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単身赴任手当3万円では足りなかった|年収680万円・45歳メーカー社員『二重生活』2年間の家計実録【ケーススタディ】

東京の持ち家に妻と子2人を残し、名古屋へ2年の単身赴任。会社からは単身赴任手当3万円+借り上げ社宅。それでも家計は月4.4万円の持ち出しだった——年収680万円・45歳・田所さん(仮名)の二重生活を、住居・食費・帰省・光熱費の増分まで5つのシミュレーターで分解。手当の不足を月2万円まで圧縮した方法も公開する。

単身赴任の辞令が出たとき、田所健一さん(仮名・45歳・精密機器メーカー勤務)が最初に計算したのは「給料がいくら増えるか」だった。

人事から提示された条件は、単身赴任手当 月3万円借り上げ社宅(自己負担は家賃の30%)、そして月2回までの帰省旅費を会社負担。「これだけ出るなら、むしろプラスでは?」——そう思った。

結論から言うと、間違いだった。手当をすべて足しても、田所家の家計は単身赴任前より月4.4万円のマイナスになった。年に直せば約53万円。2年間で100万円を超える。

なぜそうなるのか。「給料が増える話」ではなく「生活が2つに割れる話」として家計を追うと、見えてくるものが違ってくる。この記事は、田所さんの2年間(2026年4月〜2028年3月予定)の実支出を、増えた費用の一つひとつまで分解した記録である。

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田所家のプロフィール

項目内容
夫・健一(45歳)精密機器メーカーの開発職・勤続21年。本社は東京、2026年4月から名古屋支社へ単身赴任(2年予定)
妻・美咲(43歳)食品スーパーでパート勤務・年収110万円(手取り月約9万円)
子ども長男・悠斗(仮名・14歳・中2)、長女・結菜(仮名・11歳・小5)
世帯年収約790万円(夫680万円+妻110万円)
自宅東京都国分寺市・3LDKマンション(持ち家)。住宅ローン残2,200万円・月返済9.2万円
赴任先名古屋市・借り上げ社宅1LDK(家賃相場8.5万円→自己負担30%=25,500円)

ポイントは、東京の家は売れない・貸せないことだ。住宅ローンが残り、家族がそのまま住み続ける。つまり東京の固定費は1円も減らないまま、名古屋にもう一つ生活が立ち上がる。これが二重生活の本質である。

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まず「増えた費用」だけを抜き出す

単身赴任の家計を考えるとき、世帯全体の収支を並べると複雑になりすぎる。田所さんが採った方法は、「赴任で新たに増えた費用」と「赴任で減った費用」だけを差し引きするやり方だった。

名古屋で新たに発生した費用

項目月額内訳・根拠
住居費(社宅自己負担)+25,500円借り上げ1LDK 8.5万円の30%
水道・光熱費+9,000円単身世帯の平均的水準
通信・サブスク重複+4,500円名古屋宅のWi-Fi、NHK受信料の二重払い等
家具・家電の初期費用の按分+5,000円冷蔵庫・洗濯機・寝具など約18万円を3年で按分
帰省の自己負担+手土産+12,000円月2回は会社負担だが、繁忙期の追加帰省と毎回の土産代
小計+56,000円

食費の「二重化」だけは引き算が必要

食費はやや特殊だ。4人家族から1人抜けるので、東京の食費は本人分(およそ月27,000円)減る。一方、名古屋では自炊環境が整わず外食・中食が増え、月45,000円かかった。

```
名古屋の食費 45,000円
- 東京で減った本人分 27,000円
= 食費の純増 +18,000円
```

増えた費用の合計

区分月額
名古屋の生活費(小計)+56,000円
食費の純増+18,000円
増えた費用 合計+74,000円

ここに、単身赴任で減った費用はほぼなかった。東京の住居費も教育費も子ども中心の支出も、家族が残る以上そのまま続くからだ。

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手当を足しても、月4.4万円のマイナス

増えた費用74,000円に対して、会社から出る現金は単身赴任手当の3万円のみ。社宅補助は「家賃8.5万円のうち会社が6万円持つ」形なので、すでに自己負担25,500円として上の表に織り込み済みだ。

```
増えた費用 -74,000円
単身赴任手当 +30,000円
--------------
月々の持ち出し -44,000円
年間 -528,000円
2年間 -1,056,000円
```

田所さんが見落としていたのは、社宅補助は「現金が増える」のではなく「家賃の負担を減らす」だけという点だった。手当3万円という数字だけを見ると黒字に思えるが、生活が2つに割れることで生じる固定費の重複が、それを軽々と上回っていた。

自分の手取りベースで二重生活の余力を測るなら、まず年収から手取り計算シミュレーターで世帯の可処分所得を確認し、家計簿 黄金比率チェックで固定費比率が膨らんでいないかを見るとよい。田所家の固定費比率は赴任後に58%まで上昇していた(健全圏は50%以下)。

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持ち出しを月2万円まで圧縮した3つの手

100万円の持ち出しに気づいた田所さんは、赴任3ヶ月目から見直しに着手した。やったことは派手ではない。

1. 名古屋の食費を「半自炊」に切り替えた(−10,000円)
平日の朝晩を簡単な自炊に変え、外食を週2回までに。家族人数別の適正食費を食費 家族人数別 適正額シミュレーターで確認すると、単身者の適正は月3.5万円前後。45,000円→35,000円は十分現実的なラインだった。

2. 通信とサブスクの重複を解消(−3,000円)
名古屋宅のWi-Fiを大手回線から格安の据え置き型に変更し、東京と重複していた動画サブスクを1本に統合。

3. 帰省を会社規定内に厳守(−7,000円)
「会いたいから」で規定外の帰省を月1回追加していたのをやめ、その分を月1回のビデオ通話と長期休暇のまとめ帰省に振り替えた。

見直し前見直し後
増えた費用74,000円54,000円
単身赴任手当−30,000円−30,000円
月の持ち出し44,000円24,000円
年間528,000円288,000円

2年間の持ち出しは106万円から58万円へ。約48万円を取り戻した計算になる。

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税金まわりで田所さんが確認したこと

二重生活では税制の取り扱いも誤解されやすい。田所さんが事前に確認した3点を挙げておく。

  • 単身赴任手当は非課税ではない。 給与の一部として所得税・住民税・社会保険料の対象になる。額面3万円がまるまる手取りになるわけではなく、手取りベースでは2.2万〜2.4万円程度に目減りする。
  • 帰省旅費は会社規定の実費精算なら非課税の扱いになることが多い(通勤手当に準じる扱い)。自腹で増やした帰省分はもちろん控除対象外。通勤・帰省にかかる非課税枠の考え方は通勤手当の非課税限度額シミュレーターで確認できる。
  • 妻のパート年収110万円は配偶者特別控除の範囲内。 単身赴任で世帯が分かれても、生計を一にしていれば扶養・控除の判定は変わらない。

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FAQ

Q1: 借り上げ社宅と自分で借りる賃貸、どちらが得?
A. 一般には借り上げ社宅が有利だ。会社が法人契約で家賃の大部分を負担し、自己負担分は給与天引きで社会保険料の算定にも影響しにくいケースが多い。自分で借りて住宅手当をもらう方式と比べた損得は社宅 vs 自己賃貸 損得シミュレーターで試算できる。田所家の条件では社宅方式が年14万円ほど有利だった。

Q2: この記事の費用データはどこから?
A. 名古屋宅の家賃は同市の1LDK相場、単身世帯の食費・光熱費は総務省「家計調査(単身世帯)」の水準を参考に、田所家の実支出に合わせて調整している。手当・社宅条件は実在企業の一般的な単身赴任規程をモデル化したもので、金額・自己負担率は会社ごとに大きく異なる。

Q3: 数字が自分の感覚と合わない。なぜ?
A. 二重生活のコストは「東京の家が持ち家か賃貸か」「会社の補助が手当型か社宅型か」「帰省距離」で大きく振れる。東京が賃貸なら家賃を抑えて転居する選択肢もあり、持ち出しは半減することもある。まず家賃の適正額シミュレーターで双方の住居費の妥当性を測り直してほしい。

Q4: 単身赴任中に資産形成はできる?
A. できるが、まず持ち出しの穴を埋めるのが先だ。田所さんは見直しで浮いた月2万円の半分を生活防衛資金に、残りを新NISAの積立に回した。手当だけで黒字だと誤認したまま積立額を増やすと、生活費が赤字補填に消えてしまう点に注意したい。

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この記事のまとめ

単身赴任は「手当がつく=得」ではなく、「生活が2つに割れる=固定費が二重になる」事象だ。田所家のケースが示したのは、次の3点である。

  1. 手当3万円・社宅補助があっても、東京の固定費が減らない以上は持ち出しが出やすい
  2. 増えた費用だけを抜き出して数えると、対策すべき項目が明確になる
  3. 食費・通信・帰省という「生活の習慣」を整えるだけで、持ち出しは半減しうる

辞令を受け取ったら、給料の増減ではなく「家計がいくつに割れるか」から考える。それが二重生活で家計を守る最初の一歩になる。

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