転職者の40.5%は賃金増・3人に1人は1割以上アップ——秋の転職シーズンに使う年代別の相場感と「12月末退職」の損得検算【2026年】
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」で、転職で賃金が増えた人は40.5%(前年比+3.3pt)、うち1割以上の増加は29.4%。年齢階級別に計算すると20代後半〜40代後半は「増加45〜46%」でほぼ横一線、50代後半から急落する。年収450万→495万円の転職でも手取り増は約34万円(額面差の75%)にとどまる検算、冬賞与70万円(手取り約55万円)を確保する12月末退職の定石、最終給与から引かれる住民税一括徴収約8.7万円まで、秋に動く人が9月に知っておくべき数字を整理した。
40.5%——2024年に転職した人のうち、前の職場より賃金が増えた人の割合だ(厚生労働省「令和6年雇用動向調査」)。前年の37.2%から3.3ポイント上がり、「減少した」29.4%をはっきり上回った。しかも増えた人の中身を見ると、「1割以上増えた」が29.4%を占める。転職者のほぼ3人に1人が、年収1割アップ以上を実現している計算になる。
人手不足と賃上げ圧力が続くいま、転職市場は数字の上でも「動いた人が報われやすい」局面にある。そして企業の下期採用が本格化する9〜10月は、年明け入社に向けた求人が出そろう時期でもある。この記事では、秋に転職活動を始める人向けに、①年代別の「賃金アップの相場感」、②年収アップが手取りでいくら残るかの検算、③「12月末退職・1月入社」というタイミングの損得、の3つを数字で整理する。
年代別の相場感——45歳までは「半分近くが賃金増」で横一線
「転職で年収が上がるのは若いうちだけ」とよく言われるが、最新データはその通説を半分だけ裏切っている。雇用動向調査の第8表(年齢階級・賃金変動区分別入職者数)から、年代別の賃金変動の割合を計算した結果がこれだ(常用労働者ベース。四捨五入の関係で合計は100%にならない)。
| 年齢 | 賃金が増えた | うち1割以上増 | 変わらない | 減った |
|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 50.5% | 38.5% | 31.5% | 16.8% |
| 25〜29歳 | 46.3% | 37.9% | 23.1% | 29.2% |
| 30〜34歳 | 46.1% | 36.0% | 29.1% | 24.2% |
| 35〜39歳 | 45.5% | 35.3% | 28.0% | 24.2% |
| 40〜44歳 | 45.9% | 33.2% | 23.7% | 29.0% |
| 45〜49歳 | 46.4% | 29.1% | 26.9% | 23.8% |
| 50〜54歳 | 39.0% | 26.3% | 31.7% | 28.2% |
| 55〜59歳 | 27.4% | 17.3% | 33.7% | 36.6% |
| 60〜64歳 | 13.6% | 7.9% | 24.2% | 60.9% |
読み取れることは3つある。
- 「賃金が増えた」割合は、25歳から49歳まで45〜46%でほぼ一定。 40代だから不利、ということは起きていない。45〜49歳(46.4%)は25〜29歳(46.3%)と同水準だ
- ただし「1割以上増」は年齢とともに逓減する。 20〜24歳の38.5%に対し45〜49歳は29.1%。年齢が上がるほど「上がるが、上げ幅は穏やか」になる
- 崖は50代後半にある。 55〜59歳で増加27.4%、60〜64歳では減少が60.9%と逆転する。定年再雇用・役職定年が絡む年代の賃金カーブは、それより下の世代とは別のゲームだと考えたほうがいい
自分の年齢・年収で転職した場合の生涯収入への影響は、転職の年収インパクトシミュレーターで試算できる。未経験分野への転身でスクール費用などの先行投資がある場合は、キャリアチェンジ投資回収シミュレーターで回収年数を先に見ておくと判断が早い。
年収+45万円の内定でも、手取り増は34万円
相場感が分かったところで、落とし穴をひとつ検算しておく。内定通知の「年収495万円」は、いまの450万円より45万円多い——だが、増えた45万円がそのまま財布に入るわけではない。社会保険料(労働者負担で額面の約14.7%)と所得税・住民税が増加分にも連動してかかるからだ。
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年収450万円(月給33万円+賞与54万円)
→ 手取り約353万円
年収495万円(月給36.3万円+賞与59.4万円)
→ 手取り約387万円
手取りの差 = 約34万円(額面差45万円の75%)
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※2026年度の協会けんぽ東京支部の料率(健康保険9.85%+子ども・子育て支援金0.23%、労使折半)・厚生年金9.15%・雇用保険0.5%で試算。30代・扶養なしの場合。
つまり額面差の4分の3しか残らない。月あたりに直すと約2.8万円で、これは「通勤時間が片道30分延びる」「みなし残業が10時間増える」といった条件の悪化と簡単に相殺される規模だ。オファー面談では額面ではなく手取りと労働条件をセットで比較したい。年収別の手取りは手取り計算シミュレーターで、生活レベルの変化まで含めた比較は年収別の手取り・生活レベル比較で確認できる。
希望年収を聞かれたときに「現年収+いくら」を言うべきかは、社会保険料の増分まで逆算できる転職時の希望年収シミュレーターが使える。
なぜ「秋に動いて12月末退職」が定石なのか
9月に活動を始めた場合の標準的な流れは、9月に書類準備と応募、10月に面接、11月に内定、12月末退職、1月入社。ここで多くの人が迷うのが「冬の賞与をもらってから辞めるべきか」だ。結論は数字で出る。
ほとんどの会社の賞与規程には「支給日に在籍していること」という要件がある。月給35万円・冬賞与70万円(12月10日支給)の人が11月末で退職すると、この70万円は1円も出ない。賞与70万円の手取りは、社会保険料約10.3万円と源泉所得税を引いて約55万円。一方、転職先に1ヶ月早く入社して得られるのは月給1ヶ月分の手取り(月給36万円なら約28万円)でしかない。
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賞与を待つ価値 = 賞与の手取り約55万円 − 早期入社1ヶ月の手取り約28万円
= 約27万円のプラス
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転職先が「どうしても12月1日入社を」と言い、その差額を入社一時金などで埋めてくれるケースを除けば、賞与支給日の後に退職日を置くのが合理的だ。だからこそ、12月末退職から逆算した「9月スタート」が秋の転職の定石になる。
12月末退職で年末に起きるお金の手続き2つ
タイミングの得だけでなく、知らないと驚く手続きも2つある。
- 住民税の一括徴収で最終給与が大きく減る。 住民税は前年の所得に対して6月〜翌年5月の12回で天引きされる。1〜5月に退職する場合はもちろん、12月末退職でも残り5ヶ月分(1〜5月分)は最終給与か退職金からの一括徴収を選ぶ(または自分で納付書払い)ことになる。年収450万円なら住民税は年約20.8万円、5ヶ月分で約8.7万円。最後の給与明細を見て「手取りが9万円近く少ない」と慌てないよう、先に引き当てておく
- 退職した年の年末調整は受けられないことが多い。 12月末退職・1月入社だと、退職年の所得税は精算されないまま年を越す。源泉徴収は多めに引かれる設計なので、翌年2〜3月に確定申告をすれば数千円〜数万円が還付されるのが普通だ。前職の源泉徴収票は捨てずに保管しておく
退職金の税金や失業保険、社会保険の切り替えまで含めた手続きの全体像は、転職のお金完全ガイドに時系列でまとめてある。
9月から始める逆算スケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 9月上旬 | 職務経歴書の更新・年収インパクトの試算・希望年収の下限を決める |
| 9月中旬〜10月 | 応募・面接(在職中は平日夜・オンライン中心で組む) |
| 11月 | 内定・オファー面談。額面ではなく手取りと労働条件で比較 |
| 11月下旬 | 退職交渉。就業規則の退職予告期間(多くは1ヶ月前)を確認 |
| 12月10日前後 | 冬賞与支給。支給日在籍を確認してから退職日を確定 |
| 12月末 | 退職。住民税の一括徴収額を最終給与で確認 |
| 1月 | 入社。年金手帳・雇用保険被保険者証・源泉徴収票を提出 |
| 翌年2〜3月 | 前年分の確定申告(還付になるケースが多い) |
最後にひとつだけ。冒頭の40.5%という数字は、裏を返せば「動いても6割は賃金が増えていない」ということでもある。相場より高く売れるかどうかは、応募先の選び方と条件交渉で決まる。まずは自分の現在地——年齢別の平均と比べた立ち位置、転職した場合の生涯年収の変化——を数字で持ってから、求人票を開いてほしい。
出典: 厚生労働省「令和6年雇用動向調査」(2025年公表。賃金変動の全体値は結果の概況、年齢階級別はe-Stat掲載の第8表から算出)/全国健康保険協会「令和8年度の健康保険料率」/厚生労働省「令和8年度の雇用保険料率」