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手取り25万円の29歳、時給に換算したら1,400円だった——通勤まで含めると10月からの東京最低賃金を下回る【ケーススタディ】

月給32.2万円・手取り25.2万円の29歳営業職・佐々木健太さん(仮名・東京都江東区)の給与を時給換算すると、名目2,013円が残業込みで1,789円、手取りベースで1,400円、通勤時間まで含めると1,220円——2026年10月から東京の最低賃金となる1,280円(答申額)を下回る。2026年度料率での手取りの分解、時給1,600円の派遣との年収比較、「残業・転職・副業」3ルートの手取り時給の変化(1,414円/1,522円/薄まって1,388円)まで、1人の給与明細を最後まで検算する。

水曜の夜9時半、豊洲行きの電車のつり革につかまりながら、佐々木健太さん(仮名・29歳)はスマホの給与明細アプリを開いた。振込額は25万2,000円。新卒の頃は20万円を切っていたから、7年でずいぶん増えた——はずなのに、ふと隣に立つ大学生らしき乗客のバイトの話が耳に入る。「時給1,300円になった」。健太さんは初めて、自分の給料を時給で考えたことがないと気づいた。

計算してみると、その数字は想像よりずっと大学生に近かった。この記事では、健太さんの「手取り25万円」を分解し、4段階の時給に換算し、そこから抜け出す3つのルートを比較する。

佐々木健太さんのプロフィール

項目内容
年齢・職業29歳・IT機器商社の法人営業(従業員300人規模)
住まい東京都江東区のワンルーム(家賃9.3万円)・独身
月給32万2,000円(基本給27.8万円+固定残業代4.4万円〈20時間分〉)
賞与年56万円(夏冬28万円ずつ)・年収442万円
労働時間所定160時間(8時間×20日)+残業月20時間(固定残業の範囲内)
通勤片道40分・月26.7時間

29歳の年収442万円は、同世代の平均と比べて悪くない水準だ。自分の立ち位置は年齢別平均年収シミュレーターで確認できるとして、問題は金額ではなく「1時間あたり」で見たときの景色が変わることにある。

手取り25.2万円の分解——引かれているのは月7万円

まず、32万2,000円がどうやって25万2,000円になるのかを2026年度の料率で検算する。健太さんは29歳なので介護保険料(40歳〜)はまだない。

```
健康保険 16,128円(標準報酬月額32万円 × 5.04%)
※協会けんぽ東京9.85% + 子ども・子育て支援金0.23%の労使折半
厚生年金 29,280円(32万円 × 9.15%)
雇用保険 1,610円(32.2万円 × 0.5%)
所得税 約5,800円(源泉徴収・月割換算)
住民税 約17,100円(前年所得ベース・年20.5万円の月割)
―――――――――――――――――――
控除計 約69,900円 → 手取り 約252,000円(額面の78%)
```

社会保険料だけで4万7,000円と、税金(約2.3万円)の2倍ある。この構造は年収400万円台ではどこでも似たようなもので、自分の数字は手取り計算シミュレーターに年収を入れれば内訳ごと出てくる。

時給換算・4段階——2,013円は1,220円まで目減りする

ここからが本題だ。同じ給与を、分母を変えながら時給に換算していく。

換算方法計算時給
① 名目時給(所定内のみ)32.2万円 ÷ 160時間2,013円
② 賞与込み・額面(32.2万円+賞与月割4.7万円) ÷ 180時間2,048円
③ 残業込み・額面32.2万円 ÷ 180時間1,789円
④ 残業込み・手取り25.2万円 ÷ 180時間1,400円
⑤ 通勤込み・手取り25.2万円 ÷ 206.7時間1,220円

会社が求人票に書くのは①や②の世界(時給2,000円超)だが、健太さんの生活実感に近いのは④と⑤だ。手取りベースの時給は1,400円。往復1時間20分の通勤を「会社のために使っている時間」として分母に足すと1,220円まで下がる。

2026年10月から、東京都の最低賃金は1,280円(8月末時点の答申額)になる予定だ。つまり通勤込みの「体感時給」は、アルバイトの法定下限を60円下回る。もちろん最低賃金は額面×労働時間に対する規制なので、この比較は法的な「最低賃金割れ」ではない。それでも、正社員の給与から税・社会保険・通勤という見えない分母を差し引くと、時給の景色は名目の7割(1,400円)、さらに6割(1,220円)まで縮む——この構造は知っておいて損がない。自分の実質時給は時給換算シミュレーターで60秒で出せる。

では時給1,600円の派遣のほうが上なのか?

通勤電車で聞こえた「時給1,300円」どころか、事務系派遣なら時給1,600円の求人も珍しくない。1,600円×160時間なら月の額面は25.6万円。健太さんの手取りとほぼ同じ数字が並ぶが、比較の土俵が違う。

  • 派遣(時給1,600円・fulltime): 年収307万円・手取り約246万円(月20.5万円)。賞与なし・残業した分は全額支払い
  • 健太さん(月給制): 年収442万円・手取り約349万円。賞与と固定残業代込み

年収ベースに揃えると135万円の差がつく。時給・月給・年俸は「見た目の単位」が違うだけで優劣を語れない。手取りと労働時間まで揃えて比較したいときは、時給vs月給vs年俸の比較シミュレーターが3つを同じ土俵に載せてくれる。

手取り時給1,400円から抜け出す3ルートの検算

健太さんが月の手取りを増やす現実的な選択肢は3つ。それぞれ実行した場合の「手取り時給」がどう動くかを検算した。

ルート月の手取り手取り時給変化
現状維持25.2万円1,400円
① 残業を月30時間に増やす26.9万円(+1.7万円)1,414円+1%
② 転職で年収+10%(487万円)27.4万円(+2.2万円)1,522円+9%
③ 副業を月20時間(時給1,500円)27.7万円(+2.5万円)1,388円−1%
  • ① 残業+10時間: 固定残業20時間を超えた分は追加支給(基礎時給1,738円×1.25×10時間=約2.2万円)される。ただし手取りでは約1.7万円。しかも残業代の増加はいずれ定時決定で標準報酬月額に反映され(32万→34万円)、社会保険料も月3,000円上がる。収入は増えるが、時間を1割売り増して時給はほぼ動かない
  • ② 転職+10%: 労働時間が同じまま年収442万→487万円になれば、手取りは年+31万円・手取り時給は1,522円へ。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」では、25〜29歳の転職者の37.9%が賃金1割以上増を実現している。3ルートで唯一「単価」が上がる選択肢で、影響額は転職の年収インパクトシミュレーターで生涯ベースまで試算できる
  • ③ 副業月20時間: 額面3万円でも、給与所得と合算して所得税5%+住民税10%が乗るため手取りは約2.5万円(実質時給1,273円)。本業の手取り時給1,400円より安い時間を積み増すので、総労働時間で割った時給はむしろ1,388円に薄まる。やるなら「本業の時給を上回る単価か」を先に確認したい。判定には副業の実質時給シミュレーターが使える

まとめると、残業と副業は「時間を売り増す」、転職だけが「単価を上げる」。手取り時給という物差しを持つと、3つの選択肢が同じ土俵で比べられるようになる。

おまけ: 手取り25.2万円の家計スナップショット

費目月額
家賃93,000円
食費45,000円
交際費・サブスク30,000円
貯蓄30,000円
その他(衣服・雑費)24,000円
水道光熱費12,000円
日用品10,000円
通信費8,000円

家賃9.3万円は手取りの37%で、目安とされる3分の1をやや超える。江東区を出て家賃を1.5万円下げれば貯蓄は月4.5万円になるが、通勤が延びれば⑤の「通勤込み時給」はさらに下がる——お金と時間はここでもトレードオフだ。適正家賃のラインは家賃の適正額シミュレーターで確かめられる。

最後に、この記事の計算はすべて「東京都・29歳・独身・2026年度料率」の前提だ。あなたの給与明細で同じ計算をしたら、手取り時給はいくらになるだろうか。所定労働時間・残業・通勤時間の3つの数字があれば、5分で出せる。

出典: 全国健康保険協会「令和8年度の健康保険料率(東京支部9.85%・子ども・子育て支援金率0.23%)」/厚生労働省「令和8年度の雇用保険料率(一般の事業・労働者負担0.5%)」「令和6年雇用動向調査」/東京地方最低賃金審議会の答申(2026年8月・1,280円)

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