くらシム
住まい

賃貸・中古リノベ・新築・実家同居——4つの住まい方を30年総コストで比較する【判定フローチャート付き】

東京郊外・世帯年収600万円のモデル世帯で試算すると、30年間の総コストは実家同居が約1,170万円、中古マンション+リノベが約4,608万円、賃貸継続が約4,644万円、新築マンションが約6,102万円——中古と賃貸はほぼ同額で、金利が平均1.5%なら逆転する。2026年10月の金利・購入諸費用・管理費・住宅ローン控除まで含めた検算と、あなたに合う選択肢を3つの質問で絞り込むフローチャートを提示する。

「結局、賃貸と持ち家、どっちが得なんですか」——この質問には、実はもう2つの選択肢が抜けている。中古を買ってリノベするか、そもそも実家に戻るか。4択で比べて初めて、本当の損得が見えてくる。

34歳・佐藤さん夫婦(仮名、東京都内在住)は、子どもの小学校入学を機に住まいを考え直すことにした。現在は家賃12万円の賃貸3LDK。世帯年収600万円、貯蓄500万円。選択肢は4つ浮かんだ——このまま賃貸を続ける、中古マンションを買ってリノベする、新築マンションを買う、そして妻の実家(車で40分の距離)に二世帯同居する。この記事では、この世帯をモデルケースに30年間の総コストを4パターンで検算する。

4つの選択肢、初期費用と月額の一覧

まず全体像をテーブルで確認する。

選択肢初期費用月額の目安30年後に残るもの
A. 賃貸継続敷金礼金など数十万円家賃12万円+更新料資産ゼロ
B. 中古マンション+リノベ頭金300万円ローン返済+管理費築古の資産(要修繕)
C. 新築マンション購入頭金450万円ローン返済+管理費築30年の資産
D. 実家に二世帯同居リフォーム300万円生活費按分資産は親名義のまま

金額だけ見ても実感が湧きにくいので、それぞれ30年間の総額まで計算式で追っていく。

A. 賃貸を30年続けた場合

```
家賃12万円 × 12ヶ月 × 30年 = 4,320万円
更新料(2年ごと・家賃1ヶ月分)× 15回 = 180万円
住み替え初期費用(10年ごとに1回、家賃4ヶ月分)× 3回 = 144万円
-----------------------------------------
30年間の総額 = 4,644万円
```

賃貸は「初期費用が軽い」というイメージがあるが、更新料と住み替えの初期費用を積み上げると、30年で300万円以上が家賃以外に消えていく。一方で、ローンや修繕費の変動リスクを負わない身軽さは賃貸だけのメリットだ。詳しい条件を変えて試算したい場合は賃貸 vs 持ち家シミュレーターで自分の家賃・想定居住年数を入力すると総額を再計算できる。

B. 中古マンション購入+リノベーション

物件価格2,500万円の築古の中古マンション(70㎡)を購入し、500万円かけてリノベーションする想定。頭金300万円、借入2,700万円(リノベ費用込み)、金利1.2%・35年ローンとする。金利1.2%は2026年10月時点の主要行の変動金利(概ね1.0〜1.3%、日銀の政策金利は同年9月に1.25%)の中ほどで、30年間この水準が続くという楽観寄りの置き方だ。

```
月々返済額(元利均等) ≈ 78,760円
30年間の返済額(78,760円×360ヶ月) ≈ 2,835万円
頭金 = 300万円
購入諸費用(仲介手数料・登記・ローン手数料、物件価格の約7%) ≈ 175万円
管理費・修繕積立金(月2.8万円×360ヶ月) = 1,008万円
固定資産税等(年10万円×30年) = 300万円
火災保険等(30年分) = 30万円
専有部の設備更新(給湯器・エアコン等) ≈ 100万円
住宅ローン控除(2,000万円×0.7%×10年) = −140万円
-----------------------------------------
30年間の総額 ≈ 4,608万円
(30年時点のローン残債 約458万円は別途)
```

管理費・修繕積立金の月2.8万円は、国土交通省「令和5年度マンション総合調査」の全体平均(管理費11,503円+修繕積立金13,054円=約2.5万円)に、築古マンションで修繕積立金が段階的に引き上げられる分を上乗せした30年平均だ。住宅ローン控除は、省エネ性能の証明がない中古(「その他の住宅」)として2026年入居ルールの借入限度額2,000万円・10年で計算した(省エネ基準適合の証明が取れれば、子育て世帯は3,000万円・13年で約204万円に増える)。

結果は賃貸継続(4,644万円)とほぼ同額で、差はわずか約36万円。しかも35年ローンのため30年時点で約458万円の残債が残る。購入諸費用と、平均より高くなりがちな築古の管理費・修繕積立金を入れると、「中古なら賃貸よりはっきり安い」とは言えなくなる。金利が30年平均で1.5%になれば返済額は約2,976万円に増え、総額約4,749万円で賃貸より約105万円高く逆転する。中古マンションのメリットは「立地の割に価格が安い」点にあり、リノベで内装を新築同等に近づけられる。新築とどちらが得かは物件の築年数・エリアで変わるため、中古リノベ vs 新築マンションシミュレーターで具体的な物件価格を入れて比較しておきたい。

C. 新築マンション購入

物件価格4,500万円、頭金450万円、借入4,050万円、金利1.2%・35年ローンとする(Bと同じ2026年10月の変動金利水準)。新築は住宅ローン控除の借入限度額が大きく、ZEH水準省エネ住宅を子育て世帯が買う場合は2026年入居で4,500万円・13年が上限になる。

```
月々返済額(元利均等) ≈ 118,140円
30年間の返済額(118,140円×360ヶ月) ≈ 4,253万円
頭金 = 450万円
購入諸費用(登記・ローン手数料・修繕積立基金等、物件価格の約4%) ≈ 180万円
管理費・修繕積立金(月2.5万円×360ヶ月) = 900万円
固定資産税等(年15万円×30年) = 450万円
火災保険等(30年分) = 35万円
専有部の設備更新(給湯器・エアコン等) ≈ 100万円
住宅ローン控除(13年分、納税額の上限で頭打ち) ≈ −266万円
-----------------------------------------
30年間の総額 ≈ 6,102万円
(30年時点のローン残債 約688万円は別途)
```

新築の管理費・修繕積立金は入居当初が安く、段階的に上がるのが一般的なので、30年平均で調査平均並みの月2.5万円とした。住宅ローン控除は年末残高×0.7%だが、世帯主の年収600万円(配偶者控除あり)では所得税約10.9万円+住民税の控除上限9.75万円=年約20.6万円が上限になり、当初数年は満額を使い切れない。

4択の中で最も高額になった。新築は「誰も住んでいない状態から入居できる」「保証・設備が最新」という価値があるが、その分だけ物件価格に上乗せされている。マンションか戸建てかで管理費・修繕費の構造も変わるため、マンション vs 戸建てシミュレーターで維持費の内訳を比較すると判断材料が増える。

D. 実家に二世帯同居

妻の実家に二世帯用のリフォーム(水回り増設など)を300万円かけて行い、以後は生活費の一部を按分して負担する想定。

```
リフォーム費用(初期一括) = 300万円
生活費按分(月2万円×360ヶ月) = 720万円
固定資産税等の一部負担(年5万円×30年) = 150万円
-----------------------------------------
30年間の総額 = 1,170万円
```

4択の中では圧倒的に安い。ただし数字だけでは測れないコストもある——同居によるプライバシーの制約、親の介護が将来発生した際の役割分担、実家が勤務先から遠い場合の通勤負担などだ。一人暮らしと実家暮らしのどちらが得かを別の切り口(通勤・自由度込み)で確認したい場合は一人暮らし vs 実家暮らしシミュレーターが使える。

30年総額の比較と「資産として残るか」の違い

4つを並べると次のようになる。

順位選択肢30年総額賃貸との差額
1位D. 実家同居約1,170万円−3,474万円
2位B. 中古+リノベ約4,608万円−36万円
3位A. 賃貸継続約4,644万円± 0円
4位C. 新築購入約6,102万円+1,458万円

BとAの差は誤差の範囲で、金利次第で順位が入れ替わる。30年平均の金利別に見るとこうなる。

30年平均の金利B. 中古+リノベC. 新築購入A. 賃貸継続
1.0%約4,517万円約5,965万円約4,644万円
1.2%(本記事の前提)約4,608万円約6,102万円約4,644万円
1.5%約4,749万円約6,313万円約4,644万円

ここで見落としてはいけないのが「資産として何が残るか」だ。B・Cの持ち家2案は、支払った金額の一部が不動産という資産に変わって手元に残る。ローンを完済すれば、その後は住居費が管理費・固定資産税だけになる点もAとは決定的に違う。一方、Aの賃貸は支払った家賃が丸ごと消え、Dの実家同居は住まいそのものが親名義のままという制約がある。単純な総額の安さだけでなく、「30年後に何が残っているか」まで含めて比較する必要がある。

あなたに合うのはどれか、3つの質問で絞り込む

```
Q1. 親との同居に抵抗がなく、実家が通勤圏内にあるか?
→ YES:D「実家同居」が最有力。同居後の役割分担だけ事前に話し合う
→ NO:Q2へ

Q2. 今後10年以内に転勤・転居の可能性が高いか?
→ YES:A「賃貸継続」が無難。売却の手間とタイミングリスクを避けられる
→ NO:Q3へ

Q3. 立地・予算を優先するか、設備の新しさ・保証を優先するか?
→ 予算・立地優先:B「中古+リノベ」
→ 新しさ・保証優先:C「新築購入」
```

この3問はあくまで大枠の目安であり、実際には頭金の準備状況や金利動向、子どもの人数によっても最適解は変わる。特に借入額は年収に対する返済負担率で上限が決まるため、年収別 買える家の価格シミュレーターで自分の年収から借入可能額を先に把握しておくと、B・Cの現実性を判断しやすい。月々の返済額を細かく試算したい場合は住宅ローン月々返済額シミュレーターも併用したい。

FAQ

Q. この試算の前提データはどこから?

物件価格は住宅金融支援機構「フラット35利用者調査」や首都圏の中古・新築マンション相場を参考にしたモデル値、金利は2026年10月の主要行の変動金利(概ね1.0〜1.3%)、管理費・修繕積立金は国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(管理費11,503円・修繕積立金13,054円、いずれも駐車場使用料等からの充当を除く戸当たり月額)、住宅ローン控除は国税庁タックスアンサーNo.1211-1・1211-3の2026年入居ルールに基づく。返済額は元利均等返済の標準式で検算した。特定の物件の見積もりではない。実際の金額はエリア・築年数・金融機関によって大きく変動するため、目安として使ってほしい。

Q. 中古+リノベがなぜ新築より約1,500万円も安くなるのか?

主な要因は物件価格そのものの差(2,500万円 vs 4,500万円)で、新築特有の「販売経費・広告費・新築プレミアム」が価格に上乗せされているためだ。リノベ費用を500万円かけても、新築との差額のほうがはるかに大きい。

Q. 実家同居が最安なのは分かるが、現実的でない場合はどう考えればいい?

同居が難しい場合はB(中古+リノベ)とA(賃貸継続)の比較が中心になる。今回の試算では中古が約36万円安いだけで、金利が平均1.5%になれば逆転する。決め手は総額の差よりも「30年後に残債を引いた資産がいくら残るか」と「完済後の住居費(管理費・修繕積立金・固定資産税で月3万円台)」になるため、自分の条件で賃貸 vs 持ち家シミュレーターと中古リノベ vs 新築マンションシミュレーターの両方を試すのがおすすめだ。

Q. 数字が自分の実感と合わない場合は?

物件価格・金利・管理費は地域や時期によって差が大きく、本記事のモデル世帯とは前提が異なるケースも多い。大きくずれる場合は、上記シミュレーターに実際の物件価格・金利・家賃を入力して再計算してほしい。それでも疑問が残る場合はお問い合わせから知らせてもらえれば確認する。

まとめ:総額だけでなく「30年後に何が残るか」で選ぶ

30年間の総コストは実家同居が最安、次いで中古+リノベ、賃貸継続、新築購入の順になったが、中古+リノベと賃貸継続の差は約36万円しかなく、金利次第で入れ替わる。購入諸費用や築古マンションの管理費・修繕積立金を抜いて「中古なら賃貸より数百万円安い」と考えるのは危ない。金額の順位だけで決めるのも早計だ。持ち家は資産が残り、賃貸は身軽さが残り、実家同居は家族の協力関係が前提になる。まずは自分の世帯の家賃・年収・頭金を上記のシミュレーターに入れて、この記事のモデル世帯との差を確認するところから始めてほしい。

広告

関連記事

広告