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国民年金だけの自営業夫婦、65歳までに2,500万円|48歳・千葉のフリーランス家計を10年で組み直した記録【ケーススタディ】

個人事業主の夫(48歳)と内職の妻(46歳)。会社員のような厚生年金も退職金もない自営業世帯が、65歳までの17年で老後資金2,500万円をどう積み上げるか。iDeCo・小規模企業共済・付加年金・新NISAの「自営業4本柱」を6つのシミュレーターで具体的に検証した実例。

「会社員と同じ感覚で老後を迎えたら、たぶん詰む」

千葉市稲毛区に住む福島直人さん(仮名・48歳)は、開業10年目のフリーランスWebデザイナーだ。年商650万円・経費80万円。会社員時代の同期と比べても、手取りはほぼ同じ水準まで積み上げてきた。

ところが、今年の正月に妻の美香さん(46歳・経理パート 兼 直人さんの事務代行)と老後の話をした際、初めて愕然とした。

二人の年金見込みは、合計で月10万円に届かない。会社員時代の同期は厚生年金で20万円超を見込んでいるのに、自営業の福島さん夫婦は国民年金のみだ。退職金も当然ない。

この記事は、福島さん夫婦が「自営業の老後」を6つのシミュレーターで分解し、65歳までの17年で2,500万円を積み上げるリアルな10年計画を立てるまでの記録である。

福島さん夫婦のプロフィール

項目直人さん(48歳)美香さん(46歳)
職業フリーランスWebデザイナー(10年目)経理パート + 直人さんの事務代行
年商/年収650万円(経費80万円)パート120万円 + 事務代行36万円
加入年金国民年金(30年予定)国民年金(25年予定)
退職金なしなし
居住地千葉市稲毛区・持ち家戸建(築12年)
住宅ローン残800万円・残期間12年・固定1.1%
子供長女19歳(私立大学2年・自宅外通学)
金融資産普通預金480万円 / 新NISA 220万円 / iDeCo 80万円
加入保険収入保障保険 月8,000円・医療保険 月4,500円

世帯の手取りは概算で年680万円。十分な所得水準だが、老後の備えが「貯金まかせ」だったのが盲点だった。

ステップ1:自営業の年金が「いくら少ないか」を直視する

最初に年金見込み額シミュレーターで、65歳から受け取れる年金額を試算した。

直人さん(自営業30年・国民年金のみ)

```
国民年金(満額40年加入時) : 年847,300円(令和8年度・昭和31年4月2日以後生まれ)
30年加入時の見込み : 年635,475円(=847,300 × 30/40)
月額換算 : 約52,900円
```

美香さん(パート25年・国民年金のみ)

```
国民年金(25年加入時) : 年529,600円(=847,300 × 25/40)
月額換算 : 約44,100円
```

世帯合計:月約97,100円(年約117万円)

老後の生活費シミュレーターで千葉市・夫婦2人・持ち家・節約志向の暮らしを設定すると、月の支出は約24万円と算出された。年金だけでは月14万円超の不足になる。

90歳まで25年を見込むと、不足総額は約4,300万円にもなる。これに葬儀・墓代や住宅修繕の予備費を加えると、5,000万円が必要だ。

「全部用意するのは無理にしても、4本柱でどこまで届くか試算してみよう」——夫婦の方針は、退職金がない自営業ならではの4つの老後制度の総動員に決まった。

ステップ2:自営業の「老後資金4本柱」とは

自営業者には、会社員にはない自前の年金・退職金制度が4つ用意されている。

制度上限主な税優遇受け取り
iDeCo(個人型確定拠出年金)月68,000円全額所得控除60歳以降に一時金/年金
小規模企業共済月70,000円全額所得控除廃業/65歳で共済金
付加年金月400円65歳から終身(200円×納付月)
新NISA(つみたて投資枠)年120万円運用益非課税いつでも引き出し可

直人さんがこれまで使っていたのは、iDeCoの月23,000円(会社員時代の名残)と新NISAの月3万円のみ。枠を半分以上使っていなかったことが、計画初日に分かった。

ステップ3:4本柱の節税効果を試算する

iDeCoシミュレーターで、直人さんが月68,000円(自営業の上限)まで増額した場合の節税額を計算した。

直人さんの所得税率を20%・住民税10%と仮定(課税所得330万〜695万円ゾーン)

制度月額拠出年間拠出年間節税額
iDeCo68,000円81.6万円24.5万円
小規模企業共済30,000円36.0万円10.8万円
付加年金400円4,800円
新NISA50,000円60.0万円(運用益が非課税)
合計148,400円約178万円約35万円

毎月15万円弱の積み立てに対し、所得税・住民税の節税だけで年35万円返ってくる。実質負担は月約11.6万円で済む計算だ。

「この節税額を見ると、やらない理由が逆に説明できない」と直人さんは唸った。

ステップ4:付加年金は400円で「終身2倍返し」

付加年金シミュレーターで確認したが、付加年金は地味だが破壊力が大きい。

```
納付額 :月400円 × 12ヶ月 × 17年 = 81,600円
受給額 :200円 × 204月(17年)= 年40,800円(終身)
```

2年で元が取れて、その後は丸々プラスになる。85歳まで生きれば総額81.6万円の追加収入だ。納付できるのは国民年金第1号被保険者(自営業)だけの特権なので、申し込まない手はない。

夫婦2人で加入すれば月800円で、65歳から終身で年8.16万円の上乗せになる。

ステップ5:65歳時点の積み上げを試算

退職資金シミュレーター新NISAシミュレーターで、17年後の積み上げを試算した。

前提:年利4%(先進国株式インデックスの長期平均-経費率)で運用

制度月額17年後の元本17年後の評価額(年利4%)
iDeCo(既存80万 + 月6.8万追加)68,000円1,468万円約2,090万円
小規模企業共済30,000円612万円約665万円(予定利率1%の複利概算)
新NISA(既存220万 + 月5万追加)50,000円1,240万円約1,850万円
付加年金(夫婦)800円16.3万円65歳から年8.16万円終身
17年後の金融資産約4,600万円

※評価額は「既存残高×1.04^17 + 年間積立×年金終価係数」の年次複利で概算した検算値。毎月積立の月次複利ではもう少し大きくなる。小規模企業共済の共済金は掛金納付月数に応じた基本共済金の定めによるため、予定利率1%の複利はあくまで目安。

目標2,500万円は大幅に超える数字だ。ただし「全部リスク資産で運用すれば」の話で、実際は60歳前後から債券比率を上げる必要がある。

「目標は超えたけど、これで安心と思うのは早い」——美香さんが現実的な指摘をした。次に検証したのは、老後20年〜30年の取り崩しだ。

ステップ6:取り崩し計画は「定額より定率」

直人さんは漠然と「月15万円ずつ取り崩す」と思っていたが、これは典型的な失敗パターンらしい。インフレで資産が目減りするうえ、長生きリスクに弱い。

そこで採用したのが、運用しながら定率(4%ルール)で取り崩す方法だ。

```
65歳時点の資産:4,600万円
4%ルール :年184万円(月15.3万円)取り崩し
+ 国民年金 :年117万円(月9.7万円)
+ 付加年金 :年8.2万円
─────────────────────────────────
月収換算:約25.7万円(90歳まで枯渇しない試算)
```

老後の生活費シミュレーターで再計算した「夫婦2人・千葉・持ち家・節約志向」の月支出24万円を、約1.7万円上回る。インフレ年2%・運用4%なら計算が合う。取り崩し方式ごとの資産寿命の違いは資産取り崩しシミュレーターで比較できる。

ステップ7:会社員と違う「3つのリスク」に備える

自営業の老後計画には、会社員にはない独自のリスクがある。

リスク1:働けなくなったら収入ゼロ

会社員には傷病手当金(給与の3分の2)が18ヶ月支給される制度があるが、自営業者にはない。福島さんは既に収入保障保険(月8,000円)に加入済みだが、支給開始まで180日の免責期間がある。

そこで緊急予備資金シミュレーターで必要額を試算したところ、千葉市・3人世帯・自営業の場合は生活費の12ヶ月分(約290万円)が推奨と出た。直人さんの普通預金480万円のうち、290万円は「絶対に投資に回さない予備資金」と区別することにした。

リスク2:国民健康保険料が高い

自営業の国保料は会社員の協会けんぽよりも全般に高い。千葉市の試算では、世帯課税所得500万円で年55万円の国保料がかかる。これは老後も継続する固定費だ。

iDeCo・小規模企業共済の所得控除を最大化することは、所得税・住民税だけでなく国保料の圧縮にもなる。所得が下がれば、保険料の所得割も下がるからだ。

リスク3:長女の独立後にも続く「学費」のような支出

大学卒業後も奨学金返済を肩代わりする家庭は多い。奨学金返済シミュレーターで月2万円×15年の返済を試算しておけば、老後資金の取り崩しに食い込まない設計ができる。

福島さん夫婦の10年計画 まとめ

最終的に夫婦が決めた10年(48歳→58歳)の方針はこうだ。

  • iDeCo(直人) : 68,000円(上限)
  • 小規模企業共済(直人) : 30,000円
  • 付加年金(夫婦) : 800円
  • 新NISA : 50,000円
  • 普通預金 : 290万円キープ(生活費12ヶ月)
  • 収入保障保険を継続
  • 妻の医療保険を見直し(月3,500円→2,500円に)

直人さんはノートにこう書き留めた。

> 「老後資金は『退職時に作る』ものではなく、『現役の所得を将来の自分に分配する』もの。自営業は会社が代わりにやってくれないだけで、制度自体は会社員より有利な部分も多い」

自営業の老後設計 チェックリスト

  • [ ] 国民年金の納付月数を「ねんきんネット」で確認した
  • [ ] 付加年金(月400円)に加入した
  • [ ] iDeCoの拠出額が上限(月68,000円)に達しているか確認した
  • [ ] 小規模企業共済を申し込んだ(または検討した)
  • [ ] 新NISAのつみたて投資枠を活用している
  • [ ] 緊急予備資金(生活費12ヶ月分)を別口座で確保した
  • [ ] 退職資金の取り崩し計画(4%ルール等)を試算した

まとめ:自営業は「自前で会社を作る」感覚で

会社員にとっての厚生年金・退職金・健康保険は、自営業者には存在しない。だが、それを補うための制度(iDeCo・共済・付加年金・NISA)は、むしろ自営業者の方が枠が大きく、選択肢が多い

福島さん夫婦のケースは、年商650万円という「自営業としての中堅レベル」での試算だ。この水準でも、枠を使い切れば65歳までに4,000万円超の資産形成が可能と分かった。

老後の不安は、漠然と抱えるよりも、シミュレーターで数字に分解した方がずっと小さくなる。会社員のように自動でお金が積み上がる仕組みがない自営業こそ、シミュレーションを通じて「自前の制度設計」を組み立てる価値がある。

よくある質問(FAQ)

Q1. この記事の数字の前提データはどこから?

A. 国民年金の満額847,300円は厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」(昭和31年4月2日以後生まれ)で、加入年数按分(×30/40等)・付加年金(納付400円/月・受給200円×納付月数)は国民年金法の計算式どおり。iDeCo・小規模企業共済の上限額は国民年金基金連合会・中小機構の公表値。運用シミュレーションの評価額は年利4%・年次複利の概算で、全数値を再現計算で検算している。年金額は毎年度改定されるため、実際の見込みは「ねんきんネット」での確認が確実だ。

Q2. 妻がパートで年収120万円なら、厚生年金に入れるのでは?

A. 勤務先が従業員51人以上(2024年10月〜)で週20時間以上・月額賃金8.8万円以上などの要件を満たせば短時間労働者として厚生年金に加入できる。加入すれば将来の年金は増えるが、手取りは社会保険料分減る。2025年成立の年金改正法で企業規模要件は今後段階的に撤廃される予定なので、美香さんのような働き方は数年内に厚生年金加入が標準になる可能性が高い。

Q3. iDeCoと小規模企業共済、どちらを優先すべき?

A. 節税率は同じ(全額所得控除)なので、資金の流動性で選ぶ。小規模企業共済は掛金範囲内の貸付制度があり、廃業時には共済金として受け取れるため「事業の守り」に強い。iDeCoは60歳まで引き出せない代わりに運用益も非課税。事業資金が不安定なら共済を先に、老後資金と割り切れるならiDeCoを先に埋めるのが定石だ。

Q4. 国民年金の未納期間がある場合はどうすればいい?

A. 追納・任意加入で埋められる場合がある。免除・猶予期間の保険料は10年以内なら追納可能。60歳以降も加入月数480月に達するまで任意加入でき、付加年金も併用できる。年金額は加入月数に比例するため、1年分(約2.1万円/年の増額)でも埋める価値は大きい。

Q5. 数字が自分の状況と合わない場合は?

A. 事業所得の変動・青色申告特別控除の有無・国保料の自治体差などで、節税額や積立余力は世帯ごとに大きく変わる。この記事はあくまで一つのモデルケースなので、各シミュレーターに自分の数字を入れて再計算してほしい。記事の計算に誤りがあると思われる場合はお問い合わせページから連絡いただきたい。

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