フリーランス3年目で手取り50万円増。35歳Webデザイナーの節税リアル戦略【ケーススタディ】
年商600万円のフリーランスWebデザイナーが、青色申告・経費の適正化・iDeCoで年約60万円の手取り増。令和8年分の基礎控除104万円の境目をまたいだ効果、国保・事業税への波及、二重計上しない合計の出し方まで、シミュレーターの計算で検証。
フリーランス3年目の鈴木さんは、確定申告のやり方を変えただけで、手取りが年約60万円増えた。
スキルアップをしたわけでも、単価交渉に成功したわけでもない。売上は前年と同じ600万円で、変えたのは「税金の払い方」だけだ。
この記事では、鈴木さん(仮名・35歳・東京23区在住・独身)が取り組んだ3つの施策を、令和8年分(2026年1〜12月の所得)の税制で計算し直して追っていく。
鈴木さんのプロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 35歳(国保の介護分はかからない) |
| 職業 | フリーランスWebデザイナー(3年目・個人事業税5%の対象業種) |
| 年商 | 600万円 |
| 経費(見直し前) | 60万円 |
| 住まい | 東京23区の賃貸1LDK(家賃月12万円) |
| 家族構成 | 独身 |
| 確定申告 | 白色申告 |
現状把握:会社員時代より手取りが約98万円少ない
まず、同じ額面600万円の会社員と比べた。会社員の数字は令和8年分の給与所得控除・基礎控除で計算し、フリーランスの数字は青色申告メリット比較シミュレーターの白色申告側の結果を使った。
| 項目 | 会社員(年収600万円) | フリーランス(白色・年商600万円) |
|---|---|---|
| 経費 | — | 60万円 |
| 社会保険料 | 約88.4万円(健保・厚生年金・雇用保険) | 約80.8万円(国保59.3万+国民年金21.5万) |
| 所得税+住民税 | 約45.6万円 | 約78.3万円 |
| 個人事業税 | — | 約12.5万円 |
| 手取り | 約466.0万円 | 約368.4万円 |
差は約98万円。会社員は社会保険料の半分を会社が払い、給与所得控除(600万円なら164万円)も使える。白色申告のフリーランスにはそのどちらもない。さらに鈴木さんの所得は540万円で、令和8年分の基礎控除が104万円になる「合計所得489万円以下」のラインを超えていた。そのため基礎控除は67万円にとどまっていた。
施策1:白色申告から青色申告(65万円控除)へ
いちばん効果が大きかったのは青色申告への切り替えだ。65万円控除で所得が540万円から475万円に下がり、基礎控除も67万円から104万円に増えた。
| 項目 | 白色申告 | 青色申告(65万円控除) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 所得(合計所得) | 540万円 | 475万円 | −65万円 |
| 基礎控除(所得税) | 67万円 | 104万円 | +37万円 |
| 所得税(復興税込み) | 36.4万円 | 20.4万円 | −16.1万円 |
| 住民税 | 41.9万円 | 36.0万円 | −5.8万円 |
| 国保 | 59.3万円 | 52.4万円 | −6.9万円 |
| 個人事業税 | 12.5万円 | 12.5万円 | 0円 |
| 合計 | 171.6万円 | 142.8万円 | −28.8万円 |
個人事業税だけは変わらない。青色申告特別控除は事業税の計算では差し引けないからだ。
65万円控除の条件は、複式簿記で記帳し、e-Taxで申告すること。鈴木さんはクラウド会計ソフト(月額1,980円)を導入した。
```
節税額: 288,000円
会計ソフト代: − 23,760円(これも経費になる)
────────────────────
手取り増: 約264,000円/年
```
なお、令和9年分からは、優良な電子帳簿の要件を満たすと控除が75万円になる。一方で、書面で提出すると10万円に下がる。e-Taxで申告していれば、今後の改正でも損をしない。
施策2:経費の見直しで課税所得を圧縮
鈴木さんは自宅の一部を仕事場にしていたのに、家賃を経費にしていなかった。
追加で計上した経費
| 経費項目 | 年額 | 按分率 | 計上額 |
|---|---|---|---|
| 家賃(家事按分) | 144万円 | 30% | 43.2万円 |
| 電気代(家事按分) | 9.6万円 | 30% | 2.9万円 |
| インターネット回線 | 6万円 | 80% | 4.8万円 |
| PC・周辺機器(20万円) | 20万円 | 100% | 20万円 |
| 書籍・セミナー | 8万円 | 100% | 8万円 |
| 追加経費合計 | 78.9万円 |
按分率は、1LDK(40㎡)のうち仕事専用のスペース12㎡という面積比から決めた。「何%なら安全」という基準はない。国税庁は、業務に必要な部分を明確に区分できることを求めているので、間取り図や使用時間のメモを残しておくのがよい。PCは20万円なので、青色申告の少額減価償却資産の特例でその年に全額を経費にできる(令和8年4月以後に取得したものは40万円未満まで対象)。
経費が60万円から138.9万円に増えた結果、青色申告側の負担は次のように変わった。
| 項目 | 減った額 |
|---|---|
| 所得税 | 7.2万円 |
| 住民税 | 7.0万円 |
| 国保 | 8.3万円 |
| 個人事業税 | 4.0万円 |
| 合計 | 26.5万円 |
追加経費78.9万円に対して26.5万円なので、実効的な負担率は約34%になる。経費を増やすと、65万円控除とちがって事業税も下がる点に注目したい。
施策3:iDeCoで老後資金と節税を両立
フリーランスのiDeCo掛金の上限は月6.8万円(2027年1月の引落分からは月7.5万円。国民年金基金・付加保険料と合算した枠)。鈴木さんは月3万円から始めた。iDeCoシミュレーターで効果を確認した。
施策1・2の後、鈴木さんの課税所得は約226万円で、所得税率は10%の区分にある。
```
所得税: 36万円 × 10% × 1.021 ≒ 3.45万円
住民税: 36万円 × 10% = 3.6万円
──────────────────────────
年間の節税額: 約7.05万円
```
注意点として、iDeCoの掛金は国保料を下げない。国保は「所得−43万円」で計算されるので、所得控除であるiDeCoは関係しないのだ。旧版のこの記事では15%の税率で計算していたが、所得税に15%の区分はないため訂正した。
国保は施策1・2の「中」で下がっている
国保は、白色申告時代の59.3万円から施策2の後には44.1万円になり、15.2万円下がった。ただしこの金額は、施策1(6.9万円)と施策2(8.3万円)の合計額にすでに含まれている。国保を別の施策として足すと二重計上になる。国保料をくわしく確認したい人は国民健康保険料シミュレーターを使うとよい。
3つの施策の合計効果
| 施策 | 年間の手取り増 |
|---|---|
| 青色申告65万円控除(ソフト代差引後) | +26.4万円 |
| 経費の適正化 | +26.5万円 |
| iDeCo掛金控除 | +7.05万円 |
| 合計 | 約+60万円 |
目標の50万円を超えて、年約60万円(月約5万円)の手取り増になった。会社員との差は約98万円から約38万円まで縮まった。売上が同じでも、申告方法と控除の使い方でここまで変わる。
次に検討していること
- 小規模企業共済: 掛金は月7万円(年84万円)まで全額所得控除になる。iDeCoと同じく国保は下がらないが、廃業時の退職金になる
- 法人化: 所得が増えたら法人化シミュレーターで損益分岐を確認する。年商だけでは判断できない
- ふるさと納税: 控除上限内なら自己負担2,000円で返礼品を受け取れる
事業全体の手取りは個人事業主の税金シミュレーターでまとめて計算できる。
よくある質問
この記事の数字の前提データはどこから?
令和8年度税制改正後の所得税の基礎控除(合計所得489万円以下は104万円、655万円以下は67万円)、復興特別所得税2.1%、住民税の標準税率、東京23区の令和8年度の国保料率(基礎7.51%・支援2.80%・子ども子育て支援金0.27%)、国民年金の月17,920円で計算しています。出典は国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」、国税庁No.2072、財務省「令和8年度税制改正の大綱」です。
家事按分は何%まで認められる?
決まった上限はありません。面積比や使用時間比など、合理的に説明できる根拠があることが条件です。賃貸契約書、間取り図、仕事に使った時間の記録を保存しておきましょう。
鈴木さんの所得でなく自分の条件だと、いくら変わる?
所得が489万円の前後にある人は、基礎控除の境目をまたぐので節税額が大きく変わります。青色申告メリット比較シミュレーターに売上と経費を入れて確認してください。
数字が実感と合わない場合は?
国保の料率や平等割は自治体ごとに違います。また、国保と住民税は前年の所得をもとに翌年度に請求されるので、節税の効果が出るのは1年遅れです。計算の誤りに気づいた場合はお問い合わせからお知らせください。
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- 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2072.htm
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf
- 豊島区 国保運営協議会資料(特別区共通基準・令和8年度料率)https://www.city.toshima.lg.jp/documents/55129/20260327165423.pdf
- 国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」掛金の上限額
- 中小機構「小規模企業共済」