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最低賃金はどう決まる?|目安答申・ABCランク・地方審議の仕組みと、給料が下回っていないかの検算式【2026年度改定】

2026年度の最低賃金は7月23日の第4回目安小委員会でも決着せず、月内決着を目指す異例の展開に。最低賃金が「諮問→目安答申→47都道府県の地方審議→10月発効」というプロセスで決まる仕組みを、ABCランク制・決定の3要素・2025年度実績(全国加重平均1,121円)とともに解説。月給制でも検算できる計算式、対象に入らない手当、違反時の対処法まで。

今年10月からの「時給の下限」は、まだ決まっていない

この記事を書いている2026年7月24日時点で、今年10月以降のあなたの時給の下限——2026年度の最低賃金は、まだ決まっていない。

例年なら7月下旬に開かれる中央最低賃金審議会の「目安に関する小委員会」で引き上げ額の目安が固まるが、2026年度は7月23日の第4回小委員会でも労使の隔たりが埋まらず、目安額の決定は持ち越しになった。公表されていた審議日程はこの日が最後で、月内決着を目指してさらに会合を重ねる異例の展開になっている。

ニュースでは毎年「最低賃金、過去最大の引き上げ」といった見出しが躍るが、誰が・何を根拠に・どんな手順であの金額を決めているのかは意外と知られていない。この記事では、最低賃金が決まる仕組みを最初から最後まで追いかける。自分の給料が最低賃金を下回っていないかを月給制でも検算できる計算式も紹介するので、10月の改定前にぜひ一度確認してほしい。

最低賃金は2種類ある

最低賃金法にもとづく最低賃金には、実は2つの種類がある。

  • 地域別最低賃金 — 47都道府県ごとに定められ、産業・職種を問わずその都道府県で働くすべての労働者に適用される。ニュースで報じられる「最低賃金」は基本的にこちら
  • 特定(産業別)最低賃金 — 鉄鋼、自動車、電気機械器具など特定の産業について、労使の申出にもとづいて設定されるもの。全国に約220件あり、地域別より高い金額に設定される

両方が適用される労働者には、高いほうの金額が適用される。以下、この記事では地域別最低賃金の決まり方を中心に見ていく。

決定までの1年間のスケジュール

地域別最低賃金は、毎年次のような手順で改定される。

時期手続き主体
6月下旬厚生労働大臣が改定の目安について諮問中央最低賃金審議会
7月「目安に関する小委員会」で引き上げ額を審議公益・労働者・使用者の三者委員
7月下旬〜8月上旬ランク別の引き上げ額の目安を答申中央最低賃金審議会
8月目安を参考に、各都道府県の実情を踏まえて審議・答申47の地方最低賃金審議会
8月下旬〜9月異議申出の受付を経て金額を決定・官報で公示都道府県労働局長
10月〜改定額が順次発効

ポイントは、国が全国一律に金額を決めているわけではないこと。中央最低賃金審議会が示すのはあくまで「目安」で、法的な決定権は各都道府県の地方最低賃金審議会の答申を受けた都道府県労働局長にある。だから同じ年の改定でも、目安どおりの県もあれば、目安を大きく上回る県も出てくる。

ABCランク制——都道府県は3グループに分かれている

目安は47都道府県に個別に示されるのではなく、経済実態に応じた3つのランクごとに示される(2023年度に4ランクから3ランクへ再編)。

ランク該当都道府県
A6都府県埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・大阪
B28道府県北海道・宮城・静岡・京都・広島・福岡など
C13県青森・岩手・秋田・高知・宮崎・沖縄など

2025年度(令和7年度)の目安は、Aランク・Bランク63円、Cランク64円(全国加重平均63円、率にして6.0%)だった。地方経済の底上げのため、近年は経済規模の小さいCランクにあえて高い目安を示す傾向がある。

審議で使われる「3つの要素」

金額を審議する際の考慮要素は、最低賃金法9条で決められている。

  1. 労働者の生計費 — 食費・住居費など、働く人が生活するのに必要な費用
  2. 労働者の賃金 — 実際に支払われている賃金の水準(賃金構造基本統計調査など)
  3. 通常の事業の賃金支払能力 — 企業側が賃上げに耐えられるか

さらに生計費の考慮にあたっては、生活保護の給付水準との整合性に配慮することが法律に明記されている。「フルタイムで働いたのに生活保護より手取りが少ない」という逆転現象を防ぐためのルールだ。

2025年度は何が起きたか——目安63円が、結果66円になった

直近の2025年度(令和7年度)改定は、この仕組みのダイナミズムがよく分かる年だった。

  • 中央の目安: 全国加重平均63円(6.0%)
  • 実際の改定結果: 全国加重平均1,121円、引き上げ額66円(6.3%)で過去最大

地方審議会が目安を上回る答申を相次いで出し、最終結果が目安を3円上振れした。都道府県別では東京が1,163円→1,226円となり、最も低い高知・宮崎・沖縄でも1,023円。全都道府県で時給1,000円を超えた。

もうひとつ特徴的だったのが発効日の分散だ。例年は10月1日前後に一斉発効するが、2025年度は東京の10月3日を皮切りに、大幅な引き上げと引き換えに発効を遅らせる県が続出し、最も遅い秋田県は2026年3月31日発効になった。「引き上げ額を大きくする代わりに、企業の準備期間を確保する」という地方審議会の調整の産物で、同じ年度の改定でも約半年の時差が生まれている。

あなたの給料は大丈夫か——月給制の検算式

最低賃金は時給で示されるため、時給制ならそのまま比べればよい。問題は月給制で、次の式で時給換算してから比較する。

```
時給換算額 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間
月平均所定労働時間 = 年間所定労働時間 ÷ 12
```

ここで重要なのが、月給に算入できない手当があること。以下は計算から除外する。

  • 通勤手当・家族手当・精皆勤手当
  • 時間外・休日・深夜労働の割増賃金
  • 賞与など1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 結婚手当など臨時に支払われる賃金

検算例: 基本給17万円+職務手当1.5万円+通勤手当1万円(総支給19.5万円)、年間所定労働時間2,000時間の場合。

  • 算入できる賃金 = 170,000 + 15,000 = 185,000円(通勤手当は除外)
  • 月平均所定労働時間 = 2,000 ÷ 12 ≒ 166.7時間
  • 時給換算 = 185,000 ÷ 166.7 ≒ 1,110円

この人が最低賃金1,023円の県で働いていれば適法だが、東京(1,226円)では最低賃金法違反になる。差額は時給116円、月166.7時間で月約19,300円。「総支給19.5万円もらっているから大丈夫」という思い込みが通用しないことが分かるはずだ。自分の実質時給は時給換算シミュレーターで残業込みでも確認でき、都道府県ごとの水準は最低賃金の都道府県別比較シミュレーターで生活費込みの手取り感覚まで比べられる。

下回っていたらどうなる?

地域別最低賃金を下回る賃金しか払っていない使用者には、最低賃金法により50万円以下の罰金が定められている。そして重要なのは、最低賃金未満の労働契約はその部分が無効になり、最低賃金と同額の定めをしたものとみなされることだ。

  • 差額は過去にさかのぼって請求できる(賃金請求権の消滅時効は当面3年)
  • 相談先は都道府県労働局・労働基準監督署。匿名での情報提供も可能
  • パート・アルバイト・学生・外国人労働者にも等しく適用される(都道府県労働局長の許可を受けた減額特例を除く)

なお派遣社員に適用されるのは、派遣元ではなく派遣先の所在地の最低賃金である。勤務先の会社の本社所在地でもない点に注意したい。

「1,500円」はいつ来るのか

政府は2026年7月21日に閣議決定した骨太方針2026で、全国加重平均1,500円の達成時期を「遅くとも2030年代前半」と明記した。現在の1,121円から1,500円までは約34%の引き上げが必要になる。

  • 年6%ペース(2025年度並み)なら約5年 → 2030年度に到達
  • 年4%ペースなら約7.5年 → 2033年度ごろに到達

つまり2025年度並みの引き上げが今後も続けば2030年前後、ペースが落ちても2030年代前半——政府目標はこの計算に沿って設定されている。時給1,500円はフルタイム(月166.7時間)で月収約25万円、年収約300万円に相当する。手取りでいくらになるかは年収から手取り計算シミュレーターで確認できる。

一方で、最低賃金の上昇は「年収の壁」との距離を毎年縮める。時給が上がるほど、扶養内で働けるパートの年間労働時間は短くなるからだ。壁との兼ね合いはパート収入の壁シミュレーターで試算してほしい。

よくある質問

Q. 自分の地域の最低賃金はどこで確認できますか?

厚生労働省の特設サイト「必ずチェック最低賃金」または各都道府県労働局のサイトで確認できます。2025年度改定は発効日が10月から翌年3月まで分散しているため、「金額」と「発効日」をセットで確認するのが確実です。

Q. 研修中・試用期間中は最低賃金より低くてもよい?

原則として適用されます。試用期間中の減額は、都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り認められる例外で、会社が独自の判断で「研修中だから」と最低賃金を下回る時給を設定することはできません。

Q. 深夜のバイトの時給はどう考えればいい?

22時〜5時の労働には25%以上の割増賃金が必要です。割増の基礎になる時給自体が最低賃金以上でなければならないため、最低賃金1,226円の東京なら深夜時給は最低でも1,226×1.25=1,532.5円以上になります。残業代を含めた計算は残業代計算シミュレーターが使えます。

Q. この記事の前提データはどこから?

制度の仕組みは最低賃金法および厚生労働省「最低賃金制度の概要」、2025年度の改定結果は厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について」と地域別最低賃金の全国一覧、2026年度の審議状況は中央最低賃金審議会目安に関する小委員会の公表資料(2026年7月23日・第4回)にもとづいています。1,500円目標は骨太方針2026(2026年7月21日閣議決定)です。

Q. 計算しても自分のケースが最低賃金割れか判断できない場合は?

歩合給・年俸制・変形労働時間制などは換算方法が複雑です。都道府県労働局・労働基準監督署が無料で相談を受け付けているほか、当サイトのお問い合わせフォームでも計算方法の疑問を受け付けています。

10月の改定前に——3つのチェックリスト

  • [ ] 自分の都道府県の現在の最低賃金と発効日を確認する(2025年度改定分がこの春にようやく発効した県もある)
  • [ ] 月給を時給換算して検算する — 算入できない手当を除いて「月給÷月平均所定労働時間」を計算
  • [ ] 扶養内で働いている人は、時給上昇後の年間労働時間を逆算する — 同じ時間数で働くと壁を超える可能性がある

例年どおりなら、2026年度の目安答申はまもなく出る。目安が出たら、次はあなたの県の地方審議会の番だ。

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