国保料の計算で前年の給与所得を30/100とみなす軽減を受けられます。期間は離職日の翌日が属する月から、その翌年度の末までです。
| 前年年収(45歳・単身・東京23区) | 通常の国保 2年 | 非自発的失業の軽減あり |
|---|---|---|
| 300万円 | 約31.7万円 | 約9.1万円 |
| 500万円 | 約54.5万円 | 約19.3万円 |
| 900万円 | 約116.1万円 | 約34.9万円 |
軽減を受けると、ほぼすべての年収で国保が任意継続より大幅に安くなります。手続きは市区町村の窓口に雇用保険受給資格者証を持っていくだけです。離職理由コード(11・12・21・22・31・32・23・33・34)で対象かどうかがわかります。
家族の扶養に入れるかのチェック
健康保険の被扶養者として認められる条件は次のとおりです。
- 今後1年間の収入見込みが130万円未満(60歳以上や障害のある人は180万円未満)
- 同居している場合は、扶養する家族の年収の半分未満
- 失業給付も収入に含まれる。基本手当の日額が3,612円以上(60歳以上は5,000円以上)だと、受給している間は扶養に入れない
失業給付の日額が基準を超える人は、「受給中は国保(または任意継続)→受給が終わったら扶養」と切り替えるのが一般的です。待期期間や給付制限期間中に扶養に入れるかは健康保険組合によって違うので、家族の勤務先に確認しましょう。失業給付の日額は失業保険シミュレーターで計算できます。
家族がいる場合の考え方
任意継続は家族を被扶養者にしても保険料は増えません。国保には扶養という仕組みがないので、家族1人ごとに均等割がかかります。
- 4人家族(配偶者40代・子ども2人のうち1人は未就学児、年収500万円)の場合、国保は2年で約81.9万円。任意継続(約89.9万円)との差は約8万円まで縮まる
- それでも「任意継続1年→国保」なら約59.3万円で、いちばん安い
- 未就学児の均等割は5割軽減、18歳未満の子ども・子育て支援金分の均等割は全額軽減される
判断フローチャート
- 家族の扶養に入れる(収入見込み130万円未満など)→ 扶養(0円)
- 会社都合・雇止めで辞めた(65歳未満)→ 国保+非自発的失業の軽減を申請
- 前年年収がおおむね300万円以下で単身 → 最初から国保(任意継続を挟んでも差は1万円前後で、切替の手間のほうが大きい)
- それ以外 → 任意継続で入り、国保が安くなる翌年度の4月に国保へ切替(3月中に任意継続の資格喪失を申し出る)
- 迷ったら → 市区町村で国保の試算額をもらい、任意継続vs国保シミュレーターの結果と比べる
よくある質問
Q. この記事の保険料データはどこから?
任意継続は全国健康保険協会「令和8年度保険料額表」(都道府県別の健康保険料率、介護保険料率1.62%、子ども・子育て支援金率0.23%)と、令和8年度の任意継続の標準報酬月額上限32万円です。国保は特別区共通基準(豊島区国保運営協議会資料「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例について」)、横浜市「令和8年度国民健康保険料率」、大阪府「令和8年度大阪府統一保険料率」の料率・限度額・軽減基準です。給与所得控除は国税庁の令和8年度税制改正の資料に基づいています。
Q. 数字が実感と合わないのはなぜ?
国保は自治体によって料率が大きく違い、家族に所得がある場合や退職金以外に所得がある場合も金額が変わります。健康保険組合の任意継続は、料率も上限も組合ごとに決まっています。任意継続vs国保シミュレーターの詳細設定で組合の料率・上限、家族構成、退職した年の給与を入力すると、より近い金額になります。
Q. 退職金は国保料に影響しますか?
影響しません。退職金は分離課税の退職所得なので、国保の所得割の計算には入りません。退職金にかかる税金は退職金シミュレーターで確認できます。
Q. 国保1年目が高すぎて払えないときは?
まず非自発的失業の軽減が使えないか確認し、そのうえで市区町村の窓口に減免や分割納付を相談しましょう。国保の金額だけを詳しく確かめたいときは国民健康保険料シミュレーターが便利です。
Q. 介護保険料はどちらに含まれる?
40〜64歳の人は、任意継続でも国保でも介護分が上乗せされます。65歳になると、介護保険料は市区町村に別に払う形に変わります。金額の目安は介護保険料シミュレーターで計算できます。
関連シミュレーター
- 任意継続vs国保シミュレーター — 任意継続・国保・途中切替・扶養の2年間の保険料を比較
- 国民健康保険料シミュレーター — 国保料の内訳を地域別に計算
- 退職後の費用シミュレーター — 退職翌年の住民税・国保・年金をまとめて試算
- 失業保険シミュレーター — 基本手当の日額と、扶養に入れるかの目安を確認
- 退職金シミュレーター — 退職金の手取りを試算
- 介護保険料シミュレーター — 40歳以降の介護保険料を計算
シミュレーターで計算してみよう
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