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家族4人・往復700kmのお盆帰省、高速23,080円・下道10,820円・新幹線59,040円——39歳が検算して選んだのは「水曜22時の東北道」だった【ケーススタディ】

東京・足立区から仙台の実家へ帰省する4人家族の交通費を全ルート検算した記録。高速は往復23,080円だが2026年お盆は休日割引が適用除外、下道なら10,820円だが往復10時間増で時給換算1,200円、新幹線は最繁忙期加算で約6万円。燃料と高速代以外の「見えない車のコスト」約8,400円と深夜割引まで織り込み、渋滞予測ピークの8月13日を外す結論に至るまでを数字で追う。

「今年こそ新幹線にしない? 去年、渋滞で7時間かかったよね」

7月中旬の夜、妻にそう切り出されて、藤井さん(仮名・39歳・メーカー営業)はスマホの乗換案内を閉じられなくなった。東京・足立区の賃貸マンションから、実家のある仙台市泉区まで約350km。妻(38歳・時短勤務)、長女(7歳・小2)、長男(3歳)の4人での帰省は今年で5回目になるが、交通手段をちゃんと計算して選んだことは一度もなかった。「車が安いに決まってる」と思い込んでいたからだ。

結論から言うと、車は確かに安かった。ただし「いつ出発するか」で費用も所要時間も大きく変わり、最終的に藤井家が選んだのは8月12日(水)22時に出て深夜の東北道を走るという、5年間一度も考えたことのなかった選択肢だった。検算の過程を順に追う。

前提:藤井家の帰省の条件

  • 家族構成: 夫39歳(年収560万円)、妻38歳、長女7歳(小2)、長男3歳
  • 経路: 足立区の自宅 → 仙台市泉区の実家(door to door 約350km・往復700km)
  • 車: 5年落ちのコンパクトミニバン。実測燃費は高速16km/L、渋滞込みの一般道11km/L
  • 休み: 8月11日(火・祝)〜16日(日)の6日間。滞在は3泊4日の予定
  • ガソリン: レギュラー170円/L(2026年7月時点の全国平均。暫定税率廃止後も中東情勢で補助金が再発動している水準)

まず藤井さんは、候補4ルートの「財布から出ていく金額」を並べるところから始めた。

検算1:4ルートの往復費用と所要時間

手段往復の交通費片道の所要時間備考
車・高速(東北道)23,080円約4.5時間(渋滞時6時間超)お盆は休日割引の適用除外
車・下道(国道4号)10,820円約9〜10時間信号・市街地で燃費悪化
新幹線(はやぶさ)約59,000円約3時間(乗車1.5時間)最繁忙期加算+400円/人
高速バス約35,000〜45,000円約6〜7時間繁忙期料金。3歳連れには過酷

それぞれの中身はこうだ。

車・高速。川口中央ICから仙台宮城ICまでETC料金7,820円。ここに燃料代が乗る。

```
高速代 7,820円 × 往復 = 15,640円
ガソリン 350km ÷ 16km/L × 170円 ≒ 3,720円 × 往復 = 7,440円
合計 23,080円
```

例年なら土日祝は休日割引(30%引き)が使えるが、2026年のお盆は8月8日・9日・11日・15日・16日がすべて適用除外(NEXCO各社発表)。カレンダー上の祝日や日曜に走っても割引はない。

車・下道。国道4号をひたすら北上するルートで、距離はほぼ同じ350km。高速代はゼロになるが、燃費が11km/Lに落ちる。

```
ガソリン 350km ÷ 11km/L × 170円 ≒ 5,410円 × 往復 = 10,820円
```

新幹線。東京→仙台のはやぶさは全車指定席で、通常期11,410円。お盆ピークは最繁忙期にあたり400円増しの11,810円になる。小2の長女は半額(約5,900円)、3歳の長男は膝の上なら無料。

```
大人 11,810円 × 2人 + 小児 5,900円 = 片道29,520円
往復 59,040円 + 都内の在来線 約900円 ≒ 約6万円
```

高速バスは往復でも新幹線の3割安程度まで繁忙期料金で上がるうえ、3歳児と6時間の車内は現実的でない。ここで候補から外れた。

検算2:「下道で12,260円浮く」は時給いくらの労働か

表を見た藤井さんが最初に考えたのは、検索でもよく調べられている「高速と下道、どっちが安いか」だった。差額は往復12,260円。無視できない金額に見える。

ただし下道は片道9〜10時間、高速より往復で約10時間長い。浮いた金額を増えた時間で割ると、

```
12,260円 ÷ 10時間 = 時給約1,200円
```

自分ひとりの移動なら「時給1,200円のアルバイト」と割り切る余地はある。だが今回は家族4人の休暇で、後部座席には3歳児がいる。藤井さんの年収560万円を労働時間2,000時間で割ると時給換算約2,800円。妻の時間と子どもの機嫌まで積むと、割に合わないのは明らかだった。この「浮く金額÷増える時間」の判断は高速 vs 下道 どっちが得?シミュレーターで自分の区間・時間単価に置き換えて計算できる。

下道案は消えた。残るは「車・高速の23,080円」対「新幹線の約6万円」。差額36,000円——ここで妻から鋭い指摘が入る。

検算3:車の費用は燃料と高速代だけではない

「車って、走らせるだけでタイヤとか減るよね。それはタダなの?」

調べてみると、これは正しかった。燃料以外にも走行距離に比例して発生するコストがある。

項目目安根拠
タイヤ約1.5円/km4本6万円 ÷ 寿命4万km
オイル・消耗品約1〜2円/km5,000kmごとの交換費用ほか
車検・整備の距離按分約3〜5円/km走るほど整備項目が増える
減価償却約7〜10円/km車両価格 ÷ 生涯走行距離

減価償却まで含めれば1kmあたり15〜20円、帰省往復700kmで1万円超が「見えないコスト」として乗る。ただし車検や償却は乗らなくても進む部分があるため、藤井さんは追加で発生する分を控えめに12円/kmと置いた。

```
700km × 12円 = 8,400円
車・高速の実質コスト 23,080 + 8,400 = 約31,500円
```

それでも新幹線とは約28,000円の差がある。しかも仙台の実家は駅から遠い泉区の住宅地で、墓参り・買い出し・子どもの着替えを積んだ大荷物と、現地での足を考えると車の利便性は捨てがたい。車の生涯コストの全体像は車の生涯コストシミュレーターで分解できるが、藤井家の結論は「今回は車。ただし渋滞だけは金を払ってでも避けたい」だった。

検算4:渋滞予測とカレンダーで「出発時刻」を最適化する

NEXCOの2026年お盆渋滞予測では、期間中の10km以上の渋滞は全国で436回。下りのピークは8月13日(木)で1日29回、上りは14日(金)・15日(土)に集中する。当初予定していた「13日朝に出発」は、最悪の日の最悪の時間帯だった。去年7時間かかったのも道理だ。

そこで藤井さんはカレンダーを組み替えた。

  • 行き: 8月12日(水)22時出発 → 翌2時すぎ仙台着。子ども2人は出発30分で就寝。渋滞ゼロで走れるうえ、0〜4時に高速を走行するとETC深夜割引(30%)が適用される。休日割引と違い、深夜割引はお盆期間も対象だ(2026年7月時点の現行制度。見直し議論があるため利用前に公式確認を)
  • 帰り: 8月17日(月)に有休を1日足し、朝3時台に仙台発 → 7時半帰宅。上りピークの15・16日を丸ごと回避し、こちらも深夜割引が乗る

```
高速代 7,820円 × 0.7 × 往復 = 10,950円(▲4,690円)
ガソリン 7,440円
往復の現金支出 約18,400円(渋滞込みの当初想定より速く、安い)
```

所要時間は片道4時間フラット。昨年の「13日昼出発・7時間」と比べると、家族4人×往復6時間分の休暇が戻ってきた計算になる。

藤井家の最終比較表

車(当初案: 13日朝発)車(採用: 12日22時発)新幹線
現金支出(往復)23,080円18,400円約59,900円
見えない車コスト+8,400円+8,400円
片道の実質移動時間6〜7時間約4時間約3時間
現地の足親の車を借りる
渋滞・満席リスクほぼなし発売と同時に満席も

なお、これは「実家が駅から遠く、車を持っていて、運転を交代できる」藤井家の最適解であって、万人の正解ではない。条件が違えば結論も変わる。

```
Q1. 現地で車は必要?(駅から遠い・墓参り・大荷物)
├─ 不要 → Q2. 交通費に5〜6万円出せる?
│ ├─ 出せる → 新幹線。時間と体力を金で買う
│ └─ 厳しい → 早朝・深夜発の車 or 高速バスを再検討
└─ 必要 → Q3. 運転を交代できる人がいる?
├─ いない → 新幹線+現地レンタカーの合計額と比較
└─ いる → 車。ただし出発時刻をピークから外す
```

車を持たない家庭が「お盆だけレンタカー」を検討する場合は、繁忙期の割増料金込みでマイカー vs カーシェア・レンタカー比較が使える。新幹線派は、指定席が取れなかったときのために新幹線+宿をまとめた旅行商品という抜け道もあり、単品手配との差は旅行パッケージ vs 個人手配で確認できる。

帰省の出発前チェックリスト

藤井さんが今回の検算で作った、来年も使い回せるリストを最後に載せておく。

  • [ ] NEXCOの渋滞予測カレンダーで自分のルートのピーク日を確認した(毎年7月中旬公表)
  • [ ] 休日割引の適用除外日を確認した(2026年お盆は8/8・9・11・15・16が除外)
  • [ ] 深夜割引(0〜4時・30%)が使える出発時刻を検討した
  • [ ] ガソリンは出発前日までに満タンにした(SAのガソリンは市中より10円/L前後高い)
  • [ ] 下道案は「浮く金額 ÷ 増える時間」で時給換算してから判断した
  • [ ] 新幹線案は最繁忙期加算(+400円/人)込みで見積もった
  • [ ] 交代運転者の保険条件(運転者限定の範囲)を確認した

帰省の交通費は、手段の選択より日時の選択で決まる部分が大きい。「いくらかかるか」を検算したら、次は「いつ動くか」をずらせないか——順番にそう考えるだけで、藤井家の場合は昨年比で約4,700円と往復6時間が浮いた。

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