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税金・社会保険

4月昇給で月+1.5万円——なのに『手取り増』が3段階で減っていく仕組み|社会保険料改定と住民税アップを5月から先読みする

4月の昇給で5月給与が増えても、9月分から社会保険料が改定され、翌年6月から住民税もアップする。月+1.5万円の昇給が、最終的に月+1.1万円の手取り増に落ち着くまでの15ヶ月のタイムラグを、3つの昇給幅(+1.5万・+3万・+5万)で具体シミュレーション。先取り貯蓄に回すべき金額の出し方も解説。

5月25日。給与明細を開いたあなたは「お、4月の昇給が反映されてる」と思う。月収が額面で1.5万円増えていて、手取りもおおむねそれに近い額が増えている。

——だが、この「手取り増」は3段階で目減りしていく。

1段階目は9月の給与。社会保険料が改定され、月の天引きが増える。2段階目は翌年6月の給与。住民税が新年度(前年所得ベース)に切り替わり、さらに天引きが増える。最終的に「思ったほど手取りが増えなかった」という感覚で1年が終わる。

仕組みを知らないと、9月の給与明細を見て「会社が何かミスしている?」と勘違いしかねない。この記事では、4月の昇給→5月給与→9月の社保料改定→翌6月の住民税改定という15ヶ月のタイムラグを、具体的な数字で先読みする。

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結論:「3段階で目減り」のカラクリ

3段階の動きを先に図解で示す。

```
【昇給後の手取り増の推移(月+1.5万円昇給ケース)】

額面 手取り増
↑ ↑
4月 +15,000円 +14,160円 ← 第1段階:手取り増ほぼ満額
5月 +15,000円 +14,160円
6月 +15,000円 +14,160円
7月 +15,000円 +14,160円
8月 +15,000円 +14,160円
─────────────────────────────────
9月 +15,000円 +12,750円 ← 第2段階:社保料改定で減
10月 +15,000円 +12,750円
...
翌5月 +15,000円 +12,750円
─────────────────────────────────
翌6月 +15,000円 +11,250円 ← 第3段階:住民税改定で減
翌7月 +15,000円 +11,250円
...
```

つまり、「真の昇給メリット」が確定するのは昇給から15ヶ月後(翌年6月)。それまでは過渡期で、手取り増の額が段階的に減っていく。

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なぜ社会保険料は「9月」に改定されるのか——定時決定の仕組み

会社員の社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険)は、毎月の給与額に直接かけて計算しない。「標準報酬月額」という固定の枠(等級表)に当てはめて算出する。

標準報酬月額の決め方(定時決定)

時期何が起こる
4月・5月・6月3ヶ月分の給与(残業代込)を平均
7月10日まで会社が「算定基礎届」を年金事務所に提出
9月分から新しい標準報酬月額に基づく社保料が適用
給与天引きは10月支払いから9月分社保料は通常「翌月控除」で10月給与から

ポイント: 4月の昇給直後の給与が「算定基礎」になるが、それが社保料に反映されるのは5ヶ月遅れ。だから5月〜8月の給与は、前年算定の旧標準報酬で社保料が計算される。

例外:「随時改定」が走るケース

3つの条件を全て満たすと、9月を待たずに途中で改定される。

  1. 固定的賃金(基本給など)が変動した
  2. 変動月以後3ヶ月の支払基礎日数がすべて17日以上
  3. 変動月以後3ヶ月の標準報酬月額平均が、現在の等級と2等級以上差がある

たとえば月収33万円→36万円(+3万円)の昇給は2等級アップに該当することが多く、随時改定で7月分(8月支払い)から社保料改定となる。月+1.5万円程度の昇給では1等級以内に収まり、随時改定はかからず9月の定時決定で反映される。

参考: 日本年金機構「標準報酬月額の定時決定」「随時改定」

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なぜ住民税は「翌年6月」に改定されるのか

住民税は前年(1〜12月)の所得に対してかかる「後払い」の税金だ。

時期何が起こる
当年1〜12月所得が発生
翌年1〜3月確定申告(必要な人)/会社の年末調整
翌年5〜6月市区町村から「特別徴収税額の決定通知書」が会社経由で届く
翌年6月〜翌々年5月毎月の給与から天引き

つまり、2026年4月の昇給による住民税アップは、2027年6月の給与から反映される。1年2ヶ月の遅れだ。

通知書の読み方は6月の住民税決定通知書チェックリストで詳しく扱った。事前に試算したいなら住民税シミュレーターで年収から逆算できる。

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3パターンの昇給幅で「手取り増」をシミュレーション

次に、昇給幅別の具体的な数字を見ていく。前提は以下の通り(東京・40歳未満・扶養0人・協会けんぽ)。

共通の前提

  • 健康保険料率: 9.98%(労使折半なので本人負担4.99%)
  • 厚生年金保険料率: 18.3%(本人負担9.15%)
  • 雇用保険料率: 0.6%(本人負担)
  • 所得税: 源泉徴収税額表(月額表・甲欄・扶養0人)に基づく
  • 住民税: 標準税率10%(所得割)

パターン1: 月+1.5万円昇給(標準的な昇給幅)

段階期間額面増社保料増雇用保険・所得税増住民税増手取り増
第1段階4月〜8月+15,000円0円(旧等級据置)-840円0円+14,160円
第2段階9月〜翌5月+15,000円-1,414円(1等級UP)-836円0円+12,750円
第3段階翌6月〜+15,000円-1,414円-836円-1,500円+11,250円
  • 1年目(4月〜翌3月): 14,160 × 5 + 12,750 × 7 = 約160,000円
  • 2年目(4月〜翌3月): 12,750 × 3 + 11,250 × 9 = 139,500円
  • 3年目以降(定常状態): 11,250 × 12 = 135,000円/年

額面年18万円アップに対し、定常状態の手取り増は約13.5万円(手取り率75%)

パターン2: 月+3万円昇給(管理職昇格レベル)

随時改定の対象となり、7月分から社保料改定(8月給与から反映)。

段階期間額面増社保料増雇用保険・所得税増住民税増手取り増
第1段階4月〜7月+30,000円0円-1,680円0円+28,320円
第2段階8月〜翌5月+30,000円-4,242円(2等級UP)-1,668円0円+24,090円
第3段階翌6月〜+30,000円-4,242円-1,668円-3,000円+21,090円
  • 1年目: 28,320 × 4 + 24,090 × 8 = 約306,000円
  • 定常状態: 21,090 × 12 = 約253,000円/年

額面年36万円アップに対し、定常状態の手取り率は70%。昇給幅が大きくなるほど社保料・住民税の累進が効き、手取り率は下がる。

パターン3: 月+5万円昇給(転職などでの大幅アップ)

段階期間額面増社保料増雇用保険・所得税増住民税増手取り増
第1段階4月〜7月+50,000円0円-3,200円0円+46,800円
第2段階8月〜翌5月+50,000円-7,070円(3等級UP)-3,140円0円+39,790円
第3段階翌6月〜+50,000円-7,070円-3,140円-5,000円+34,790円

定常状態の手取り増: 月約34,800円 → 年約417,000円

額面年60万円に対し手取り率約70%。所得税の累進税率(10%→20%帯)に乗ると、さらに手取り率が下がるケースもある。

詳細は年収から手取り計算シミュレーターで、昇給後の年収を入力すると手取り総額が計算できる。

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5月にやるべき4つのアクション

タイムラグを理解したら、5月のうちに先回りして動いておくと、9月・翌6月の「手取りダウン」に慌てなくて済む。

アクション1: 「9月以降の手取り増」を先取り貯蓄に設定する

5月〜8月の手取り増(月14,160円のうち、たとえば3,000円)を先取りで別口座に振り分ける。9月以降の社保料増(月1,414円)と翌年6月以降の住民税増(月1,500円)を相殺する原資にできる。

「9月になったら自然に手取りが減る」という事実を、家計に予告しておく感覚だ。

アクション2: 5月給与明細で「等級」を確認する

給与明細の控除欄に記載されている社会保険料から、自分の標準報酬月額(等級)を逆算できる。

```
健康保険料 ÷ 4.99% = 標準報酬月額(東京・40歳未満の場合)
```

例: 健康保険料が16,467円なら、16,467 ÷ 0.0499 = 約330,000円(22等級)。

これと4月の昇給後の月収を比較すると、9月の改定で何等級上がるかが事前にわかる。

アクション3: ふるさと納税の上限を再計算する

昇給で年収が上がると、ふるさと納税の上限額も変わる。年収500万円→518万円なら、上限は約61,000円→約66,000円程度(独身・社保込みで試算)。

ふるさと納税限度額シミュレーター で再計算しておくと、年末に駆け込みで枠を使い切る必要がなくなる。

アクション4: NISAの月額積立を増額する

月の手取りが+1.4万円〜+4.7万円増える時期(4月〜8月)を活かして、NISA積立額を1万円〜3万円増やす。9月以降に手取りが減っても、すでに自動引き落としに組み込まれていれば「気づかないうちに増額」が定着しやすい。

新NISAの年間枠(つみたて120万円+成長240万円)にまだ余裕があるなら、昇給は積立増のチャンスでもある。

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「手取り率」が悪化していく境界線

昇給幅が大きいほど手取り率が下がる、という傾向には明確な境界がある。

昇給後の年収適用される所得税率想定される手取り率
〜330万円5%約80%
330〜695万円10%約75%
695〜900万円20%約68%
900〜1,800万円23〜33%60〜65%
1,800万円超40〜45%50〜55%

年収695万円・900万円の壁を越えると、所得税率が一気に上がる。「ここを少しだけ越える昇給」だと、超過分の手取り率が大幅に下がる現象が起きる。

詳しい影響は昇給インパクトシミュレーターで、現在年収と昇給額を入力すると壁越えの影響が可視化できる。

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「年金が増える」というプラス面も忘れない

社保料が上がるのは目先のマイナス、だが厚生年金保険料が増える=将来の年金額が増える

簡略式(厚生年金の報酬比例部分):
```
将来の年金月額の増加分(概算)
≒ 標準報酬月額の増加 × 0.005481 × 加入年数
```

  • 20,000 × 0.005481 × 20 = 月約2,192円の年金増(65歳以降終身)
  • 90歳まで25年受給すると累計約66万円の年金増

つまり、月の社保料増約4,000円(労使折半後本人負担分)は、完全な「コスト」ではなく一部は将来の年金原資でもある。同時に厚生年金シミュレーターで将来分の試算もしておくと心理的に納得しやすい。

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まとめ・5月にチェックすべきポイント

5月にやることの優先順位を整理して終わる。

  1. 5月25日前後: 給与明細で4月昇給の手取り増を確認
  2. 6月: 標準報酬月額(等級)を控除欄から逆算し、9月の社保料改定幅を予測
  3. 6月中旬: 住民税決定通知書を受け取り、翌年5月までの月額を確認(詳細はこちら
  4. 9月末: 9月分社保料が反映された10月給与の手取りを確認・記録
  5. 翌6月: 住民税改定後の手取りを確認し、年間ベースの「真の昇給メリット」を確定

「昇給した!」という瞬間の高揚感は1ヶ月でリセットされる(行動経済学で「快楽順応」と呼ばれる)。事前にタイムラグを知っておけば、9月の給与明細でショックを受けず、翌年6月の住民税アップにも備えられる

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よくある質問

Q. 昇給直後の所得税はどう計算されますか?

毎月の所得税(源泉徴収)は「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」で、その月の社会保険料控除後の給与額と扶養人数から決まります。4月昇給直後の場合、社保料は旧等級(前年算定)のままなので、社保料控除後の額が大きくなり所得税も増えます。9月以降は社保料が上がる分だけ控除が増えて、所得税はわずかに下がります。年末調整で年間ベースの確定額に精算されるため、毎月の差額は誤差の範囲です。

Q. パートやアルバイトでも社保料の改定タイミングは同じですか?

社会保険に加入しているパート・アルバイト(週20時間以上・月収8.8万円以上など)であれば、定時決定・随時改定のルールは同じです。社保未加入(扶養内)のパートには適用されません。ただし扶養内パートでも、年収106万円・130万円の壁を越えると社保加入義務が発生し、その時点から控除が始まります。

Q. 4月昇給ではなく10月昇給の場合、タイムラグはどうなりますか?

10月昇給の場合、定時決定(翌4-6月平均→翌9月反映)まで11ヶ月のタイムラグがあります。住民税の改定は翌々年6月(19ヶ月後)になります。10月昇給は4月昇給よりタイムラグが長く、「手取り増の実感期間」が長いという見方もできます。ただし固定賃金の変動が大きければ随時改定で4ヶ月後改定の可能性もあります。

Q. 昇給した分は何に使うのが一番効率的ですか?

優先順位は家計状況によりますが、一般論として①生活防衛資金(生活費6ヶ月分)が不足していれば現金積立、②不足ないならNISA積立増額、③高金利のローン(カードリボ・教育ローン)があれば繰上返済、の順が効率的です。住宅ローン(金利1%台)の繰上返済より、新NISAの長期運用のほうが期待リターンは高い傾向にあります。詳細はNISAとiDeCoの比較もご覧ください。

Q. 計算に使った数値の出典は?

健康保険料率(協会けんぽ東京・9.98%)と介護保険料率は全国健康保険協会「令和6年度保険料額表」、厚生年金保険料率(18.3%)は日本年金機構「厚生年金保険料額表」、所得税の源泉徴収税額表は国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和6年分)」、住民税の標準税率(所得割10%)は地方税法に基づきます。年金額の概算式(0.005481)は厚生年金の報酬比例部分の年額計算式(標準報酬月額×5.481/1000×加入月数÷12)から月額換算したものです。

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