水道代の内訳とは|基本料金・従量料金・下水道使用料の3部品を検算式で分解——4人家族の月5,884円はこう決まる【2026年】
水道代は「口径別の基本料金+使うほど単価が上がる従量料金+下水道使用料」の3部品でできている。東京都23区の料金表で4人家族(月23m³)を検算すると月5,884円、うち今夏は基本料金1,287円が無償化で消えている。節水1m³の本当の価値は約333円——風呂・シャワーが家庭用水の4割を占める構造まで、料金表から読み解く。
2026年の夏、東京都の約800万世帯の検針票から基本料金が消えている。都の物価高対策で、6月検針分から4ヶ月間、水道の基本料金(一般的な口径20mmで月1,287円・税込)が無償化されているためだ。2年連続の実施で、4ヶ月合計なら5,148円になる。
ところで——無償化されたその「基本料金」が水道代のどの部分か、説明できるだろうか。電気代やガス代に比べて、水道代は内訳を意識される機会が極端に少ない。請求が2ヶ月に1回で金額感覚が持ちにくいうえ、料金表を見たことがある人はさらに少ない。
この記事では、水道代を構成する3つの部品を東京都23区の料金表で1つずつ分解し、世帯人数別に1円単位で検算する。仕組みが分かると、「節水1m³で浮く金額」が平均単価より大きいことと、どの節水が効いてどれが効かないかまで見えてくる。
水道代の計算式:3つの部品
家庭の「水道代」は、正確には上水道と下水道の合算で、次の構造になっている。
```
水道代 = 基本料金(メーターの口径で決まる固定費)
+ 従量料金(使用量 × 単価。使うほど単価が上がる)
+ 下水道使用料(使った水量と同じ量を流したとみなして計算)
× 消費税10%
```
単価の例はすべて東京都水道局(23区)の料金表を使う。多摩地域の市や他の自治体は体系が異なるが、「固定費+逓増する従量+下水道」という3部品の構造はほぼ全国共通だ。
部品1:基本料金——メーターの「口径」で決まる固定費
使わなくてもかかる固定費で、金額は契約アンペアならぬメーターの呼び径(口径)で決まる。一度に流せる水の太さを買っている、と考えると電気の基本料金とそっくりの構造だ。
| 呼び径 | 月額(税抜) | 主な住まい |
|---|---|---|
| 13mm | 860円 | 築古アパート・単身向け物件 |
| 20mm | 1,170円 | 現在の標準的な戸建て・マンション |
| 25mm | 1,460円 | 2〜3階建てで水回りが多い戸建て |
今夏の東京都の無償化はこの部品だけが対象で、20mmなら月1,287円(税込)× 4ヶ月=5,148円、25mmなら6,424円が自動で引かれる。従量料金と下水道使用料は無償化の対象外なので、「今年の夏は水道タダ」ではない点は注意がいる。
口径は建物の配管で決まっているため、アンペアと違って自分の意思ではほぼ変更できない。固定費の見直し余地がない部品、と割り切ってよい。
部品2:従量料金——「使うほど単価が上がる」逓増制
水道代の心臓部がここだ。電気の三段階料金と同じ思想で、使用量が増えるほど1m³あたりの単価が階段状に上がる逓増制になっている。
| 1ヶ月の使用量 | 単価(税抜・23区) |
|---|---|
| 1〜5m³ | 0円 |
| 6〜10m³ | 22円/m³ |
| 11〜20m³ | 128円/m³ |
| 21〜30m³ | 163円/m³ |
| 31〜50m³ | 202円/m³ |
注目すべきは最初の2段だ。5m³までは0円、10m³までも1m³わずか22円。生存に必要な最低限の水は基本料金だけでほぼ賄える設計になっている。一方で11m³目からは単価が128円へと6倍近く跳ね、21m³目からは163円。つまり家族世帯の水道代は、ほぼ「3段目以降をいくら使ったか」で決まる。
この構造から導かれる実務的な結論は電気と同じで、節水で削れるのは常に一番高い段から。月23m³使う4人家族が1m³減らすと、削れるのは163円の段(+後述の下水道140円)であって、平均単価ではない。
部品3:下水道使用料——「流した量」は測らずに決まる
意外と知られていないが、下水道には専用のメーターがない。上水道で使った量と同じ量を下水に流したとみなして計算される。23区の料金表はこうなっている。
| 1ヶ月の排水量 | 料金(税抜・23区) |
|---|---|
| 0〜8m³ | 560円(定額) |
| 9〜20m³ | 110円/m³ |
| 21〜30m³ | 140円/m³ |
| 31〜50m³ | 170円/m³ |
つまり水を1m³節約すると、上水道の従量料金と下水道使用料が同時に減る。節水効果を上水道の単価だけで考えると、効果を半分近く見落とすことになる。
なお下水道は市区町村ごとの独立採算で、料金差は上水道以上に大きい。庭の散水や打ち水など「下水に流していない」用途でも原則同じだけ課金される(大量に使う事業者には減量認定の制度があるが、家庭ではまず使われない)。
検算:世帯人数別に1円単位で再現する
東京都水道局「生活用水等実態調査」(令和2年度)によると、1ヶ月の平均使用水量は1人世帯8.1m³、2人世帯14.9m³、4人世帯23.1m³。この平均像を上の料金表に通すと、次のようになる(口径20mm・23区)。
4人家族・月23m³の場合
```
基本料金 20mm 1,170円
従量 1〜5m³ 5m³ × 0円 = 0円
従量 6〜10m³ 5m³ × 22円 = 110円
従量 11〜20m³ 10m³ × 128円 = 1,280円
従量 21〜23m³ 3m³ × 163円 = 489円
下水道 0〜8m³ 定額 = 560円
下水道 9〜20m³ 12m³ × 110円 = 1,320円
下水道 21〜23m³ 3m³ × 140円 = 420円
――――――――――――――――――――――――――――
税抜合計 5,349円 × 1.10 = 約5,884円/月(年約70,600円)
```
世帯人数別の早見表
| 世帯 | 月使用量 | 上水道(税込) | 下水道(税込) | 月合計 | 年額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1人暮らし | 8m³ | 約1,360円 | 約616円 | 約1,976円 | 約23,700円 |
| 2人世帯 | 15m³ | 約2,112円 | 約1,463円 | 約3,575円 | 約42,900円 |
| 4人家族 | 23m³ | 約3,354円 | 約2,530円 | 約5,884円 | 約70,600円 |
請求書の金額と合わないと感じたら、まず検針が2ヶ月に1回であることを思い出してほしい。請求額はこの表の約2倍が正常だ。そのうえで今夏の東京都なら、ここから基本料金分(20mmで月1,287円)が引かれている。
節水1m³の本当の価値は約333円
月23m³の4人家族が1m³(1,000L)減らしたときに削れる金額は、
```
従量料金の最上段 163円 + 下水道 140円 = 303円(税抜)
→ 税込 約333円/m³ = 0.33円/L
```
1Lあたり0.33円。この単価だけ見ると「節水しても大したことない」と感じるかもしれない。だが家庭の水はお湯として使う場面が多いため、実際はガス代・電気代が連動して動く。
東京都水道局の用途別調査では、家庭用水の内訳は風呂40%・トイレ21%・炊事18%・洗濯15%。最大勢力の風呂まわりで検算すると——シャワーは1分あたり約12L流れるので、水道・下水道で約4円、これを40℃に沸かす都市ガス代が約6円、合計約10円/分。4人家族が1人1分ずつシャワーを短くするだけで、年間約1.5万円になる。
- 湯船(約200L)1杯の水道代は約67円。シャワー何分と釣り合うかはお風呂 vs シャワー コスト比較で自分の家族構成に合わせて計算できる
- 節水シャワーヘッド(3〜4割減)の回収期間は節水シャワーヘッド元とれ計算で試算できる。水道だけでなくガス代側の削減が効く典型例だ
- 残り湯を洗濯に回すと1回約50L。洗濯コストシミュレーターで1回あたりの水道・電気代を出すと、月々の効果額が見える
- 水道・電気・ガスをまとめて見直す優先順位は水道光熱費まとめて診断が早い
逆に効かないのは「こまめな手洗いを我慢する」類いの我慢節約で、手洗い1回は約1Lなら0.3円。健康リスクに見合わない。単価の高いお湯・長時間流しっぱなしの用途から削るのが、料金表から導かれる正しい順番だ。
なぜ水道代は自治体でこんなに違うのか——そして上がっていくのか
水道は市区町村(または都道府県)ごとの独立採算で運営されていて、日本水道協会の料金調査では、同じ家庭用20m³でも最も安い事業体と最も高い事業体で約8倍の開きがある。水源が近くて人口密度が高い自治体は安く、ダムから遠く人口が散らばる自治体は配管の維持費が重くのしかかるためだ。
そして全国的な傾向として、水道料金は今後上がる方向にある。理由は構造的だ。
- 管路の老朽化——高度成長期に敷設した水道管が更新期を迎え、法定耐用年数40年を超えた管路が全国で約2割に達している
- 人口減少——料金収入は減るのに、管路の長さ(=維持費)はほぼ減らない
- 耐震化投資——能登半島地震でも長期断水が起きたとおり、耐震化率はまだ道半ば
EY Japanと水の安全保障戦略機構の推計(2024年公表)では、2046年度までに全国平均で約48%の値上げが必要とされ、9割超の事業体で値上げが避けられない見通しだ。実際に2025〜2026年にかけて値上げを実施・決定する自治体が相次いでいる。東京都の今夏の無償化と、全国の値上げトレンドは、同じ「水道」でも別のレイヤーの話が同時進行していると理解しておきたい。
ウォーターサーバーやペットボトルとの比較でよく驚かれるが、水道水は1Lで0.33円、500mlペットボトル(約100円)の約600分の1の価格だ。飲み水のコストが気になるならウォーターサーバー vs 水道水で年間差額を見てみると、水道の安さが際立つ。
よくある質問
Q. この記事の前提データはどこから?
料金単価は東京都水道局・東京都下水道局の料金表(23区・2026年7月時点)、世帯人数別の使用量は東京都水道局「生活用水等実態調査」(令和2年度)、用途別内訳は同局の一般家庭水使用目的別実態調査に基づく。基本料金無償化は東京都の2026年度実施分(6月検針分から4ヶ月)の公表内容、値上げ見通しはEY Japan・水の安全保障戦略機構の推計(2024年)を参照した。
Q. 東京以外でもこの計算は使える?
3部品の構造(口径別基本料金+逓増制従量+下水道)はほぼ全国共通だが、単価は事業体ごとに大きく違う。自分の自治体の水道局サイトで料金表を探し、この記事と同じ足し算をすれば再現できる。集合住宅で家賃に水道代が込みの場合や、井戸水・プロパン併用地域は別体系のことがある。
Q. 無償化が終わったらどうなる?
東京都の無償化は6月検針分からの4ヶ月間で、それ以降は通常の請求に戻る。20mmなら月1,287円(税込)が再び乗るので、夏の請求額を基準に秋以降の家計を組むとその分ずれる。電気・ガスの政府補助も同じく夏で切れる予定で、光熱費は秋にまとめて「元の水準」に戻ることは頭に入れておきたい。
Q. 数字が実感と合わない場合は?
検針票(2ヶ月分)を月額に直したか、口径、自治体の料金体系をまず確認してほしい。それでも大きくずれる場合、漏水(トイレの水が止まらない・地中管の劣化)で使用量自体が膨らんでいるケースがある。水道局には漏水減免の制度もある。検針票の使用量を添えてお問い合わせから質問してもらえれば、一緒に検算する。
まとめ:水道代は「3段目」で決まる
| 部品 | 変えられるか | 家計への効き方 |
|---|---|---|
| 基本料金 | ほぼ不可(口径は建物依存) | 固定。今夏の東京は無償化中 |
| 従量料金 | 節水で可 | 3段目(11m³〜)以降が主戦場 |
| 下水道使用料 | 従量に連動して自動で減る | 節水効果は「上水+下水」で見る |
検針票を月額に直し、使用量が世帯人数の平均(1人8m³・2人15m³・4人23m³)とどれだけ離れているかを見る——水道代のチェックは実質これだけでいい。平均を大きく超えているなら、その差はほぼ確実に風呂・シャワーにある。