教育費が年269万円に達する年がある。42歳・共働き夫婦が12年間の支出を全額シミュレーションした記録【ケーススタディ】
中2と小5の子供を持つ共働き夫婦(世帯年収750万円)が、大学卒業までの12年間で総額約1,710万円の教育費にどう備えるか。月々の家計から年間キャッシュフローまで、5つのシミュレーターで検証したリアルケース。
「子供2人の大学が重なる年、教育費だけで年間300万を超える——本当ですか?」
山田恵子さん(仮名・42歳)がそう尋ねたのは、長女の三者面談で「来年は受験に向けて塾のコマ数を増やしましょう」と言われた帰り道だった。長女は公立中学の2年生。3年後には大学受験が待っている。さらに3歳下の長男もいる。2人分の教育費がどのタイミングでいくら必要なのか——恵子さんは一度も通しで計算したことがなかった。
山田家のプロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 妻・恵子さん | 42歳・事務職パート(年収270万円) |
| 夫・直樹さん | 44歳・メーカー営業(年収480万円) |
| 世帯年収 | 750万円 |
| 長女・美咲 | 14歳(公立中学2年) |
| 長男・翔太 | 11歳(公立小学5年) |
| 住居 | 千葉県船橋市・持ち家マンション(ローン残15年・月8.5万円) |
| 貯蓄 | 650万円(普通預金250万 + 学資保険2本の払込済保険料400万相当) |
| 学資保険 | 長女用200万円(18歳満期:2030年)、長男用200万円(18歳満期:2033年) |
| 負債 | 住宅ローン残高1,400万円のみ |
世帯年収750万円の手取りは約590万円。月に換算すると約49万円だ(手取り計算シミュレーターで算出)。
現在の家計 — 月10万円の黒字に見えるが
恵子さんが家計簿アプリから出した直近6ヶ月の平均支出はこうだった。
| 費目 | 月額 | 備考 |
|---|---|---|
| 住宅ローン | 85,000円 | 残15年・固定金利1.3% |
| 食費 | 68,000円 | 4人家族・外食含む |
| 教育費(長女) | 43,000円 | 塾代30,000 + 学校諸費13,000 |
| 教育費(長男) | 27,000円 | 習い事15,000 + 学校諸費12,000 |
| 通信費 | 14,000円 | スマホ3台 + 自宅回線 |
| 光熱費 | 22,000円 | 電気・ガス・水道 |
| 保険料 | 28,000円 | 生命保険2本 + 医療保険2本 |
| 車関連 | 25,000円 | ローンなし・駐車場+保険+ガソリン |
| 日用品 | 12,000円 | — |
| 被服費 | 15,000円 | 子供の成長期で増加傾向 |
| 交際費・レジャー | 25,000円 | — |
| 夫小遣い | 30,000円 | — |
| 妻小遣い | 15,000円 | — |
| 支出合計 | 409,000円 | — |
| 月の黒字 | 約81,000円 | — |
月8.1万円の黒字。年間にすると約97万円を貯蓄に回せている計算だ。「思ったより余裕があるかも」と恵子さんは感じた。しかし、この数字は現在の教育費——月7万円——が前提である。
12年間の教育費ロードマップ — 本当の姿
恵子さんは教育費シミュレーターで、長女と長男の進路(公立中→公立高→私立大学文系)を1人ずつ試算した。シミュレーターは子ども1人分の計算なので、それぞれの学年別の年間費用に塾・予備校代の見込みを足し、2人分を暦年で並べてみる。できあがった12年間の推移を見て、手が止まった。
| 年 | 長女 | 長男 | 教育費合計 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年 | 中2(47万) | 小5(39万) | 87万円 | — |
| 2027年 | 中3(61万)※塾増 | 小6(43万) | 104万円 | +17万 |
| 2028年 | 高1(65万) | 中1(55万) | 120万円 | +16万 |
| 2029年 | 高2(54万) | 中2(47万) | 101万円 | −19万 |
| 2030年 | 高3(46万) | 中3(61万)※塾増 | 107万円 | +6万 |
| 2031年 | 大1(145万) | 高1(65万) | 211万円 | +104万 |
| 2032年 | 大2(123万) | 高2(54万) | 177万円 | −34万 |
| 2033年 | 大3(123万) | 高3(46万) | 169万円 | −8万 |
| 2034年 | 大4(123万) | 大1(145万) | 269万円 | +100万 |
| 2035年 | 卒業 | 大2(123万) | 123万円 | −146万 |
| 2036年 | — | 大3(123万) | 123万円 | ±0 |
| 2037年 | — | 大4(123万) | 123万円 | ±0 |
| 合計 1,714万円 |
(出典:小中高は文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2026年1月訂正後)の公立の学年別学習費総額。塾代は調査の平均額を含み、中3は学習塾費だけで年34.1万円、高3は20.6万円。高校は2026年度からの就学支援金の所得制限撤廃を反映し、教育費シミュレーターと同じく授業料の平均負担分(年約4.5万円)を差し引いた額。大学は文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査」の私立文系の平均(入学料219,951円・授業料850,392円・施設設備費141,892円)に、日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査」の自宅通学の修学費・課外活動費・通学費(年241,400円)を加えた額)
2031年に長女が大学に入学した瞬間、教育費が107万円→211万円へ跳ね上がる。さらに2034年には長男も大学に入り、年間269万円という最大のピークを迎える。恵子さんが恐れた「年300万円」には届かないものの、月額換算で22.4万円——手取り49万円の46%が教育費に消える計算だ。
12年間の資金繰りシミュレーション
教育費の総額1,714万円に対して、山田家の資金源を整理する。注意したいのは、今の家計にはすでに教育費が月7万円(年84万円)組み込まれていることだ。月8.1万円の黒字はこの教育費を払った後の数字なので、教育費総額をそのまま貯蓄だけで賄う計算にすると二重に数えてしまう。
- 現在の家計に含まれる教育費: 月7万円 × 12ヶ月 = 84万円/年
- 年間貯蓄可能額(現在): 97万円
- 学資保険(長女・2030年満期): 200万円
- 学資保険(長男・2033年満期): 200万円
- 既存の教育用貯蓄: 250万円(普通預金分から充当)
教育費に回せる毎年のお金: 84万円 + 97万円 = 181万円
12年間の合計: 181万×12年 = 2,172万円
+学資保険400万+既存貯蓄250万 = 合計2,822万円
資金源2,822万円 − 教育費総額1,714万円 = 約1,108万円の余裕
総額だけ見れば足りる。問題はタイミングだ。毎年の181万円を教育費が上回るのは、2031年(211万円・30万円の赤字)と2034年(269万円・88万円の赤字)の2年。しかも「毎年コンスタントに97万円を貯蓄できる」という楽観的な前提に立っている。学資保険の満期金(2030年・2033年)を生活費に溶かしてしまうと、2034年の「ダブル大学」時点で資金がショートするリスクがある。そして、この余裕は本来、教育費のピークを越えた後の老後資金の原資でもある。
山田家が選んだ3つの対策
対策1: 恵子さんのパート→フルタイム転換
最もインパクトが大きいのが恵子さんの働き方の変更だ。長男が中学に入学する2028年を目処に、パート(年収270万円)からフルタイム(年収370万円)への転換を計画した。
- 年収増加分: 370万 − 270万 = 100万円
- 手取り増加分(税・社保控除後): 約70万円/年
- 2028〜2037年の10年間で: 70万 × 10年 = 700万円の追加収入
これで12年間の余裕は約1,808万円(1,108万+700万円)に広がり、ピーク年の赤字も吸収できる。ただし社会保険の加入により短期的には手取り率が下がる点は社会保険料シミュレーターで事前に確認した。
対策2: 保険の見直しで月1万円を捻出
現在の保険料月28,000円の内訳を精査した結果、見直し余地があった。
| 保険 | 現在の月額 | 見直し後 | 削減額 |
|---|---|---|---|
| 夫の生命保険(終身) | 12,000円 | 収入保障保険に変更 | −5,000円 |
| 妻の医療保険 | 4,000円 | 高額療養費で対応 | −4,000円 |
| 夫の医療保険 | 5,000円 | 据え置き | 0円 |
| 妻の生命保険(定期) | 7,000円 | 据え置き | 0円 |
| 合計 | 28,000円 | 19,000円 | −9,000円 |
月9,000円 × 12ヶ月 = 年間10.8万円の固定費削減。12年間で約130万円になる。
対策3: つみたてNISAで教育資金を運用
長男の大学入学は2034年——8年後。この時間軸なら投資による資産形成が選択肢に入る。恵子さんは月2万円をつみたてNISAで積み立てることにした。
- 元本: 2万 × 12ヶ月 × 8年 = 192万円
- 運用益(年利3%複利): 約22万円
- 合計約214万円(非課税)
積立投資シミュレーターで複数の利回りパターンを確認し、年利1%(約200万)〜5%(約230万)の幅を把握した。ただし元本割れリスクはゼロではないため、あくまで学資保険400万円への上乗せとして位置づけた。
3つの対策を組み合わせた最終収支
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 教育費総額(12年間) | 1,714万円 |
| 現在の家計に含まれる教育費(84万×12年) | 1,008万円 |
| 既存貯蓄からの充当 | 250万円 |
| 学資保険(2本合計) | 400万円 |
| 年間貯蓄(現行ベース12年) | 1,164万円 |
| フルタイム転換による追加(10年) | 700万円 |
| 保険見直しによる捻出(12年) | 130万円 |
| つみたてNISA運用益 | 22万円 |
| 資金合計 | 3,674万円 |
| 余裕額 | +1,960万円 |
1,960万円の余裕——これは住宅ローンの繰上返済や老後資金に回せる。ピーク時の2034年に一時的な赤字が出ても、他の年の黒字と学資保険の満期金で十分にカバーできる計算だ。
山田家が学んだ3つのポイント
1. 「ダブル大学」の年を逆算する
子供の年齢差が3歳の場合、大学在学期間が1年重なる。この1年のために8年前から準備を始める価値がある。大学学費シミュレーターで国公立・私立別の4年間総額を確認しておくと、目標金額がぶれない。
2. 収入を増やすのが最も確実
節約には限界があるが、収入の増加は教育費の増加スピードを上回れる。パート→フルタイムへの転換は特にインパクトが大きく、年間70万円の手取り増は保険見直し6年分に相当する。
3. 教育費だけを見ない
恵子さんが最後に確認したのは、教育費を払い終えた後の老後資金だ。長男が大学を卒業する2037年、夫は55歳で恵子さんは53歳。定年まで約10年のラストスパートが残っている。この10年で教育費が消えた分(年120〜270万円)を老後資金に振り向けられるかどうかが、次の課題になる。
よくある質問
Q. 子供が私立中学に進学したい場合、どうなる?
私立中学は年間約156万円(文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の学習費総額)で公立(約54万円)の約2.9倍。3年間で約305万円の追加費用が発生する。仮に長男が私立中学を希望した場合、教育費総額は約2,020万円に膨らむ。この差額を中学受験vs公立シミュレーターで試算し、家計への影響を事前に確認すべきだ。
Q. 教育ローンは使うべき?
日本政策金融公庫の「国の教育ローン」は固定金利4.05%(2026年7月時点・保証料別)で最大350万円(自宅外通学等は450万円)まで借りられる。一方、奨学金(日本学生支援機構・第二種)は在学中無利息で、卒業後は利率固定方式で年3.0%(2026年8月貸与終了分・上限)、利率見直し方式で年2.2%程度。緊急時の選択肢として把握しておくのは有効だが、計画的な貯蓄と収入増で対応できるなら借りない方がよい。詳しくは教育ローン比較シミュレーターで返済総額を比較できる。
Q. この記事の教育費データの出典は?
小学校〜高校の費用は文部科学省「子供の学習費調査(令和5年度)」、大学の学費は文部科学省「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査」、通学費等は日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査」を基にしている。塾・予備校の費用は文部科学省調査の学年別「学習塾費」の平均(中3 341,220円・高3 206,454円)を含んでいる。
Q. 高校無償化制度は考慮しているか?
公立高校の授業料(年間118,800円)は就学支援金制度により世帯年収約910万円未満で実質無償。山田家は世帯年収750万円のため対象となる。2026年度からは所得制限も撤廃された。上の試算の公立高校(高1 65万・高2 54万・高3 46万円)は、調査の学年別学習費総額から授業料の平均負担分(年約4.5万円)を差し引いた制度適用後の金額で計算している。
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あなたの家庭の教育費ロードマップは描けているだろうか。子供の年齢と進路を入力するだけで12年分の推移が見える教育費シミュレーターで、まずは「いつ、いくら必要か」の全体像を掴むことから始めてほしい。