Ploomのメビウスが1年半で520円→590円、年間のたばこ代は21万5,350円に——41歳・川口市の森本さん(仮名)が10月の値上げを機に6つの選択肢を5年分で並べると、続ければ116万円、安い銘柄への乗り換えで浮くのは3.6万円だけ。禁煙外来は失敗して1年で戻っても20万円残る計算だった【ケーススタディ】
2026年10月1日、加熱式たばこは課税見直しの第2段階でPloom全31銘柄が40円、IQOSテリアが20円、gloネオが40円値上がりした。1日1箱のPloom(メビウス)を吸う41歳・年収560万円の会社員を例に、2027年4月から3年続く国のたばこ税の引き上げ(1本0.5円ずつ)も織り込んで、続ける・安い銘柄・glo乗り換え・紙巻きに戻す・本数半分・禁煙外来の6つを5年間の支出で比較。禁煙外来は2025年10月に出荷が再開したバレニクリンで12週約2万円。
「また40円か。もう吸うだけで年に20万円を超えてるんだよな」
10月1日の朝、コンビニのレジで森本さん(仮名)はPloom用のメビウスの値札を見て、思わずそうこぼした。1箱590円。半年前の4月に520円から550円になったばかりで、そこからさらに40円上がった。
埼玉県川口市に住む森本さんは41歳、機械メーカーの営業職で年収は560万円。パートで働く妻(39歳)と小学3年の娘の3人で暮らしている。20歳で紙巻きたばこを吸い始め、娘が生まれたのを機に2019年から加熱式のPloomに切り替えた。本数は1日20本、ちょうど1箱だ。
その夜、妻に「いい機会だから、続けた場合と、やめた場合で、いくら違うのか一度ちゃんと出してみたら」と言われ、森本さんは家計簿アプリを開いた。
1年半で年2万5,550円増えていた
まず、これまでの値上がりを1年あたりの金額に直した。1日1箱×365日で計算している。
| 時期 | メビウス(Ploom用)1箱 | 1年に直すと | 2025年比 |
|---|---|---|---|
| 2025年 | 520円 | 189,800円 | ― |
| 2026年4月〜 | 550円 | 200,750円 | +10,950円 |
| 2026年10月〜 | 590円 | 215,350円 | +25,550円 |
215,350円は、森本さんの年収560万円の3.8%にあたる。家族3人で行く夏の旅行が1回分まるごと入る金額だ。
値上がりが続いた理由は、加熱式たばこの税金の計算方法の見直しにある。加熱式は紙巻きより1本あたりの税負担が軽かったため、国はその差を埋めるために2026年4月と10月の2段階で課税方式を変えた。10月の改定では各社とも財務省の認可を受け、次のように値上げしている。
| ブランド | 主な銘柄 | 9月まで | 10月1日から |
|---|---|---|---|
| Ploom(JT) | メビウス | 550円 | 590円(全31銘柄が一律40円上げ) |
| Ploom(JT) | キャメル | 530円 | 570円 |
| IQOS(フィリップ モリス) | テリア | 620円 | 640円 |
| IQOS(フィリップ モリス) | センティア | 570円 | 590円 |
| glo(BAT) | ネオ | 530円 | 570円 |
| glo(BAT) | ラッキーストライク | 480円 | 500円 |
紙巻きたばこは2026年中は値上がりしていない。森本さんがかつて吸っていた紙巻きのメビウスは580円のままで、加熱式のほうが紙巻きより高いという逆転が起きている。
値上げは2027年4月から、まだ3回続く
さらに先がある。防衛力強化の財源として、国のたばこ税は2027年4月・2028年4月・2029年4月の3回、1本0.5円ずつ引き上げられる。こちらは紙巻きも加熱式も対象だ。
税金だけなら1箱20本で10円ずつだが、消費税や各社の価格の付け方を考えると、実際の値上げ幅はそれより大きくなりやすい。ここでは各回20円上がると仮定した。
- 2027年4月:590円 → 610円
- 2028年4月:610円 → 630円
- 2029年4月:630円 → 650円
この前提で、2026年11月から5年間(60か月)を比べることにした。1か月は365÷12=約30.4箱で計算している。
6つの選択肢を5年分で並べる
森本さんが思いついた選択肢は6つ。それぞれの5年間の支出を出した。加熱式を続ける場合は、デバイスの買い替え(2年に1回、約3,000円)も含めている。
計算式(Aの場合)
```
30.4箱 ×(590円×5か月 + 610円×12か月 + 630円×12か月 + 650円×31か月)
= 30.4箱 × 37,980円 = 1,155,225円
+ デバイス2回 5,960円 = 1,161,185円
```
| 選択肢 | 中身 | 5年間の支出 | Aとの差 |
|---|---|---|---|
| A. 今のまま続ける | Ploomのメビウス 1日1箱 | 116.1万円 | ― |
| B. 安い銘柄に変える | Ploomのキャメル(570円) | 112.5万円 | ▲3.6万円 |
| C. gloに乗り換える | ラッキーストライク(500円) | 99.7万円 | ▲16.4万円 |
| D. 紙巻きに戻す | 紙巻きのメビウス(580円) | 113.7万円 | ▲2.4万円 |
| E. 本数を半分にする | Ploomのメビウス 1日10本 | 58.4万円 | ▲57.8万円 |
| F. 禁煙外来で禁煙する | 12週の治療+最初の1週間分 | 2.4万円 | ▲113.7万円 |
※B〜Dも2027年4月以降は各回20円の値上げを見込んでいる。
意外だったのは、銘柄を変えても思ったほど浮かないことだ。キャメルに変えて1箱20円の差では、5年で3.6万円にしかならない。紙巻きに戻すのは1日10円の差でしかなく、娘のいる家で服や部屋ににおいが付くことを考えると、森本さんの中ではすぐに消えた。
gloへの乗り換えは16.4万円と少し大きいが、味が変わるうえ、値上げのたびに結局同じ道をたどる。家計を動かすのは、銘柄ではなく本数だった。
禁煙外来の費用と「失敗したら」の計算
Fの禁煙外来は、条件を満たせば健康保険が使える。森本さんは1日20本×21年でブリンクマン指数(1日の本数×喫煙年数)が420になり、保険の条件である200以上を満たしている。加熱式たばこを吸っている人も対象だ。
治療は12週間で5回通院するのが標準で、医療機関が公表している3割負担の総額はおおむね1万5,000〜2万2,000円。ここでは2万円とした。2021年から出荷が止まっていた飲み薬のバレニクリン(チャンピックス)は、2025年10月30日に通常出荷が再開している。飲み始めの1週間はたばこを吸ってもよく、8日目から禁煙する流れなので、その1週間分のたばこ代4,130円(590円×7日)も足した。
```
禁煙外来 20,000円 + 最初の1週間のたばこ 4,130円 = 24,130円
```
とはいえ、禁煙は1回で成功するとは限らない。森本さんが気になったのは「1年でまた吸い始めたら、結局損なのでは」という点だった。そこで、12か月後に元の1日1箱へ戻ってしまった場合も計算した。
```
禁煙外来の費用 24,130円
再開後の48か月分 30.4箱 ×(610円×5+630円×12+650円×31)= 935,617円
デバイスの買い直し 2,980円
合計 962,727円(約96.3万円)
```
1年で失敗しても、続けた場合(116.1万円)より約19.9万円少ない。禁煙外来の費用は、たばこを吸わなかった最初の1か月余りで回収できてしまう。挑戦すること自体には、お金の面でのリスクがほとんどない。
たばこ代以外に動くお金
禁煙で変わるのは、レジで払う金額だけではない。
- 保険料:森本さんが入っている収入保障保険は、保険会社の見積もりでは非喫煙者料率に切り替えると月4,280円→3,050円になる例だった。年14,760円の差だ。多くの商品で「1年以上たばこを吸っていない」ことと検査が条件になる。保険全体の見直しは生命保険の見直しシミュレーターで必要な保障額から確認できる
- 将来の医療費:喫煙は肺がんやCOPD、心臓や血管の病気のリスクを上げる。喫煙の生涯医療費シミュレーターでは病気ごとに増える医療費の目安を出せる
- 浮いたお金の行き先:月約1万8,000円(590円×30.4箱)を年3%で20年積み立てると約591万円になる(元本は432万円)。61歳の森本さんの手元に残る金額だ。利回りを変えた試算は複利計算シミュレーターでできる
森本さんが決めたこと
計算を見せると、妻は「Fの失敗パターンでも20万円浮くなら、試さない理由がないね」と言った。森本さんも同じ考えだった。
森本さんが決めたのは次の3つだ。
- 11月中に禁煙外来を予約する。次の値上げの2027年4月までに12週間の治療を終えられる
- 治療中に浮くたばこ代(月約1万8,000円)は、別口座に毎月移して「見える化」する
- 禁煙が1年続いたら、収入保障保険の非喫煙者料率への切り替えを申し込む
いきなり禁煙に踏み切れない場合でも、Eの本数を半分にするだけで5年で57.8万円の差になる。ただ、森本さんは「半分にするのが一番続かない気がする」と言い、Fを選んだ。
自分の本数と銘柄で計算するときは、禁煙の節約効果シミュレーターに1日の本数と10月以降の新しい価格を入れると、1年・10年の節約額がすぐに出る。紙巻き・加熱式・VAPEの比較はたばこの種類別コスト比較シミュレーターで、1箱の価格を590円などの新価格に変えて試してほしい。
計算の前提
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| 銘柄の価格 | 2026年10月1日の各社の改定価格(JT・フィリップ モリス ジャパン・BATジャパンの発表) |
| 2027年以降の値上げ | 国のたばこ税の1本0.5円×3回(2027年4月・2028年4月・2029年4月)に合わせ、各回20円の値上げと仮定 |
| 1か月の箱数 | 1日1箱×365日÷12か月=30.4箱 |
| デバイス | 加熱式は2年に1回、約3,000円で買い替え |
| 禁煙外来 | 健康保険3割負担、12週5回で2万円(医療機関の公表額1万5,000〜2万2,000円の範囲) |
| 積み立て | 月1万8,000円、年3%、20年、税金は考慮しない |
あなたが1日に吸う本数と、いま払っている1箱の値段を掛けて365倍すると、いくらになるだろう。その金額が、2027年4月からあと3回、上がっていく。