生命保険の必要保障額、実は計算で出せる|年収・家族構成別の目安
生命保険の必要保障額の計算方法を解説。遺族年金・団信を考慮した上で、本当に必要な保障額の出し方と保険の選び方をまとめました。
「とりあえず3,000万円」で入っていませんか?
生命保険の保障額は、なんとなくの金額で決めている人が多いです。しかし、必要保障額は計算で出せます。公的制度を正しく理解すれば、必要以上の保険料を払わなくて済みます。
必要保障額の計算式
必要保障額 = 遺族の支出総額 − 遺族の収入総額
遺族の支出(万が一の場合に必要なお金)
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 生活費(末子独立まで) | 現在の生活費 × 70% × 年数 |
| 生活費(末子独立後〜配偶者の老後) | 現在の生活費 × 50% × 年数 |
| 子どもの教育費 | 1人あたり1,000〜2,000万円 |
| 住居費(賃貸の場合) | 家賃 × 残り年数 |
| 葬儀費用 | 約200万円 |
遺族の収入(公的制度等でカバーされるお金)
| 項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 遺族年金 | 年100〜180万円(後述) |
| 配偶者の収入 | 就労による収入 |
| 死亡退職金 | 会社の規定による |
| 現在の貯蓄 | 預貯金・投資資産 |
| 住宅ローン(団信で完済) | ローン残高全額 |
遺族年金はいくらもらえる?
遺族基礎年金
- 受給対象: 18歳年度末までの子がいる配偶者(または子)
- 金額: 年831,700円(令和7年度) + 子の加算(1・2人目 各239,300円、3人目以降 各79,800円)
- 子ども2人の場合: 年約131万円
遺族厚生年金(会社員の場合)
- 金額: 故人の厚生年金の報酬比例部分の3/4(加入300月未満なら300月とみなす最低保障あり)
- 年収500万円・勤続20年の場合: 年約50万円
合計すると
- 遺族基礎年金 + 遺族厚生年金 = 年約181万円(月約15万円)
- 末子が18歳になるまで受給可能
具体的な計算例
条件
- 夫35歳・年収500万円(会社員)、妻33歳(パート年収100万円)、子ども2人(3歳・1歳)
- 持ち家(住宅ローン残高3,000万円、団信加入)
- 現在の月の生活費: 30万円、貯蓄: 300万円
支出の計算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 生活費(末子独立まで17年、月21万円) | 4,284万円 |
| 生活費(その後30年、月15万円) | 5,400万円 |
| 教育費(子ども2人) | 2,400万円 |
| 葬儀費用 | 200万円 |
| 支出合計 | 12,284万円 |
※住居費は団信でローン完済のため不要。
収入の計算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 遺族年金(子が18歳まで17年、年約181万円) | 3,077万円 |
| 遺族厚生年金(その後30年) | 1,500万円 |
| 妻の収入(パート60歳まで27年) | 2,700万円 |
| 妻の老齢年金(65歳〜30年) | 1,950万円 |
| 現在の貯蓄 | 300万円 |
| 死亡退職金 | 500万円 |
| 収入合計 | 10,027万円 |
必要保障額
12,284万円 − 10,027万円 = 約2,257万円 ≒ 2,300万円
「とりあえず3,000万円」より700万円少なくて済む計算です。
年収・子どもの人数別の必要保障額早見表(シミュレーター実装値)
上の手計算をもっと簡単に確認できるのが生命保険 見直しシミュレーターです。35歳・末子1〜3歳・配偶者パート年収100万円・団信あり・貯蓄300万円の条件で、実装されている計算式(遺族年金は令和7年度定数・教育費は公私ミックス)を実行すると次のようになります。
| 年収 | 子どもの人数 | 遺族年金の総額 | 必要保障額 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 1人 | 約2,840万円 | 0円(貯蓄と遺族年金でカバー可) |
| 400万円 | 2人 | 約3,461万円 | 約655万円 |
| 500万円 | 1人 | 約3,148万円 | ほぼ0円(約7万円) |
| 500万円 | 2人 | 約3,769万円 | 約1,376万円 |
| 600万円 | 2人 | 約4,077万円 | 約2,097万円 |
| 500万円 | 2人(配偶者が就労できない場合) | 約3,769万円 | 約4,376万円 |
ポイントは2つあります。第一に、配偶者にパート程度でも収入があるだけで必要保障額が3,000万円下がること(500万円・子2人の行を比較)。第二に、子1人・団信ありなら必要保障額がほぼゼロになるケースも珍しくないことです。「とりあえず3,000万円」がいかに大雑把か分かります。
持ち家(団信あり)vs 賃貸で大きく変わる
住宅ローンに団信(団体信用生命保険)がついていれば、死亡時にローンが完済されます。これだけで必要保障額が2,000〜3,000万円下がることも。
賃貸の場合は将来の家賃が全額必要になるため、保障額を上乗せする必要があります。
おすすめの保険タイプ
収入保障保険
毎月一定額が遺族に支払われるタイプ。時間の経過とともに総受給額が減っていくため、保険料が最も安い。合理的な選択です。
- 例: 月15万円の収入保障保険(60歳まで)、保険料は月2,500〜3,500円
定期保険
一定期間、一定額の死亡保障。シンプルで分かりやすい。
終身保険は保障としては非効率
貯蓄機能がある分、保障1円あたりの保険料が高い。保障と貯蓄は分けて考えるのが合理的です。
保険の見直しタイミング
- 子どもが生まれたとき: 保障を増やす
- 住宅を購入したとき: 団信で保障が不要になる分を減らす
- 子どもが独立したとき: 大幅に保障を減らす
- 収入が変わったとき: 遺族の生活費に影響
特に「住宅購入直後」と「末子の大学卒業時」は必要保障額が数千万円単位で変わる節目です。この2回は必ず保険証券を引っ張り出し、必要保障額と現在の保険金額が乖離していないかを確認しましょう。保険会社の担当者に言われるがまま追加契約すると、過剰保障に陥りやすいので注意が必要です。
家族構成別の必要保障額の目安
生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2022年度)によると、世帯主に万が一のことがあった場合に必要な生活資金(遺族の生活費を除く純粋な必要保障額)の平均は次の通りです。
| 家族構成 | 必要保障額の平均 |
|---|---|
| 独身(子なし) | ほぼ不要(葬儀費200万円程度) |
| 夫婦のみ(共働き) | 300〜500万円(葬儀+予備費) |
| 夫婦+未就学児1〜2人 | 2,500〜4,000万円 |
| 夫婦+小中学生1〜2人 | 2,000〜3,500万円 |
| 夫婦+高校生以上1〜2人 | 1,000〜2,500万円 |
| 夫婦+独立済みの子 | 300〜800万円 |
子どもが小さいほど保障が厚くなるのが自然です。子どもの独立が近づくにつれて段階的に減額する「逓減定期保険」や「収入保障保険」が合理的と言われるのはこのためです。
よくある「過剰保障」パターン
保険の見直しで削減しやすい代表例:
- 独身時代に加入した終身保険をそのまま継続 — 保険料が高く、保障機能としては非効率
- 住宅ローン契約後も従来の死亡保障を維持 — 団信で住宅ローン分がカバーされているのに、保障を減らしていない
- 子ども独立後も子育て期の保障を継続 — 子ども2人が独立すれば教育費・養育費分(2,000〜3,000万円)の保障はほぼ不要
- 貯蓄型保険を「貯蓄」と誤解 — 解約返戻金率は10〜20年経たないと元本割れするケースが多く、貯蓄としては非効率
同じ保険料で、掛け捨ての定期保険に切り替え、浮いた金額を NISAシミュレーター で試算するような運用に回す方が、トータルリターンが大きくなることもあります。
生命保険料の相場(定期保険・30代)
| 年齢・性別 | 保障1,000万円・10年定期 | 保障2,000万円・10年定期 |
|---|---|---|
| 30歳男性(非喫煙体) | 月1,200〜1,800円 | 月2,300〜3,500円 |
| 30歳女性(非喫煙体) | 月900〜1,400円 | 月1,700〜2,700円 |
| 40歳男性(非喫煙体) | 月1,900〜2,800円 | 月3,700〜5,500円 |
| 40歳女性(非喫煙体) | 月1,300〜2,000円 | 月2,500〜3,900円 |
健康状態・喫煙の有無・保険会社で保険料は20〜50%変動します。健康体割引・非喫煙者割引を活用すると、同じ保障で3〜5割安くなるケースもあります。
関連するシミュレーター
- 生命保険 見直しシミュレーター — 家族構成・年収・団信から必要保障額を自動算出
- 年齢別 必要保険額シミュレーター — 現在から定年までの必要保障額の推移をグラフ化
- 保険料の総支払額シミュレーター — 生命保険・医療保険・自動車保険の生涯支払額を一括計算
- 医療保険 必要額シミュレーター — 高額療養費制度を考慮した医療保障の必要額を判定
- 保障の過不足チェッカー — 死亡・医療・がん・就業不能の4分野で保障の適正度を判定
- 就業不能時の収入保障シミュレーター — 死亡ではなく「働けなくなった場合」の必要保障を計算
団信の種類とメリット
住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険(団信)は、死亡・高度障害だけでなく以下の保障を上乗せできる商品が主流になっています。
| 団信の種類 | カバー範囲 | 金利上乗せ |
|---|---|---|
| 一般団信(基本) | 死亡・高度障害 | 0% |
| 三大疾病団信 | 上記+がん・急性心筋梗塞・脳卒中 | 0.2〜0.3% |
| 七大・八大疾病団信 | 上記+高血圧症・糖尿病・慢性腎不全など | 0.3〜0.4% |
| 全疾病団信 | すべての病気・けがで就業不能 | 0.2〜0.3% |
手厚い団信に加入している場合、別途の死亡保障や就業不能保険の必要性はさらに下がります。逆に団信で保障されている範囲については、民間の保険で重複加入していないか確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. この記事の計算の前提データはどこから?
遺族年金は日本年金機構の令和7年度額(遺族基礎年金831,700円・子の加算1〜2人目239,300円/3人目以降79,800円、遺族厚生年金は報酬比例×3/4・最低保障300月)、家族構成別の目安は生命保険文化センター「生活保障に関する調査」、保険料相場は主要ネット生保の2025〜2026年公表料率を参考にしています。早見表は当サイトの生命保険見直しシミュレーターの実装式をそのまま実行した値です。
Q2. 共働きの場合、妻(夫)にも生命保険は必要?
収入合算で家計が成り立っているなら、どちらが亡くなっても家計が破綻しない保障設計が必要です。注意点は、妻死亡時に夫が受け取る遺族厚生年金には所得制限や年齢要件(2028年3月までは55歳以上でないと受給権が生じない等)があり、夫死亡時より公的保障が薄くなりがちなこと。共働き世帯はむしろ収入の低い側ではなく「保育・家事の担い手」を失った場合の外注コスト(学童・シッター等で月3〜10万円)も織り込んで、夫婦それぞれに収入保障保険を薄く掛けるのが合理的です。
Q3. 2028年4月の遺族厚生年金の改正で保障設計は変わる?
変わります。2028年4月から、子のない配偶者への遺族厚生年金が男女とも「原則5年の有期給付」に段階的に統一されます(現行は30歳以上の妻なら終身)。改正後に死別した場合、子どもがいない・すでに独立した世帯では公的保障が大きく減るため、その分を民間保険や資産形成でカバーする必要性が上がります。詳しくは遺族厚生年金2028年改正の解説記事をご覧ください。なお子育て期の遺族基礎年金+子加算は改正の対象外です。
Q4. 収入保障保険の保険金を受け取るとき、税金はどうなる?
受け取り方で課税が変わります。年金形式で受け取る場合、受給権の評価額に相続税がかかったうえで、2年目以降の受取額の一部が雑所得として所得税の対象になります(相続税の課税対象部分は非課税)。一括受取を選ぶと年金形式より総受取額が2〜3割減る商品が多いため、「月額いくら必要か」で設計しつつ、受取時は税理士や保険会社に課税シミュレーションを確認するのが安全です。
Q5. 数字が実感と合わない場合は?
遺族年金は加入期間・平均標準報酬・子の年齢で大きく変わり、本記事の例は簡略化した概算です。教育費の想定(公立/私立)や配偶者の就労見込みを変えるだけで必要保障額は数千万円動きます。シミュレーターで自分の条件を入力して確認し、明らかな誤りにお気づきの場合はお問い合わせからお知らせください。
あなたの必要保障額をシミュレーション
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