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マンションを売って戸建てへ——44歳・4人家族の住み替え、売却手取り1,652万円の配分と「3,000万円控除の罠」【ケーススタディ】

10年住んだマンションが手狭になった44歳・世帯年収950万円の桑原家。売却4,200万円の手取り計算、住み替えの資金繰り、そして意外と知られていない「3,000万円特別控除を使うと住宅ローン控除が使えない」という選択問題まで、買い替えの意思決定を数字で追う。

1,652万円。 これが、桑原さん一家(仮名)がマンションを4,200万円で売却して、実際に手元に残った金額だ。売却価格の6割しか残らない——ローン残債と諸費用を引くと、買い替えの資金計画はこの「手取り額」から始まる。

桑原家は今年、10年住んだ70㎡のマンションを売り、郊外の新築戸建てに住み替えた。この記事では、その意思決定を数字で再現する。特に、売却時に多くの人がつまずく「3,000万円特別控除と住宅ローン控除、どちらを取るか」という選択問題は、判断を間違えると200万円以上の差がつく。

桑原家のプロフィール

項目内容
家族構成夫・健一(44歳・メーカー勤務)、妻・沙織(41歳・医療事務)、長女(小5)、長男(小2)
年収(額面)夫620万円+妻330万円=世帯950万円(手取り約745万円)
住まいさいたま市の分譲マンション70㎡(2014年に3,800万円で新築購入)
ローン残債2,400万円(月返済10.3万円)
金融資産現預金・NISA合計900万円

きっかけは子供部屋だった。小5の長女が「自分の部屋がほしい」と言い出したが、70㎡・3LDKの1室は夫の在宅勤務スペースで埋まっている。リフォームでは間取りの限界を超えられない。一方、周辺の中古マンション相場はこの10年で上がっており、不動産会社3社の査定は4,100万〜4,300万円。「買った値段より高く売れる」ことが、住み替えの背中を押した。

ステップ1: 売却の手取りはいくらか

売却価格4,200万円から引かれるものを順に並べる。

> 手取り額 = 売却価格 − ローン残債 − 譲渡費用(仲介手数料など)

  • 仲介手数料: (4,200万円 × 3% + 6万円)× 消費税1.1 = 145.2万円
  • 印紙税: 1万円(軽減税率適用後)
  • 抵当権抹消登記・司法書士報酬: 約2万円
  • 譲渡費用の合計: 約148万円

手取り額 = 4,200万円 − 2,400万円 − 148万円 = 約1,652万円

売却価格の入力だけでここまで自動計算したい場合は自宅売却の手取りシミュレーターが使える。桑原家はこの1,652万円を新居の頭金・諸費用に充てる計画を立てた。

ステップ2: 「3,000万円控除の罠」——税金の分岐点

購入3,800万円の物件が4,200万円で売れたので、売却益(譲渡所得)が発生する。ここで多くの人が「マイホームなら3,000万円まで非課税でしょ」と考えるが、話はそう単純ではない。

まず譲渡所得を正確に計算する。建物は経年で価値が減るため、取得費から減価償却費を差し引く必要がある。

  • 建物部分1,900万円の減価償却: 1,900万円 × 0.9 × 償却率0.015 × 12年 = 約308万円
  • 取得費: 3,800万円 − 308万円 + 購入時諸費用約150万円 = 約3,642万円
  • 譲渡所得: 4,200万円 − 3,642万円 − 譲渡費用148万円 = 約410万円

この410万円への課税をどうするか。選択肢は2つある。

案A: 3,000万円特別控除を使う案B: 控除を使わず納税する
譲渡所得税・住民税0円(410万円 ≦ 3,000万円)410万円 × 20.315% = 約83万円(所有5年超の長期譲渡)
新居の住宅ローン控除使えない使える(13年間で概算240〜300万円)
差引の損得案Bが約160〜220万円有利

ここが罠だ。3,000万円特別控除と住宅ローン控除は併用できない(新居に入居した年とその前2年・後3年に特別控除を使うと、ローン控除の適用外になる)。譲渡益が小さい買い替えでは、あえて譲渡税を払ってローン控除を取るほうが得になるケースが多い。桑原家は案Bを選び、約83万円を納税する代わりに13年分のローン控除を確保した。

※住宅ローン控除の借入限度額は入居年・住宅性能・子育て世帯かどうかで変わる。自分の条件での控除額は住宅ローン控除シミュレーターと国税庁の最新情報で確認してほしい。

ステップ3: 新居の資金計画

新居は同じ市内の新築建売戸建て(省エネ基準適合・100㎡・4LDK)で5,200万円。資金計画は次の通りにした。

項目金額出どころ
物件価格5,200万円頭金800万円+借入4,400万円
購入諸費用(仲介手数料・登記・ローン手数料・火災保険)約350万円売却手取りから
引越し2回+仮住まい2ヶ月約80万円売却手取りから
売却手取り1,652万円の残り約420万円教育費・予備費として温存

貯蓄900万円には手をつけず、売却手取りだけで住み替えを完結させた。頭金をいくら入れるべきかの考え方は頭金シミュレーターで試算できる。

新しいローンは4,400万円・35年・変動0.6%で月11.6万円。44歳からの35年ローンは79歳完済になるため、65歳時点の残高約1,870万円を退職金と繰上返済で圧縮する前提だ。「35年で借りて月々を軽くし、余力で繰り上げる」のは、返済額を住宅ローン比較シミュレーターで銀行別に比べたうえでの選択だった。

住居費は月1.9万円下がった

旧マンション新戸建て
ローン返済10.3万円11.6万円
管理費・修繕積立金3.6万円—(自主積立1.5万円)
駐車場1.5万円0円(敷地内)
固定資産税(月割)1.0万円1.2万円
合計16.4万円14.5万円

ローン返済額自体は増えたのに、管理費・駐車場がなくなった分で月々の住居費は下がった。マンションと戸建ての維持費構造の違いは見落とされがちだ。なお戸建ての修繕積立は強制されないぶん自分で積む必要がある。固定資産税の水準は固定資産税シミュレーターで物件条件別に確認できる。

売り先行か、買い先行か

桑原家が悩んだもうひとつの分岐が、売却と購入の順番だった。

  • 売り先行(先に売って仮住まい→購入): 売却代金を頭金に使える。資金繰りが確実。デメリットは仮住まいと引越し2回のコスト(桑原家は約80万円)
  • 買い先行(先に買って住みながら売る): 引越し1回で済み、空き家にしてから売れる。デメリットは売却前に頭金・諸費用の自己資金が必要で、売れるまで二重ローン状態になるリスク

桑原家の貯蓄は900万円。頭金800万円+諸費用350万円を売却前に用意することはできず、売り先行一択だった。手元資金が潤沢でない限り、買い替えは売り先行が基本形になる。引越し費用の相場は時期で大きく動くので、引越し費用シミュレーターで繁忙期を避けた計画を立てたい。

桑原家のケースから引き出せる教訓

  1. 買い替えの予算は「売却価格」ではなく「手取り額」で立てる。 残債と諸費用を引くと、手元に来るのは売却価格の6割前後ということも珍しくない
  2. 譲渡益が出たら、3,000万円控除に飛びつく前にローン控除と比較する。 譲渡益が数百万円規模なら、納税してローン控除を取るほうが有利な場合が多い
  3. マンション→戸建ては「ローン返済額」だけで比べない。 管理費・駐車場・修繕積立・固定資産税まで含めた月額で新旧を並べる
  4. 手元資金が薄いなら売り先行。 仮住まいコストは「資金繰り破綻を避ける保険料」と考える

あなたがいま住んでいる家は、いくらで売れて、いくら手元に残るだろうか。査定サイトに登録する前に、自宅売却の手取りシミュレーターで「残債を引いた後の現実の数字」を先に見ておくことをすすめたい。

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