在宅介護の費用はいくら?介護度別の月額・総額と負担軽減制度を解説
在宅介護にかかる費用を要介護度別に月額・年額で解説。介護保険の支給限度額、自己負担割合、高額介護サービス費制度、介護保険外の費用まで網羅しました。
在宅介護の費用は「見えない出費」が多い
親や配偶者の介護が必要になったとき、多くの方が「施設より在宅のほうが安い」と考えます。たしかに特別養護老人ホームの月額10〜15万円と比べれば、在宅介護の方が費用を抑えやすいのは事実です。
しかし在宅介護には、介護保険でカバーされる費用だけでなく、おむつ代・食事の宅配・福祉用具のレンタルなど保険外の出費が積み重なります。さらに家族が仕事を減らして介護にあたる場合、収入減という隠れたコストも無視できません。
生命保険文化センターの調査(2024年)によると、在宅介護にかかる月額費用の平均は約4.8万円、介護期間の平均は約5年1ヶ月です。つまり総額で約300万円が目安になります。ただしこれはあくまで平均であり、要介護5の場合は月7〜8万円、期間が10年を超えるケースもあるため、総額1,000万円近くになることもあります。
介護保険の支給限度額を知る
介護保険を使えば、介護サービスの自己負担は原則1割(一定以上の所得者は2割または3割)で済みます。ただし、要介護度ごとに支給限度額(1ヶ月に使えるサービスの上限)が決まっています。
| 要介護度 | 支給限度額(月額) | 自己負担1割の場合 | 自己負担2割の場合 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 5,032円 | 10,064円 |
| 要支援2 | 105,310円 | 10,531円 | 21,062円 |
| 要介護1 | 167,650円 | 16,765円 | 33,530円 |
| 要介護2 | 197,050円 | 19,705円 | 39,410円 |
| 要介護3 | 270,480円 | 27,048円 | 54,096円 |
| 要介護4 | 309,380円 | 30,938円 | 61,876円 |
| 要介護5 | 362,170円 | 36,217円 | 72,434円 |
支給限度額を超えてサービスを利用した場合、超過分は全額自己負担になります。要介護3以上になると必要なサービスが増え、限度額いっぱいまで使うケースが多くなります。なお、2割負担の対象者は「合計所得金額が160万円以上」の方、3割負担は「220万円以上」の方です。65歳以上の方の約9割は1割負担に該当します。
介護度別の月額費用の目安
実際に在宅介護でかかる月額費用を、介護保険サービスと保険外費用に分けて見てみましょう。
| 要介護度 | 介護保険サービス(1割負担) | 保険外費用 | 月額合計 | 年額 |
|---|---|---|---|---|
| 要支援1〜2 | 5,000〜10,000円 | 5,000〜10,000円 | 約1〜2万円 | 約12〜24万円 |
| 要介護1 | 15,000〜17,000円 | 10,000〜15,000円 | 約2.5〜3万円 | 約30〜36万円 |
| 要介護2 | 18,000〜20,000円 | 15,000〜20,000円 | 約3.5〜4万円 | 約42〜48万円 |
| 要介護3 | 25,000〜27,000円 | 20,000〜30,000円 | 約5〜6万円 | 約60〜72万円 |
| 要介護4 | 28,000〜31,000円 | 25,000〜35,000円 | 約5.5〜6.5万円 | 約66〜78万円 |
| 要介護5 | 33,000〜36,000円 | 30,000〜40,000円 | 約6.5〜7.5万円 | 約78〜90万円 |
要介護5で月額7万円とすると、年間で約84万円、5年間で約420万円になります。要介護度が上がるほど保険外費用の比率が高くなるのが特徴です。
介護保険外でかかる費用の内訳
在宅介護では、介護保険の対象外となる費用が意外に多く発生します。これらは全額自己負担となるため、事前に把握しておくことが重要です。
| 費目 | 月額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| おむつ代 | 5,000〜10,000円 | 要介護3以上で常時必要になりやすい |
| 食事(宅配弁当等) | 10,000〜20,000円 | 1食500〜700円×1日2食の場合 |
| 福祉用具購入 | 1,000〜3,000円 | 月割り換算(入浴補助具・ポータブルトイレ等) |
| 住宅改修の月割り | 1,000〜2,000円 | 手すり設置・段差解消など(上限20万円を5年で按分) |
| 通院の交通費 | 2,000〜5,000円 | 介護タクシー利用時は高額に |
| 日用品・衛生用品 | 2,000〜5,000円 | 清拭タオル、防水シーツ、消臭剤等 |
| 介護食・栄養補助食品 | 3,000〜8,000円 | 嚥下困難な場合のとろみ剤等 |
これらを合計すると、要介護3以上では月額2〜4万円の保険外費用がかかります。おむつ代だけでも年間6〜12万円になるため、市区町村のおむつ支給事業(多くの自治体で要介護3以上を対象に実施)を忘れずにチェックしましょう。住宅改修費は介護保険を利用すると上限20万円まで1割負担(実質2万円)で済みます。
負担を軽くする3つの制度
1. 高額介護サービス費
1ヶ月の介護サービスの自己負担額が上限を超えた場合、超過分が後から払い戻される制度です。
| 所得区分 | 自己負担上限(月額) |
|---|---|
| 生活保護受給者 | 15,000円 |
| 住民税非課税世帯(年金80万円以下) | 15,000円 |
| 住民税非課税世帯 | 24,600円 |
| 一般世帯 | 44,400円 |
| 現役並み所得者(年収約383万円以上) | 44,400円 |
| 現役並み所得者(年収約770万円以上) | 93,000円 |
| 現役並み所得者(年収約1,160万円以上) | 140,100円 |
一般世帯の場合、どれだけサービスを使っても月額44,400円が上限になります。申請しないと払い戻されないため、必ず市区町村の窓口に相談してください。初回の申請を行えば、以降は自動的に適用されます。
2. 高額医療・高額介護合算制度
医療費と介護費を1年間(8月〜翌7月)で合算し、上限を超えた分が還付される制度です。たとえば70歳以上・一般所得の世帯では年間の合算上限が56万円です。介護と医療の両方を利用している世帯は必ず申請しましょう。年間の医療費が30万円、介護費が40万円の場合、合計70万円から上限56万円を引いた14万円が還付されます。
3. 介護休業給付金
家族の介護のために仕事を休む場合、雇用保険から賃金の67%が最大93日間支給されます。対象家族1人につき3回まで分割取得が可能です。月給30万円なら、93日間で約61万円が受け取れます。介護休業中も社会保険料は発生しますが、雇用保険料は免除されます。
在宅介護 vs 施設介護のコスト比較
在宅と施設、どちらが経済的に有利かは要介護度によって変わります。
| 項目 | 在宅介護(要介護3) | 特別養護老人ホーム | 介護付有料老人ホーム |
|---|---|---|---|
| 月額費用 | 5〜6万円 | 8〜13万円 | 15〜30万円 |
| 年額費用 | 60〜72万円 | 96〜156万円 | 180〜360万円 |
| 5年間の総額 | 300〜360万円 | 480〜780万円 | 900〜1,800万円 |
| 入居一時金 | なし | なし | 0〜数百万円 |
| 家族の負担 | 大きい | 小さい | 小さい |
| 待機期間 | なし | 数ヶ月〜数年 | なし |
費用だけを見れば在宅介護が安いですが、家族の介護離職による収入減(年収400万円の方が退職すれば年間400万円の損失)を考えると、必ずしも在宅が経済的に得とは限りません。特別養護老人ホームは入居待ちが長いため、早めに申し込んでおくのが賢明です。
介護費用の準備はいくら必要か
介護期間の平均5年1ヶ月、月額費用の平均4.8万円から算出すると、在宅介護の総額は約300万円です。ただし要介護度が高い場合や介護期間が長い場合は500〜800万円になることもあります。
初期費用として住宅改修やベッドの購入に50〜100万円がかかるケースもあるため、少なくとも350万円は介護資金として確保しておくと安心です。民間の介護保険に加入している場合は、給付金を活用することで自己負担を大幅に軽減できます。
介護が必要になる前から、公的介護保険の仕組みと自治体の独自サービスを調べておくことが、費用面でも精神面でも大きな備えになります。
シミュレーターで計算してみよう
要介護度・利用サービス・世帯の所得を入力すれば、月額費用と年間の自己負担額、高額介護サービス費の適用後の実質負担が自動で計算できます。在宅と施設の費用比較も一目でわかるので、介護の備えとしてぜひ活用してください。