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「3人目、産んでよかったね」と言える家計に──第3子誕生で予算を組み直した38歳夫婦の18年プラン【ケーススタディ】

愛知県郊外に暮らす田原健一さん(仮名・38歳・年収560万円)と美咲さん(仮名・35歳・パート)夫婦に、この春3人目が生まれた。児童手当の拡充(第3子は月3万円・高校生年代まで)と2025年度に始まった多子世帯の大学無償化を織り込みつつ、月収41万円・5人家族の家計をどう組み直したか。教育費の山が来る2036〜2043年に向けた18年分の設計図を、6つのシミュレーターを使って具体的な数字で追います。

> 「3人目、ほんとに大丈夫かな。上の2人の教育費だけでもけっこうきついのに」
> 「でも、児童手当って3人目は月3万円になったんでしょ。大学も無償化って聞いたけど」
> 「……その『無償化』、ちゃんと条件あるらしいよ。ちょっと真剣に計算してみよう」

愛知県郊外の戸建てに暮らす田原健一さん(仮名・38歳)と美咲さん(仮名・35歳)夫婦の、3人目が生まれた3月の会話だ。喜びと同じ重さで、家計への不安がやってきた。

この記事は、田原家が6つのシミュレーターを使って「3人目を迎えても回る家計」を組み直し、教育費の山が来る2036〜2043年までの18年プランを作った過程の記録です。制度の数字は2026年5月時点のものを使っています。

田原家のプロフィール

項目内容
夫・健一さん38歳・中堅機械部品メーカー勤務(勤続14年)・年収560万円(月給手取り約27万円+夏冬賞与の手取り合計約110万円)
妻・美咲さん35歳・スーパーのパート(扶養内)・年収約110万円(手取り月約9万円)。3人目の産休明けに復帰予定
子ども長女・芽依ちゃん 9歳(小4)/長男・湊くん 6歳(年長)/次男・蓮くん 0歳(この春誕生)
住居愛知県郊外・建売戸建て(4年前に3,400万円で購入)。住宅ローン残約2,800万円・35年固定金利1.3%・月返済89,000円・完済予定2057年
2台(通勤用の軽1台+ファミリー用ミニバン1台)。地方なので2台体制が必須
貯蓄普通預金320万円/つみたてNISA残高150万円(夫名義・全世界株インデックス)/学資保険2本(芽依ちゃん・湊くん分、各月10,000円・18歳満期で各約220万円受取見込み)
借入住宅ローンのみ。車・カードローンなし
保険夫:収入保障保険(60歳まで・月15万円給付)+火災保険積立。子:自治体の医療費助成(窓口ほぼ無料)

田原家が直面する構造的な論点は3つ。子どもが3人いること(教育費が単純計算で1.5倍では済まず、在学期間が重なる)地方で車2台が固定費に乗ること、そして「3人目だから受けられる支援」には期限と条件があること。この3点を踏まえて試算を始めた。

ステップ1:3人目で「もらえるお金」が実際いくら増えるのか

最初に確認したのは児童手当だ。2024年10月分から制度が大きく変わり、田原家は恩恵を強く受ける側にいる。

  • 所得制限・所得上限が撤廃され、所得に関係なく受給できる
  • 支給対象が「中学生まで」から「高校生年代まで(18歳到達後の最初の3月31日まで)」に延長
  • 月額:3歳未満は第1子・第2子が15,000円、3歳〜高校生年代は10,000円
  • 第3子以降は0歳〜高校生年代まで一律 月30,000円
  • 「第3子」のカウントは22歳到達後の最初の3月31日までの子を上から数える(=大学生年代の兄姉も人数に含める)
  • 支給は年6回(偶数月)に2か月分ずつ

田原家を児童手当シミュレーターに入れると、こうなった。

続柄上の数え方2026年の年齢現行の月額高校卒業までの受給見込み
芽依ちゃん第1子9歳10,000円約110万円(9歳〜18歳)
湊くん第2子6歳10,000円約145万円(6歳〜18歳)
蓮くん第3子0歳30,000円約680万円(0歳〜18歳)
合計月50,000円・年60万円約930万円

ここで美咲さんが気づいた。「もし昔の制度(所得制限あり・中学生まで・第3子は中学まで月15,000円)だったら、うちの受給総額っていくらだったの?」——試算すると約450万円。つまり制度改正によって、田原家は今後約480万円多く受け取れる計算になる。そのほとんどが蓮くん(第3子)分だ。

健一さんの結論:「この月3万円、生活費に溶かしたら意味がない。蓮の児童手当は丸ごと将来用に回す」。これがプランの軸になった。

ステップ2:いま現在の家計は回っているのか

次に、直近3か月の家計簿を集計した。月給だけで見た収支と、賞与込みの年間収支を分けて見るのがコツだ。

田原家の月間収支(賞与を除く)

収入金額
健一さん 月給手取り270,000円
美咲さん パート手取り90,000円
児童手当(月割り)50,000円
収入合計410,000円
支出金額備考
住宅ローン89,000円35年固定1.3%・残約2,800万円
食費72,000円5人家族(乳児含む)・自炊中心
光熱費22,000円電気・ガス・水道
通信費11,000円夫婦スマホ+自宅光+芽依ちゃんのキッズ携帯
保育料(蓮くん・0歳児クラス)30,000円3歳未満は幼児教育無償化の対象外。所得・自治体で変動
日用品・おむつ・ミルク14,000円
子どもの被服費10,000円3人分(お下がり活用)
教育・習い事39,000円学資保険2本20,000円+芽依ちゃん(スイミング+通信教育)11,000円+湊くん(幼稚園の給食費・バス代等の実費)8,000円
車2台維持33,000円ガソリン・任意保険・自動車税・車検積立を月割り
医療費7,000円子は助成で安いが家族5人で通院が多い
保険17,000円収入保障保険+火災保険積立
交際・レジャー・帰省22,000円
NISA(蓮くん分の積立)15,000円ステップ3で詳述
雑費・予備費12,000円
支出合計393,000円

月の余剰は 約17,000円。正直、かなりタイトだ。「これだと家電が壊れたら一発アウトじゃない?」と美咲さん。ここで賞与の出番になる。

年間の賞与の使い道(手取り合計 約110万円)

用途金額
固定資産税130,000円
車検(ミニバン分を年割)・タイヤ・整備80,000円
帰省(年2回・夫婦双方の実家へ)120,000円
家電・住宅修繕の積立100,000円
子どもの進学準備の上乗せ積立100,000円
残り → 貯蓄約570,000円

これを足し上げると、田原家が1年で「将来資金」として積み上げているのは——

```
学資保険(年24万円)+ NISA・蓮くん分(年18万円)+ 進学準備の上乗せ(年10万円)
+ 賞与からの貯蓄(年57万円)+ 月々の余剰(年約20万円)
≒ 年間 約129万円
```

「思ったより貯められてる。でも、これ全部が教育費に消える未来が見える……」と健一さん。実際そのとおりで、ステップ3でその「山」の高さを測った。

ステップ3:教育費の山はいつ・どれくらい来るのか

文部科学省「子供の学習費調査(令和5年度)」と日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査(2023年)」の数字を教育費シミュレーターに入れて、田原家の想定進路(幼稚園〜高校はすべて公立、大学は国公立または私立文系で自宅通学)で子1人あたりを試算した。

段階子1人あたりの目安(田原家の想定)
幼稚園(公立/湊くんは私立だが無償化+実費のみ)約30万円
小学校(公立・給食費・教材費・習い事含む)約210万円
中学校(公立・部活費・塾代含む)約160万円
高校(公立・就学支援金で授業料はほぼ無償・教材費・通学費・塾代)約155万円
大学(国公立・自宅/私立文系・自宅で約690万円)約500〜690万円
子1人合計約1,060〜1,250万円

3人分なら単純計算で約3,200〜3,750万円。ただし2025年度から始まった支援が、ここに大きく効いてくる。

  • 扶養する子が3人以上いる世帯は、所得制限なしで大学・短大・高専・専門学校の授業料・入学金が一定額まで支援される(国の修学支援新制度の上限額まで)
  • 2025年度の支援上限の目安:国公立大学は入学金約28万円・授業料約54万円/年、私立大学は入学金約26万円・授業料約70万円/年
  • 落とし穴:「扶養する子が3人以上」は、制度開始時点の設計ではその年ごとに判定される。上の子が大学を卒業して就職し扶養から外れると、扶養する子が2人になり、在学中の下の子も対象から外れる

田原家でこの条件がどう効くかを年表にした。

西暦(おおよそ)芽依ちゃん湊くん蓮くん扶養している子の数大学無償化の対象
2036年大学1年(19歳)高校1年(16歳)小学4年(10歳)3人芽依ちゃん:対象
2039年大学4年(22歳)大学1年(19歳)中学1年(13歳)3人芽依ちゃん・湊くん:対象
2040年就職・扶養外(23歳)大学2年(20歳)中学2年(14歳)2人湊くん:在学中だが対象外に転落
2045年就職(28歳)就職(25歳)大学1年(19歳)1人蓮くん:最初から対象外の可能性大

つまり、湊くんが無償化を受けられるのは大学1年(2039年)の1年だけ。翌2040年に芽依ちゃんが就職して扶養を外れた瞬間、扶養する子が2人になり、湊くんは在学中でも対象から外れる。蓮くんに至っては、大学に入る2045年には上の2人とも独立しており、最初から対象外になる可能性が高い——3人目支援のはずが、3人目が一番恩恵を受けにくいという皮肉な構造だ。

恩恵が確実に効くのは芽依ちゃんの4年分と湊くんの1年分にとどまる。芽依ちゃん・湊くんが私立文系(自宅通学)に進む想定でも、田原家の実質負担は3人合計でなお約2,900〜3,400万円と見積もった。とくに蓮くんの大学費用(約500〜690万円)は無償化を当てにできないため、全額を自力で用意する前提で組んだ方が安全だ、というのが結論になった。

教育費のピークは、複数の子が高校〜大学に重なる2036〜2043年。なかでも2039年は、芽依ちゃん大学4年・湊くん大学1年・蓮くん中学1年が重なり、無償化で芽依ちゃんと湊くんの授業料は軽くなっても、教科書・通学費・部活費・蓮くんの塾代などで教育関連だけで年130万円超がのしかかる。しかも住宅ローンはこの時点でまだ約18年・年106万円が残っている。

ステップ4:18年プラン──5つの打ち手

田原家がこの山を越えるために決めた打ち手は5つ。

打ち手1:児童手当(年最大60万円)は1円も使わず将来資金へ

蓮くん分の月30,000円はNISAで、芽依ちゃん・湊くん分の合計月20,000円は学資保険の払込にすでに充てている。さらに高校生年代に入ると芽依ちゃん分が「中学までの旧制度なら出なかった分」になるため、それも丸ごと貯蓄へ。18年トータルで約930万円が、生活費に溶けずに教育費の原資になる。

打ち手2:上の2人は学資保険、蓮くんはNISAで使い分ける

芽依ちゃん・湊くんの学資保険(各月10,000円・18歳満期)は、芽依ちゃん分が2035年前後、湊くん分が2038年前後に各約220万円を受け取る設計で、これは継続。一方、蓮くん分は学資保険を契約せずNISAシミュレーターで試算した積立に回す。

```
蓮くん分:新NISA(つみたて投資枠)月15,000円 × 18年
元本:15,000円 × 216ヶ月 = 324万円
18年後の評価額(年4%複利・全世界株インデックス想定):約468万円
(年5%なら約522万円、年2%でも約391万円)
```

学資保険の返戻率(元本の102〜108%程度)と比べ、18年という時間軸ならインデックス投資の期待値が上回る、と判断した。ただし学資保険には「契約者(親)が亡くなったら以後の払込が免除される」保険機能がある——このトレードオフを夫婦で確認したうえで、収入保障保険(夫・月15万円給付)がその役割を兼ねると整理し、蓮くん分はNISAに寄せた。学資保険とNISAのどちらが自分の家庭に向くかは学資保険シミュレーターで返戻率と運用益を並べて見ると判断しやすい。

打ち手3:美咲さんの収入を「子の成長に合わせて」段階的に上げる

  • 〜2031年(蓮くんが小学校入学まで):扶養内パートを継続(年110〜120万円)。130万円の壁を超えると社会保険料負担が発生するため、当面は意識して抑える
  • 2032年〜(蓮くん小学生):パート時間を増やし年収150万円程度へ。社会保険に加入する代わりに将来の年金も増える
  • 2039年〜(蓮くん中学生・教育費ピーク期):可能ならフルタイム転換も視野に年収250万円台へ

教育費の山と世帯収入のピークを意図的に重ねる作戦だ。働き方を変えたときの手取りの変化は手取り計算シミュレーターで、扶養を外れる損益分岐は「年収の壁」を入れて確認した。

打ち手4:住宅ローンの繰上返済は「教育費の山を越えてから」

手元の普通預金320万円のうち一部を繰上返済に回す案も出たが、見送った。理由は、2036〜2043年の教育費ピーク期に手元キャッシュが薄いと、奨学金や教育ローンに頼らざるを得なくなるから。固定金利1.3%という低い利率なら、繰上返済より流動性確保が優先——という結論。教育費ピークを越えた2043年以降、子の独立で家計に余裕が戻ってから繰上返済を再検討する。

打ち手5:「無償化を外れる年」を今からカレンダーに記録する

多子世帯の大学無償化は扶養する子の数が毎年判定される。芽依ちゃんが扶養を外れる見込みの2040年前後を「家計の要注意年」としてカレンダーに登録し、その2〜3年前(2037〜2038年)に進路想定と無償化の継続可否を再確認することにした。外れることが見えたら、その分NISA積立を増額して埋める。

ステップ5:リスクシナリオと打ち手

シナリオ起きたら打ち手
芽依ちゃんが私立理系・下宿(4年で約1,000万円+仕送り月8万円)無償化上限を超える分+生活費の自己負担が一気に増える学資保険220万円+児童手当原資+NISA一部取り崩しで対応。不足分は日本学生支援機構の第一種(無利子)奨学金を併用。教育ローンシミュレーターで借入額と返済負担を事前に確認
健一さんが病気・休職で収入減月給が大きく減る収入保障保険(月15万円給付)でカバー。所得が下がると高校の就学支援金や各種助成はむしろ手厚くなる。児童手当は所得制限がないため影響なし
第1子が扶養を外れた後、第2子・第3子が大学在学中多子世帯無償化の対象から外れる2037〜2038年に再点検。外れる年から逆算してNISA積立を月+5,000〜10,000円増額。下の子の進学を1年ずらして重ならせない選択肢も検討
教育費が想定より膨らみ貯蓄が底をつきそうピーク期の2040年前後まず塾・習い事の優先順位を整理。次に親の生活費(交際費・レジャー)を一時的に圧縮。最後の手段として教育ローン。住宅ローンの繰上返済はこの局面では絶対にしない

田原家が2026年中にやること

  1. 蓮くんの児童手当(偶数月に2か月分=6万円ずつ)が振り込まれたら、NISAの「蓮くん枠」に毎月15,000円を自動積立設定(残りは普通預金の別口座へ)
  2. 蓮くん分の学資保険は契約しない。理由(返戻率・流動性・収入保障保険が払込免除の役割を兼ねる)を夫婦で書き出して共有
  3. 美咲さんのパート:来年から年収120万円程度まで増やす計画を立て、130万円の壁を超えないラインを確認
  4. 多子世帯の大学無償化「扶養3人」要件と、芽依ちゃんが扶養を外れる予定の2040年前後をカレンダーに登録
  5. 5年後(2031年)に家計と進路想定を再シミュレーション。蓮くんが小学校に上がり、美咲さんの働き方が変わるタイミング

---

健一さんは試算を終えてこう言った。「『3人目、大丈夫かな』って漠然と不安だったけど、数字に落としたら——児童手当930万円、学資保険440万円、蓮のNISA約470万円、無償化で芽依と湊の授業料が軽くなる分。意外と道筋は見える。きついのは2036年から2043年あたりの8年間だけ。そこを名前のついた口座で迎え撃てるかどうかだ」

美咲さんが続けた。「『産んでよかったね』って、子どもが大きくなったときに胸を張って言える家計にしたい。そのために今やることが、月3万円の児童手当に手をつけないこと、私が働く時間を子どもの成長に合わせること、住宅ローンを焦って返さないこと——たった3つなら、できる気がする」

3人目を迎える家庭が増える時代に必要なのは、根性論ではなく「いつ・どこに山が来るか」を地図にすることだ。地図さえあれば、児童手当の使い道、保険と投資の使い分け、配偶者の働き方、繰上返済のタイミング——どれも、慌てずに順番に決めていける。

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