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夜勤手当1回12,000円の中身を検算——26歳看護師が給与明細を分解したら、法律上の最低ラインは2,734円だった【ケーススタディ】

看護師の夜勤手当はどう計算されているのか。26歳・二交代制・夜勤月4回の給与明細を実際に分解し、労働基準法の深夜割増(22時〜5時×25%)で決まる法定部分2,734円と病院独自の上乗せ9,266円に切り分けて検算。日本看護協会2024年調査の平均額(二交代11,815円・準夜4,567円・深夜5,715円)との比較、夜勤が年収に占める12.8%の重み、夜勤を辞めたときの手取り減まで具体的な数字で示す。

「求人票には月給29万円って書いてあったんです。でも夜勤に入れない月は、25万円でした」

佐藤美咲さん(仮名・26歳)は埼玉県の急性期病院に勤める4年目の病棟看護師だ。二交代制で月4回の夜勤に入る。体調を崩して夜勤を外れた月の給与明細を見て、初めて「自分の月収のうち、夜勤でいくら稼いでいるのか」を意識したという。

この記事では佐藤さんの給与明細をモデルに、夜勤手当がどういう計算で決まっているのかを1円単位まで分解する。「夜勤手当」と一括りにされている金額は、実は法律で支払いが義務づけられた部分病院が独自に上乗せしている部分の2階建てだ。この構造が分かると、求人票の比較も転職の判断も精度が変わる。

佐藤さんのプロフィールと給与明細

項目内容
年齢・経験26歳・看護師4年目
勤務先埼玉県の急性期病院(一般病棟)
勤務形態二交代制(日勤+16時間夜勤)・夜勤月4回
基本給235,000円
職務手当15,000円
夜勤手当12,000円/回 × 4回 = 48,000円
月給合計298,000円(通勤手当別)
月所定労働時間160時間
夜勤の時間帯16:30〜翌9:00(休憩2.5時間・実働14時間)

夜勤4回で48,000円。月収298,000円の16%が夜勤由来だ。では、この「1回12,000円」という金額はどこから来ているのか。

夜勤手当の計算式——法定部分は「深夜割増」だけ

労働基準法37条が定めているのは、22時〜翌5時に働いた時間について、通常の賃金に25%以上を上乗せすることだけだ。「夜勤1回あたりいくら」という決まりは法律には存在しない。

月給制の場合、深夜帯に働いた時間分の「基本の賃金」は月給に含まれているので、法律上追加で払う義務があるのは25%の割増部分のみになる。計算手順は次の通り。

```
① 基礎時給 = 割増の基礎になる月給 ÷ 月所定労働時間
※ 通勤手当・家族手当・住宅手当などは基礎から除外できる

② 深夜割増 = 基礎時給 × 0.25 × 深夜帯(22時〜5時)の労働時間
```

佐藤さんのケースで検算する。基礎に入るのは基本給235,000円+職務手当15,000円=250,000円。

```
① 基礎時給 = 250,000円 ÷ 160時間 = 1,562.5円
② 夜勤1回の深夜帯労働 = 22:00〜翌5:00の7時間(休憩は深夜帯の外と仮定)
深夜割増 = 1,562.5円 × 0.25 × 7時間 = 2,734円/回
```

つまり佐藤さんの病院が法律上支払わなければならない最低ラインは1回2,734円。実際の夜勤手当は12,000円なので、差額の9,266円は病院が採用力や夜勤負担への配慮として独自に上乗せしている部分ということになる。

夜勤手当12,000円の内訳金額根拠
法定の深夜割増(25%×7時間)2,734円労働基準法37条
病院独自の上乗せ9,266円就業規則・賃金規程

この構造には実務上の意味がある。上乗せ部分は法律の縛りがないため、病院の規程変更で減らせる。逆に言えば、求人票の「夜勤手当◯円」の大小は病院の裁量そのものであり、同じ地域・同じ夜勤回数でも月2〜3万円の差が普通につく。自分の条件での計算は夜勤手当シミュレーターで再現できる。

世間の相場——日本看護協会の2024年調査と比べる

佐藤さんの12,000円は高いのか安いのか。日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」による夜勤手当の全国平均はこうだ。

勤務形態夜勤手当の平均(1回あたり)
二交代制(16時間前後の夜勤)11,815円
三交代制・準夜勤(〜深夜0時前後まで)4,567円
三交代制・深夜勤(深夜0時前後〜朝)5,715円

佐藤さんの12,000円は二交代の平均をわずかに上回る水準で、ほぼ相場通りといえる。

興味深いのは三交代との比較だ。月の夜勤負担を「準夜4回+深夜4回」と「二交代4回」で比べると——

```
三交代: (4,567円 + 5,715円) × 4回 = 41,128円/月
二交代: 11,815円 × 4回 = 47,260円/月
差額: 月6,132円(年73,584円)
```

夜勤に入る「晩の数」は三交代のほうが多い(8晩 vs 4晩)のに、手当総額は二交代のほうが多い。1回の拘束が長い二交代に手当を厚くする病院が多いためで、「夜勤の回数」ではなく「手当の単価×回数」で求人を比較しないと逆転を見落とす

なお同調査の約10年前の水準は二交代10,119円・準夜3,812円・深夜4,635円。10年間の上昇は1,000〜1,700円程度にとどまり、物価上昇に対して夜勤手当の伸びは鈍い。

夜勤は年収の何%か——「辞めたらいくら減る」の検算

佐藤さんの年収を組み立てると次のようになる(残業ゼロと仮定、賞与は基本給4ヶ月分)。

```
月給部分: 250,000円 × 12ヶ月 = 3,000,000円
賞与: 235,000円 × 4ヶ月 = 940,000円
夜勤手当: 12,000円 × 4回 × 12ヶ月 = 576,000円
年収合計: 4,516,000円
```

夜勤手当は年収451.6万円のうち57.6万円、比率にして12.8%を占める。もし日勤のみに切り替えれば額面年収は394万円まで下がる計算だ。

ただし実際の生活へのダメージは額面ほどではない。夜勤手当にも所得税・住民税・社会保険料がかかっているため、57.6万円を失っても手取りの減少は年44万円前後(月3.7万円程度)にとどまる。夜勤を続けるか悩むときは、「額面57.6万円」ではなく「手取り44万円と、月4回の夜勤負担・生活リズムの崩れ」を天秤にかけるのが正確な比較になる。税率を含めた手取りの変化は残業代・手取りシミュレーター年収比較シミュレーターで確認できる。

逆方向の選択肢もある。夜勤専従(夜勤のみの勤務)で月9回入れば、手当だけで11,815円×9回=約10.6万円/月。一般の病棟看護師の夜勤回数が月4〜5回に収まっているのは、診療報酬の入院基本料の要件として「看護職員の月平均夜勤時間72時間以下」というルール(いわゆる72時間ルール)が病棟単位で課されているためで、夜勤を増やして稼ぐには専従枠への転換が現実的な経路になる。

佐藤さんが転職検討時にやった3つのチェック

給与明細を分解して以降、佐藤さんは求人票を見る目が変わったという。実際に使ったチェックリストを挙げる。

  • 「月給◯円(夜勤手当◯回分含む)」の夜勤を外した金額を出す。 佐藤さんの現職は29.8万円→25万円。比較対象の求人が「月給31万円(夜勤5回分含む)」なら夜勤抜きでは25万円前後で、実は横並びだった
  • 夜勤手当の単価と、基礎時給を別々に比べる。 単価が高くても基本給が低いと、賞与(基本給連動)と残業単価で逆転される。時給ベースの比較は時給換算シミュレーターで揃えられる
  • 深夜割増が手当に「含まれる」規程か「別枠」かを就業規則で確認する。 佐藤さんの病院は含む方式(12,000円の中に法定2,734円が入っている)。別枠で支払う病院なら同じ「12,000円」でも実質1回約14,700円になる

まとめ——数字で振り返る

項目数字
夜勤手当(佐藤さんの病院・二交代1回)12,000円
うち労基法上の最低ライン(深夜割増25%×7時間)2,734円
うち病院独自の上乗せ9,266円
全国平均(日本看護協会2024年・二交代)11,815円
夜勤手当の年額(月4回)576,000円(年収の12.8%)
夜勤を辞めた場合の手取り減年44万円前後

「夜勤手当は病院が決めた1つの数字」ではなく、法定の割増と裁量の上乗せの2階建て——この見方ができると、給与明細の検算も、求人の見比べも、夜勤を続けるかどうかの判断も、すべて同じ計算式の上で議論できるようになる。

出典: 労働基準法37条(深夜割増25%以上)、日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」(2025年公表)、厚生労働省・診療報酬に係る入院基本料の施設基準(月平均夜勤時間72時間要件)。本記事の給与明細は取材に基づくモデルケースであり、計算はすべて記事内の式で検算済み。数字が自分の明細と合わない場合は基礎時給の算定範囲(手当の除外)を確認のうえ、お問い合わせからも事例を受け付けている。

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