給与所得控除の早見表【2026年分】最低74万円・年収500万なら144万円|令和7年・8年・10年分の3年比較
給与所得控除は令和8年分(2026年)から最低保障が65万円→74万円に引き上げ(給与190万円以下は一律74万円、220万円までは「×30%+8万円」と74万円の大きい方)。年収500万円なら144万円、850万円超は195万円で頭打ち。基礎控除104万円と合わせた178万円の壁、令和10年分以後の69万円、住民税は令和9年度から119万円ラインになる点まで、年収別の早見表と計算例で解説します。
給与所得控除は令和8年分(2026年1〜12月の給与)から最低74万円(年収190万円以下)〜上限195万円(年収850万円超)。年収500万円なら144万円が年収から差し引かれ、その分だけ税金の計算対象が小さくなる。令和8年度税制改正で最低保障額が65万円から74万円に引き上げられ、基礎控除104万円と合わせて「給与だけなら年収178万円まで所得税ゼロ」になった。
ただし74万円は令和8・9年分だけの水準で、令和10年分(2028年)以後は69万円になる予定だ。住民税はさらに1年遅れて令和9年度分から反映される。この記事では、給与所得控除の仕組みと早見表を押さえたうえで、令和7年分・令和8年分・令和10年分の3年を並べて「いつ・いくら」変わるのかを整理する。
年収500万円の会社員が支払う所得税は、500万円に対してかかるわけではない。税金は「年収」ではなく「所得」にかかり、年収から所得を出すときに最初に差し引かれるのが給与所得控除だ。
自営業者は事業にかかった経費を売上から差し引ける。会社員にはそれがないように見えるが、給与所得控除がその役割を果たしている。通勤のための靴やスーツ、仕事で読む本——こうした「会社員の経費」を、領収書なしの概算で認める制度だと考えるとわかりやすい。
税金計算の全体フロー
会社員の所得税は次の順番で計算される。
```
年収(額面=源泉徴収票の「支払金額」)
↓ ①給与所得控除を引く
給与所得(=源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」)
↓ ②所得控除を引く(基礎控除・社会保険料控除・配偶者控除など)
課税所得
↓ ③税率(5〜45%の累進)をかける
所得税額
↓ ④税額控除を引く(住宅ローン控除など)
最終的な所得税額
```
この記事で扱うのは①。ここで引かれる金額が大きいほど②以降の課税ベースが小さくなり、結果として税金が減る。②の基礎控除も令和8年分から大きく変わったため、後半で組み合わせて説明する。
給与所得控除の速算表(令和8年分)
給与所得控除額は年収(給与等の収入金額)に応じて段階的に決まる。令和8年度税制改正後の速算表は次のとおり(出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」、国税庁「No.1410 給与所得控除」)。
| 年収(給与等の収入金額) | 給与所得控除額(令和8・9年分) |
|---|---|
| 190万円以下 | 一律74万円(最低保障) |
| 190万円超 〜 220万円以下 | 年収 × 30% + 8万円(74万円未満なら74万円) |
| 220万円超 〜 360万円以下 | 年収 × 30% + 8万円 |
| 360万円超 〜 660万円以下 | 年収 × 20% + 44万円 |
| 660万円超 〜 850万円以下 | 年収 × 10% + 110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
「年収×30%+8万円」が74万円に届くのは年収220万円ちょうどのとき。つまり令和8・9年分は年収220万円以下の人がすべて74万円になり、それより上の人の控除額は改正前と1円も変わらない。改正で得をするのは給与所得控除については年収220万円未満の層だけ、というのが一つ目のポイントだ。
なお、実際の年末調整では国税庁の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使う。令和8・9年分は年収74万1,000円以上219万1,000円未満なら「給与所得=年収−74万円」、219万1,000円以上220万円未満は表の段差を埋めるため給与所得が145万1,000円〜145万6,000円の固定額とされている。速算表との差は数千円程度なので、目安としては上の表で十分だ。
年収別の控除額と給与所得の早見表
代表的な年収帯で、令和8年分の給与所得控除と給与所得(控除後の金額)を並べる。
| 年収 | 給与所得控除 | 給与所得 | 控除の割合 |
|---|---|---|---|
| 150万円 | 74万円 | 76万円 | 49.3% |
| 200万円 | 74万円 | 126万円 | 37.0% |
| 300万円 | 98万円 | 202万円 | 32.7% |
| 400万円 | 124万円 | 276万円 | 31.0% |
| 500万円 | 144万円 | 356万円 | 28.8% |
| 600万円 | 164万円 | 436万円 | 27.3% |
| 700万円 | 180万円 | 520万円 | 25.7% |
| 800万円 | 190万円 | 610万円 | 23.8% |
| 1,000万円 | 195万円 | 805万円 | 19.5% |
| 1,500万円 | 195万円 | 1,305万円 | 13.0% |
年収150万円の人は収入の約半分が控除される一方、年収1,500万円の人は13%しか控除されない。年収が高いほど控除の恩恵は相対的に小さくなる構造だ。自分の年収をそのまま入れて確認したい場合は所得税率シミュレーターが速い。
計算例: 年収500万円(単身・30歳)の場合
```
給与所得控除 = 500万円 × 20% + 44万円 = 144万円
給与所得 = 500万円 − 144万円 = 356万円
基礎控除 = 104万円(合計所得489万円以下・令和8年分)
社会保険料控除 ≒ 73.7万円(年収×約14.7%の概算)
課税所得 = 356万 − 104万 − 73.7万 ≒ 178.3万円
所得税 = 178.3万円 × 5% ≒ 8万9,150円(復興特別所得税を除く)
```
所得税率シミュレーターの初期値(年収500万円・30歳)で計算すると、課税所得178.3万円・所得税89,150円・税率5%と一致する。同じ条件の令和7年分は、基礎控除が68万円だったため課税所得214.3万円・所得税116,800円(税率10%)。年収500万円の人の減税額は年27,650円だが、これは基礎控除の引き上げによるもので、給与所得控除144万円は改正前と同じだ。
もし給与所得控除がなかったら、合計所得が500万円になって基礎控除は67万円に下がり、課税所得は約359万円(税率20%)、所得税は約29.1万円に跳ね上がる。給与所得控除のおかげで所得税だけで約20.2万円軽くなっている計算だ。住民税(税率10%)を含めると軽減効果はさらに大きい。
令和7年・8年・10年分の3年比較
給与所得控除の最低保障と基礎控除は、2025年から2028年にかけて3段階で動く。会社員・パートにとって重要な数字を一つの表にまとめる。
| 項目 | 令和7年分(2025年) | 令和8・9年分(2026・2027年) | 令和10年分以後(2028年〜) |
|---|---|---|---|
| 給与所得控除の最低保障 | 65万円 | 74万円 | 69万円 |
| 最低保障が効く年収 | 190万円以下 | 220万円以下 | 約203万円以下 |
| 年収200万円の控除額 | 68万円 | 74万円 | 69万円 |
| 年収210万円の控除額 | 71万円 | 74万円 | 71万円 |
| 年収220万円超の控除額 | 改正なし | 改正なし | 改正なし |
| 基礎控除(合計所得132万円以下) | 95万円 | 104万円 | 99万円 |
| 基礎控除(合計所得132万超〜336万円) | 88万円 | 104万円 | 62万円 |
| 基礎控除(合計所得336万超〜489万円) | 68万円 | 104万円 | 62万円 |
| 基礎控除(合計所得489万超〜655万円) | 63万円 | 67万円 | 62万円 |
| 基礎控除(合計所得655万超〜2,350万円) | 58万円 | 62万円 | 62万円 |
| 所得税の非課税ライン(給与のみ) | 160万円 | 178万円 | 168万円 |
※令和10年分以後は現行法の規定による値。基礎控除と給与所得控除の最低保障は、令和10年分以後2年ごとに消費者物価指数の変化率をもとに見直すことが基本とされているため、実際の金額は変わりうる(出典:国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」)。
読み取れるポイントは3つある。
- 給与所得控除が動くのは年収220万円以下だけ。それより上は3年とも同じ速算表
- 年収220万円超の人の減税は、基礎控除(104万円・67万円・62万円)の引き上げによるもの
- 令和8・9年分の74万円・104万円には時限の上乗せが含まれ、令和10年分以後は69万円・99万円(所得132万円超は62万円)に戻る
年収別の所得税額(単身・社会保険料は年収の約14.7%で概算)
| 年収 | 令和7年分 | 令和8年分 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 34,850円 | 26,850円 | −8,000円 |
| 500万円 | 116,800円 | 89,150円 | −27,650円 |
| 700万円 | 280,100円 | 272,100円 | −8,000円 |
| 1,000万円 | 771,700円 | 763,700円 | −8,000円 |
年収500万円前後(合計所得336万〜489万円)は基礎控除が68万円→104万円と36万円も増えるため、減税幅が突出して大きい。手取りへの影響は手取り計算シミュレーターで社会保険料込みで確認できる。
「178万円の壁」と給与所得控除の関係
かつての「103万円の壁」は給与所得控除55万円+基礎控除48万円の合計だった。令和7年分は65万円+95万円で160万円、令和8年分からは次の式で178万円になった。
```
178万円の壁の正体(令和8・9年分):
年収178万円 − 給与所得控除74万円 = 給与所得104万円
給与所得104万円 − 基礎控除104万円 = 課税所得0円
→ 所得税がかからない
```
つまり178万円は「給与所得控除74万円+基礎控除104万円」の合計。社会保険料を払っている人は社会保険料控除も引けるため、実際に所得税がかかり始める年収はもう少し上になる。年収ごとの壁の位置(130万円の社会保険の壁、週20時間の加入要件など)は年収の壁シミュレーターで並べて確認でき、160万円→178万円の経緯は160万円の壁の解説記事にまとめている。
配偶者・扶養の基準も136万円に
給与所得控除の引き上げは「家族の扶養に入れるか」にも効く。扶養親族・同一生計配偶者の所得要件は58万円以下→62万円以下に上がり、給与収入に換算すると次のようになる。
```
扶養・配偶者控除の上限(令和8・9年分):
所得要件62万円 + 給与所得控除74万円 = 給与収入136万円
```
令和7年分の123万円(58万円+65万円)から13万円上がった。配偶者特別控除の満額ラインや消失ラインも動いているので、パートの配偶者がいる世帯は配偶者控除シミュレーターで136万円・169万円・207万円の位置を確認しておきたい。
住民税は1年遅れて令和9年度から
住民税は前年の所得に課税されるため、令和8年分の給与に対する住民税(令和9年度分)から給与所得控除74万円が使われる。一方、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きだ。
| 住民税の年度 | 対象となる所得の年 | 給与所得控除の最低保障 | 単身の非課税ライン(1級地の目安) |
|---|---|---|---|
| 令和8年度(2026年6月〜) | 令和7年分 | 65万円 | 年収110万円 |
| 令和9・10年度 | 令和8・9年分 | 74万円 | 年収119万円 |
| 令和11年度以後 | 令和10年分〜 | 69万円 | 年収114万円(現行規定の場合) |
非課税限度額は自治体の級地区分や扶養人数で異なる。2026年6月から払っている住民税は令和7年分の所得が基準なので、まだ65万円で計算されている点に注意したい。自分の住民税額は住民税シミュレーターで試算できる。
源泉徴収票のどこに書いてあるか
毎年12月〜1月に会社から受け取る源泉徴収票には、給与所得控除額そのものは書かれていない。次の2つの数字の差が、あなたに適用された給与所得控除額だ。
| 源泉徴収票の項目 | 意味 |
|---|---|
| 支払金額 | 年収(額面)=給与所得控除を引く前 |
| 給与所得控除後の金額 | 給与所得=給与所得控除を引いた後 |
令和8年分は、11月までの毎月の源泉徴収は改正前の税額表のままで、12月の年末調整で新しい給与所得控除・基礎控除を使って1年分を計算し直す。払いすぎた分は12月か翌1月の給与で戻ってくる。還付額の目安は年末調整シミュレーターで確認できる。
特定支出控除: 会社員が「実額」で経費を申告する方法
給与所得控除はあくまで概算の経費。実際の業務関連支出が大きい場合は、特定支出控除で超過分を追加で控除できる(出典:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」)。
| 特定支出の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 通勤費 | 新幹線通勤の自己負担分 |
| 転居費 | 転勤に伴う引越し費用 |
| 研修費 | 業務に直接必要な研修・セミナー |
| 資格取得費 | 弁護士・税理士・MBA等の資格取得費用 |
| 帰宅旅費 | 単身赴任者の帰省費用 |
| 勤務必要経費 | 図書費・衣服費・交際費(上限65万円) |
使えるのは特定支出の合計が給与所得控除額の1/2を超えた場合のみで、超えた分だけが追加控除される。年収500万円なら給与所得控除144万円の半分の72万円がハードルだ。
```
年収500万円・業務に必要なMBA学費150万円(令和8年分)の場合:
特定支出控除 = 150万円 − 72万円 = 78万円
所得税: 89,150円 → 50,150円(−39,000円、税率5%帯)
住民税(令和9年度): 78万円 × 10% ≒ −78,000円
合計の節税額 ≒ 約11.7万円
```
令和8年分は基礎控除が104万円に上がって課税所得が下がったため、年収500万円でも所得税の税率は5%帯に収まる。同じ控除額でも令和7年分(税率10%)より所得税の節税効果は小さくなる点は押さえておきたい。適用には会社の証明書と確定申告が必要だ。
自営業者の経費との違い
| 比較項目 | 会社員(給与所得控除) | 自営業者(必要経費) |
|---|---|---|
| 計算方法 | 年収に応じた定額 | 実際にかかった金額 |
| 下限・上限 | 74万円〜195万円(令和8・9年分) | 下限なし・上限なし(合理的な範囲) |
| 申告 | 不要(自動適用) | 確定申告で申告が必要 |
| 領収書 | 不要 | 保管義務あり(原則7年) |
| 柔軟性 | なし | 経費の範囲を自分で判断できる |
会社員のメリットは「何もしなくても自動的に適用される」こと。自営業者のメリットは「実際に使った経費が多いほど所得を減らせる」こと。年収500万円の会社員は、何も記帳しなくても144万円の経費を認められていると言い換えられる。
よくある質問
給与所得控除は自分で申告が必要?
不要。会社が年末調整で自動的に計算する。パート・アルバイトでも給与収入があれば同じ速算表が自動で適用され、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」欄で結果を確認できる。
2026年(令和8年分)で何が変わった?いつ反映される?
給与所得控除の最低保障が65万円→74万円になり、年収220万円以下の人は一律74万円になった。同時に基礎控除が104万円・67万円・62万円(所得による)に上がり、給与だけの人の非課税ラインは160万円→178万円に。改正法の施行は2026年12月1日で、11月までの源泉徴収は変わらず、12月の年末調整で1年分をまとめて精算する。
2028年(令和10年分)以後はどうなる?
現行の規定では、給与所得控除の最低保障は69万円、基礎控除は合計所得132万円以下で99万円・それを超えると62万円になり、非課税ラインは168万円になる。ただし2年ごとに物価上昇率を反映して見直すことが基本とされており、実際の金額はその時点の改正で決まる。
パートで年収103万円・150万円だと給与所得はいくら?
令和8年分は年収190万円以下が一律74万円なので、年収103万円なら給与所得29万円、150万円なら76万円。どちらも基礎控除104万円以下に収まるため所得税はかからない。家族の扶養に入れるのは給与所得62万円以下=年収136万円まで。掛け持ちの場合は、すべての給与を合算した年収に対して1つの給与所得控除が適用される。
住民税の非課税ラインも178万円になる?
ならない。住民税の基礎控除は43万円のまま据え置かれ、給与所得控除74万円だけが効くため、単身の非課税ラインは110万円→119万円(1級地の目安、令和9・10年度)にとどまる。「所得税はゼロなのに住民税はかかる」のは正常な状態だ。
副業収入にも給与所得控除は適用される?
副業が「給与」として支払われる場合(ダブルワーク等)は、本業と合算した給与収入に対して給与所得控除が1回だけ適用される(2社分の控除が別々に引けるわけではない)。業務委託やアフィリエイトの収入は事業所得・雑所得なので、給与所得控除ではなく実費の必要経費を差し引く。
年末調整と確定申告で控除額は変わる?
変わらない。どちらも同じ速算表で計算される。ただし特定支出控除、住宅ローン控除の初年度、副業の事業所得・雑所得、医療費控除などは年末調整では完結せず、確定申告が必要だ。
この計算の前提データはどこから?
給与所得控除・基礎控除・扶養の所得要件は国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf )と国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」、令和7年分の数値は国税庁「No.1410 給与所得控除」、住民税の取り扱いは各自治体の令和9年度税制改正の案内(給与所得控除74万円・基礎控除43万円据え置き・非課税ライン119万円)に基づく。計算例の所得税は所得税率シミュレーターの実行値(社会保険料は年収の約14.7%で概算、復興特別所得税を除く)。特定支出控除は国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」に準拠している。
数字が実感と合わない場合は?
計算例は単身・社会保険料を概算とした目安で、扶養家族・生命保険料控除・iDeCo・住宅ローン控除などがあると税額は変わる。また令和8年分は11月までの源泉徴収が旧基準のままなので、月々の給与明細の所得税は12月の年末調整まで下がらない。源泉徴収票の数字で試算しても結果が合わない場合は、お問い合わせページから条件を添えてご連絡ください。