共働きと片働きの世帯手取りを比較|500万+350万で年147万円差、2026年10月の106万撤廃と178万円の壁も解説
夫500万円・妻350万円の共働きは、保育料(月6.1万円)や家事外注を引いても片働きより可処分所得が年約147万円多い。妻がパート100万円なら差は約47万円。2026年10月1日の106万円の壁撤廃(週20時間の壁へ)、令和8年分の136万・169万・178万・207万円の壁、130万円の壁で手取りが約27万円減る仕組みと回復ラインを、シミュレーターの再計算値で解説します。
結論:保育料を引いても共働きフルは片働きより年約147万円多い
「保育料がかかるから共働きしても意味がない」という声はよく聞きますが、実際に計算すると結論は逆です。主たる稼ぎ手の年収500万円、1〜2歳の子ども1人の世帯で、配偶者の働き方を3パターン比べると次のようになります(共働き vs 片働きシミュレーターの初期設定。所得税は令和8年分、社会保険は2026年10月以降のルールで計算)。
| 項目 | 共働き(フルタイム) | 共働き(パート) | 片働き |
|---|---|---|---|
| 配偶者の年収 | 350万円 | 100万円(扶養内) | 0円 |
| 世帯年収(額面) | 850万円 | 600万円 | 500万円 |
| 所得税+住民税 | 約51.9万円 | 約28.1万円 | 約28.1万円 |
| 社会保険料 | 約125.1万円 | 約73.6万円 | 約73.6万円 |
| 世帯の手取り | 約673.0万円 | 約498.4万円 | 約398.4万円 |
| 保育料(0〜2歳・国基準の上限) | 月61,000円(年73.2万円) | 月44,500円(年53.4万円) | 0円 |
| 追加費用(家事外注・被服・昼食) | 年54万円 | 0円 | 0円 |
| 可処分所得 | 約545.8万円 | 約445.0万円 | 約398.4万円 |
| 将来の年金(夫婦・年額) | 約331.1万円 | 約273.6万円 | 約273.6万円 |
共働きフルは片働きより年約147.4万円、パートでも約46.6万円多く残ります。しかも保育料がかかるのは子どもが2歳のうちだけです。3歳からは幼児教育・保育の無償化で保育料が0円になるため、10年間の累計差は約2,133万円まで広がります。
主たる稼ぎ手の年収が違う場合
同じ条件(配偶者フル350万円・パート100万円、子1人)で、主たる稼ぎ手の年収だけを変えた結果です。
| 主たる稼ぎ手の年収 | 共働きフル | 共働きパート | 片働き | フルと片働きの差 |
|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 約470.4万円 | 約387.2万円 | 約323.2万円 | 約147.2万円 |
| 500万円 | 約545.8万円 | 約445.0万円 | 約398.4万円 | 約147.4万円 |
| 600万円 | 約618.7万円 | 約519.9万円 | 約473.3万円 | 約145.5万円 |
| 700万円 | 約661.4万円 | 約567.6万円 | 約540.8万円 | 約120.6万円 |
700万円で差が縮むのは、世帯の住民税所得割が増えて保育料の階層が上がり、国基準の上限が月80,000円になるためです。保育料は自治体によって国基準よりかなり安いことが多く、東京都は2025年9月から第1子も0〜2歳の保育料が無償です。東京都の場合、500万円+350万円の可処分所得は約619.0万円になります。
0〜2歳の子どもが2人いる場合
年子で0歳と1歳の2人が同時に保育園に通うケースでは、保育料は1人目61,000円+2人目半額30,500円で月91,500円、年109.8万円になります(国基準の上限)。
| 働き方 | 保育料(年額) | 可処分所得 | 片働きとの差 |
|---|---|---|---|
| 共働き(フル350万円) | 109.8万円 | 約509.2万円 | 約110.8万円 |
| 共働き(パート100万円) | 80.1万円 | 約418.3万円 | 約19.9万円 |
| 片働き | 0円 | 約398.4万円 | — |
パート100万円では、保育料を払うと片働きとの差は年20万円ほどに縮みます。ただし2人とも3歳になれば保育料は0円になり、フルタイム共働きの10年間の累計差は約1,950万円です。「保育料がかかる2〜3年だけを見て仕事を辞める」と、その後の収入と年金の差を取り逃がすことになります。
2026年に変わった「年収の壁」
配偶者がパートで働く場合に意識すべき壁は、2026年に大きく変わりました。2025年までの「106万円」「123万円」「160万円」は、いずれも現行の基準ではありません。
| 壁 | 何が起きるか | 2025年までとの違い |
|---|---|---|
| 週20時間 | 従業員51人以上の会社なら年収に関係なく社会保険に加入 | 106万円(月8.8万円)の賃金要件は2026年10月1日に撤廃 |
| 119万円 | 本人に住民税がかかり始める(1級地の目安) | 110万円から引き上げ(令和9年度分) |
| 130万円 | 社会保険の扶養から外れる | 変わらず(19〜22歳は150万円) |
| 136万円 | 配偶者控除→配偶者特別控除へ切替(控除額は38万円のまま) | 123万円から引き上げ |
| 169万円 | 配偶者特別控除が満額38万円から減り始める | 160万円から引き上げ |
| 178万円 | 本人に所得税がかかり始める | 160万円から引き上げ |
| 207万円 | 配偶者特別控除がゼロになる | 約201.6万円から引き上げ |
所得税の壁が上がったのは、令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障が74万円、基礎控除が104万円(合計所得489万円以下)になったためです。74万円+104万円=178万円まで、給与だけの人には所得税がかかりません。改正は2026年1月にさかのぼって適用され、2026年12月の年末調整で精算されます。仕組みは160万円→178万円の壁の解説で詳しく説明しています。
106万円の壁は「週20時間の壁」になった
2026年10月1日、社会保険の加入要件から「月額賃金8.8万円以上」が削除されました(日本年金機構「2026(令和8)年10月に社会保険の短時間労働者に係る賃金要件が撤廃されました」)。いまの加入要件は次の3つです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 勤務先が従業員51人以上(厚生年金の被保険者数)
- 学生でない(2か月を超えて働く見込みがある)
年収は問われません。地域別最低賃金の全国最低額1,023円でも、週20時間×52週でおよそ106万円になるため、賃金要件が実質的に意味を持たなくなったのが撤廃の理由です。企業規模要件も段階的に縮小し、2027年10月に36人以上、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月にすべての企業が対象になります。経緯は106万円の壁撤廃の解説をご覧ください。
パート年収別の手取り早見表
主たる稼ぎ手の年収500万円の世帯で、配偶者のパート年収ごとに本人の手取りを計算しました。左は「週20時間未満」または「従業員50人以下の会社」、右は「従業員51人以上で週20時間以上」の場合です。
| パート年収 | 週20時間未満 or 50人以下 | 51人以上×週20時間以上 |
|---|---|---|
| 100万円 | 100.0万円(扶養内) | 84.8万円(社保加入) |
| 119万円 | 119.0万円(扶養内) | 101.5万円 |
| 129万円 | 127.6万円(扶養内) | 109.5万円 |
| 130万円 | 100.5万円(国民年金+国保) | 110.4万円 |
| 150万円 | 118.4万円 | 126.6万円 |
| 169万円 | 134.0万円 | 141.2万円 |
| 178万円 | 141.3万円 | 148.1万円 |
| 207万円 | 164.8万円 | 170.3万円 |
130万円の壁が最も大きい
週20時間未満や小さな会社で働く場合、年収が130万円に届いた瞬間に扶養から外れ、国民年金(月17,920円・年215,040円)と国民健康保険(全国目安で年7万円台)を自分で払います。129万円なら手取り約127.6万円なのに、130万円では約100.5万円と約27万円減ります。129万円の手取りを取り戻すには、年収約161万円まで増やす必要があります。
2026年4月からは、扶養に入れるかどうかを労働契約の時給×所定労働時間で判定し、契約時に見込めない残業代は含めない取扱いになりました。繁忙期の残業で一時的に130万円を超えても、すぐに扶養から外れるとは限りません。
社保に加入すると手取りは減るが、年金が増える
51人以上の会社で週20時間以上働く場合、年収120万円なら本人の社会保険料は年約17.7万円で、手取りは扶養内より約17.5万円少なくなります。その代わり厚生年金が上乗せされ、同じ働き方を30年続けると老後の年金が年約19.7万円増えます。病気やケガで休んだときの傷病手当金、産休中の出産手当金も受けられます。
なお、従業員50人以下の会社が2026年10月以降に任意で社会保険を適用した場合などは、月収13万円未満の人の保険料の一部を最大3年間会社が負担する「保険料調整制度」があります。月収8.8万円なら本人負担は月12,500円から6,250円(1・2年目)に下がります。すでに51人以上で適用済みの会社のパートは対象外です。
配偶者控除は「主たる稼ぎ手の年収」でも変わる
配偶者控除・配偶者特別控除の38万円は、主たる稼ぎ手の合計所得が900万円以下(給与で約1,095万円以下)の場合の額です。900万円超950万円以下は最大26万円、950万円超1,000万円以下は最大13万円に縮小し、1,000万円超(給与約1,195万円超)では受けられません。住民税の控除は最大33万円です。具体的な控除額は配偶者控除シミュレーターで確認できます。
共働きの「見えないコスト」も入れて判断する
シミュレーターでは、フルタイム共働きにだけ次の費用を上乗せしています。数字は目安なので、自分の家庭の実額に置き換えてください。
- 家事外注費:月3万円(家事代行を月10時間程度)
- 仕事用の被服費:年6万円
- 昼食代の上乗せ:年12万円(月1万円)
- 通勤費:会社の通勤手当が出る前提で自己負担0円
また、本記事の数字は夫婦とも40歳未満の前提です。40〜64歳は介護保険料(協会けんぽ1.62%の半分)が加わり、健保組合や公務員共済に加入している場合は保険料率が異なります。主たる稼ぎ手の年収が高いほど保育料の階層も上がるため、自分の条件で一度計算してみることをおすすめします。
お金以外のコストとして、送迎や家事の時間、体力的な負担もあります。共働きフルの自由時間は週15時間程度と、片働き(週40時間程度)より大きく減ります。家事分担や外注を前提にできるかどうかが、共働きを続けられるかの分かれ目です。
判断のフローチャート
- 配偶者がフルタイムで働ける(保育園・家事分担のめどが立つ) → 可処分所得・年金ともに最大。共働きフルが有力
- 短時間で働きたい → 勤務先は従業員51人以上か?
- 配偶者の年収が136万円を超える → 税金面の段差はなし。169万円を超えると配偶者特別控除が減り始めるが、手取りは増え続ける
育休中の収入は育休手当シミュレーター、世帯それぞれの手取りは手取り計算シミュレーターで確認できます。
よくある質問
Q. 106万円の壁はもう気にしなくていい?
A. はい。2026年10月1日に月8.8万円(年収約106万円)の賃金要件は撤廃されました。代わりに「週20時間」が基準です。従業員51人以上の会社で週20時間以上働くなら、年収100万円でも社会保険に加入します。社保に入りたくない場合は、年収ではなく労働時間(週20時間未満)を調整します。
Q. 2026年分の配偶者控除は年収いくらまで?
A. 配偶者の給与収入136万円以下なら配偶者控除38万円、169万円以下なら配偶者特別控除38万円で、どちらも控除額は同じです。169万円を超えると段階的に減り、207万円で0円になります(主たる稼ぎ手の合計所得900万円以下の場合)。
Q. 130万円を超えたら、いくらまで働けば損しない?
A. 勤務先の社会保険に入れない場合、129万円の手取り(約127.6万円)を取り戻すには年収約161万円が必要です。従業員51人以上の会社で社保に加入する場合は約151万円が目安です。
Q. パートの所得税・住民税はいくらからかかる?
A. 令和8年分は所得税が年収178万円まで0円です。住民税は単身なら年収119万円(1級地の目安)を超えるとかかり始めますが、120万円で年6,500円程度と小さな額です。
Q. 保育料が高くて共働きのメリットがないのでは?
A. 国基準の上限(500万円+350万円の世帯で月61,000円)で計算しても、共働きフルは片働きより年約147万円多く残ります。保育料がかかるのは0〜2歳だけで、2人目は半額、3人目以降は0円です。自治体の独自軽減や東京都の第1子無償化があれば、差はさらに広がります。保育料の目安は保育園費用シミュレーターで試算できます。
Q. 第3号被保険者の制度はなくなる?
A. 2026年時点では存続しています。ただし社会保険の適用拡大が進み、2035年10月にはすべての企業で「週20時間以上なら社保加入」になる予定です。第3号でいられる範囲は確実に狭まっていくため、長期的には共働きを前提に家計を考えるのが安全です。
Q. この記事の数字はどうやって計算した?
A. 所得税は国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」、社会保険料率は協会けんぽ令和8年度(全国平均9.90%・子ども子育て支援金0.23%)と厚生年金18.3%、保育料はこども家庭庁の国基準の上限額、年金は令和8年度の基礎年金満額847,300円をもとに、シミュレーターで計算しました(2026年10月2日時点)。
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