習い事6つで年79万円、児童手当の3.3倍——船橋市の石川さん一家(仮名・世帯年収780万円)が「卒業ルール」を決めると、この先6年の習い事代は674万円→460万円。浮く214万円は国立大学4年分の学費の9割だった【ケーススタディ】
小3と年長の2人で習い事6つ、月謝だけで月6万円・発表会や遠征を含めて年79万円を払う共働き世帯(夫39歳・年収450万円、妻37歳・年収330万円、千葉県船橋市)を例に、このまま続けた場合と「足すなら1つ卒業」「卒業ラインを先に決める」ルールを入れた場合の6年間の総額を比較。中学の塾代を含めても674万円→460万円になり、差額を年3%で10年運用すると約259万円。1回あたりの単価・送迎時間・文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の平均(公立小で年25.6万円)との比較つき。
「毎月27日に、6万円がまとめて落ちていくんです。どれも子どもが『やりたい』と言って始めたものだから、どこを削ればいいのか分からなくて。」
千葉県船橋市に住む石川美香さん(仮名・37歳)は、通帳の引き落とし欄を指でなぞりながらそう話した。秋は、来年度の継続や入会の案内が一斉に届く時期だ。長女が来春小学生になるのを前に、夫婦で初めて習い事の「総額」を計算してみることにした。
石川さん一家のプロフィール
- 夫・拓也さん:39歳、メーカー勤務、年収450万円(手取り約354万円)
- 妻・美香さん:37歳、事務職の正社員、年収330万円(手取り約263万円)
- 長男・蒼くん:8歳・小学3年生
- 長女・結衣ちゃん:5歳・年長、2027年4月に小学校入学
- 住まい:千葉県船橋市の賃貸マンション、車1台
- 世帯の手取り:年約617万円(手取り計算シミュレーターで2人分を概算)
- 児童手当:第1子・第2子とも月1万円で、年24万円
6つの習い事を「年額」で並べ直す
美香さんが把握していたのは「月謝の合計がだいたい6万円」ということだけだった。発表会、大会の遠征費、教材費、年会費を足して年額にすると、景色が変わる。
| 習い事 | 誰が | 月謝 | 年間の追加費用 | 年額 | 1回あたり(年48回) | 送迎 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 水泳 | 蒼くん | 8,000円 | 5,000円 | 101,000円 | 2,104円 | 必要 |
| 英会話 | 蒼くん | 12,000円 | 15,000円 | 159,000円 | 3,313円 | 不要(駅前) |
| サッカー | 蒼くん | 8,000円 | 15,000円 | 111,000円 | 2,313円 | 必要(土曜) |
| プログラミング | 蒼くん | 15,000円 | 10,000円 | 190,000円 | 3,958円 | 不要 |
| ピアノ | 結衣ちゃん | 10,000円 | 20,000円 | 140,000円 | 2,917円 | 必要 |
| 体操教室 | 結衣ちゃん | 7,000円 | 5,000円 | 89,000円 | 1,854円 | 必要 |
| 合計 | 60,000円 | 70,000円 | 790,000円 | 週4回 |
計算式はどれも「月謝 × 12か月 + 年間の追加費用」。月謝は相場の中央値に近い水準で、特別に高い教室を選んでいるわけではない。
それでも年79万円は、
- 世帯の手取り617万円の12.8%
- 児童手当(年24万円)の3.3倍
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の公立小学生の学校外活動費(年256,489円)で2人分を見積もった51.3万円の1.5倍
にあたる。1つひとつは「月8,000円くらいなら」と始めたものでも、6つ重なると、家賃の次に大きい固定費になっていた。
お金以外のコストもある。送迎が必要な4つは平日夕方と土曜に集中していて、待ち時間を含めると週に約4時間。年にすると約200時間を、主に美香さんが負担している。
このまま6年続けると、いくらになるか
夫婦が心配したのは「今」より「これから」だった。結衣ちゃんは小学校に上がったら英会話も始めたいと言っている。蒼くんは中学に入れば、高校受験に向けて塾が必要になるかもしれない。
そこで、蒼くんが中学3年生になる2032年度までの6年間を、3つの方針で試算した。中学からの塾代(集団塾で月2.5万円+季節講習5万円=年35万円)は、3案すべてに入れている。
A案:いまの6つを続け、結衣ちゃんの英会話を足す
全部を続ける。現実には途中でやめるものも出るが、「何も決めなかった場合」の上限として置く。
- 水泳は小4で4泳法を25m泳げたら卒業(2027年度まで)
- プログラミングは「1年で作品を1つ作る」を区切りに、2027年度で一度終了
- サッカーは小6まで(中学は部活へ)
- 体操は逆上がりと側転ができたら卒業(小2まで)
- 英会話は2人とも継続、ピアノも継続
C案:1人2つまで
蒼くんは英会話とサッカー(中学からは塾に置き換え)、結衣ちゃんはピアノと体操(体操は小2まで)。結衣ちゃんの英会話は始めない。
| 年度 | 蒼くん / 結衣ちゃん | A案 | B案 | C案 |
|---|---|---|---|---|
| 2027 | 小4 / 小1 | 94.9万円 | 94.9万円 | 49.9万円 |
| 2028 | 小5 / 小2 | 94.9万円 | 65.8万円 | 49.9万円 |
| 2029 | 小6 / 小3 | 94.9万円 | 56.9万円 | 41.0万円 |
| 2030 | 中1 / 小4 | 129.9万円 | 80.8万円 | 64.9万円 |
| 2031 | 中2 / 小5 | 129.9万円 | 80.8万円 | 64.9万円 |
| 2032 | 中3 / 小6 | 129.9万円 | 80.8万円 | 64.9万円 |
| 6年合計 | 674.4万円 | 460.0万円 | 335.5万円 |
A案とB案の差は214.4万円。国立大学の入学金(28.2万円)と授業料4年分(53.58万円×4)を合わせた242.5万円の、ほぼ9割に相当する。
B案は1年目の2027年度だけ見るとA案と同じ94.9万円だ。卒業ラインを「決める」のと「すぐやめる」のは違う。今年いきなり削るのではなく、区切りが来たら次を足さずに終える。それだけで、2年目から差が開いていく。
浮いた分を積み立てると
拓也さんが気にしたのは「削った分が、結局どこかに消えるのでは」という点だった。そこで、A案との差額を毎月積み立て、蒼くんが18歳になる2036年末まで年3%・月複利で運用した場合を計算した。積立額と利率を変えて試すなら複利計算シミュレーターが使える。
> 将来額 = Σ(その月の積立額)×(1+3%÷12)^(2036年末までの残り月数)
| 6年間の差額(元本) | 2036年末の評価額(年3%) | |
|---|---|---|
| B案(卒業ルール) | 214.4万円 | 約258.5万円 |
| C案(1人2つまで) | 338.9万円 | 約414.9万円 |
B案でも、国立大学4年分の学費を超える額になる。運用益が確実に出るわけではないが、預金に置いたままでも元本の214.4万円は残る。大学までにかかる教育費の全体像は教育費シミュレーター、学資保険と新NISAのどちらで貯めるかは学資保険vs新NISAシミュレーターで確かめられる。
石川さん夫婦が選んだのは「B案+1つの例外」
C案は数字だけ見れば最も効く。ただ、蒼くんが一番楽しみにしているのはプログラミングで、結衣ちゃんは英会話を始める日を数えている。話し合いの末、夫婦は次の3つを家族のルールにした。
- 足すなら1つ卒業する。 いま4つ通っている蒼くんは、卒業が来るまで新しく足さない。結衣ちゃんが英会話を始める2027年4月に、体操の卒業時期を「小2の3月」と本人と決めた
- 始めるときに卒業ラインを決める。 水泳は4泳法、体操は逆上がり、プログラミングは作品1つ。達成したら、続けるかを本人が選び直す
- 月謝ではなく年額で比べる。 入会前に「月謝×12+発表会・遠征・教材」を計算し、1回あたりの単価も見る
例外は、蒼くんのプログラミングを本人の希望で2028年度も続けたこと。この分(年19万円)を足しても、6年間の総額は479万円で、A案より195万円少ない。
習い事ごとの費用を入れ替えて試すなら子供の習い事費用シミュレーターが手早い。ピアノのように発表会や楽器代がかさむものは音楽教室の費用シミュレーターで個別に見ると、追加費用の大きさが分かる。
計算の前提
- 月謝と年間の追加費用は、子供の習い事費用シミュレーターの標準値(学研教育総合研究所「小学生白書(2023年)」、各業界団体の調査を基にした相場)
- 学校外活動費の平均は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2024年12月公表・2026年1月訂正後)の公立小学校
- 手取りは令和8年分の税制・社会保険料率で概算(ボーナス年4か月分、扶養なし)
- 児童手当は2024年10月以降の制度(3歳〜高校生年代の第1子・第2子は月1万円)
- 国立大学の学費は文部科学省令の標準額(入学金282,000円・授業料年535,800円)
- 1回あたりの単価は年48回で割った値。月3回の教室は単価がもう3割ほど上がる
- 運用は年3%・月複利の仮定で、将来の利回りを保証するものではない
あなたの家の「卒業ライン」は決まっていますか
石川さん一家の習い事は、どれも無駄ではなかった。蒼くんは25mを泳げるようになり、結衣ちゃんは発表会で1曲弾けるようになった。ただ、「いつまで」を決めずに続けていると、子どもが成長するほど、新しい習い事が増えるほど、総額は静かに膨らんでいく。
いま続けている習い事を書き出して、それぞれの年額と、終わりにする条件を横に並べてみてほしい。条件がすぐに書けないものがあるとしたら、そこが次の家族会議の議題になる。