固定資産税はどう計算されている?|評価額は時価の7割・住宅用地は1/6・新築は3年間半額——納税通知書の数字を根拠から読み解く
毎年届く固定資産税の納税通知書、その金額の根拠を説明できる人は少ない。評価額×1.4%という基本式、土地の評価が時価の7割になる理由、住宅用地の課税標準が1/6になる特例、新築3年間の半額減額、3年ごとの評価替えまで、地方税法の条文と総務省の評価基準に沿って分解する。新築4,000万円の戸建てで年16.2万円→4年目21万円になる計算例つき。
年16万2,000円。この記事で計算例として使う「土地1,800万円+建物2,200万円の新築戸建て」に、購入初年度からかかる固定資産税・都市計画税の合計だ。35年住み続ければ、税額が下がっていくことを織り込んでも総額は優に500万円を超える。住宅ローンの金利には敏感な人でも、この「もう一つの住居費」の計算根拠を説明できる人は少ない。
7月は多くの市町村で固定資産税の第2期の納期にあたる(地方税法第362条の標準納期は4月・7月・12月・2月。東京23区は6月・9月・12月・2月)。手元に納税通知書がある今こそ、その数字がどこから来たのかを分解するのにいい時期だろう。
基本式はシンプル——「課税標準 × 1.4%」
固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・家屋・償却資産の所有者に課される市町村税だ(東京23区のみ都税)。計算の骨格は1行で書ける。
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固定資産税 = 課税標準額 × 税率1.4%(標準税率)
都市計画税 = 課税標準額 × 税率0.3%(制限税率・市街化区域のみ)
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1.4%は地方税法第350条が定める「標準税率」で、財政事情により引き上げている自治体も一部ある。都市計画税は市街化区域内の土地・家屋にだけ上乗せされる税で、0.3%は「これを超えてはならない」上限(制限税率)だ。
問題は、この式の左側にある課税標準額がどう決まるかである。ここに「時価の7割」「1/6特例」「経年減点」という3つの仕掛けが入っており、納税通知書の数字が分かりにくい原因はほぼここに集約される。
土地の評価額は「時価の7割」を目安に作られる
土地の固定資産税評価額は、市町村が総務大臣の定める「固定資産評価基準」に沿って算定する。その水準は、平成6年度の評価替え以降、地価公示価格の7割を目途とすることになっている。
つまり実勢価格1,800万円で買った土地なら、評価額はおおむね1,260万円前後になる。相続税の土地評価に使う路線価が「公示価格の8割」水準であるのと対になる関係で、同じ土地に対して「実勢価格 > 路線価(8割) > 固定資産税評価額(7割)」という3層の値札が付いていることになる。
そして評価額は毎年は見直されない。3年ごとの「評価替え」(基準年度)で洗い替えされ、直近は2024年度(令和6年度)、次回は2027年度(令和9年度)だ。地価が急上昇した地域では、評価替えのたびに税額が跳ねないよう「負担調整措置」で課税標準の上昇がなだらかに抑えられる。近年の都市部の地価上昇分は、こうして数年遅れ・小刻みに税額へ反映されていく。
住宅用地の特例——課税標準が1/6になる
住宅が建っている土地には、固定資産税で最も強力な軽減が入る。
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(住戸1戸あたり200㎡以下の部分) | 評価額の 1/6 | 評価額の 1/3 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額の 1/3 | 評価額の 2/3 |
一般的な戸建ての敷地はほぼ200㎡以下に収まるので、土地の固定資産税は「評価額×1/6×1.4%」で計算されると考えていい。実効税率にすると評価額の約0.23%。土地の税負担が想像より軽いのは、この特例のおかげだ。
逆に言うと、この特例は「住宅が建っていること」が条件になる。家を取り壊して更地にすると特例が外れ、土地の固定資産税は最大で従来の数倍に跳ね上がる。さらに2015年施行の空家等対策特別措置法により、放置された「特定空家」に勧告を受けた場合は家が建っていても特例の対象から除外される。2023年12月の法改正では、その一歩手前の「管理不全空家」も勧告で除外対象になった。「空き家でも壊すと税金が6倍になるから残す」という判断は、もはや安全策ではなくなっている。
家屋の評価は「もう一度建てたらいくらか」×「古さの割引」
家屋の評価額は、購入価格でも建築費でもなく、再建築価格方式で決まる。「同じ建物を評価時点でもう一度建てたら資材費・工賃がいくらかかるか」を評価基準の点数表で積み上げ、そこに築年数に応じた経年減点補正率を掛ける。
- 新築時点の評価額は、実際の建築費のおおむね5〜6割に落ち着くことが多い
- 木造住宅の経年減点補正率は年々下がり、おおむね25年で下限の0.2(2割)に到達する
- 下限があるため、どれだけ古くても家屋の評価額はゼロにならない
ここで注意したいのは、資材費や人件費が高騰すると「再建築価格」自体が上がるため、評価替えの年に築年数が進んだのに評価額が下がらない(据え置きになる)ことがある点だ。この場合は前年度の評価額が据え置かれる仕組みになっており、「古くなったのに税金が下がらない」という感覚のズレはここから生まれる。
新築の減額と、4年目の「値上がり」
新築住宅には、居住部分120㎡相当分までの固定資産税を1/2に減額する特例がある。
| 住宅の種類 | 減額期間 |
|---|---|
| 一般の新築戸建て | 3年間 |
| 3階建て以上の耐火・準耐火建築物(マンション等) | 5年間 |
| 認定長期優良住宅 | 戸建て5年間/マンション等7年間 |
この特例には適用期限があり、これまで2年ごとの税制改正で繰り返し延長されてきた。重要なのは、減額が切れる年に税額が目に見えて上がることだ。「4年目(マンションは6年目)に固定資産税が急に高くなった」という相談の正体は、ほぼこれである。
計算例:土地1,800万円+建物2,200万円の新築戸建て
敷地120㎡・木造110㎡、市街化区域内(都市計画税0.3%)という設定で通しで計算する。
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【土地】評価額 1,800万円 × 0.7 = 1,260万円
固定資産税: 1,260万円 × 1/6 × 1.4% = 29,400円
都市計画税: 1,260万円 × 1/3 × 0.3% = 12,600円
【建物】新築時評価額 2,200万円 × 約55% ≒ 1,200万円
固定資産税: 1,200万円 × 1.4% × 1/2(新築減額) = 84,000円
都市計画税: 1,200万円 × 0.3% = 36,000円(減額対象外)
初年度合計 = 29,400 + 12,600 + 84,000 + 36,000 = 162,000円
```
4年目、減額が終わると建物の固定資産税は全額課税に戻る。経年減点で建物評価額が990万円程度まで下がっていたとしても、建物分は固定資産税138,600円+都市計画税29,700円となり、年間合計は約21万円。3年目までより年5万円近く増える。この「4年目の段差」は新築購入時の資金計画に最初から織り込んでおきたい数字で、住居費全体の見通しは住宅購入予算シミュレーターや住宅維持費シミュレーターで税金・修繕費込みの月額に換算して確かめられる。
なお、タワーマンション(高さ60m超の居住用超高層建築物)では2017年度税制改正により、高層階ほど税負担が重く、低層階ほど軽くなる階層別の補正(1階上がるごとに約0.26%増)が2018年度以降の新築に適用されている。建物全体の税額は変わらず、階の間で配分を変える仕組みだ。
よくある疑問(FAQ)
Q1. この計算の前提データはどこから?
税率・納期・特例は地方税法(第350条・第362条・第702条の4ほか)、評価方法は総務省「固定資産評価基準」、7割評価の水準や新築減額の内容は総務省・東京都主税局の公表資料に基づく。個別の税額は市町村ごとの運用(税率の超過課税、都市計画税の有無)で変わるため、正確な数字は手元の課税明細書が最優先の根拠になる。
Q2. 自分の評価額はどこで確認できる?
毎年春に届く納税通知書に同封の「課税明細書」に、土地・家屋それぞれの評価額と課税標準額が記載されている。毎年4月1日から第1期納期限までは「縦覧制度」で同じ市町村内の他の土地・家屋の評価額と比べることもでき、評価に不服があれば納税通知書の受領後3ヶ月以内に固定資産評価審査委員会へ審査を申し出られる。
Q3. 年の途中で家を買ったら、その年の税金は?
納税義務者はあくまで1月1日時点の所有者(前の売主)だが、実務では引き渡し日を境に日割り計算した「固定資産税精算金」を買主が売主に支払う慣行が定着している。買主本人に納税通知書が届くのは翌年からだ。売却側の税金まわりは不動産売却の税金シミュレーターで手取り額と合わせて確認できる。
Q4. 賃貸には固定資産税がないぶん得なのでは?
大家が払う固定資産税は家賃に織り込まれているので、「賃貸なら無関係」とは言えない。持ち家の総コストを見るときは、ローン返済に固定資産税・修繕費・保険を足した「本当の月額」で比べるのが筋で、賃貸vs持ち家シミュレーターはこの前提で試算できる。マンションか戸建てかで税額の推移が変わる点(マンションは建物比率が高く減価が遅いため税額が下がりにくい)はマンションvs戸建てシミュレーターの比較軸のひとつだ。
Q5. 数字が実感と合わない場合は?
この記事の計算例は標準税率・一般的な評価水準による概算で、自治体の税率、負担調整措置、家屋の構造・仕様によって実際の税額は変わる。手元の課税明細書と大きく食い違う場合や、シミュレーターの結果に疑問がある場合は、お問い合わせフォームから具体的な条件を添えて知らせてほしい。
まとめ——納税通知書を読むための5つの数字
| 項目 | 覚えておく数字 |
|---|---|
| 基本の税率 | 固定資産税1.4%+都市計画税0.3%(市街化区域) |
| 土地の評価水準 | 時価(公示価格)のおよそ7割 |
| 住宅用地の特例 | 200㎡以下は課税標準1/6(都計税1/3) |
| 新築の減額 | 戸建て3年・マンション5年、120㎡相当分まで半額 |
| 評価替え | 3年ごと。次回は2027年度 |
この5つを押さえれば、課税明細書の「評価額」「課税標準額」「税額」の3列がつながって読めるはずだ。まずは今年の納税通知書を開き、土地の課税標準額が評価額のほぼ1/6になっているか——そこから確かめてみてほしい。
出典: 地方税法第350条・第362条・第702条の4/総務省「固定資産評価基準」「固定資産税の概要」/東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」/空家等対策の推進に関する特別措置法(2023年12月改正)