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法人化(法人成り)は所得800万円から得|損益分岐点と節税額シミュレーション【2026】

個人事業主の法人化(法人成り)が明確に得になるラインは所得800〜1,000万円が目安。令和8年度税制改正(基礎控除104万円・給与所得控除最低74万円)反映で、売上800万円(経費率30%)はほぼ拮抗、1,000万円で手取り差年約32万円、2,000万円で約123万円(法人内部留保込みの試算値)。設立費用25万円・維持コスト年30〜60万円を含めてメリット・デメリットを試算。合同会社なら設立8〜10万円。

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法人化の損益分岐点は「所得800〜1,000万円」が目安

個人事業主と法人では税率の構造が根本的に異なります。所得が増えるほど個人の税率が上がるため、所得800〜1,000万円を超えたら法人化が有利になるのが一般的です。

ただし、この「損益分岐点」は経費率、扶養家族の有無、小規模企業共済の利用状況などによって変わります。この記事では、令和8年度税制改正(2026年12月1日施行・令和8年分の所得から適用)後の税制と、協会けんぽ令和8年度の保険料率に基づいて、法人化の判断に必要な情報を詳しく解説します。

個人事業主 vs 法人の税負担比較

売上別の手取り比較(令和8年分・シミュレーター実装値)

以下は経費率30%、40歳・東京・扶養なし、合同会社の場合に、法人化シミュレーターの実装をそのまま実行した手取り比較です。法人側は「手取りが最大になる役員報酬」を10万円刻みで自動探索した結果を使っています。

年間売上個人事業主の手取り法人化の手取り(最適役員報酬)差額(法人が有利なら+)
400万円約212.2万円約184.6万円(報酬110万円)−約27.6万円
500万円約261.7万円約239.6万円(報酬110万円)−約22.0万円
600万円約310.8万円約294.7万円(報酬110万円)−約16.1万円
800万円約404.1万円約404.9万円(報酬110万円)ほぼ同額(+約0.8万円)
1,000万円約481.1万円約513.0万円(報酬110万円)+約31.9万円
1,500万円約689.0万円約778.7万円(報酬140万円)+約89.7万円
2,000万円約891.3万円約1,014.0万円(報酬250万円)+約122.8万円

※ 個人は所得税+住民税+事業税+国民健康保険(東京23区の令和8年度料率)+国民年金を差し引いた手取り。法人は役員個人の手取りに法人に残る税引後利益(内部留保)を加算し、税理士費用年30万円を差し引いた額(設立初年度の費用約10万円は含まず)。社会保険は協会けんぽ東京の令和8年度料率(健康保険9.85%+介護1.62%+子ども・子育て支援金0.23%)と厚生年金18.3%を標準報酬月額で計算し、法人税等には法人住民税の法人税割(7.0%)と特別法人事業税も含めています。

損益分岐は「売上−経費=約560万円」です。経費率10%なら売上620万円、50%なら1,110万円が分岐点で、利益で見るとほぼ同じ水準になります。配偶者を扶養している場合は、個人事業主なら払う配偶者の国民年金(年21.5万円)と国保の均等割が法人化で不要になるため、分岐点は売上560万円(経費率30%)まで下がります。逆に40歳未満(介護保険料なし)では830万円、事業税のかからない業種では840万円に上がります。

2つ注意点があります。第一に、法人側の手取りには「法人に残したお金」が含まれており、これを個人の生活費に移すには将来の役員報酬・配当・退職金などの形で別途課税されます。第二に、最適役員報酬が年110万円前後と極端に低くなるのは、法人に利益を残せば社会保険料(労使合計約30%)がかからないという計算上の構造によるものです。この2点を割り引くと、維持コスト(年間30〜60万円)を賄ったうえで実務上も明確にメリットが出るのは、従来どおり所得(売上−経費)800万円以上が目安になります。

なぜ法人化すると税金が安くなるのか

1. 税率構造の違い

個人と法人の税率を比較すると、その差は明確です:

個人事業主の税率(累進課税):

課税所得所得税率住民税合計
〜195万円5%10%15%
195〜330万円10%10%20%
330〜695万円20%10%30%
695〜900万円23%10%33%
900〜1,800万円33%10%43%
1,800〜4,000万円40%10%50%
4,000万円〜45%10%55%

※ 所得税率は所得税法速算表(2026年度)に基づく

  • 法人税: 所得800万円以下 15%、800万円超 23.2%(15%は中小法人の軽減税率の特例。令和7年度改正で2027年3月31日までに開始する事業年度まで延長。所得10億円超の事業年度は17%)
  • 法人住民税均等割: 約7万円/年(資本金1,000万円以下)
  • 法人事業税: 約3.5%
  • 地方法人税: 法人税額の10.3%
  • 防衛特別法人税: 2026年4月1日以後に開始する事業年度から、(基準法人税額−500万円)×4%。500万円の控除があるため、法人所得がおおむね2,440万円以下なら0円(申告書の提出は必要)で、一人法人の法人成りではほぼ影響しません

法人の実効税率は概ね25〜33%に収まるため、個人の所得税率が33%(課税所得695万円〜)を超えたあたりから法人化が有利になります。

2. 役員報酬による所得分散

法人化の最大のメリットは給与所得控除が使えることです。

  • 事業所得1,000万円 → 役員報酬700万円+法人利益300万円
  • 給与所得控除: 約180万円(課税所得が180万円減る)
  • この180万円分の税金が丸ごと節約できる

給与所得控除は年収850万円で上限195万円に達しますが、それでも年間40〜60万円の節税効果があります。

3. 経費の幅が広がる

経費項目個人事業主法人
社宅(自宅の一部)按分のみ家賃の50〜80%を経費化可能
生命保険控除上限あり(最大12万円)全額経費(一定の条件下)
出張日当不可非課税で支給可能
退職金不可損金算入可能
慶弔費限定的幅広く認められる

特に出張日当と退職金は法人ならではの節税手段です。出張日当は所得税・社会保険料の対象外となるため、実質的な手取りが増えます。

法人化のデメリット

維持コスト

項目年間費用備考
税理士顧問料20〜40万円決算申告料含む。規模による
法人住民税(均等割)約7万円赤字でも必ず発生
社会保険料の増加分ケースによる厚生年金は国民年金より高い
決算・登記費用5〜10万円役員変更登記等
合計約30〜60万円―

所得が低い段階では、この維持コストが節税額を上回り、法人化すると逆に損をします。

社会保険料の負担

法人化すると社会保険(健康保険+厚生年金)への加入が義務です。料率は合計約30%(会社負担+本人負担、40〜64歳の場合)。

役員報酬社会保険料(会社+本人)本人負担分
300万円約95万円約47万円
500万円約149万円約74万円
700万円約215万円約106万円

※ 協会けんぽ東京・40〜64歳の場合(シミュレーター実装値)。料率は労使合計で、厚生年金18.3%+健康保険9.85%(令和8年度・東京。全国平均9.90%)+介護保険1.62%(40〜64歳のみ)+子ども・子育て支援金0.23%(2026年4月分から)=30.0%を標準報酬月額にかけ、会社負担には子ども・子育て拠出金0.36%も加えています。都道府県により健康保険料率は異なり、39歳以下は介護保険がかかりません。

国民健康保険+国民年金より高くなることが多いですが、将来の年金受給額が増えるメリットがあります。厚生年金は報酬に比例して年金額が増えるため、長期的な資産形成として捉えることもできます。

事務負担の増加

  • 毎月の給与計算・源泉徴収
  • 年末調整
  • 法人の確定申告(個人より複雑)
  • 議事録・各種届出の管理
  • 社会保険の手続き

これらの事務作業は税理士に依頼するのが一般的ですが、その分の費用が維持コストに含まれます。

最適な役員報酬の設定

役員報酬の金額によって、法人と個人の税負担バランスが変わります。「手取り最大化」の観点から最適な報酬額を見つけることが重要です。

事業所得1,000万円の場合(売上1,000万円・経費0・税理士費用30万円の実装値)

役員報酬法人税等個人の税金社保(会社+本人)手取り合計(内部留保込み)
110万円(最適)約194万円0円約32万円約744万円
400万円約117万円約23万円約124万円約706万円
600万円約66万円約46万円約182万円約676万円
700万円約41万円約65万円約215万円約649万円

注意: 法人の税引後利益は法人に残るお金として手取りに加算しています。個人に引き出す場合は配当課税等がかかります。また、役員報酬を極端に下げると厚生年金の将来受給額が減り、住宅ローン等の審査でも不利になるため、実務では生活費・老後資金とのバランスで決めます。

シミュレーターでは10万円刻みで自動探索し、手取りが最大になる役員報酬額を算出します。役員報酬に社会保険料が約30%かかる一方、法人内部留保には法人税等(中小法人で実効約22〜35%)しかかからないため、「手取り合計最大化」の観点では報酬を低くする解に寄りやすい構造です。

役員報酬設定の注意点

  • 期首3ヶ月以内に決定が必要(原則として期中変更不可)
  • 定期同額給与でなければ経費にならない
  • 利益が読めない1期目は控えめに設定するのが安全

小規模企業共済・iDeCoの活用

法人化の比較をする際は、掛金が全額所得控除になる制度の枠も考慮に入れましょう。2026年12月分からiDeCoの上限が大きく変わります。

制度対象掛金上限(2026年11月分まで)掛金上限(2026年12月分から)節税効果(税率30%・新上限)
小規模企業共済個人事業主・小規模法人の役員月7万円(年84万円)変更なし年約25万円
iDeCo個人事業主(国民年金第1号)月6.8万円(年81.6万円)月7.5万円(年90万円)年約27万円
iDeCo法人役員(企業年金なし)月2.3万円(年27.6万円)月6.2万円(年74.4万円)年約22万円

※ 第1号の7.5万円は国民年金基金・付加保険料との合算枠。2026年12月分(2027年1月引き落とし分)から適用。

これまでは「個人事業主はiDeCo年81.6万円、法人役員は年27.6万円」と大差があり、法人化するとiDeCoの節税枠が年54万円も縮むのが比較のポイントでした。2026年12月分からは個人事業主が年90万円、企業年金のない法人の役員が年74.4万円となり、差は年15.6万円(税率30%なら節税額の差は約5万円)まで縮まります。小規模企業共済は従業員20人以下(業種により5人以下)の法人の役員も加入でき、掛金は同じく全額所得控除です。2027年以降、個人事業主なら小規模企業共済+iDeCoで年最大174万円の所得控除が可能です。掛金ごとの節税額はiDeCoシミュレーターで確認できます。

法人化にかかる初期費用

法人形態登録免許税定款認証その他合計
株式会社15万円5万円印鑑等2〜3万円約22〜25万円
合同会社6万円不要印鑑等2〜3万円約8〜10万円

節税が目的なら、設立費用の安い合同会社で十分です。後から株式会社への組織変更も可能です(費用は約10万円)。

法人化のタイミング

すぐに法人化すべきケース

  • 事業所得が1,000万円を超えている
  • 消費税の課税事業者になる年(課税売上高1,000万円超の翌々年)
  • 取引先から法人格を求められている
  • 従業員を雇いたい(社会保険に加入させたい)

まだ個人のままでよいケース

  • 事業所得が500万円以下
  • 事業が安定していない(赤字リスクあり)
  • 事務作業を増やしたくない
  • 小規模企業共済+iDeCoの節税枠を最大限活用したい

2026〜2027年の税制改正ポイント(令和8年度改正など)

法人化の判断に影響する最近の主な改正点:

  • 所得税の基礎控除を引き上げ(令和8年度改正・2026年12月1日施行、令和8年分から適用): 令和8・9年分は合計所得489万円以下104万円/489万円超655万円以下67万円/655万円超2,350万円以下62万円。令和7年分の95万・88万・68万・63万・58万円の5段階から整理されました。令和10年分以後は132万円以下99万円・それ以外62万円の予定です。住民税の基礎控除は43万円のままで、給与所得控除などの改正は令和9年度分の住民税から反映されます
  • 給与所得控除の最低保障が65万円→74万円に(令和8・9年分。給与収入190万円以下は一律74万円、220万円以下まで影響)。少額の役員報酬や家族役員の報酬に効きます。令和10年分以後の最低保障は69万円です
  • 扶養親族・同一生計配偶者の所得要件が58万円→62万円に(給与収入なら136万円まで)。家族を役員にして報酬を払う場合、報酬136万円以下なら配偶者控除・扶養控除の対象に残せます(個人事業の青色事業専従者は、給与額にかかわらず配偶者控除・扶養控除の対象外)
  • 青色申告特別控除の見直し(令和9年分から): 複式簿記+e-Taxで65万円の要件は維持しつつ、優良な電子帳簿の作成・保存で最大75万円に。一方、簡易簿記の10万円控除は、前々年の事業所得等の収入金額が1,000万円を超えると0円になります。売上1,000万円超で簡易簿記のまま個人を続けている人は、法人化の前に複式簿記への移行も比較対象になります
  • 中小法人の軽減税率15%は2027年3月31日までに開始する事業年度まで延長済み(所得10億円超の事業年度は17%)。その後の扱いは令和9年度改正で決まります
  • 防衛特別法人税が2026年4月1日以後開始の事業年度から課税(基準法人税額から500万円控除後に4%)
  • 国民年金は月額17,920円(2026年度・令和8年度)
  • 社会保険料: 協会けんぽの健康保険料率は令和8年度全国平均9.90%(前年度10.00%)、介護保険料率1.62%、2026年4月分から子ども・子育て支援金0.23%が上乗せ
  • iDeCoの掛金上限引き上げ(2026年12月分から): 個人事業主 月6.8万→7.5万円、企業年金のない会社員・法人役員 月2.3万→6.2万円
  • 厚生年金保険料率18.3%は2017年以降固定(標準報酬月額の上限65万円=年収約780万円で頭打ち)
  • インボイス制度: 免税事業者の法人化メリットは限定的

よくある質問(FAQ)

法人化(法人成り)は所得いくらから得になる?

明確にメリットが出るのは課税所得800万円以上です。法人の維持コスト(年30〜60万円)を差し引いても実質的に得をするのがこのライン。経費率が低い(=利益が大きい)業種ほど分岐点は下がります。なお法人化シミュレーターの損益分岐は「法人に残す税引後利益」も手取りに含めるため、経費率30%なら売上約800万円(所得約560万円)から法人有利と判定されますが、内部留保を個人に移す際の課税を考慮すると、実務上の目安は所得800万円以上と考えるのが安全です。

法人化すると年間いくら節税できる?

経費率30%・扶養なし・合同会社のモデルケース(シミュレーター実装値)で、売上800万円ではほぼ拮抗、1,000万円で手取り差年約32万円、1,500万円で約90万円、2,000万円で約123万円です(令和8年分の税制で計算)。ただしこの差額には法人に残る税引後利益(個人に移す際は別途課税)が含まれます。役員報酬への給与所得控除(令和8年分は最低74万円・最大195万円)と法人税率の低さ、法人内部留保に社会保険料がかからないことが主な要因です。

株式会社と合同会社、どちらで法人化すべき?

節税が目的なら合同会社で十分です。設立費用は株式会社が約22〜25万円に対し、合同会社は約8〜10万円(定款認証不要・登録免許税6万円)。税制上の優遇はどちらも同じで、後から株式会社へ組織変更も可能(費用約10万円)です。取引先の信用や上場を見据える場合のみ株式会社を検討します。

赤字でも法人住民税はかかる?

かかります。法人住民税の均等割(資本金1,000万円以下で約7万円/年)は赤字でも必ず発生します。これが法人化最大の固定費リスクで、事業が安定しない段階で法人化すると、節税どころか負担増になります。

法人化で社会保険料はどれくらい増える?

法人化すると社会保険(健康保険+厚生年金+介護保険)への加入が義務となり、料率は協会けんぽ・40〜64歳で合計約30%(厚生年金18.3%+健康保険9.90%+介護1.62%+子ども・子育て支援金0.23%、会社負担+本人負担)。役員報酬500万円なら年約150万円(本人負担約75万円)です。国民健康保険+国民年金より高くなりがちですが、厚生年金は将来の年金受給額が報酬比例で増えるメリットがあります。

この計算の前提データはどこから?

税率は所得税法の速算表、法人税率15%/23.2%は国税庁「法人税の税率」、社会保険料率は日本年金機構(厚生年金18.3%)と協会けんぽ「令和8年度保険料率」(健康保険9.90%・介護1.62%・子ども・子育て支援金0.23%)、設立費用は登録免許税法に基づいています。基礎控除(所得税104万〜62万円・住民税43万円)と給与所得控除の最低保障74万円は国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」と「令和8年分 基礎控除等Q&A」、青色申告特別控除の令和9年分以後の見直しは国税庁リーフレット「令和9年分以後の青色申告特別控除」、iDeCoの新上限は厚生労働省の公表資料、国民年金は2026年度の月17,920円。売上別の手取り比較表は法人化シミュレーターの実装を実行して検算した値です。本記事の試算は経費率30%・扶養なし・合同会社を前提とした概算で、実際は業種・扶養・小規模企業共済の利用状況で変わります。

数字が実感と合わない場合は?

経費率・扶養親族数・小規模企業共済やiDeCoの掛金で損益分岐点は大きく動きます。法人化シミュレーターの詳細設定でご自身の条件を入力すると正確な差額が出ます。それでも実態と乖離する場合はお問い合わせからご連絡ください。

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