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変動0.45%が2年半で1.35%に|4,000万円を借りた34歳夫婦の返済は月1.6万円増、2029年の見直しで125%ルールを超える条件【ケーススタディ】

2024年4月に4,000万円を変動0.45%で借りた共働き夫婦。短期プライムレートの4回の引き上げで適用金利は2026年10月に1.35%へ。本来の返済額は月102,953円→119,329円(+1.6万円)、さらに1.85%まで上がると2029年の見直しで125%ルールの上限128,691円を超える。固定3.33%への借り換えが割に合わない理由、繰上返済・固定費削減の対策まで数字で判断する。

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「金利、ほんとに上がってきたね」——田中拓也さん(34歳・仮名)が銀行から届いた「適用金利変更のお知らせ」を置いて、妻の沙織さん(32歳)にそう切り出したのは、2026年10月の夜だった。

二人が4,000万円の住宅ローンを組んだのは2024年4月。当時の変動金利は0.45%。「変動のほうが総額で得」という不動産会社の説明をそのまま受け入れ、毎月の返済は約10.3万円で落ち着いた。だがその後、日銀は政策金利を2024年7月に0.25%、2025年1月に0.5%、2025年12月に0.75%、2026年6月に1.0%、2026年9月に1.25%へと引き上げた。お知らせに書かれていた新しい適用金利は1.35%。借りたときの3倍だ。

返済額は今のところ変わっていない。それでも、この先自分たちの家計はどうなるのか。漠然とした不安を、ここではっきり数字にしてみることにした。

田中家のプロフィール

項目夫(拓也)妻(沙織)
年齢34歳32歳
職業食品メーカー(総合職)医療事務(時短勤務)
年収(額面)480万円200万円
世帯年収680万円
居住地東京都下(2024年に新築マンション購入)
子ども長女・結衣(2歳)
住宅ローン4,000万円・変動(当初0.45%)・35年(2024年4月実行・ペアではなく夫単独・5年ルール/125%ルールあり)
金融資産現預金260万円+NISA90万円=350万円

毎月の手取りは世帯で約44万円。住宅ローン10.3万円を返しても月7〜8万円は残る——購入当初はそう余裕を見込んでいた。問題は、その余裕が「金利が動かない前提」で成り立っていたことだ。

まず「何が起きたか」を時系列で確認する

借入条件を住宅ローン金利シミュレーターに入れ直して、出発点の数字を固定する。4,000万円・0.45%・35年(420回)の毎月返済は102,953円、金利が変わらなければ総返済額は約4,324万円(うち利息約324万円)だった。

田中家のローンは、多くの銀行と同じく短期プライムレート(短プラ)に連動し、年2回(4月・10月)の基準日に金利が見直されるタイプだ。短プラが上がるたびに、次の見直しで適用金利も同じ幅だけ上がった。

時期出来事田中家の適用金利
2024年4月借入実行(短プラ1.475%)0.45%
2024年9月短プラ1.475%→1.625%(+0.15%)2024年10月から0.60%
2025年3月短プラ1.625%→1.875%(+0.25%)2025年4月から0.85%
2026年2月短プラ1.875%→2.125%(+0.25%)2026年4月から1.10%
2026年8月短プラ2.125%→2.375%(+0.25%)2026年10月から1.35%

※短プラは三菱UFJ銀行の改定日。基準日・反映時期は銀行ごとに異なる。

2年半で+0.9%。しかも2026年9月の政策金利1.25%への引き上げは、まだ短プラに反映されていない。過去の動きどおりなら、2027年4月には1.60%になる可能性が高い。

本来の返済額はいくらになっているか

30回返済した2026年10月時点の残債は約3,765万円、残りは390回。この残債を今の金利で再計算した「本来の返済額」を並べた。

金利(変動)本来の毎月返済当初との差年間の差残り総返済額
0.45%(借入時のまま)102,953円±0円±0円約4,015万円
1.35%(現在)119,329円+16,376円+約19.7万円約4,654万円
1.60%(次の短プラ引き上げ後)123,883円+20,930円+約25.1万円約4,831万円
1.85%(さらに+0.25%)128,540円+25,587円+約30.7万円約5,013万円
2.35%(さらに+0.75%)138,160円+35,207円+約42.2万円約5,388万円

数字を並べてみて、沙織さんが最初に反応したのは「年間」の列だった。「今の1.35%でもう年20万円。2%台になったら年40万円で、結衣の保育料がもう一人分増えるのと同じだよね」。2.35%のシナリオでは、残りの返済総額が借入時の想定より約1,373万円膨らむ。

計算式はシンプルだ。残債を $L$、月利を $r$(=年利÷12)、残り回数を $n$ とすると、毎月返済 $P$ は次の式で決まる。

$$P = \frac{L \times r}{1 - (1+r)^{-n}}$$

金利 $r$ が上がるほど分子は大きく、分母(割引の効果)は小さくなる。だから返済額は金利上昇に対して加速度的に増えていく。

落とし穴は「5年ルール」と「125%ルール」

それなのに、田中家の毎月の引き落としは102,953円のままだ。多くの金融機関の変動金利型には、次の2つのルールがあるからだ。

  • 5年ルール:金利が見直されても、毎月の返済額は5年間据え置かれる
  • 125%ルール:5年経過後に返済額が見直される際も、それまでの返済額の1.25倍までしか上がらない

借り手に優しく見えるが、返済額が据え置かれても、適用金利は半年ごとに上がっている。返済額のうち利息に回る分が増え、元金の減りが遅くなる。田中家の場合、金利1.35%で毎月の利息は約4.2万円。0.45%だった頃の約1.5万円から2.7万円増え、その分だけ元金の返済が減っている。

最初の見直しは返済開始から5年後の2029年5月。2027年4月以降の金利を置いて、そのときの新しい返済額を試算した。

2027年4月以降の金利2029年5月時点の残債見直し後の本来の返済額125%上限(128,691円)との関係
1.35%(据え置き)約3,581万円121,017円上限内
1.60%約3,599万円125,953円上限内
1.85%約3,618万円131,029円上限超過(月2,338円が先送り)
2.35%約3,656万円141,604円上限超過(月12,913円が先送り)

1.85%以上になると、5年後の見直しでも返済額が「上がりきらず」、超過分は次の5年に先送りされる。さらに金利が約3.3%を超えると毎月の利息が返済額102,953円を上回り、払いきれない「未払利息」が発生する。先送りされた分は最終回にまとめて請求されるのが一般的だ。

> 5年ルール・125%ルールは「返済額の急増を防ぐクッション」であって、「利息負担を減らす仕組み」ではない。むしろ問題の先送りになりうる、と田中夫婦は理解した。

田中家がとった3つの対策

① ボーナスから年50万円を繰上返済し、残債を圧縮する

金利上昇のダメージは「残債 × 金利」で決まる。だから残債そのものを減らせば、将来の上昇に強くなる。繰上返済シミュレーターで、金利1.35%のまま年1回50万円を10年間(計500万円)期間短縮型で繰り上げた場合を試算すると、返済期間は4年10ヶ月短縮され、利息は約197万円軽くなる。借入時の0.45%なら数十万円だった効果が、金利上昇で大きくなった。住宅ローン控除(控除率0.7%)の減少を差し引いても、金利が0.7%を超えた今は繰上返済のほうが得だ。

② 固定金利への借り換えは「今は見送り」と判断した

「いっそ全額を固定金利に」という選択肢も検討した。ところが固定金利は変動金利以上に上がっていた。2026年10月の全期間固定は銀行で3.3%前後、フラット35(21〜35年)の最頻金利は3.83%。住宅ローン借り換え・比較シミュレーターで、残債3,765万円・残り32年半を固定3.33%に借り換えると毎月158,164円、変動1.35%の本来の返済119,329円より月約3.9万円重くなる。さらに登記費用・事務手数料で数十万円かかる。

変動金利が3.3%に届くには、政策金利がさらに2%近く上がる必要がある。田中家の結論は、借り換えではなく「変動のまま、繰上返済で残債を減らす」だった。固定と変動の損益分岐は変動金利と固定金利の比較シミュレーターで確認できる。

③ 固定費を月2万円削り、返済増に備える"バッファ"を作る

本来の返済額との差(現在月1.6万円、1.85%なら月2.6万円)を先に家計から捻出しておく。大手キャリアの通信費を格安SIMへ、使っていないサブスクを解約、自動車保険を見直し——この3つで月約1.5万円、食費の見直しで5,000円を捻出。浮いた月2万円はそのまま「金利上昇積立」として別口座に貯め、2029年の見直しで返済額が上がったときの原資と、繰上返済の資金にする。住宅ローン月々返済額シミュレーターで毎月の返済可能額を逆算し、無理のない上限も確認した。

チェックリスト:変動金利で借りている人が今すぐ確認すべきこと

  • [ ] 自分のローンに「5年ルール」「125%ルール」があるか(金融機関により無いものもある)
  • [ ] 現在の残債と残り返済回数を把握しているか
  • [ ] 今の適用金利で再計算した「本来の返済額」と、+0.5%・+1.0%になったときの返済額を試算したか
  • [ ] 返済額が月+2〜3万円増えても、家計が回るか
  • [ ] 繰上返済に回せる手元資金(生活防衛費を除く)はいくらか
  • [ ] 借り換えの損益分岐点を一度でも計算したことがあるか

FAQ

Q. この試算の前提データはどこから?
A. 毎月返済額は元利均等返済の標準式で算出しています。借入4,000万円・35年・変動0.45%を起点に、適用金利の推移(0.45→0.60→0.85→1.10→1.35%)を反映して30回返済後の残債(約3,765万円)を求め、残り390回で再計算しました。短期プライムレートの推移は三菱UFJ銀行の公表(2024年9月1.625%、2025年3月1.875%、2026年2月2.125%、2026年8月2.375%)、政策金利は日本銀行の金融政策決定会合の公表資料、固定金利は住宅金融支援機構(フラット35)とダイヤモンド不動産研究所の主要銀行調査(2026年10月2日公開)によります。1.60%以降の金利は仮定で、実際の適用金利は金融機関の基準金利・優遇幅・見直し時期により異なります。5年ルール・125%ルールの有無や内容も契約により異なるため、必ずご自身の金銭消費貸借契約書を確認してください。

Q. なぜ「30回返済後の残債」で計算するの?最初から計算すればいいのでは?
A. 金利上昇は「借りた瞬間」ではなく「返済の途中」で起きるからです。すでに数年返して元金が減った状態に新しい金利が乗る、という現実に近い形で見積もるため、経過後の残債を起点にしています。

Q. 変動金利は結局やめたほうがいい?
A. 一概には言えません。2024年に0.45%で借りた田中家は、2年半で金利が+0.9%上がっても、同じ時期に固定金利で借りた場合(当時のフラット35は1%台後半)と比べた累計の支払いはまだ少ない水準です。残債が小さい・繰上返済の余力が大きい・返済期間が短い人ほど、変動の低金利メリットを享受しやすく、上昇リスクも限定的です。逆に残債が大きく返済期間が長い世帯は、上昇インパクトが大きいため備えが要ります。住宅ローン金利シミュレーターで、自分の条件での感応度を確認してください。

Q. 数字が自分の感覚と合わない場合は?
A. 借入額・金利・経過年数を入れ替えれば、ご自身のケースに近い数字が出せます。実感と大きくズレる場合は、優遇後金利か基準金利かの取り違えが原因のことが多いです。

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金利が動く世界では、「借りたときの安心」は更新され続ける前提が変わると消えてしまう。田中夫婦が得た最大の収穫は、月返済が増えるという結論そのものではなく、「本来の返済額との差を毎月積み立てる」「ボーナスの一部は繰上返済に回す」「2029年の見直し前に125%上限を超えそうなら繰上返済を厚くする」という、あらかじめ決めておいた行動基準だった。不安は、数字にして基準を決めた瞬間に「対処できる課題」に変わる。

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