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光熱費

冬の在宅勤務で電気代1.4万円——週4在宅・33歳単身の河野さん(仮名)の1月を分解すると、犯人はエアコンではなく1日4時間の足元ヒーターだった。9,000円の対策で冬4ヶ月に約1.2万円減、会社の在宅勤務手当は「実費精算」より定額のほうが手取りが多い【ケーススタディ】

東京都八王子市の1LDK(40㎡)に住む河野さん(仮名・33歳・社内SE・年収540万円・単身・週4在宅)の1月の電気使用量458kWhを用途別に分解。セラミックヒーター(1,200W)は4時間で月2,530円とエアコン在宅日分の半分を超えていた。デスク下パネルヒーターへの置き換えと窓の断熱で月3,417円、12〜3月で約1.2万円の削減。国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ」の計算式で業務使用分を出すと月1,219円で、定額の在宅勤務手当3,000円(課税後約2,400円)を下回ることも検算した。

「1月の電気代が1万4,000円を超えていて、さすがに見間違いかと思いました。一人暮らしですよ」

河野拓海さん(仮名・33歳)は、去年の冬の検針票を見せながらそう言った。ITの社内SEで、2024年から週4日の在宅勤務になった。夏の冷房では気にならなかった電気代が、冬になって一気に跳ね上がったという。

今年の冬が来る前に、どこにお金が消えていたのかを分解し、何を変えれば、いくら戻るのかを計算した。

河野さんの暮らしの前提

項目内容
年齢・仕事33歳・社内SE(正社員)、年収540万円
家族単身
住まい東京都八王子市の賃貸1LDK(40㎡、LDK約10畳=16.5㎡)、鉄骨造3階建ての2階
働き方月〜木は在宅、金曜は出社。仕事はLDKのダイニングテーブル
エネルギー電気(従量電灯B・40A)、給湯と調理は都市ガス
暖房LDKのエアコン(10畳用)、足元用にセラミックヒーター(強1,200W)
会社の補助在宅勤務手当 月3,000円(定額・給与に上乗せ)

1月(31日)の内訳は、在宅日17日・出社日4日・休日10日。電気代の換算には、家電製品の比較で標準的に使われる目安単価31円/kWh(全国家庭電気製品公正取引協議会)を使う。実際の請求額は基本料金や燃料費調整額で多少ずれるが、用途ごとの大小関係を見るには十分だ。

ステップ1:458kWhを用途別に割り振る

河野さんの1月の使用量は458kWh。家電の消費電力と使った時間から、用途ごとに積み上げると次のようになった。

用途計算使用量電気代
エアコン(在宅日)0.6kW × 15時間 × 17日153.0kWh4,743円
セラミックヒーター(在宅日)1.2kW × 4時間 × 17日81.6kWh2,530円
PC・モニター(在宅日)0.1kW × 9時間 × 17日15.3kWh474円
エアコン(出社日の夜)0.6kW × 5時間 × 4日12.0kWh372円
エアコン(休日)0.6kW × 12時間 × 10日72.0kWh2,232円
冷蔵庫・照明・洗濯・調理家電など4kWh × 31日124.0kWh3,844円
合計457.9kWh14,195円

エアコンの0.6kWは、10畳の部屋を20〜22℃に保ったときの運転中の平均的な消費電力として置いた値だ(定格ではなく、立ち上がり後の平均)。暖房器具の比較シミュレーターの8畳想定0.5kWを、部屋の広さに合わせて2割増やしている。

表を見て、河野さんが最初に反応したのは2行目だった。

「ヒーターは足元だけで、しかも4時間しか使ってないんですけど」

そう、4時間しか使っていないのに、エアコンを在宅日に15時間動かした分の半分を超える2,530円がかかっている。理由は単純で、セラミックヒーターは強運転で1,200W、エアコンの平均0.6kWの2倍の電力を使う。エアコンはヒートポンプで外気の熱を集めるため、使った電気の3〜5倍の熱を出せるが、セラミックヒーターや電気ストーブは電気をそのまま熱に変えるので、効率は1倍にとどまる。「小さい器具ほど安い」という感覚は、暖房では逆になりやすい。

ステップ2:削る候補を3つ並べて、1つ捨てた

候補に挙がったのは3つ。

A. 足元暖房を低消費電力のものに替える
デスク下に置くパネルヒーター(160W)なら、同じ4時間で0.16kW × 4時間 × 17日 = 10.88kWh、月337円。差額は月2,192円。本体は6,000円前後。

B. 窓の断熱でエアコンの負荷を下げる
LDKの掃き出し窓に断熱シートを貼り、カーテンを床まで届く丈に替え、サッシに隙間テープを入れる。冬に室内から逃げる熱の約6割は窓などの開口部から出ていく(日本建材・住宅設備産業協会の試算)ため、ここを塞ぐとエアコンの平均消費電力は下がる。今回は効果を控えめに見て0.6kW→0.5kW(約17%減)と置いた。エアコン全体の使用量は237kWh→197.5kWhで、差は39.5kWh、月1,225円。費用はシートとテープで約3,000円(カーテンは手持ちの丈違いを入れ替え)。内窓(二重窓)まで踏み込んだ場合の回収年数は窓の断熱シミュレーターで比べられるが、賃貸の河野さんは原状回復できる範囲にとどめた。

C. 在宅日の勤務時間はエアコンを切り、こたつと電気毛布でしのぐ
勤務時間9時間分のエアコンを止めると、0.5kW × 9時間 × 17日 = 76.5kWh、さらに月2,372円減る計算になる。

河野さんはCを試しに去年の2月に2日だけやってみたことがあり、「室温が13℃まで下がって、指がかじかんでキーボードが打てなかった」という。世界保健機関(WHO)の「住宅と健康に関するガイドライン」(2018年)は、寒い季節の室温として18℃以上を勧告している。在宅勤務の席で手が冷える状態を続けるのは、節約として成り立たないと判断して外した。

ステップ3:対策後の1月と、冬全体の収支

AとBを採用したときの1月の使用量を計算し直す。

  • エアコン:0.5kW ×(15時間×17日 + 5時間×4日 + 12時間×10日)= 0.5 × 395時間 = 197.5kWh
  • パネルヒーター:10.88kWh
  • PC・モニター:15.3kWh
  • その他:124.0kWh
  • 合計:347.68kWh × 31円 = 10,778円

1月は14,195円 → 10,778円で、月3,417円の減少になる。

冬全体(12〜3月)に引き延ばすには、月ごとの暖房の強さを1月を1.0として、12月0.8・2月1.0・3月0.7と置いた(合計3.5ヶ月分)。暖房と在宅業務に関わる部分だけがこの係数で増減し、冷蔵庫などの「その他」は毎月一定とする。

対策前対策後差
1月の電気代14,195円10,778円−3,417円
12〜3月の電気代合計約51,600円約39,600円約−12,000円
初期費用—約9,000円
1年目の収支約+3,000円
2年目以降毎冬 約+12,000円

計算式で書くと、冬の削減額 = 3,417円 × 3.5 ≒ 11,960円。パネルヒーターと断熱シートの約9,000円は、最初の冬のうちに回収できる。

番外編:在宅勤務手当は「実費精算」に変えたほうが得か

河野さんはもう一つ気にしていた。「会社の在宅勤務手当3,000円は給料扱いで税金がかかる。実費精算にしてもらえば非課税になると聞いたけど、そっちのほうが得なのでは?」

国税庁の「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」は、会社が電気代の業務使用部分を実費で精算する場合、その分は給与として課税しなくてよいとしている。業務使用部分の簡便な計算式は次のとおりだ。

> 1ヶ月の電気料金 × 業務に使った部屋の床面積 ÷ 自宅の床面積 × 在宅勤務日数 ÷ その月の日数 × 1/2

河野さんの1月(対策後)に当てはめると、

10,778円 × 16.5㎡ ÷ 40㎡ × 17日 ÷ 31日 × 1/2 = 約1,219円

対策前の14,195円で計算しても約1,606円にしかならない。最後の「× 1/2」は、在宅勤務中でも電気の半分は生活のために使っているとみなす係数で、ここが効いている。

一方、定額の3,000円は所得税(河野さんの税率帯で10.21%)と住民税(10%)がかかっても、手元には約2,400円残る。社会保険料の対象にもなるが、3,000円の上乗せで標準報酬月額の等級が上がるかどうかは境目次第で、上がらなければ負担は増えない。

方式1月の金額税・社会保険手元に残る額
定額の在宅勤務手当3,000円課税(所得税・住民税で約600円)約2,400円
実費精算(対策前の電気代)約1,606円非課税約1,606円
実費精算(対策後の電気代)約1,219円非課税約1,219円

いちばん電気を使う1月でさえ、定額のほうが多い。春や秋は電気代が下がるので、実費精算の額はさらに小さくなる。「非課税」という言葉の響きに引かれて精算方式の変更を会社に掛け合っても、河野さんの場合は手取りが減るだけだった。会社員が自分で電気代を経費として差し引く方法も、現行の税制では基本的にない(特定支出控除の対象に光熱費は含まれない)。

在宅勤務そのものが出社と比べて家計にどう効いているか——通勤定期の扱いや昼食代も含めた全体像は、在宅勤務と出社のコスト比較シミュレーターで確認できる。

よくある質問

Q. この記事の数字の前提データはどこから?
電気代は全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価31円/kWh(税込)で換算した。エアコン・ヒーター・パネルヒーターの消費電力は、一般的な製品の公表値と運転時の平均的な値をもとにした概算。在宅勤務手当の課税関係は国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」、室温の目安はWHO「Housing and health guidelines」(2018年)による。

Q. 窓の断熱で本当に17%も下がる?
建物の断熱性能、窓の大きさ、方角で大きく変わる。築年数が浅く、すでに複層ガラスの部屋なら効果は小さい。今回は控えめに置いたつもりだが、Bの効果がゼロでもAだけで冬に約7,700円(2,192円 × 3.5)は減る。

Q. エアコンは「つけっぱなし」と「こまめに消す」、どちらがいい?
暖房は立ち上がりで最も電力を使うため、30分〜1時間程度の外出なら付けたままのほうが安いことが多い。部屋の広さや年式別の電気代はエアコン電気代シミュレーターで試算できる。

Q. 電力会社やプランを変えたほうが効く?
単価そのものが下がれば全用途に効く。使用量が冬に400kWhを超える家庭は、従量料金の3段階目(300kWh超)の単価が高いプランだと割高になりやすい。電気料金プラン比較シミュレーターで月の使用量を入れて比べてほしい。ほかの家電の待機・使用電力は家電の電気代シミュレーターで一覧できる。

Q. 数字が実感と合わない場合は?
使用量は検針票(または電力会社のWeb明細)の月間kWhを基準にし、自宅の家電の消費電力と使用時間に置き換えて計算し直してほしい。計算の誤りや前提への疑問があれば、お問い合わせフォームから知らせてほしい。

まとめ:河野さんの冬の「やること・やらないこと」

判断内容効果(12〜3月)
やるセラミックヒーター → デスク下パネルヒーター(160W)約−7,700円
やる窓の断熱シート・隙間テープ・床まで届くカーテン約−4,300円
やらない勤務中にエアコンを切ってこたつ・電気毛布だけにする室温13℃で作業にならない
やらない在宅勤務手当を実費精算に変えてもらう手取りが月約800〜1,200円減る
次にやる電気料金プランの見直し単価次第

河野さんの電気代を押し上げていたのは「在宅勤務そのもの」ではなく、効率1倍の器具を足元に置いていたことだった。冬の電気代が跳ねる家ほど、まず消費電力の大きい小型暖房器具を疑うと、我慢をせずに削れる余地が見つかりやすい。

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