離婚のお金完全ガイド|手続き費用100〜300万円・財産分与の請求期限は5年に延長・養育費の受給率は28%——「出ていく・分ける・受け取る・続く」の4層で総整理
離婚のお金は「出ていくお金(弁護士費用・新生活費)」「分けるお金(財産分与・年金分割)」「受け取るお金(慰謝料・養育費)」「続くお金(児童扶養手当・ひとり親控除)」の4層で動く。2026年4月施行の改正民法で財産分与の請求期限は2年→5年に延長、取り決めなしでも請求できる法定養育費も新設された。弁護士費用40〜110万円、年金分割は月2.6万円、児童扶養手当は月48,050円——各層の相場と期限を1本に総整理する。
2026年4月1日、離婚のお金のルールが大きく変わった。改正民法の施行で、財産分与の請求期限は離婚後2年から5年に延長され、取り決めをしないまま離婚しても最低限の養育費を請求できる法定養育費制度が始まった(出典: 法務省「父母の離婚後の子の養育に関するルールが改正されました」)。
一方で、変わらない現実もある。厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査(令和3年度)」によると、母子世帯で養育費を現在も受け取っているのは約28%。取り決めと手続きを知らないまま離婚すると、本来受け取れるはずのお金の大半が動かない。
離婚のお金は種類が多く、しかも動くタイミングがバラバラだ。この記事では全体を4つの層に分けて、相場・計算式・期限を順に整理する。
全体マップ——離婚のお金は4層で動く
| 層 | 中身 | 動くタイミング | 金額の目安 |
|---|---|---|---|
| ① 出ていくお金 | 弁護士費用・裁判所費用・新居の初期費用 | 離婚協議中〜直後 | 数万〜300万円 |
| ② 分けるお金 | 財産分与・年金分割 | 離婚成立の前後(期限あり) | 夫婦の財産の1/2・年金は月数千円〜2.6万円 |
| ③ 受け取るお金 | 慰謝料・養育費 | 離婚成立後〜子が成人するまで | 慰謝料0〜300万円・養育費は総額数百万円 |
| ④ 続くお金 | 児童扶養手当・ひとり親控除・医療費助成 | 離婚後ずっと(毎年手続き) | 年数十万円規模 |
①は一度きりの支出、④は毎年続く収入。金額のインパクトで見ると、実は①の弁護士費用より③④の「取りこぼし」のほうがはるかに大きい。順に見ていく。
① 出ていくお金——手続き費用と新生活費
日本の離婚の約87%は協議離婚、約10%が調停離婚、約3%が裁判離婚。方法によって費用と期間が大きく違う。
| 項目 | 協議離婚 | 調停離婚 | 裁判離婚 |
|---|---|---|---|
| 弁護士費用 | 40〜60万円 | 60〜80万円 | 90〜110万円 |
| 裁判所費用 | 0円 | 約2,650円 | 約19,000円〜 |
| 期間 | 1〜3ヶ月 | 3〜6ヶ月 | 1〜2年 |
| 弁護士なしの場合 | 数万円程度 | 2,650円 | 非推奨 |
弁護士なしの協議離婚なら手続き費用はほぼゼロで済むが、養育費・財産分与の取り決めは公正証書(作成手数料1〜3万円)にしておかないと後の回収で苦労する。収入が一定以下なら法テラスの弁護士費用立替制度(月5,000〜1万円の分割返済)も使える。
見落としやすいのが新生活費だ。家賃8万円の部屋に移る場合、敷金・礼金・引越し・家具家電まで含めて約100万円が必要になる。離婚の方法・子どもの有無・財産の状況を入れた総額の概算は離婚にかかる費用シミュレーターで、離婚後の家賃が収入に見合うかは家賃の適正額シミュレーターで確認できる。
なお、離婚前の別居期間中は、収入が多い側に「婚姻費用」(生活費)の分担義務がある。別居したら生活費はもらえない、というのは誤解だ。
② 分けるお金——財産分与と年金分割
財産分与は「2分の1」が原則、期限は5年に延長
婚姻中に夫婦で築いた財産(預貯金・住宅・婚姻期間分の退職金など)は、名義がどちらでも原則半分ずつに分ける。専業主婦(夫)でも同じだ。結婚前から持っていた財産や、相続・贈与で得た財産は対象外になる。
請求期限は従来「離婚から2年」だったが、改正民法により2026年4月1日以後に成立した離婚から5年に延長された。「まず離婚を成立させて、財産の話は後から」という選択の時間的余裕が広がったことになる。
年金分割——「相手の年金の半分」ではない
年金分割で動くのは婚姻期間中の厚生年金記録だけで、基礎年金・iDeCo・企業年金は対象外。老齢厚生年金の報酬比例部分は次の式で決まる。
平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
婚姻25年(300ヶ月)・平均標準報酬額38万円の専業主婦(夫)ケースで検算すると、分割対象は 38万円 × 5.481/1000 × 300ヶ月 = 年624,834円。その半分の年約31.2万円(月約2.6万円)が増額分だ。共働きで収入差が小さければ月4,000円台ということも珍しくない。
請求期限は離婚の翌日から2年と、財産分与より短い点に注意。自分の年金額のベースは年金受給額シミュレーターで確認しておくと、分割後の見通しが立てやすい。
③ 受け取るお金——慰謝料と養育費
慰謝料は「原因次第でゼロ」もある
| 離婚原因 | 相場 |
|---|---|
| 不貞行為 | 100万〜300万円 |
| DV・モラハラ | 50万〜500万円 |
| 性格の不一致 | 慰謝料なしが多い |
慰謝料は相手の有責行為が前提のため、性格の不一致では発生しないケースがほとんど。請求の時効は離婚成立から3年だ。
養育費——算定表の目安と「法定養育費」
養育費は裁判所の養育費算定表で目安が決まる。子ども1人(14歳以下)・受け取る側の年収200万円の場合、支払う側の年収400万円なら月3〜4万円、600万円なら月5〜6万円が目安。月5万円を10年受け取れば総額600万円——慰謝料よりはるかに大きい。
それでも受給率は約28%にとどまってきた。2026年4月からの法定養育費制度では、取り決めをしないまま離婚しても法律で定める最低限の養育費を請求でき、先取特権(他の債権に優先して差し押さえで回収できる権利)も付く。ただし法定額はあくまでセーフティネットの水準。算定表ベースの適正額を受け取るには、これまでどおり協議・公正証書での取り決めが基本になる。年収と子どもの人数からの目安は養育費シミュレーターで計算できる。
④ 続くお金——ひとり親の公的支援
離婚後の家計を支えるのは、一度きりの財産分与より「毎月・毎年続くお金」だ。
- 児童扶養手当: 令和8年度の全部支給は月48,050円、第2子以降は11,350円ずつ加算。所得に応じて1円刻みで減る一部支給の仕組みで、年収250万円+養育費月4万円なら月24,170円という検算になる(養育費は8割が所得に算入される)。毎年8月の現況届を忘れると11月分から止まる
- ひとり親控除: 所得税35万円・住民税30万円の所得控除。年末調整または確定申告で毎年申告する
- ひとり親家庭医療費助成・就学援助: 医療費の自己負担がほぼゼロになり、給食費・学用品費の支給で年7〜10万円相当になる自治体もある
母子世帯の平均年間収入は約272万円(うち就労収入約236万円)。手当・控除・助成を全部載せると年数十万円規模になり、家計の土台が変わる。支援制度込みの生活設計はひとり親世帯の家計シミュレーターで試せる。
期限の一覧表——「知らずに過ぎた」を防ぐ
離婚のお金は、請求しなければ1円も動かない。最後に期限だけまとめておく。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 財産分与 | 離婚から5年(2026年4月1日以後の離婚。それ以前の離婚は2年) |
| 離婚慰謝料 | 離婚成立から3年 |
| 年金分割 | 離婚の翌日から2年 |
| 児童扶養手当 | 申請の翌月分から支給・毎年8月に現況届 |
| ひとり親控除 | 毎年の年末調整・確定申告で申告 |
よくある質問(FAQ)
離婚のお金は結局、総額いくら動く?
出ていくお金は弁護士ありの協議離婚で50〜100万円、裁判なら100〜200万円に新生活費約100万円が加わる。一方、受け取る側は養育費月5万円×10年で600万円、児童扶養手当が年50万円規模と、「続くお金」のほうが総額では大きい。手続き費用だけを見て弁護士依頼をためらうより、取り決めの質を優先したほうが収支は合いやすい。
この記事のデータはどこから?
改正民法の内容は法務省の公表資料、養育費の目安は裁判所「養育費算定表(令和元年版)」、受給率・平均収入は厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査(令和3年度)」、児童扶養手当はこども家庭庁の令和8年度手当額に基づく。弁護士費用は日本弁護士連合会のアンケートと公開料金の相場だ。
専業主婦(夫)で手元にお金がなくても離婚できる?
別居中は婚姻費用を請求でき、弁護士費用は法テラスの立替制度が使える。財産分与は専業でも原則2分の1、3号分割(2008年5月以降の第3号被保険者期間)は相手の合意なしで年金記録の50%を分割できる。「お金がないから動けない」を前提にしない制度設計になっている。
数字が自分のケースと合わない場合は?
婚姻期間・財産の額・子どもの年齢・自治体の助成内容で金額は大きく変わる。本記事は一般的な相場と計算例で、個別の法律判断は弁護士への相談が確実だ。記事の内容について気づいた点はお問い合わせから知らせてほしい。