労災保険の給付額ガイド|休業補償・障害補償の計算方法と申請手順
労災の休業補償は給付基礎日額の80%で、月給30万円なら30日休業で約21.1万円。障害等級1〜14級・遺族年金の金額早見表、ボーナスが反映される特別年金、令和8年8月〜の年齢階層別限度額、健康保険との違い、申請手順まで厚労省資料で解説。
仕事中や通勤中のケガで働けなくなったとき、「労災からいくら出るのか」を即答できる人は多くありません。結論から言うと、休業補償は給付基礎日額の80%が休業4日目から支給され、月給30万円の人が30日休業すると約21.1万円です。障害が残れば等級に応じた年金か一時金、亡くなった場合は遺族に年金と300万円の特別支給金が支払われます。
この記事では、厚生労働省の「労災保険給付の概要」(令和8年7月1日現在)と、令和8年8月1日から適用されている年齢階層別の最低・最高限度額をもとに、給付額の計算方法を具体的な数字で整理します(確認日: 2026年10月23日)。自分の月給で計算したい方は労災保険 給付額シミュレーターをお使いください。
労災保険とは
労災保険(労働者災害補償保険)は、業務上または通勤による負傷・病気・障害・死亡に対して給付を行う公的保険です。保険料は全額会社負担で、正社員だけでなくパート・アルバイトも対象になります。治療費は労災指定医療機関なら窓口負担なしの現物給付で、休業中の所得補償も健康保険より手厚く設計されています。
給付の種類と金額の全体像
| 給付の種類 | 内容 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 療養(補償)等給付 | 治療費 | 指定医療機関なら自己負担0円 |
| 休業(補償)等給付 | 休業中の所得補償 | 給付基礎日額の60%+特別支給金20% |
| 障害(補償)等給付 | 後遺障害 | 1〜7級は年金、8〜14級は一時金 |
| 遺族(補償)等給付 | 死亡時の遺族 | 給付基礎日額の153〜245日分/年+300万円 |
| 葬祭料等 | 葬儀費用 | 33万円+給付基礎日額の30日分(最低60日分) |
| 傷病(補償)等年金 | 1年6か月経っても治らず重い場合 | 給付基礎日額の245〜313日分/年 |
葬祭料は「330,000円+給付基礎日額の30日分」で、これが60日分に満たない場合は60日分です。以前の「31.5万円」から変わっているので、古い解説記事には注意してください。
給付基礎日額の計算方法
すべての現金給付の基礎になるのが給付基礎日額です。原則として労働基準法の平均賃金に相当し、事故の直前3か月間の賃金総額を、その期間の暦日数で割って求めます。
```
給付基礎日額 = 直前3か月の賃金総額(賞与・臨時の賃金を除く)÷ 暦日数(89〜92日)
```
厚生労働省のパンフレットには「月20万円×3か月÷92日(7月31日・8月31日・9月30日)≒6,522円」という例が載っています。賃金総額には基本給だけでなく残業代や通勤手当も含まれます。
| 月給(額面) | 給付基礎日額(92日で計算) | 休業1日あたり(80%) | 30日休業(27日分) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 6,522円 | 約5,218円 | 約14.1万円 |
| 25万円 | 8,153円 | 約6,522円 | 約17.6万円 |
| 30万円 | 9,783円 | 約7,826円 | 約21.1万円 |
| 35万円 | 11,414円 | 約9,131円 | 約24.7万円 |
| 40万円 | 13,044円 | 約10,435円 | 約28.2万円 |
| 50万円 | 16,305円 | 約13,044円 | 約35.2万円 |
「月給÷30日」で計算すると、月給30万円で日額10,000円・30日で24万円となりますが、これは暦日数と待期期間を無視した過大な数字です。
休業補償の3つのポイント
- 休業4日目から支給: 最初の3日間は待期期間で、労災保険からは出ません。業務災害なら会社が平均賃金の60%を補償する義務があります(通勤災害にはこの規定がありません)
- 60%+20%で計80%: 保険給付60%に休業特別支給金20%が上乗せされます。いずれも非課税です
- 1年6か月を過ぎると年齢階層別の限度額が適用: 療養開始から1年6か月経過後は、給付基礎日額に年齢ごとの最低・最高限度額がかかります
障害補償の等級別金額(月給30万円の場合)
障害等級は労災保険法施行規則の障害等級表で決まり、1〜7級は毎年の年金、8〜14級は一時金です。障害特別支給金(一時金)も等級ごとに定額で支給されます。
| 等級 | 代表的な障害の例 | 給付日数 | 本体の額 | 特別支給金 |
|---|---|---|---|---|
| 1級 | 両眼失明・両上肢をひじ関節以上で失った | 313日/年 | 約306万円/年 | 342万円 |
| 4級 | 1上肢をひじ関節以上で失った | 213日/年 | 約208万円/年 | 264万円 |
| 5級 | 1上肢を手関節以上で失った | 184日/年 | 約180万円/年 | 225万円 |
| 7級 | 1手の母指を含み3指を失った | 131日/年 | 約128万円/年 | 159万円 |
| 8級 | 1下肢を5cm以上短縮 | 503日 | 約492万円 | 65万円 |
| 12級 | 局部にがん固な神経症状 | 156日 | 約153万円 | 20万円 |
| 14級 | 局部に神経症状 | 56日 | 約55万円 | 8万円 |
年金(1〜7級)は年金の最初の月から年齢階層別の最低・最高限度額が適用されます。令和8年8月1日〜令和9年7月31日の値は、たとえば30〜34歳が7,146〜20,499円、40〜44歳が7,727〜24,827円、65〜69歳が4,350〜17,709円です。月給80万円(給付基礎日額26,087円)の40歳が1級に認定されると、年金は24,827円×313日=約777万円で計算されます。
ボーナスは「特別年金・特別一時金」で反映される
休業補償にはボーナスは反映されませんが、障害と遺族の給付では、ボーナスをもとにした特別年金・特別一時金が上乗せされます。
```
算定基礎日額 = 前1年間の賞与 ÷ 365
(上限: 給付基礎日額×365の20%、かつ150万円)
```
月給30万円・賞与60万円の人なら、上限は約71.4万円なので賞与60万円がそのまま使われ、算定基礎日額は1,644円です。障害8級なら特別一時金は1,644円×503日=約82.7万円。本体約492万円+特別一時金約82.7万円+特別支給金65万円で、合計約640万円になります。
遺族補償年金(月給30万円の場合)
| 受給資格のある遺族の数 | 給付日数 | 年額(本体) |
|---|---|---|
| 1人 | 153日(55歳以上の妻等は175日) | 約150万円(175日なら約171万円) |
| 2人 | 201日 | 約197万円 |
| 3人 | 223日 | 約218万円 |
| 4人以上 | 245日 | 約240万円 |
これに加えて遺族特別支給金300万円(一時金)と、賞与があれば遺族特別年金が支給されます。妻以外の遺族は、死亡当時に一定の年齢・障害の要件を満たす必要があります。遺族厚生年金などとの関係は遺族年金シミュレーターもあわせて確認してください。
健康保険の傷病手当金との比較
| 項目 | 労災(休業補償) | 健康保険(傷病手当金) |
|---|---|---|
| 対象 | 業務上・通勤による傷病 | 業務外の傷病 |
| 給付水準 | 給付基礎日額の80% | 標準報酬日額の約3分の2 |
| 治療費 | 自己負担0円 | 原則3割(高額療養費あり) |
| 期間 | 治ゆまで(重い場合は傷病年金へ) | 通算1年6か月 |
| 税金 | 非課税 | 非課税 |
仕事中・通勤中のケガで健康保険を使うと、後で切り替えの手続きが必要になります。最初から労災として届け出るのが原則です。業務外のケガや病気への備えは医療保険シミュレーターで検討できます。
申請の流れ
- 会社に報告する: 事故の日時・場所・状況を伝える
- 労災指定医療機関で受診する: 指定外で受診した場合はいったん立て替え、後で請求
- 請求書を労働基準監督署に提出する: 療養は様式第5号(指定医療機関経由)、休業は様式第8号、障害は様式第10号(通勤災害は別様式)
- 休業補償は期間ごとに請求する: 時効は賃金を受けない日ごとに翌日から2年
会社が協力しない場合でも、労働者本人が直接労働基準監督署に請求できます。一般的な制度の問い合わせ先は労災保険相談ダイヤル(0570-006031)です。
よくある質問
Q. パート・アルバイトでも労災は使える?
使えます。雇用形態や勤務日数に関係なく、労働者であれば対象です。保険料は全額会社負担です。
Q. 退職後の収入はどうなる?
労災の給付は退職しても打ち切られません。一方、業務外の理由で退職した後の生活費は失業保険シミュレーター、復職後の給与の手取りは手取り計算シミュレーターで確認できます。
Q. この記事の計算の前提データはどこから?
給付率・給付日数・特別支給金・葬祭料・給付基礎日額と算定基礎日額の定義は厚生労働省「労災保険給付の概要」と「請求(申請)のできる保険給付等」(令和8年7月1日現在)、障害の内容は障害等級表、年齢階層別限度額は厚生労働省の表2(R8.8.1〜R9.7.31適用)で確認しました(2026年10月23日)。早見表は暦日数92日・1円未満切り上げで計算しています。
Q. 数字が実感と合わない場合は?
直前3か月の残業代の増減、賃金締切日による暦日数の違い、賃金水準に応じたスライド率、厚生年金・国民年金の障害年金や遺族年金との併給調整で実際の額は変わります。自分の条件でシミュレーターの詳細設定(年齢・賞与・暦日数)を入れ直し、それでも差が大きい場合は労働基準監督署にご確認ください。計算へのご指摘はお問い合わせからどうぞ。
出典(確認日: 2026年10月23日)
- 厚生労働省「労災保険給付の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001743837.pdf
- 厚生労働省「請求(申請)のできる保険給付等」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001743836.pdf
- 厚生労働省 表2「R8.8.1〜R9.7.31に適用される最低・最高限度額」 https://www.mhlw.go.jp/content/2026saiteisaikou.pdf
- 厚生労働省「障害等級表」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/rousaihoken03/index.html