扶養控除等申告書の書き方|10月に配られる年末調整の最初の1枚を欄ごとの記入例で解説【2026年】
「扶養控除等(異動)申告書」は10月下旬〜11月上旬に会社から配られる年末調整の最初の書類。A〜F欄それぞれに何を書くか、年収500万円・子2人(19歳大学生・14歳中学生)の記入例つきで解説。特定扶養親族63万円控除の節税額の計算式、よくある記入ミス、他2枚の書類との違いも整理した。
「扶養控除等(異動)申告書」と印字された紙を渡されて、ペンを持ったまま固まった――そんな経験がある人は多いはずだ。毎年10月下旬から11月上旬にかけて、会社の経理・総務からこの書類が配られる。年末調整の一連の手続きの中で、最初に手をつけることになる1枚だ。
書式は毎年ほぼ変わらないのに、1年に1回しか書かないせいで「どの欄に何を書くのか」を忘れてしまう。この記事では、欄ごとに何を記入するのかを具体的な家族構成の例で確認していく。
いつ配られて、いつまでに出すのか
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 10月下旬〜11月上旬 | 会社から書類一式(扶養控除等申告書・基礎控除申告書等・保険料控除申告書)が配布される |
| 11月中〜下旬(会社により異なる) | 記入して経理・総務へ提出する締切 |
| 12月 | 提出内容をもとに年末調整が計算され、給与や賞与で還付・追徴が反映される |
提出が遅れると年末調整に間に合わず、自分で確定申告をして控除を受け直す手間が発生する。配られたその週のうちに書いてしまうのが一番早い。
年末調整で配られる書類は実は3枚
「扶養控除等申告書」だけだと思われがちだが、2020年分以降は次の3枚に分かれている。
| 書類名(通称) | 誰が記入するか | 内容 |
|---|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書 | 全員 | 配偶者・扶養親族の情報、障害者・ひとり親等の該当有無 |
| 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書(通称「基・配・所」) | 全員 | 自分の所得見積額に応じた基礎控除、配偶者控除の判定 |
| 保険料控除申告書 | 生命保険・地震保険等に加入している人 | 保険料控除証明書の金額を転記 |
この記事では、最初に書くことになる「扶養控除等申告書」に絞って解説する。基礎控除・配偶者控除の判定額は配偶者控除・配偶者特別控除シミュレーターで先に確認しておくと、書類上の欄の意味が理解しやすくなる。
記入例:年収500万円・子2人の田中家(仮名)のケース
条件を次のように設定して、各欄の記入内容を見ていく。
- 本人:田中さん(42歳・会社員・給与年収500万円)
- 配偶者:パート年収100万円(本人は妻の扶養控除等申告書には記載されない側)
- 長男:19歳・大学生(アルバイト収入なし)
- 長女:14歳・中学生
| 欄 | 記載内容 | 田中家の場合 |
|---|---|---|
| A欄(本人情報) | 氏名・住所・マイナンバー等 | 会社の方針でマイナンバー記載を省略できる場合もある(給与支払報告書の記載事項に基づき別途管理されているケース) |
| B欄(源泉控除対象配偶者) | 配偶者の氏名・年間所得の見積額 | 妻の給与収入100万円→給与所得控除65万円を引いた所得35万円。所得48万円以下・年収123万円以下なので該当する |
| C欄(控除対象扶養親族) | 16歳以上の扶養親族 | 長男(19歳)を記載。19〜22歳は「特定扶養親族」に区分され、控除額が上乗せされる。14歳の長女はここには書かない(16歳未満は対象外) |
| D欄(障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生) | 該当する場合のみ | 該当なしなので空欄 |
| E欄(住民税に関する事項) | 16歳未満の扶養親族 | 長女(14歳)をここに記載する。所得税の控除はないが、住民税の非課税判定などに使われるため書き漏らさない |
| F欄(他の所得者が控除を受ける扶養親族等) | 共働きで扶養の重複を避けるための欄 | 該当者がいなければ空欄 |
ポイントは、16歳以上の子と16歳未満の子で記入する欄が分かれていること。長女を「扶養親族が2人いるから」とC欄にまとめて書いてしまうミスが起きやすい。
特定扶養親族の控除は63万円——節税額を計算式で確認
19〜22歳の子は「特定扶養親族」として、通常の扶養控除(38万円)より上乗せされた控除を受けられる。
| 区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|
| 一般の扶養親族(16〜18歳・23〜69歳) | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族(19〜22歳) | 63万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(70歳以上・同居) | 58万円 | 45万円 |
田中家の長男(19歳)は特定扶養親族に該当するため、控除額は63万円。課税所得330万円超695万円以下(所得税率20%)の田中さんの場合、節税額は次のように計算できる。
```
所得税の節税額 = 63万円 × 20% = 12.6万円
住民税の節税額 = 45万円 × 10% = 4.5万円
合計 = 約17.1万円/年
```
この欄を書き忘れると、63万円分の控除がまるごと反映されず、年末調整で還付されるはずの十数万円を取りこぼすことになる。自分の年収・扶養人数でどれくらいの控除・還付になるかは扶養控除シミュレーターや年末調整 還付金シミュレーターで確認できる。
よくある記入ミス
- 16歳未満の子をC欄に書いてしまう — 所得税の控除対象外なのでE欄(住民税に関する事項)が正しい
- 配偶者の年収見積額を去年の実績のまま書く — 今年の勤務時間・時給が変わっていれば見積もりも変わる。パートで働く配偶者がいる場合は年末までの収入見込みを再計算してから記載する
- 年の途中の結婚・出産・扶養親族の死亡を反映し忘れる — 「異動申告書」という名称のとおり、家族構成に変化があった年は必ず修正して提出する
- 押印欄で悩んで手が止まる — 現在の様式では押印は不要になっている
FAQ
Q. この記事の記入内容の根拠はどこから?
国税庁が毎年公表する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の様式と記載要領、扶養控除・配偶者控除の金額は所得税法・地方税法の規定に基づく。特定扶養親族・老人扶養親族の控除額は例年変更されていないが、配偶者の所得要件は2025年分以降の税制改正(基礎控除の見直し)で年収103万円から123万円に緩和されている。
Q. 配偶者の年収がまだ確定していない場合はどう書けばいい?
12月時点での見込み額で構わない。実際の年収が見積もりとずれた場合は、年末調整の再計算(会社によっては翌年1月末までの「年末調整の訂正」)か、確定申告での精算が可能。大きくずれそうな場合は早めに経理へ相談しておくとスムーズだ。
Q. 記入した後に家族構成が変わったら?
結婚・出産・扶養親族の増減があった場合は、年内であれば申告書を書き直して再提出できる。会社の年末調整の締切に間に合わなければ、翌年の確定申告で控除を追加することもできる。
Q. 書き方がどうしても分からない場合は?
勤務先の経理・総務担当者に聞くのが最も早い。記入例は毎年、国税庁のWebサイトにも様式とセットで公開されている。控除額や還付金の見込みを自分で試算してから提出したい場合は、手取り計算シミュレーターで年末調整後の手取りイメージを確認しておくとよい。
次にやること
- 配布された3枚のうち、まず「扶養控除等申告書」から着手する
- 16歳以上の扶養親族はC欄、16歳未満はE欄——年齢で書く場所を分ける
- 配偶者・扶養親族の年収見込みを今年の実績ベースで再確認する
- 控除額・還付見込みをシミュレーターで確認してから提出する
書類自体は10分もあれば書き終わる分量だが、1つの記載漏れが数万円の控除漏れにつながる。配られたその日のうちに片づけてしまうのが、年末に慌てないための一番の近道だ。