灯油18L缶2,535円のうち918円は補助金——10月1日の支給額改定を前に、この冬の灯油代を「補助が続く・半減・ゼロ」の3段階で予算化する【2026-27年冬】
9月14日調査の灯油店頭価格は全国平均2,535円/18L。その裏では国の緊急的激変緩和措置が51円/L、18L缶あたり918円を支えている。家計調査2024年の都市別灯油支出、使い方別に必要な缶数の計算式、店頭と配達の差額、買いだめの限度を整理し、10月に決めておく5項目を示す。
918円。
灯油18L缶1本の価格に、いま含まれている国の補助金の額だ。2026年9月17日から30日までの支給額は1Lあたり51.0円で、これに18Lを掛けると918円になる。全国平均の店頭価格2,535円のうち、3分の1強が補助金で支えられている計算になる。
この支給額は2週間ごとに改定され、次の改定は10月1日出荷分からだ。石油ファンヒーターや灯油ボイラーの家庭にとって、10月は「今年は何缶買うのか」「いくら用意するのか」を決める最後の月になる。数字を順に積み上げていく。
9月時点の灯油価格:全国2,535円、北海道2,622円、東京2,566円
資源エネルギー庁「石油製品価格調査」の2026年9月14日調査(税込)では、灯油18Lの価格は以下のとおりだった。
| 地域 | 店頭(18L) | 配達(18L) | 店頭の1L換算 |
|---|---|---|---|
| 全国平均 | 2,535円 | 2,717円 | 約141円 |
| 北海道 | 2,622円 | 2,666円 | 約146円 |
| 青森県 | 2,521円 | — | 約140円 |
| 東京都 | 2,566円 | — | 約143円 |
意外なのは、消費量の多い北海道が東京より高いことだ。灯油は消費地に近いほど安いわけではなく、輸送距離と販売店の競争環境で決まる。
もう一つ見ておきたいのが、昨冬の値動きだ。同じ調査の全国店頭価格は、2026年1月19日に期間最安の2,173円まで下がり、3月16日には期間最高の2,774円まで上がった。冬の途中で600円動いている。「寒くなる前に安いうちに買う」という常識が、昨冬に限っては成り立たなかった。
価格の裏側:51円/Lの緊急補助と10月1日の改定
現在の補助は「中東情勢を踏まえた緊急的激変緩和措置」と呼ばれる制度で、石油元売りに補助金を渡して卸価格を下げ、店頭価格を抑える仕組みになっている。2026年9月10〜11日にサウジアラビアの東西パイプラインがドローン攻撃で停止し、原油価格が急騰したことを受け、9月17日からの支給額は前期の36.0円から51.0円/Lに引き上げられた。制度開始以来の最高額で、ガソリン・軽油・灯油・重油に共通して適用されている。
家計にとって重要なのは、この51円が「原油が高いあいだ店頭価格を一定に保つための変動値」だという点だ。原油が下がれば支給額も減るが、そのとき店頭価格は動かない。価格が跳ねるのは、原油高のまま制度が縮小・終了した場合に限られる。
だから、予算は次の3段階で持っておくのが現実的だ。
| シナリオ | 補助額 | 18L缶の価格(全国平均) | 20缶買う家庭の冬の灯油代 |
|---|---|---|---|
| 補助が続く | 51円/L | 2,535円 | 50,700円 |
| 補助が半減 | 25.5円/L | 2,994円 | 59,880円 |
| 補助がゼロ | 0円 | 3,453円 | 69,060円 |
上振れ幅は20缶で約1.8万円。この幅を「冬の予備費」として別に取っておけば、10月の改定がどちらに転んでも家計は崩れない。
家計調査で見る灯油支出の地域差は最大67倍
総務省「家計調査」2024年(総世帯、都道府県庁所在市別、1世帯当たり年間支出)から、灯油の項目だけを抜き出す。
| 都市 | 年間の灯油支出 |
|---|---|
| 青森市 | 85,531円 |
| 秋田市 | 63,796円 |
| 盛岡市 | 54,364円 |
| 札幌市 | 51,217円 |
| 山形市 | 38,464円 |
| 福島市 | 29,325円 |
| 富山市 | 25,865円 |
| 長野市 | 23,077円 |
| 新潟市 | 12,183円 |
| 全国平均 | 12,280円 |
| 福岡市 | 5,320円 |
| 東京都区部 | 1,267円 |
青森市と東京都区部の差は67.5倍になる。この数字は灯油を使わない世帯も含めた平均なので、実際に使っている世帯の負担はもっと大きい。都市の規模でも差が出ていて、大都市の5,896円に対し、小都市B・町村は26,550円と4.5倍だ。地方の戸建てほど灯油依存度が高い。
札幌市が青森市より少ないのは、札幌のマンションではガスや電気による暖房が普及しているためで、同じ市でも戸建てと集合住宅で灯油の使い方はまったく異なる。
使い方別に「この冬の缶数」を計算する
自分の家の灯油代は、次の式で出せる。
```
冬の灯油代 = 1時間の消費量(L) × 1日の使用時間 × 使用日数 ÷ 18 × 18L缶の価格
```
3.2kW級の石油ファンヒーターは、定格運転で1時間に約0.31Lを消費する(暖房器具コスト比較シミュレーターと同じ前提)。ただし、実際は設定温度に達すると弱運転に切り替わるため、平均消費量は定格の6〜7割、0.2L/h前後に落ち着く。この式で3つの使い方を計算してみる。
パターンA:関東の戸建て、夕方から就寝までの補助暖房
- 0.2L/h × 5時間 × 90日(12〜2月) = 90L = 5缶
- 補助が続く場合:5缶 × 2,566円(東京) = 12,830円
- 補助ゼロの場合:5缶 × 3,484円 = 17,420円
パターンB:東北の戸建て、リビングの主暖房
- 0.25L/h × 10時間 × 150日(11〜3月) = 375L ≒ 21缶
- 補助が続く場合:21缶 × 2,521円(青森) = 52,941円
- 補助ゼロの場合:21缶 × 3,439円 = 72,219円
パターンC:北海道の戸建て、灯油ボイラーで暖房と給湯
暖房と給湯の両方を灯油でまかなう戸建ては、ホームタンク(490Lが一般的)への配達が前提になる。年間消費量はこの記事では1,000Lと置く。家計調査の北海道地方の平均灯油支出67,759円を1L約141円で割ると約480Lだが、これは灯油を使わない世帯も含む平均なので、戸建て・ボイラー世帯の目安として1,000Lは無理のない前提だ。
- 1,000L × 148.1円/L(北海道の配達価格2,666円÷18L) = 148,100円
- 補助ゼロの場合:+51円 × 1,000L = 199,100円
3つを並べると、補助の有無で動く金額は、パターンAで4,590円、パターンBで19,278円、パターンCで51,000円。同じ「補助ゼロ」でも、家計への打撃は地域と使い方で10倍以上違う。
店頭か配達か:差額は全国で1缶182円、北海道は44円
全国平均では、配達2,717円と店頭2,535円の差は1缶あたり182円。パターンBの21缶なら冬全体で3,822円になる。ポリタンクを車に積んでガソリンスタンドへ行く手間と、3,822円を天秤にかけることになる。
一方、北海道の差はわずか44円で、ホームタンクへの配達が標準になっている地域では店頭に行く合理性はほとんどない。
店頭で買う場合の初期費用も見ておく。消防法に適合した18Lポリタンクは1個1,000〜1,500円で、5缶分を一度に運ぶなら5個必要になる。巡回販売車は配達価格と同じか、やや高めに設定されていることが多い。
配達を選ぶなら、申し込みは10月中に済ませておきたい。11月に入ると初回配達まで待たされる地域があり、業者によっては冬季前払いの割引が10月で締め切られる。
買いだめは「2〜3缶」まで
「補助が減る前に買いだめしておく」という発想は、次の2つの理由で限度がある。
- 灯油は変質する。 直射日光や高温で酸化した灯油、前シーズンから持ち越した灯油は、石油ファンヒーターの気化器を詰まらせる原因になる。ダイニチやコロナなど主要メーカーは、購入したシーズン内に使い切ること、持ち越し灯油を使わないことを取扱説明書で注意している。保管は屋内の暗所で、ポリタンクなら1シーズン以内が目安だ。
- 価格は冬の途中でも動く。 昨冬は1月が底で3月が天井だった。10月に大量に買っても、1月に安くなれば損をする。
したがって、去年の残り灯油は使わずに購入店へ処分を依頼し、10月の買い置きは2〜3缶にとどめる。予算は缶で先取りするのではなく、上で示した3段階の金額を口座に置いておくほうが安全だ。
エアコンとの使い分けライン
同じ3.2kWの暖房能力で、1時間あたりの燃料費を比べる。
- 石油ファンヒーター(定格):0.31L × 141円 = 約43.6円/h
- エアコン(10畳用、外気温7℃前後、COP3.5):0.91kW × 31円/kWh = 約28.3円/h
- エアコン(外気温マイナス5℃前後、COP2.0):1.6kW × 31円 = 約49.6円/h
関東の日中や夜間はエアコンのほうが安く、氷点下の朝の立ち上げは石油ファンヒーターが有利という構図になる。立ち上げ30分だけ石油、その後はエアコンに切り替える運転が、東北南部以南では最も燃料費を抑えやすい。エアコンの機種や部屋の広さ別の電気代はエアコン電気代シミュレーター、契約プランの違いは電気代プラン比較シミュレーターで確認できる。灯油とプロパンガスの両方を使う家庭は、ガス代 都市ガスvsプロパン シミュレーターでガス側の負担も並べておくと、冬の光熱費全体が見える。
10月に決めておく5項目
- [ ] 去年の缶数を確認する。 レシートや配達伝票が残っていなければ、上の計算式で概算する。
- [ ] 予算を3段階で決める。 補助が続く・半減・ゼロの金額を書き出し、差額分を冬の予備費として取り分ける。
- [ ] 買い方を決める。 配達なら10月中に申し込む。店頭ならポリタンクの数と保管場所を確保する。
- [ ] 持ち越し灯油を処分し、器具を点検する。 フィルターの清掃、給油ポンプの電池、着火の確認をシーズン前に済ませる。
- [ ] エアコンとの分担ルールを決める。 「外気温5℃以上はエアコン」のように家族で共有できる基準を1つ作る。
FAQ
灯油の価格はどこで確認できますか?
資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」が、毎週月曜日の調査結果を水曜日に公表しています。店頭価格と配達価格の両方が都道府県別に出るので、自分の地域の価格と全国平均の差が分かります。
補助金はいつまで続きますか?
終了時期は決まっていません。支給額は原油価格に応じて2週間ごとに改定され、次回は10月1日出荷分からです。制度が続くかどうかは中東情勢と政府の判断次第なので、この記事では「続く・半減・ゼロ」の3段階で予算を持つことを勧めています。
灯油ボイラーの家は年に何リットル使いますか?
暖房と給湯の両方を灯油でまかなう北海道・東北の戸建てでは、年間1,000〜1,500Lが一般的な範囲です。断熱性能の高い住宅や、給湯だけ電気に切り替えた住宅では700L前後まで下がります。ホームタンクの容量490Lを冬に何回満タンにしたかを数えると、自宅の実績が分かります。
数字が実感と合わない場合は?
灯油の消費量は住宅の断熱性能、部屋の広さ、設定温度、外気温で大きく変わります。この記事の0.2〜0.25L/hは3.2kW級の石油ファンヒーターを温度調節運転した場合の代表値で、寒冷地の大型機種や暖房と給湯を兼ねるボイラーでは消費量が数倍になります。前提を変えても大きくずれる場合は、お問い合わせページからご連絡ください。
この冬の灯油代、3つの数字
| 使い方 | 補助が続く | 補助ゼロ | 上振れ幅 |
|---|---|---|---|
| 関東・補助暖房(5缶) | 12,830円 | 17,420円 | 4,590円 |
| 東北・主暖房(21缶) | 52,941円 | 72,219円 | 19,278円 |
| 北海道・ボイラー(1,000L) | 148,100円 | 199,100円 | 51,000円 |
去年、灯油を何缶買ったか答えられるだろうか。答えられないなら、それが10月最初の宿題になる。