軽の車検見積13万円が引き金だった——41歳・4人家族が「2台目」を手放してカーシェアに切り替えた1年の収支【ケーススタディ】
埼玉県郊外・年収670万円(世帯)の4人家族が、11年目の軽ワゴンの車検を機に2台目を手放した記録。軽1台の実質コスト年29.5万円の内訳、カーシェア+電動アシスト自転車への置き換えで年約19万円浮いた計算、それでも半年迷った「送迎問題」の解決策まで、判断のプロセスを数字で追う。
見積書の合計欄には132,000円と書かれていた。内訳は車検の法定費用が約2万7,000円、11年目の軽ワゴンに必要な整備——ブレーキパッド、ラジエーターホース、バッテリー——が約10万5,000円。
「直せば乗れます。ただ、この年式だと来年また別の場所が来るかもしれません」
整備士のこの一言が、埼玉県郊外に住む佐野さん(仮名・41歳・メーカー勤務)一家が「2台目」を降りるきっかけになった。
前提:佐野さん一家と2台の使われ方
- 家族構成: 夫41歳(年収560万円)、妻38歳(パート・年収110万円)、小4の長女、小1の長男
- 住まい: 埼玉県郊外の戸建て(駐車スペース2台分あり・駐車場代ゼロ)
- 1台目: ミニバン(7年目)。週末の買い出し、レジャー、年2回の帰省用
- 2台目: 軽ワゴン(2016年初度登録・11年目)。妻のパート通勤と平日の買い物用
地方や郊外では珍しくない構成だ。自動車検査登録情報協会「自家用乗用車の世帯当たり普及台数」(2024年)によると全国平均は約1.03台だが、福井県の約1.7台を筆頭に、公共交通の薄い地域では「1人1台」が生活の前提になっている。佐野さん宅も10年以上その前提で暮らしてきた。
ところが半年前、妻のパート先が家から自転車10分の場所に変わった。軽ワゴンの出番は「週2〜3回の買い物と雨の日の送迎」だけになり、月の走行距離は300kmを切っていた。そこへ届いたのが冒頭の見積書である。
軽ワゴン1台の「本当のコスト」を並べる
判断の材料として、夫婦はまず軽ワゴンにかかっている金額を1年あたりに直して書き出した。
| 項目 | 年額 | 備考 |
|---|---|---|
| 軽自動車税(種別割) | 10,800円 | 2015年4月以降登録の自家用軽 |
| 自賠責保険 | 8,770円 | 17,540円/24ヶ月の年割 |
| 自動車重量税 | 3,300円 | 6,600円/2年の年割 |
| 車検基本料・整備費 | 30,000円 | 2年で約6万円の年割(法定費用除く) |
| 任意保険 | 55,000円 | 車両保険なし・夫婦限定 |
| ガソリン | 35,400円 | 年3,500km・実燃費17km/L・172円/L |
| オイル・タイヤ等の消耗品 | 25,000円 | |
| 現金支出の合計 | 約16.8万円 | 駐車場代ゼロの郊外戸建てでこの水準 |
これだけでも月1.4万円だが、夫婦はもう1行足した。次の買い替えのための積立だ。今の軽を廃車にして140万円の軽を買い、また11年乗るなら、年12.7万円を積み立てているのと同じことになる。
```
実質コスト = 現金支出 16.8万円 + 買い替え積立 12.7万円 ≒ 年29.5万円
```
「乗りつぶすから買い替え分は関係ない」と思いたくなるが、車は必ずいつか終わる。この「見えない積立」まで含めるのが車の生涯コストシミュレーターの考え方で、佐野さんも最初はここで「軽1台にこんなに?」と声が出たという。都市部で月1万円の駐車場を借りていれば、さらに年12万円が乗る。
代替プラン:カーシェア+電動アシスト自転車
手放した後の生活を、夫婦は3つの道具に分解した。
- 妻の通勤・近所の用事 → 電動アシスト自転車(13.2万円で購入、8年使う想定で年約1.7万円+保険・メンテで年約2.5万円)
- 雨の日の買い物・子どもの土曜のスイミング送迎 → カーシェア。徒歩4分の月極駐車場にステーションがあることを確認済み。大手の料金(2026年7月時点)は15分220円、6時間以内の予約なら距離料金なし。月3回×2時間の利用で月5,280円、余裕を見て月6,000円=年7.2万円
- どうにもならない日 → タクシー・バスの予備費として年1.2万円
```
代替コスト = 7.2万円 + 2.5万円 + 1.2万円 ≒ 年10.9万円
差額 = 29.5万円 − 10.9万円 ≒ 年18.6万円
```
年およそ19万円、10年で約190万円の差になる。しかも入口の収支はプラスだった。11年目の軽ワゴンでも買取価格は18万円つき、電動アシスト自転車の購入費13.2万円を払ってなお4.8万円が手元に残った。払うはずだった車検代13.2万円も、そのまま消えた出費になった。
カーシェアと保有の損益分岐は月の利用時間・距離次第で変わる。佐野家は「月6時間・150km未満」だから成立した計算で、条件を変えた試算はマイカーvsカーシェアシミュレーターでできる。
それでも半年迷った——「送迎」と「もったいない」
数字の上では即決に見えるが、実際に手放すまでには半年かかった。理由は2つある。
ひとつは送迎問題。長男のスイミングは土曜、長女の塾は平日夜。「車がないと子育ては回らない」というのが妻の実感だった。夫婦で1ヶ月分の送迎を書き出してみると、実態は違った。土曜はミニバンが空いている。平日夜の塾は片道1.2km——電動アシスト自転車の距離だ。軽ワゴンでなければ運べなかった予定は、月に1〜2回しかなかった。その1〜2回がカーシェアの「月3回×2時間」の中身である。
もうひとつは「まだ乗れるのにもったいない」という感覚。だが冷静に考えると、これは11年乗ってきた愛着(すでに使い切った価値)を、これから払う13.2万円の理由にしてしまう逆転だ。「今この車を持っていなかったとして、13万円払ってこの車を買うか?」と問い直したら、答えは2人ともノーだった。
一点だけ、想定外もあった。夏休みなど週末のカーシェア予約が埋まりやすいことだ。対策として「使う日が決まったら3日前に予約する」運用に落ち着き、どうしても取れない日は1台目のミニバンで代替している。2台目だから成立している話で、1台目を手放す判断はまったく別の重さになる——タクシー併用の損益分岐はタクシーvsマイカーシミュレーターが参考になる。
1年後の家計:Before / After
| 手放す前 | 手放した後 | |
|---|---|---|
| 車の維持費(現金支出) | 年16.8万円×2台分+α | ミニバン1台分のみ |
| カーシェア・自転車・予備費 | — | 年10.9万円 |
| 買い替え積立(軽の分) | 年12.7万円 | 不要 |
| 収支インパクト | — | 年約19万円の改善 |
浮いた19万円の行き先も決めてある。半分の10万円は長女の中学進学に向けた教育費の積立へ、残りは家族の旅行予算に上乗せした。「軽ワゴンを塩漬けにしていたお金が、使い道のあるお金に変わった」というのが妻の総括だ。なお11年目の車検をそのまま通していた場合の費用感は車検費用シミュレーターで、電動アシスト自転車の維持費は電動アシスト自転車コストシミュレーターで確かめられる。
「2台目を手放せるか」判定フロー
佐野家の意思決定を、そのまま使えるフローに直すとこうなる。
- 2台目の月間走行距離は300km以下か? → No なら保有継続が妥当
- 徒歩10分圏にカーシェアのステーション、または使えるバス路線があるか? → No なら手放すのは早い
- 定期の送迎・通勤は「1台目」か「自転車圏」でカバーできるか? → 1ヶ月の送迎を実際に書き出して確認する
- 車検・大きな修理・買い替えのタイミングが近いか? → Yes なら今が検討の好機。まだ2年あるなら次の車検の半年前に再判定
- 1〜4をすべて通過したら、実質コスト(現金支出+買い替え積立)と代替コストを見積もって比較する
4つ目が意外に重要で、車検を通した直後は「せっかく直したのに」が働いて判断が2年止まる。見直しのベストタイミングは、いつだって大きな出費の直前だ。
あなたの家の2台目は、先月何kmを走っただろうか。給油の回数から逆算するだけでも、最初の答えは出る。