フリーランスの年金上乗せ4択比較|付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済を掛金上限と流動性で横断整理
個人事業主が国民年金に上乗せできる4つの制度、付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済を、掛金上限・控除の種類・受け取り方・途中でお金を引き出せるかの4軸で横断比較。月138,000円をフル活用した場合の節税額約49.7万円を検算し、廃業前に資金化したいか/老後まで拘束されても平気かで選ぶ判定フローを示す。
会社員なら厚生年金があるが、個人事業主は国民年金だけ。40年間満額を納めても老齢基礎年金は月6.9万円程度(2026年度水準)にとどまり、「これだけで老後は生活できない」というのは多くのフリーランスが漠然と感じている不安だ。この不安に応える制度は実は1つではなく、付加年金・国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済という4つが並んでいる。しかも一部は併用でき、一部は排他的だ。この記事では4つを同じ物差しで比較し、「結局どれを選べばいいか」を判定フローに落とし込む。
4つの制度の顔ぶれ
- 付加年金 — 国民年金保険料に月400円上乗せするだけで、老齢基礎年金に終身で上乗せがつく最もシンプルな制度
- 国民年金基金 — 掛金に応じた確定給付の年金を終身または一定期間受け取れる、公的な上乗せ年金
- iDeCo(個人型確定拠出年金) — 掛金を自分で運用し、運用成績次第で受取額が変わる私的年金
- 小規模企業共済 — 廃業・引退時の退職金を積み立てる制度。中小機構が運営
横断比較表
| 制度 | 掛金上限(月) | 控除区分 | 途中で資金化できるか | 受け取り方 |
|---|---|---|---|---|
| 付加年金 | 400円(定額) | 社会保険料控除 | 不可(年金なので) | 終身、200円×納付月数が上乗せ |
| 国民年金基金 | 68,000円(iDeCoと合算枠) | 社会保険料控除 | 原則不可(任意脱退できない) | 確定給付、予定利率1.5%相当 |
| iDeCo | 68,000円(付加年金・基金と合算枠) | 小規模企業共済等掛金控除 | 不可(60歳まで引き出し不可) | 運用実績次第、元本確保型〜投資信託 |
| 小規模企業共済 | 70,000円(上記とは別枠) | 小規模企業共済等掛金控除 | 貸付制度あり(掛金の一定割合まで借入可) | 廃業・退職時に退職所得として受取 |
ポイントは掛金の「枠」の関係だ。付加年金・国民年金基金・iDeCoは第1号被保険者の月68,000円という上限を共有しており、国民年金基金に加入すると付加年金は自動的に使えなくなる(基金の給付設計に相当分が組み込まれているため)。一方、小規模企業共済の月70,000円はこの枠と完全に別枠なので、iDeCoや国民年金基金と無条件に併用できる。
フル活用した場合の掛金と節税額を検算する
個人事業主・42歳・課税所得400万円(実効税率を所得税+住民税でおおよそ30%と仮定)のケースで、「運用重視」の組み合わせを試算する。
組み合わせ:付加年金(400円)+iDeCo(67,600円)+小規模企業共済(70,000円)
| 項目 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 付加年金 | 400円 | 4,800円 |
| iDeCo | 67,600円 | 811,200円 |
| 小規模企業共済 | 70,000円 | 840,000円 |
| 合計拠出額 | 138,000円 | 1,656,000円 |
付加年金・iDeCoは社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除として全額が所得控除になり、小規模企業共済も全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になる。つまり年間拠出額1,656,000円がそのまま所得控除額になる。
節税額 = 1,656,000円 × 30% = 約496,800円/年
「元本重視」で国民年金基金を選んでも掛金枠と控除の扱いは同じため、節税額は変わらない。差が出るのは受取額の中身——国民年金基金は確定給付、iDeCoは運用成績次第という点だ。
付加年金だけは別格——2年で元が取れる
付加年金は月400円という少額ながら、費用対効果が際立って高い。40年間(480ヶ月)納め続けた場合で検算する。
- 総拠出額:400円×480ヶ月=192,000円
- 年金上乗せ額:200円×480ヶ月=年96,000円(終身)
- 元が取れるまで:192,000円÷96,000円=2年
年金を受け取り始めて2年経てば元本を回収でき、その後は生きている限りずっとプラスになる。国民年金基金に加入していない個人事業主であれば、月400円で加入しない理由はほぼない。
選び方の判定フロー
4つの制度を組み合わせる際は、次の順番で考えると迷いにくい。
- 国民年金基金に加入していないか? → していなければ、まず付加年金(月400円)に加入する
- 廃業前に事業資金として引き出す可能性があるか?
- 68,000円枠は確定給付と運用、どちらを取るか?
- 資金に余裕があるか? → 小規模企業共済は上記と別枠の70,000円まで積めるため、余裕があれば上限まで積み増すのが節税効率上もっとも有利
それぞれの注意点
- 国民年金基金は一度加入すると自己都合で任意脱退できない。収入が不安定になりやすいフリーランスにとって、掛金の固定化はリスクにもなる
- iDeCoは60歳まで完全に引き出せない。廃業して収入が途絶えても掛金だけは止められる(運用継続)が、資金として使うことはできない
- 小規模企業共済は加入から20年未満で任意解約すると元本割れする設計になっている。「いつでも引き出せる貯金」ではない点は誤解されやすい
- 4制度とも、掛金は事業所得からではなく個人の所得控除として処理される。事業の経費にはならない点に注意
よくある質問
この記事の数字の根拠は?
掛金上限・控除区分は国税庁および国民年金基金連合会、中小企業基盤整備機構(中小機構)の公開情報に基づく。国民年金基金の予定利率は同基金の公表資料(2019年4月以降の設定)を参考にした。
4つ全部に同時に入ることはできる?
付加年金と国民年金基金は同時加入できない(国民年金基金に付加年金相当の給付が含まれるため)。それ以外の組み合わせ(付加年金+iDeCo+小規模企業共済、または国民年金基金+小規模企業共済)は併用可能。
会社員から独立した場合、iDeCoの掛金上限はどう変わる?
会社員時代の企業年金の有無によって上限が月12,000〜23,000円だったのに対し、第1号被保険者(個人事業主)になると上限は月68,000円まで一気に広がる。独立直後に上限額を見直す人は多い。
数字が実感と合わない場合は?
この記事の節税額は実効税率30%を仮定した概算であり、実際の税率は課税所得によって変動する。自分の所得に応じた具体的な節税額はiDeCoシミュレーター、事業全体の税負担は個人事業主 税金シミュレーターで試算できる。小規模企業共済の制度の詳細は小規模企業共済の解説記事、企業型DCとの違いは企業型DC vs iDeCo比較ガイドも参考にしてほしい。ご不明点はお問い合わせページから連絡できる。