基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書の書き方|3つの制度が1枚になった理由を欄ごとに解説【2026年】
年末調整で配られる3枚のうち、名前が一番長いこの用紙は「基礎控除」「配偶者控除等」「所得金額調整控除」という別々の制度が1枚にまとまっている。令和8年度改正で104万・67万・62万円の3段階になった基礎控除、136万・169万・207万円に上がった配偶者の年収区分、給与収入850万円超で使える所得金額調整控除の3つを、年収900万円・配偶者パート年収100万円・19歳の子がいる42歳会社員の記入例で検算し、この1枚で控除合計105万円・節税額が約30万円になることを確認する。
年末調整で配られる3枚の書類のうち、一番長い名前を持つのがこの用紙だ。「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」——正式名称を読むだけで手が止まる人は多い。だが実際に書く欄は、多くの人にとって1〜2箇所で終わる。長い名前の正体は、性質の異なる3つの控除制度が1枚の用紙に同居しているだけだからだ。
扶養控除等申告書の書き方、保険料控除申告書の書き方に続く、年末調整3部作の最後の1枚をここで扱う。
なぜ3つの制度が1枚にまとまっているのか
この用紙が長い名前になった理由は、2020年の税制改正にある。それまで一律だった基礎控除・給与所得控除の仕組みが変わり、「配偶者控除等申告書」に「基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が統合された。3つの欄はそれぞれ独立した制度で、該当しない欄は空欄のままでよい。
| 欄 | 制度 | 対象になる人 |
|---|---|---|
| ①基礎控除申告書 | 基礎控除(全員に関係) | 給与所得者全員 |
| ②配偶者控除等申告書 | 配偶者控除・配偶者特別控除 | 控除対象になる配偶者がいる人 |
| ③所得金額調整控除申告書 | 所得金額調整控除 | 給与収入850万円超で、23歳未満の扶養親族がいる等の人 |
独身で年収850万円以下なら、書くのは①だけ。配偶者も高収入の子もいなければ、この用紙は1分で終わる。
①基礎控除申告書——令和8年分は「104万円・67万円・62万円」の3段階
基礎控除は以前、所得にかかわらず一律48万円だった。令和7年分(2025年分)に合計所得に応じた5段階(95万・88万・68万・63万・58万円)へ変わり、さらに令和8年度税制改正で令和8年分(2026年分)から再び引き上げられた。今年12月の年末調整で使うのは、次の令和8年分の表だ。
| 合計所得金額 | 給与収入だけの場合の目安 | 令和8・9年分の基礎控除 | (参考)令和7年分 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 206万円以下 | 104万円 | 95万円 |
| 132万円超〜336万円以下 | 〜475万1,999円 | 104万円 | 88万円 |
| 336万円超〜489万円以下 | 〜665万5,556円 | 104万円 | 68万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 〜850万円 | 67万円 | 63万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 〜2,545万円 | 62万円 | 58万円 |
| 2,350万円超〜2,500万円以下 | 2,545万円超 | 48万・32万・16万円 | 同じ(改正なし) |
合計所得489万円(給与だけなら年収約665万円)以下の人は、一律で104万円になった。内訳は所得税法本則の62万円に、租税特別措置法による加算42万円(489万超655万以下は加算5万円)を足したもので、加算部分は令和8・9年分の措置だ。令和10年分以後は「132万円以下99万円、それ以外62万円」になる予定と国税庁は示している。
この用紙の①欄には、会社が計算した「給与所得控除後の給与等の金額」から自分の合計所得を見積もり、該当する区分にチェックを入れる。多くの給与所得者は会社側が金額を印字してくれるため、実質的には確認するだけで済むケースが多い。なお、令和8年11月までの毎月の源泉徴収は改正前の税額表のままで、12月の年末調整で改正後の基礎控除を使って1年分を精算する。年収665万円以下の人ほど、今年の年末調整の還付が例年より大きくなりやすいのはこのためだ。
年収別に見る基礎控除の増え方
| 給与年収 | 合計所得(令和8年分) | 令和7年分 | 令和8年分 | 増加額 |
|---|---|---|---|---|
| 150万円 | 76万円 | 95万円 | 104万円 | +9万円 |
| 300万円 | 202万円 | 88万円 | 104万円 | +16万円 |
| 500万円 | 356万円 | 68万円 | 104万円 | +36万円 |
| 700万円 | 520万円 | 63万円 | 67万円 | +4万円 |
| 900万円 | 705万円 | 58万円 | 62万円 | +4万円 |
給与所得控除の最低保障も65万円から74万円に上がったため、年収190万円以下では合計所得の計算自体も変わる(年収150万円なら150万−74万=76万円)。給与所得控除の仕組みは給与所得控除の解説にまとめている。
②配偶者控除等申告書——「配偶者の所得区分」を自分で判定する
配偶者控除・配偶者特別控除を受けたい場合に記入する。ポイントは、本人の合計所得と配偶者の合計所得の両方で控除額が変わることだ。
令和8年分は、配偶者の所得要件も基礎控除の引上げに連動して変わった。
| 配偶者の合計所得金額 | 給与収入換算(令和8年分) | 控除の種類 | 控除額(本人所得900万円以下の場合) |
|---|---|---|---|
| 62万円以下 | 136万円以下 | 配偶者控除 | 38万円 |
| 62万円超95万円以下 | 136万超169万円以下 | 配偶者特別控除 | 38万円 |
| 95万円超133万円以下 | 169万超207万円以下 | 配偶者特別控除 | 36万〜3万円(段階的に減少) |
| 133万円超 | 207万円超 | 対象外 | 0円 |
令和7年分は「58万円以下(給与123万円以下)が配偶者控除、満額38万円は給与160万円まで、上限は約201.6万円」だった。令和8年分は境目がそれぞれ136万円・169万円・207万円に上がっている。給与収入換算が上がったのは、所得要件の引上げ(58万→62万円)と給与所得控除の最低保障の引上げ(65万→74万円)が重なったためだ。
さらに、本人の合計所得金額が900万円(給与だけなら年収1,095万円)を超えると、配偶者の所得区分が同じでも控除額が段階的に下がる。900万超950万以下は本来額の3分の2(38万→26万円)、950万超1,000万以下は3分の1(38万→13万円)、1,000万超はゼロになる。「配偶者がいくら稼いでいるか」だけでなく「自分がいくら稼いでいるか」も控除額を決める、という点を見落とすと記入時に混乱しやすい。
③所得金額調整控除申告書——年収850万円超の子育て・介護世帯向け
3つの中で一番存在を知られていないのがこの欄だ。給与収入850万円を超える人のうち、以下のいずれかに該当する場合だけ記入する。
- 本人が特別障害者
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である同一生計配偶者・扶養親族がいる
該当すれば、控除額は次の式で決まる。
```
所得金額調整控除額 = (給与収入 − 850万円) × 10%
※給与収入は1,000万円で頭打ち(上限15万円)
```
2020年に導入された比較的新しい制度で、「年収850万円を超えた子育て世帯は増税になる」という当時の批判を和らげるために設けられた経緯がある。該当するのに書き忘れると、この控除がまるごと消える。
記入例で検算する——年収900万円・42歳会社員のケース
3つの欄をまとめて使うケースを検算してみる。
- 本人:42歳・会社員・給与年収900万円
- 配偶者:パート年収100万円(令和8年分の合計所得26万円=100万−74万)
- 子:19歳・大学生(本人の扶養親族、収入なし)
| 欄 | 判定 | 控除額 |
|---|---|---|
| ①基礎控除 | 給与所得705万円(900万−給与所得控除195万)→655万超2,350万以下 | 62万円(令和7年分は58万円) |
| ②配偶者控除 | 配偶者の合計所得26万円(62万円以下)、本人所得900万以下 | 38万円 |
| ③所得金額調整控除 | 給与収入900万円>850万円、19歳の扶養親族あり | (900万−850万)×10%=5万円 |
| 合計 | 105万円(令和7年分は101万円) |
※厳密には、所得金額調整控除は給与所得から差し引くため基礎控除の判定に使う合計所得は700万円になるが、655万円超の区分は変わらない。
この世帯の課税所得は、社会保険料控除(給与収入の概算14.4%で約130万円)や他の控除も差し引くとおおむね330万〜695万円の区分(所得税率20%)に収まる。所得税と住民税をあわせた実効税率をおおよそ30%と仮定すると、
```
節税額の目安 = 105万円 × 30% ≒ 約31.5万円
```
この用紙1枚の記入漏れが、約30万円の還付・軽減を左右する計算になる。なお住民税の基礎控除は令和8年度改正の対象外で43万円のままのため、厳密には所得税分(基礎控除62万円×20%)と住民税分(43万円×10%)を分けて計算する必要がある。目安としては「約30万円」と覚えておけば十分だ。特に③所得金額調整控除は、対象者が限られる分、税理士でも見落とすことがあると言われる控除だ。自分の年収・扶養構成での正確な還付額は年末調整シミュレーターで、配偶者控除の詳しい判定は配偶者控除・配偶者特別控除シミュレーターで確認できる。
この用紙を書かなくていい人
- 独身・扶養家族なし・年収850万円以下 → ①基礎控除欄だけ記入すれば提出完了
- 配偶者控除等申告書の欄は、配偶者の年収が207万円(令和8年分)を超えていれば記入不要(控除自体が発生しないため)
- 所得金額調整控除申告書の欄は、給与収入850万円以下なら該当する条件を一切満たさないため空欄でよい
よくある質問
この記事の数字の根拠は?
令和8年分の基礎控除(104万・67万・62万円)、配偶者控除・配偶者特別控除の所得区分(62万円・136万円/207万円)、給与所得控除の最低保障74万円は、国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」および「令和8年分 基礎控除等Q&A」に基づく。令和7年分の5段階(95万〜58万円)は令和7年度税制改正の内容で、比較のために併記している。所得金額調整控除の算式と給与所得控除(850万円超は一律195万円)は所得税法・租税特別措置法の規定による。
令和8年分の改正で、11月以前に出した書類はやり直しになる?
基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書は、年末調整の時期(11月前後)に提出するため、勤務先が令和8年分の様式を配っていればそのまま記入すればよい。注意したいのは扶養控除等申告書のほうで、配偶者や親族の年収が123万円超136万円以下の場合、改正で新たに扶養親族等の要件を満たすことになる。その控除を受けるには異動申告書の提出が必要だ。書き方は扶養控除等申告書の書き方を参照してほしい。
住民税の計算にも令和8年分の基礎控除が使われる?
使われない。住民税の基礎控除は43万円(合計所得2,400万円以下)のまま据え置かれている。給与所得控除の最低保障74万円と扶養親族等の所得要件62万円は、令和9年度分(令和8年の所得に対する課税)の住民税から反映される。「所得税はかからないが住民税はかかる」年収帯が広がるのはこのためで、詳しくは年収の壁シミュレーターで確認できる。
配偶者の年収が確定していない場合はどう書けばいい?
12月時点での見込み額で記入する。年末までに配偶者の実際の収入が見積もりと大きくずれた場合は、勤務先での年末調整の再計算(翌年1月末までが目安)か、確定申告での精算が必要になる。パート先のシフトが年の後半で増減した場合は特に注意したい。令和8年分は配偶者控除の境目が136万円、満額38万円の上限が169万円に上がったので、去年「123万円を超えたから配偶者特別控除」と判定した世帯でも、今年は配偶者控除に戻るケースがある。
3つの欄をすべて埋めても控除の上限はある?
基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除はそれぞれ独立した制度で、上限の合算はない。ただしこの用紙で完結するのは所得控除の一部にすぎず、生命保険料控除・扶養控除など他2枚の書類の控除と合わせて、最終的な課税所得が計算される。全体像は年末調整で損しない控除チェックリストで確認できる。
数字が実感と合わない場合は?
この記事の試算は社会保険料を給与収入の14.4%概算で計算した簡易モデルであり、実際の等級表に基づく金額とは数千円単位でずれることがある。また税率は課税所得の水準によって10%〜45%まで変わるため、正確な還付見込みは年末調整シミュレーターで自分の年収・控除構成を入力して確認してほしい。それでも差異が大きい場合はお問い合わせページから連絡できる。
関連シミュレーター
- 配偶者控除・配偶者特別控除シミュレーター — 配偶者の年収から控除額を判定
- 年末調整 還付金シミュレーター — 3枚の書類の控除をまとめて還付額に反映
- 扶養控除シミュレーター — 23歳未満の扶養親族の控除額を試算
- 所得税率シミュレーター — 自分の限界税率から控除1万円あたりの還付額を確認
- 手取り計算シミュレーター — 年収から手取りへの換算を改正後の法令で計算
年末調整の3枚のうち、この用紙が一番「該当者は少ないが、該当すれば影響が大きい」書類だ。特に所得金額調整控除は存在自体を知らない人が多いため、給与収入850万円を超えていて子育て・介護中の家庭は、記入前にもう一度条件を見直しておきたい。