住宅ローンの借り換え、金利が一番低い銀行を選んで損した——38歳・佐藤家が4,000万円の借り換えで3行を比較した結果【ケーススタディ】
2018年に三井住友銀行で4,000万円・変動0.65%・35年を組んだ38歳会社員が、8年経過後の残債3,164万円を借り換え検討。最も金利が低い住信SBIネット銀行(0.298%)は27年間の純メリット74.5万円・元が取れるまで14.2年。一方、金利がやや高い三菱UFJ銀行(0.345%・事務手数料0円)は純メリット123.4万円・元が取れるまで2.6年で、実は一番得だった。定率型手数料と定額型手数料のトラップを実額で検証する。
「金利0.298%って書いてある。うちの0.65%より全然低いじゃん、これに変えよう」——佐藤健太さん(仮名・38歳・メーカー勤務)が住宅ローン比較サイトを見ながら妻の真央さん(36歳・パート)にそう言ったのが、今年8月のことだった。だが実際に諸費用まで含めて計算してみると、「一番金利が低い銀行」が「一番得な銀行」とは限らないことが分かった。
佐藤家のプロフィール
| 項目 | 佐藤健太(夫) | 佐藤真央(妻) |
|---|---|---|
| 年齢 | 38歳 | 36歳 |
| 職業 | メーカー(営業職) | パート(事務) |
| 年収(額面) | 650万円 | 110万円 |
| 居住地 | 東京都立川市(2018年に新築マンション購入) | |
| 子ども | 長男・陽翔(5歳) | |
| 住宅ローン | 4,000万円・変動0.65%・35年(2018年3月実行、三井住友銀行) | |
| 金融資産 | 現預金310万円+NISA150万円=460万円 |
2018年の購入当時、健太さんは他行と比較せず、不動産会社が紹介した三井住友銀行でそのままローンを組んだ。「忙しかったし、住宅ローンなんてどこも同じだろうと思っていた」。それから8年、ネット銀行の金利がメガバンクよりかなり低いという話を耳にするようになり、借り換えを検討し始めた。
まず現状を確認する
住宅ローン月々返済額シミュレーターに条件を入れ直す。
- 借入額:4,000万円
- 金利:変動0.65%(三井住友銀行)
- 返済期間:35年(420回)
毎月返済は106,508円。2018年3月の実行から8年(96回)返済した現在、残債は元利均等返済の計算式から31,642,119円(約3,164万円)、残りの返済期間は27年(324回)になる。このまま変えずに完済すると、残り27年で支払う利息は合計約286万円だ。
4行を比較する:金利だけでなく「手数料の型」を見る
住宅ローン銀行別比較シミュレーターには主要銀行の金利・手数料タイプが登録されている。残債3,164万円・残り27年の条件で、借り換え候補を4行並べてみた。
事務手数料には大きく2つの型がある。定率型(借入額に対して一定%、ネット銀行に多い)と定額型(借入額に関係なく固定額、メガバンクに多い)だ。この違いが結果を大きく左右する。
| 借り換え先 | 金利(変動) | 事務手数料の型 | 事務手数料の目安 |
|---|---|---|---|
| 住信SBIネット銀行 | 0.298% | 定率型 | 借入額の2.2% |
| auじぶん銀行 | 0.319% | 定率型 | 借入額の2.2% |
| 三菱UFJ銀行 | 0.345% | 定額型 | 0円(別途諸費用のみ) |
| みずほ銀行 | 0.375% | 定額型 | 33,000円 |
事務手数料に加えて、抵当権抹消登記(旧ローン分・約2万円)、抵当権設定登記(新ローン分・軽減税率適用時は借入額の0.1%)、司法書士報酬(約8万円)が共通してかかる。これらを合計した「総諸費用」が借り換えのコストになる。
トータルで比較:金利最安の住信SBIは14.2年で元が取れる
残り27年(324回)で完済する前提で、金利差による利息削減効果と諸費用を差し引いた「27年間の純メリット」を計算する。
```
純メリット = 利息削減額(諸費用なしの場合) − 総諸費用
損益分岐点(月数) = 総諸費用 ÷ 月々の返済減少額
```
| 借り換え先 | 新しい月返済 | 月の減少額 | 利息削減額 | 総諸費用 | 27年間の純メリット | 元が取れるまで |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 住信SBIネット銀行 | 101,655円 | −4,853円 | 1,572,359円 | 827,769円 | 744,590円 | 14.2年 |
| auじぶん銀行 | 101,940円 | −4,568円 | 1,479,887円 | 827,769円 | 652,118円 | 15.1年 |
| 三菱UFJ銀行 | 102,294円 | −4,213円 | 1,365,164円 | 131,642円 | 1,233,522円 | 2.6年 |
| みずほ銀行 | 102,704円 | −3,804円 | 1,232,468円 | 164,642円 | 1,067,826円 | 3.6年 |
結果を見た健太さんが驚いたのはここだ。金利が最も低い住信SBIネット銀行は、月々の返済減少額こそ最大(−4,853円)だが、事務手数料が借入額の2.2%=696,127円もかかるため、総諸費用は82.8万円に膨らむ。27年間の純メリットは74.5万円で、4行の中では最も小さい。
一方、金利は0.345%とやや高い三菱UFJ銀行は、事務手数料が定額型で0円のため総諸費用は13.2万円で済む。27年間の純メリットは123.4万円と4行中最大で、元が取れるまでの期間も2.6年と圧倒的に短い。
なぜ「金利最安」が「最適」とは限らないのか
理由は単純で、定率型の事務手数料は借入額(残債)に比例して高くなるからだ。佐藤家のように残債が3,000万円を超えていると、2.2%の手数料は70万円近くになる。この初期コストを金利差で回収するには、それだけ長い年数が必要になる。
逆に言えば、次のようなケースでは定率型ネット銀行が有利になりやすい。
- 借入残高が少ない(諸費用の絶対額が小さくなる)
- 残りの返済期間が長い(利息削減の総額が大きくなる)
- 将来的に繰上返済や住み替えの予定がなく、長期保有が前提
佐藤家は残り27年と期間は長いものの、初期費用に70万円超をかけられる余裕資金は460万円のうち約15%を一気に使う計算になり、「手元資金を厚く残したい」という優先順位とは合わなかった。
佐藤家が選んだのは「金利2番目」の三菱UFJ銀行
最終的に佐藤家が選んだのは、金利では4行中3番目、しかし純メリットでは最大の三菱UFJ銀行だった。決め手は3つ。
- 総諸費用が13.2万円と小さく、手元資金の大部分を残せる
- 元が取れるまで2.6年なので、想定外の転勤・住み替えがあっても損をしにくい
- 月々の返済減少額(4,213円)自体はSBIとの差が640円程度と小さく、実質的な体感差がほとんどない
「一番低い金利」ではなく「一番早く元が取れて、かつ長期でも得な選択肢」を基準にしたことで、佐藤家は当初の直感(SBI一択)とは違う結論にたどり着いた。
借り換えを検討する人へのチェックリスト
- [ ] 残債と残りの返済回数を正確に把握しているか
- [ ] 比較対象の銀行の事務手数料が「定率型」か「定額型」か確認したか
- [ ] 登記費用・司法書士報酬を含めた総諸費用を出したか
- [ ] 損益分岐点(元が取れるまでの期間)を計算したか
- [ ] 手元資金のうち、諸費用にいくらまでなら使えるか決めているか
- [ ] 住宅ローン控除の残り適用年数・要件を確認したか(借り換え後も要件を満たせば継続可能)
よくある質問
この試算の前提データはどこから?
毎月返済額・残債は元利均等返済の標準式で算出。金利・事務手数料の型は本サイトの住宅ローン銀行別比較シミュレーターに登録された2026年時点の各行公表データを使用した。登記費用(抵当権抹消・設定)と司法書士報酬は一般的な相場を概算で計上しており、軽減税率の適用可否や実際の司法書士報酬は物件・依頼先によって異なる。正確な諸費用は借り換え先の金融機関・司法書士に必ず見積もりを取ってほしい。
保証料や団体信用生命保険料の差は含まれている?
含めていない。保証料内包型か別建てか、団信の保障内容(金利上乗せ型か無料付帯か)は銀行ごとに差があり、本試算は事務手数料と登記関連費用のみを比較している。実際の意思決定では、これらも含めた最終見積もりで再計算する必要がある。
借り換えで損をするのはどんなケース?
残債が少額(1,000万円未満など)で残りの返済期間が短い場合、定率型手数料はもちろん定額型でも諸費用を回収しきれないことがある。目安として、残りの返済期間が10年を切っている場合は、借り換えより繰上返済を検討したほうが有利なことが多い。住宅ローン繰り上げ返済シミュレーターで比較できる。
数字が自分のケースと合わない場合は?
借入額・金利・経過年数・借り換え先の条件を入れ替えれば、自分に近い数字が出せる。住宅ローン銀行別比較シミュレーターに実際の残債と検討中の銀行を入力して確認してほしい。
関連シミュレーター
- 住宅ローン銀行別比較シミュレーター — 主要10行の金利・手数料タイプを一括比較
- 住宅ローン月々返済額シミュレーター — 残債・残り期間から毎月返済額を計算
- 住宅ローン繰り上げ返済シミュレーター — 借り換えと繰上返済のどちらが有利か比較
- 住宅ローン 変動 vs 固定 — 金利タイプ自体を見直す場合の比較
- 住宅ローン控除シミュレーター — 借り換え後の控除額を再確認