年末調整の書き方:扶養控除等申告書の記入例|令和9年分は扶養の年収136万円以下・特定親族もB欄へ【2026年】
年末調整で10〜11月に配られる「扶養控除等(異動)申告書」の書き方を欄ごとに解説。令和9年分の様式はA欄=源泉控除対象配偶者(配偶者の年収169万円以下)、B欄=源泉控除対象親族(16歳以上)、16歳未満の子は「住民税に関する事項」。令和8年度改正で扶養親族の所得要件は58万→62万円(給与だけなら年収123万→136万円)に。年収500万円・子2人の記入例と、特定扶養控除63万円の節税額(約7.7万円)を計算式で示す。
結論から言うと、年末調整の扶養控除等(異動)申告書は「配偶者はA欄、16歳以上の子・親はB欄、16歳未満の子は住民税に関する事項」の3か所に書き分ければほぼ完成する。2026年10〜11月に配られるのは翌年用の「令和9年分」で、令和8年度税制改正により扶養親族の所得要件は58万円以下→62万円以下(給与収入だけなら年収123万円以下→136万円以下)に広がった。さらに19〜22歳でアルバイト年収136万円超〜174万円以下の子(特定親族)も、今回からB欄に書けば毎月の源泉徴収で控除が反映される。
「扶養控除等(異動)申告書」と印字された紙を渡されて、ペンを持ったまま固まった――そんな経験がある人は多いはずだ。書式は毎年ほぼ同じなのに、1年に1回しか書かないせいで「どの欄に何を書くのか」を忘れてしまう。この記事では、国税庁の令和9年分の様式と裏面の「扶養親族等の範囲」に沿って、欄ごとの記入内容を具体的な家族構成で確認していく。
いつ配られて、いつまでに出すのか?
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 10月下旬〜11月上旬 | 会社から書類一式(令和9年分の扶養控除等申告書・令和8年分の基礎控除申告書等・保険料控除申告書)が配布される |
| 11月中〜下旬(会社により異なる) | 記入して経理・総務へ提出する締切 |
| 12月 | 令和8年分の年末調整が計算され、12月の給与や賞与で還付・追徴が反映される |
| 翌年1月〜 | 提出した令和9年分の申告書をもとに、毎月の源泉徴収税額が決まる |
扶養控除等申告書だけは「来年の分」を書く書類だという点がまぎらわしい。今年(令和8年分)の家族構成は、年初に出した申告書の内容がそのまま年末調整に使われる。年の途中で結婚・出産・扶養親族の増減があった場合は、令和8年分の申告書を「異動」として訂正する必要がある。
提出が遅れると年末調整に間に合わず、自分で確定申告をして控除を受け直す手間が発生する。配られたその週のうちに書いてしまうのが一番早い。
年末調整で配られる書類は何枚?
「扶養控除等申告書」だけだと思われがちだが、実際には次の3種類が配られる。
| 書類名(通称) | 誰が記入するか | 内容 |
|---|---|---|
| 扶養控除等(異動)申告書【令和9年分】 | 全員 | 配偶者・扶養親族・特定親族の情報、障害者・ひとり親等の該当有無 |
| 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書(通称「基・配・特・所」)【令和8年分】 | 全員 | 自分の所得見積額に応じた基礎控除、配偶者(特別)控除、特定親族特別控除の金額計算 |
| 保険料控除申告書【令和8年分】 | 生命保険・地震保険・iDeCo等の該当者 | 保険料控除証明書の金額を転記 |
この記事では、最初に書くことになる「扶養控除等申告書」に絞って解説する。配偶者控除の金額は配偶者控除・配偶者特別控除シミュレーター、年末調整全体の段取りは年末調整チェックリストで確認しておくと、書類上の欄の意味がつかみやすい。
令和9年分の様式はどこが変わった?
| 項目 | 令和8年分まで | 令和9年分の様式 |
|---|---|---|
| 扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 | 58万円以下(給与だけなら年収123万円以下) | 62万円以下(年収136万円以下) |
| 源泉控除対象配偶者の所得要件 | 95万円以下(年収160万円以下) | 95万円以下(年収169万円以下) |
| B欄の名称 | 控除対象扶養親族 | 源泉控除対象親族(特定親族を含む) |
| 特定親族(19〜22歳・所得62万円超123万円以下) | 年末調整でのみ控除 | 所得100万円以下(年収174万円以下)ならB欄に記載し、毎月の源泉徴収から控除 |
| 前年から変更がない場合 | 毎年全項目を記入 | 「異動がない」旨を書いた簡易な申告書でも可 |
源泉控除対象配偶者の所得要件(95万円)は据え置きだが、給与所得控除の最低保障額が65万円→74万円(令和8・9年分)に上がったため、年収換算では160万円→169万円に上がっている。給与所得控除の改正は年収の壁ガイドでも詳しく整理している。
記入例:年収500万円・子2人の田中家(仮名)のケース
条件を次のように設定して、各欄の記入内容を見ていく。
- 本人:田中さん(42歳・会社員・給与年収500万円)
- 配偶者:パート年収100万円
- 長男:19歳・大学生(アルバイト収入なし)
- 長女:14歳・中学生
| 欄 | 記載内容 | 田中家の場合 |
|---|---|---|
| 上部(本人情報) | 氏名・住所・生年月日・マイナンバー・世帯主 | 会社がマイナンバーを管理済みで、その旨を記載すれば個人番号の記載を省略できる場合がある |
| A欄(源泉控除対象配偶者) | 配偶者の氏名・令和9年中の所得の見積額 | 妻の給与収入100万円−給与所得控除74万円=所得26万円。95万円以下(年収169万円以下)で、本人の所得も900万円以下なので記載する |
| B欄(源泉控除対象親族・16歳以上) | 16歳以上の扶養親族・特定親族 | 長男(19歳)を記載し「特定扶養親族」にチェック。14歳の長女はここには書かない |
| C欄(障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生) | 該当する場合のみ | 該当なしなので空欄 |
| D欄(他の所得者が控除を受ける扶養親族等) | 共働きで配偶者側が子の扶養控除を受ける場合など | 該当者がいなければ空欄 |
| 住民税に関する事項 | 16歳未満の扶養親族、退職手当等を有する親族 | 長女(14歳)をここに記載。所得税の扶養控除はないが、住民税の非課税限度額の判定に使われるので書き漏らさない |
ポイントは、16歳以上の子と16歳未満の子で記入する欄が分かれていること。「扶養親族が2人いるから」と長女までB欄に書いてしまうミスが起きやすい。
長男がアルバイトで年150万円稼いでいたら?
令和9年中の長男のアルバイト収入見込みが150万円の場合、所得は150万円−74万円=76万円。扶養親族(62万円以下)からは外れるが、特定親族(62万円超123万円以下)に該当し、親は特定親族特別控除63万円を受けられる。所得100万円以下なので源泉控除対象親族としてB欄に記載し、「特定親族」にチェックを付ける。控除額が収入に応じてどう逓減するかは特定親族特別控除の解説と扶養控除シミュレーターで確認できる。
特定扶養控除63万円で税金はいくら減る?
19〜22歳の子は「特定扶養親族」として、通常の扶養控除(38万円)より上乗せされた控除を受けられる。
| 区分 | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 |
|---|---|---|
| 一般の扶養親族(16〜18歳・23〜69歳) | 38万円 | 33万円 |
| 特定扶養親族(19〜22歳) | 63万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(70歳以上・同居老親等) | 58万円 | 45万円 |
| 老人扶養親族(70歳以上・同居以外) | 48万円 | 38万円 |
田中さんの課税所得を令和8年分の控除額でざっくり計算すると次のとおり。
```
給与所得 = 500万円 −(500万円×20%+44万円)= 356万円
社会保険料控除 ≒ 75万円(年収の約15%)
基礎控除 = 68万円(合計所得336万円超489万円以下・令和8年分)
配偶者控除 = 38万円(妻の所得26万円 ≦ 62万円)
特定扶養控除 = 63万円
課税所得 = 356 − 75 − 68 − 38 − 63 ≒ 112万円 → 所得税率5%
```
課税所得195万円以下なので所得税率は5%。特定扶養控除による節税額は次のようになる。
```
所得税の節税額 = 63万円 × 5% × 1.021(復興特別所得税)≒ 3.2万円
住民税の節税額 = 45万円 × 10% = 4.5万円
合計 ≒ 約7.7万円/年
```
「控除額×税率」で効くので、年収が高く税率20%帯(課税所得330万円超)の人なら所得税だけで12.6万円、住民税と合わせて約17万円になる。年収別の節税額は扶養控除シミュレーター、年末調整でいくら戻るかは年末調整 還付金シミュレーターで計算できる。
よくある記入ミス
- 16歳未満の子をB欄に書いてしまう — 所得税の控除対象外なので「住民税に関する事項」が正しい
- 配偶者・子の年収見積額を去年の実績のまま書く — 扶養控除等申告書は「令和9年中の見積額」を書く。シフトや時給が変わる予定があれば見込みで再計算する
- 年の途中の結婚・出産・扶養親族の死亡を反映し忘れる — 「異動申告書」という名称のとおり、家族構成に変化があった年は令和8年分も修正して提出する
- 年収123万〜136万円の家族を書かないままにする — 令和8年度改正で、令和8年分は12月1日以後の給与から新しい62万円基準で判定される。今年新たに扶養親族になった家族がいれば、令和8年分の申告書に追記しないと年末調整で控除が漏れる
- 押印欄で悩んで手が止まる — 現在の様式では押印は不要
よくある質問
扶養控除等申告書の記入内容の根拠はどこから?
国税庁「令和9年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の様式と裏面の「扶養親族等の範囲」、および国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」に掲載された令和8年度税制改正の内容(基礎控除62万円への引上げ、給与所得控除の最低保障額74万円、扶養親族の所得要件62万円)に基づいている。控除額そのものは所得税法・地方税法の規定による。
扶養控除等申告書と「基・配・特・所」の違いは?
扶養控除等申告書は翌年(令和9年)の毎月の源泉徴収のための書類、「基・配・特・所」は今年(令和8年)の年末調整で基礎控除・配偶者控除・特定親族特別控除の金額を確定させる書類。同じ家族を両方に書くことがあるが、目的と対象年が違う。
配偶者の年収がまだ確定していない場合はどう書けばいい?
見込み額で構わない。実際の年収が見積もりとずれた場合は、年末調整の再計算(会社によっては翌年1月末までの訂正)か確定申告で精算できる。大きくずれそうなら早めに経理へ相談しておくとスムーズだ。
去年と何も変わっていなければ書き直さなくていい?
令和9年分からは、令和8年に提出した申告書と記載事項に異動がなければ、氏名・住所・マイナンバー欄を記入し「異動がない」旨を余白に書いた簡易な申告書で提出できる。ただし子が16歳・19歳・23歳になる年や、家族の年収が62万円・136万円の境目をまたぐ年は区分が変わるので、簡易版で済ませず確認したい。
記入した後に家族構成が変わったら?
結婚・出産・扶養親族の増減があった場合は、年内であれば申告書を書き直して再提出できる。会社の年末調整の締切に間に合わなければ、翌年の確定申告で控除を追加することもできる。
共働きで子どもはどちらの扶養に入れるのが得?
扶養控除は夫婦のどちらか一方しか受けられず、税率の高い(所得の多い)方に付けた方が節税額は大きい。配偶者側で申告する場合は、自分の申告書のD欄に記載して重複を防ぐ。手取りへの影響は手取り計算シミュレーターで比較できる。
書き方がどうしても分からない場合や、数字が実感と合わない場合は?
勤務先の経理・総務担当者に聞くのが最も早い。記載例は毎年、国税庁「年末調整がよくわかるページ」で様式とセットで公開されている。この記事の計算や数字に誤りや違和感があれば、当サイトのお問い合わせフォームから知らせてほしい。
次にやること
- 配布された書類のうち、まず「令和9年分 扶養控除等申告書」から着手する
- 配偶者はA欄、16歳以上の子・親はB欄、16歳未満の子は住民税に関する事項——年齢で書く場所を分ける
- 家族の年収見込みを「62万円(年収136万円)」「特定親族なら174万円」の基準で確認する
- 今年新たに扶養の範囲に入った家族がいれば、令和8年分の申告書も訂正する
- 控除額・還付見込みをシミュレーターで確認してから提出する
書類自体は10分もあれば書き終わる分量だが、1つの記載漏れが数万円の控除漏れにつながる。配られたその日のうちに片づけてしまうのが、年末に慌てないための一番の近道だ。