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奨学金の残り285万円を抱えて結婚|年収420万+360万・28歳カップルが繰上返済とNISAのどちらを優先したか【ケーススタディ】

二人合わせて奨学金残285万円・月26,400円返済からスタートした共働き新婚世帯の家計設計。第一種(無利子)と第二種(年0.3%)で繰上返済の損得が逆転する仕組み、月12万円の余剰の振り分け、生活防衛資金・住宅頭金・出産資金の優先順位を、10年後の試算まで実額で追う。JASSO・金融広報中央委員会のデータを基にした共働きカップルのリアルケース。

「結婚式の費用を話し合っていたら、いつのまにか奨学金の残高を見せ合うことになって」

佐藤大輝さん(仮名・28歳)が苦笑いでそう振り返る。2026年4月に入籍したばかりの大輝さんと美咲さん(仮名・27歳)は、東京都下のアパートで新生活を始めた。共働きで世帯の手取りは年約620万円。決して低くはない。それでも二人には、結婚指輪より先に直視しなければならない数字があった——合わせて285万円の奨学金残高である。

このケーススタディは、奨学金を返しながら家計をスタートさせる二人が、「繰上返済を急ぐべきか、それとも投資や貯蓄に回すべきか」という分岐点でどう判断したかを、実際の数字で追ったものだ。同じ悩みを抱える人は少なくない。日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金は、大学生の約2.7人に1人が利用している(出典:JASSO「令和4年度 学生生活調査」)。

二人のプロフィールと家計の出発点

まず、世帯の全体像を整理する。

項目大輝さん美咲さん
年齢28歳27歳
職業機械メーカー営業(勤続6年)医療事務(勤続5年)
年収(額面)420万円360万円
手取り(年)約332万円約288万円
月の手取り約22.5万円約19.0万円
奨学金の種類第一種(無利子)第二種(年0.3%・利息付き)
借入総額230万円245万円
現在の残高120万円165万円
毎月の返済額12,800円13,600円

世帯の月の手取り合計は約41.5万円(ボーナスを除く)。額面の手取りがいくらになるかは、社会保険料や扶養の有無で変わる。二人がまず使ったのは手取り計算シミュレーター共働き世帯の家計シミュレーターで、世帯合算でいくら自由に使えるのかを可視化することだった。

奨学金の返済は二人合わせて月26,400円。これは決して小さくない。手取り月収の約6.4%が、毎月「過去の自分への支払い」に消えていく計算になる。

分岐点:繰上返済を急ぐべきか

新婚旅行から帰った夜、二人の議論は核心に入った。

「ボーナスでまとめて繰上返済して、早く奨学金を消したい」と大輝さん。一方の美咲さんは「それより将来のためにNISAを始めたほうがいいんじゃない?」と主張した。どちらも筋が通っているように聞こえる。

ここで二人が見落としていたのが、第一種と第二種では繰上返済の損得が真逆になるという点だった。

大輝さんの第一種(無利子)の場合

第一種奨学金は無利子だ。つまり、120万円を10年かけて返しても、20年かけて返しても、支払う総額は120万円のまま変わらない。繰り上げて早く返しても、利息が1円も減らない。

```
第一種(無利子)を繰上返済した場合の利息削減額
= 120万円 × 0% = 0円
```

無利子の借金を急いで返すことは、「手元の現金を、増えも減りもしない場所に固定する」のと同じだ。むしろ、その現金を生活防衛資金や年3〜5%の期待リターンが見込める投資に回したほうが、世帯全体では有利になる。第一種は、規定どおり淡々と返すのが合理的——これが一つ目の結論だった。

美咲さんの第二種(年0.3%)の場合

第二種は利息が付く。美咲さんの適用利率は年0.3%(利率固定方式)。残高165万円を予定どおり約10年で返すと、総支払利息はおよそ2.5万円になる。

仮に余剰資金から月3万円を上乗せして繰り上げると、約4年半(55ヶ月)で完済でき、利息はおよそ2万円少なく済む。削減できるのは、10年で2万円台。年0.3%という低金利では、繰上返済の金銭的メリットはこの程度にとどまる。

「月3万円」を10年でどう使うかの比較

そこで二人は、同じ月3万円を「第二種の繰上返済」に充てた場合と、「NISAでの積立投資」に充てた場合で、10年後にどれだけ差が出るかを試算した。

A:繰上返済を優先B:NISA積立を優先
月3万円の使い道第二種を前倒し完済つみたて投資枠で運用
10年後の効果利息を約2万円節約元本360万円+運用益
想定リターン0.3%(回避できる金利)年4%で試算
10年後の到達額―(負債が早く消えるのみ)約442万円(運用益 約82万円)
リスクなし(確実)元本割れの可能性あり

年4%で月3万円を10年間積み立てた場合の試算は次のとおり。

```
月3万円 × 120ヶ月 = 元本 360万円
年4%(毎月複利)で運用 → 約442万円
うち運用益 = 約82万円
```

繰上返済で浮く利息が約2万円、NISAの想定運用益が約82万円。その差はおよそ80万円。第二種の金利0.3%が、投資の期待リターン4%を大きく下回るため、数字の上ではB案に分がある。実際の試算はNISA積立シミュレーターで年率や積立額を変えて確認できる。

ただし、二人はここで一度立ち止まった。投資にはリスクがある。リーマンショック級の下落局面では、10年でも一時的に元本を割る可能性がゼロではない。一方、繰上返済の「利息削減」は確実に手に入る。確実な2万円か、不確実な82万円か——この性質の違いを理解したうえで判断することが大切だ、と二人は考えた。

家計の全体設計:月12万円の振り分け

奨学金の方針が固まったところで、二人は家計の支出を洗い出した。

費目月額
家賃(都下2DK)90,000円
食費50,000円
水道・光熱費18,000円
通信費(2人分)12,000円
奨学金返済26,400円
生命保険・医療保険14,000円
日用品・雑貨15,000円
被服・美容15,000円
交際・娯楽30,000円
交通・ガソリン15,000円
予備費10,000円
支出合計295,400円

手取り41.5万円から支出29.5万円を引くと、毎月の余剰は約12万円。ここに夏冬のボーナス(手取り合計で年約120万円)が加わる。固定費に無駄がないかは固定費見直しシミュレーターで点検した。通信費は二人とも格安SIMに切り替え済みで、ここはすでに絞れていた。

二人が決めた月12万円の配分は、次の3本立てだ。

  • つみたてNISA:月7万円 — 二人の口座で分散。第二種の繰上げより投資を優先する方針を反映
  • 生活防衛資金:月3万円 — 当面は最優先。下記の理由で家計の土台になる
  • 住宅頭金の積立:月2万円 — 5年後をめどに頭金準備

なぜ生活防衛資金が先なのか

投資を優先すると決めたのに、なぜ防衛資金を別枠で積むのか。理由は単純で、急な出費で投資を取り崩すと、最悪のタイミングで売る羽目になるからだ。

二人の現在の貯蓄は80万円。生活費6ヶ月分の目安は約177万円(295,400円 × 6)なので、まだ100万円近く足りない。そこで最初の3年は防衛資金を厚めに積み、目標に届いたらその分をNISAに振り替える計画にした。必要額の目安は生活防衛資金シミュレーターで世帯構成に応じて算出できる。

これから訪れる3つのライフイベント

新婚世帯の家計設計は、目先の収支だけでは終わらない。二人が3年以内に想定しているイベントを並べてみる。

  1. 結婚式・披露宴 — 規模を抑えた会費制で自己負担を圧縮する方針。費用感は結婚費用シミュレーターで把握済み
  2. 第一子の出産 — 出産育児一時金50万円(出典:厚生労働省、2023年4月から1児につき50万円)でほぼ賄える見込み。問題は育休中の収入減
  3. 住宅購入 — 5年後をめどに。頭金は月2万円+ボーナスの一部で準備

特に出産は家計へのインパクトが大きい。美咲さんが育休に入ると世帯収入は一時的に下がるが、育児休業給付金(休業開始から半年は賃金の67%)が下支えになる。この間は奨学金の返済も、JASSOの「減額返還制度」で月々の負担を一時的に半分または3分の1に圧縮できる(返済期間は延びる)。ライフイベントで収入が減る局面では、無理に繰上げず制度を使って返済を緩める——これも二人が学んだ点だ。

1年後:佐藤家のその後

入籍から1年が経った時点での二人の家計は、おおむね計画どおりに進んでいる。

  • 奨学金残高:285万円 → 約253万円(規定返済のみ)
  • 生活防衛資金:80万円 → 約116万円(目標177万円まであと一息)
  • つみたてNISA:評価額 約87万円(元本84万円+含み益)

「繰上返済を急がなかったことに、最初は罪悪感みたいなものがあった」と大輝さん。「でも、無利子と低金利の借金を慌てて返すより、手元の現金を厚くして、その先で投資を育てるほうが自分たちには合っていた。数字で見て納得できたのが大きい」

奨学金は「悪」ではない。返し方を間違えなければ、低金利のレバレッジとして家計に組み込める。大切なのは、自分の奨学金が第一種か第二種か、利率は何%かを把握し、手元資金の使い道として返済が本当に最善かを、ほかの選択肢と並べて比べることだ。

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※本記事の人物・数値は、公的統計を基に構成したモデルケースです。実際の奨学金の利率・返済条件はJASSOの貸与契約や年度により異なります。投資の試算は将来の運用成果を保証するものではありません。

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