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同棲2年半のカップルが入籍してぶつかった『家計の壁』5つ — 31歳SE×30歳看護師の6ヶ月実録

同棲時代は折半ルールでうまくいっていた。それが入籍後の3ヶ月で崩壊した — 31歳・年収520万円のSEと30歳・年収420万円の看護師が、家計を一本化する過程で衝突した5つの論点と、6ヶ月後にたどり着いた折衷案を、シミュレーターの数字とともに記録する。

「家計を一緒にするって、思っていたより面倒くさかったよね」——入籍4ヶ月目、健太(仮名・31歳)と美咲(仮名・30歳)はリビングでコーヒーを飲みながら、手元のExcelを眺めて苦笑した。

二人は同棲2年半の末、2025年12月に入籍した。同棲時代は家賃も食費も「きっちり折半」で揉めることはなかった。ところが入籍を機に「家計を一つに」と決めた瞬間から、議論は止まらなくなった。

この記事は、二人が入籍前後の6ヶ月で直面した5つの論点を、当事者の視点と具体的な数字で再構成した記録だ。同じフェーズに差し掛かっているカップルにとって、判断の参考になることを願って書いている。

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二人のプロフィール

項目健太(夫)美咲(妻)
年齢31歳30歳
職業システムエンジニア(東京都内・正社員)看護師(東京都内・大学病院・常勤)
額面年収520万円420万円(夜勤手当含む)
手取り月収約32万円約26万円
預貯金280万円210万円
奨学金残債なし約140万円(残り7年)
居住東京都世田谷区・1LDK・家賃13.2万円(同棲中)同左

世帯の額面年収は940万円。額だけ見れば「東京の30代としては中の上」だが、美咲には奨学金の毎月返済(約1.7万円)があり、健太は奨学金こそないものの「結婚後に貯めたかったのは老後資金より住宅頭金」という温度差があった。

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入籍前:同棲2年半の家計はこうだった

二人が同棲を始めたのは2023年5月。当時は「お互いの財布は分けたまま、共通費だけ折半」というルールで運用していた。

同棲時代の月次フロー

費目金額負担方法
家賃(13.2万円)132,000円折半(6.6万円ずつ)
水道光熱費約16,000円折半(8,000円ずつ)
通信費(共通Wi-Fi)5,500円折半
食費(自炊+外食)約60,000円折半
日用品約10,000円折半
共通費合計約223,500円1人約11.2万円

これに加えて、それぞれが自分の趣味、被服費、交際費、奨学金返済(美咲)を個別に管理していた。要するに「同居しているルームメイト」のような構造で、お金の話はほぼゼロでも回っていた。

問題が顕在化したのは、2025年7月。美咲が「そろそろ結婚を意識したい」と切り出した夜、健太が無造作に発した「じゃあ式は〇〇くらいかな?」の一言から、温度差が一気に表に出た。

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壁① 結婚式・新婚旅行・指輪をいくらかけるか

二人が最初に揉めたのは、入籍前後の一時支出だった。健太は「身内だけで小さく」、美咲は「呼びたい人を呼びたい」と希望が分かれた。

結婚式費用シミュレーターで複数パターンを試算したところ、現実的な選択肢は3つに絞れた。

形式ゲスト自己負担額の目安(ご祝儀差引後)
フォトウェディング+食事会親族のみ20名約60万円
一般的な挙式・披露宴60名約180万円
海外挙式(家族のみ)8名約120万円

ゼクシィ結婚トレンド調査2024によると、首都圏の挙式・披露宴の平均自己負担は約168万円(ご祝儀差引後)。二人は議論の末、中間案として「国内60名・規模を絞った披露宴・約180万円」に着地した。これに婚約指輪(35万円)、新婚旅行・台湾4泊(35万円)を加え、入籍前後の一時支出は合計250万円となった。

健太200万円・美咲50万円という分担で合意(年収比に近い形)。これは「割合で持つ」という後の家計ルールの原型になった。

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壁② 家計を一本化するか、二本立てを続けるか

入籍直後、最大の論点が「家計を一つの口座にまとめるか」だった。

ファイナンシャル・プランナーの友人に相談したところ、「カップルによって最適解は違う」と前置きされた上で、よく使われる3パターンを提示された。

  1. 完全合算型:給与は全額共通口座に入れ、お小遣い制で運用。貯蓄は最大化されやすいが、お互いの自由度は下がる
  2. 共通費分担型:共通口座に毎月一定額ずつ入れて固定費を払い、残りは個別管理。同棲時代の延長で揉めにくいが、貯蓄が個別になりやすい
  3. 項目別担当型:家賃は夫、食費は妻、保険は夫、通信は妻……と項目ごとに担当を決める。家事分担と組み合わせやすいが、把握が複雑

二人は、共働き世帯で増えている「②共通費分担型 + 共通貯蓄口座」を選んだ。

共働き家計シミュレーターで、年収比按分と均等折半のキャッシュフロー差をシミュレーションした結果、年収比按分(健太:美咲 = 55:45)の方が、美咲側の手取り余裕が月+1.6万円増え、奨学金返済とのバランスが取りやすいと判明した。

二人が決めた共通口座のルール

  • 健太が月20万円、美咲が月16万円を共通口座に振込(年収比55:45)
  • 共通口座の用途:家賃・水道光熱・通信・食費・日用品・共通の交際費・共通貯蓄
  • 月3万円を「住宅頭金準備」として強制的に積立
  • お互いの個別口座は不可侵。個別の趣味・洋服・付き合いはノータッチ

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壁③ 保険を「世帯」として再設計する

同棲時代、二人とも保険は実家加入時代のまま放置していた。健太は20代前半に営業マンに勧められた終身保険(月1.4万円)、美咲は若年時の医療保険(月3,800円)。世帯化したことで「死亡保障の必要額」が変わったことが論点になった。

生命保険必要額シミュレーターで改めて試算した。

健太の必要保障額(更新後)

  • 想定遺族:美咲(30歳・正社員継続前提)
  • 公的遺族年金:年約100万円(厚生年金加入歴で計算)
  • 美咲の自力収入:年420万円継続可能
  • 必要追加保障:3,000万円(頭金準備〜住宅購入後の住宅費補填まで考慮)

→ 解約返戻金のある終身保険を維持しつつ、収入保障保険(月12万円・60歳まで)を月3,200円で追加加入。終身保険の不足分を補う構造に。

美咲の必要保障額

  • 看護師という安定職、健太の年収が単独でも生活可能
  • 必要死亡保障は最低限(500万円程度)で十分と判断
  • 医療保険のみ継続(月3,800円)。出産時に見直し再評価で合意

世帯の保険料は同棲時代の合計1.78万円から1.51万円に月2,700円減。死亡保障は健太側で約3,000万円アップしながら、トータルコストは下がった。「保険は加入時の設計のまま放置」が損していた典型例だった。

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壁④ 固定費の重複を洗い出す

入籍を機に、二人は固定費見直しシミュレーターで重複・過剰契約を全件確認した。同棲していても見落とされていた重複が思った以上にあった。

見直し前後の月額固定費

項目見直し前見直し後差額
スマホ通信費(健太:大手キャリア)8,800円3,200円(格安SIMへ)-5,600円
スマホ通信費(美咲:中堅キャリア)5,500円3,200円(家族割で揃える)-2,300円
動画サブスク(重複)2,640円(2契約)1,320円(1契約に統合)-1,320円
音楽サブスク(重複)1,960円(2契約)1,580円(ファミリープラン)-380円
ジム会員(健太のみ・美咲は職場ジム)7,800円7,800円0円
電気・ガス(電力会社見直し)16,000円14,200円-1,800円
月額合計42,700円31,300円-11,400円

月1.14万円、年13.7万円の固定費削減に成功。これは住宅頭金積立の月3万円に上乗せされ、年4.4万円ほど積立ペースが加速する原資となった。

総務省「家計調査」(2024年)によれば、世帯の通信費平均は月約1.4万円。見直し後の二人の通信費(6,400円)は平均の半分以下で、よくある削減幅とほぼ同じだった。

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壁⑤ 「将来何にいくら貯めるか」のゴールを揃える

最後にして最も時間がかかったのが、貯蓄の目的合わせだった。

健太は「3年以内に住宅頭金500万円」を最優先。美咲は「5年以内に第一子を望むので教育費の種銭を」という別の優先順位を持っていた。同棲時代はそもそも将来の話を細かくしなかったため、温度差は議論で初めて浮き彫りになった。

家計バランスシミュレーターで複数シナリオを引いた結果、二人は3年スパンの共通貯蓄ゴールを合意した。

二人の3年貯蓄プラン(合意版)

目的期間月額3年後合計
住宅頭金3年5.5万円198万円
出産・育児準備3年2.5万円90万円
旅行・大型支出3年1万円36万円
緊急予備費(生活費6ヶ月分)1.5年4万円→0円72万円(既達)
合計(共通貯蓄)約9〜13万円約396万円

このほかに、新NISAをそれぞれの個別口座で月3万円ずつ(夫婦合計年72万円)継続。住宅取得後に状況を見て積立額を再調整するルールも織り込んだ。

「将来子どもを望む時期がずれていたら?」という問いには、二人で「美咲が33歳になる前後を一旦の目安にする」と決めた。生物学的な現実と、キャリア継続の希望のバランスを取った着地点だった。

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入籍6ヶ月後の家計サマリー

項目同棲時代(合計)入籍6ヶ月後
世帯手取り月収約58万円約58万円
共通固定費約22万円約20.5万円
個別自由費(健太)約8万円約7万円(お小遣い枠)
個別自由費(美咲)約6万円(奨学金除く)約5万円(お小遣い枠)
奨学金返済(美咲)1.7万円1.7万円
共通貯蓄月3万円(おぼろげに)月12〜13万円(明確な目的別)
個別NISA積立月1〜2万円ずつ月3万円ずつ

入籍前と比べて手取り総額は変わらないのに、世帯貯蓄ペースは月+10万円弱上昇した。最大の要因は固定費の見直し(月1.14万円)と、貯蓄目的の明文化(月3→13万円)だった。

そして二人が振り返って一番大事だと思ったのは「お互いに痛みのある支出(趣味の予算カット、サブスク統合、保険見直し)を、議論の上でやった」ということ。一方的な指示で削った費目はゼロ。これが「揉めない家計」の核心だったと、二人は後から気づいた。

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このケースから読み取れる5つの示唆

  • 同棲時代の家計ルールは、入籍時にゼロから設計し直す:環境が変わった時点で、暗黙のルールはほぼ機能しなくなる
  • 年収が違うカップルは「年収比按分」が揉めにくい:完全折半は片方の自由度を奪う
  • 保険は「世帯化したタイミング」で必ず見直す:独身時代の保険は世帯化後に過不足が出やすい
  • 固定費の重複は同棲していても見つかる:通信・サブスク・電気は要注意
  • 貯蓄目的は「金額」ではなく「いつ何のためにいくら」で合意する:抽象論では合意したつもりになっただけで終わる

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関連シミュレーター

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二人にとって入籍は「ゴール」ではなく「家計再設計のスタート地点」だった。この記事を読んでいるあなたが同じフェーズにいるなら、揉めるのを恐れずに全部の数字をテーブルに乗せるところから始めてほしい。曖昧にした項目ほど、後で大きな衝突の火種になる。

健太と美咲の家計簿は、いまも毎月末にリビングのテーブルで開かれる。夫婦の会議は20分ほど。半年前は1時間以上もめていたことを思えば、ずいぶん短くなった。

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