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「子ども3人なら大学無償」はどこまで本当か|高等教育の修学支援新制度の第Ⅰ〜Ⅳ区分・年収目安と、扶養カウントの落とし穴を検算【2026年度】

大学無償化と呼ばれる高等教育の修学支援新制度は、授業料等減免(国公立53.58万円・私立70万円が上限)と給付型奨学金(私立自宅外で月75,800円)の2本柱。住民税ベースの第Ⅰ〜Ⅳ区分で支援額が変わり、2025年度からは扶養する子3人以上の多子世帯は所得制限なしで授業料が減免される。ただし給付奨学金は対象外、施設設備費も対象外、長子が就職して扶養を外れたら打ち切り——私立文系4年で総額468万円のうち何万円が実際に免除されるのか、文部科学省・JASSOの資料に沿って検算する。

「子どもが3人いれば、大学の授業料はタダになるんですよね?」——2025年度に始まった多子世帯支援の報道以来、よく聞かれる質問だ。答えは半分ホント、半分誤解である。

ホントの部分: 扶養する子どもが3人以上いる世帯は、親の年収に関係なく、大学の授業料・入学金が一定額まで免除される。誤解の部分: 免除には上限があり(私立大学の授業料なら年70万円)、私立の平均授業料約93万円には届かない。施設設備費は1円も対象外。給付型奨学金は付かない。そして長子が就職して扶養を外れた瞬間、下の子の支援は打ち切られる

この記事では、「大学無償化」の正式名称である高等教育の修学支援新制度について、誰が・いくら・いつまで支援されるのかを、文部科学省と日本学生支援機構(JASSO)の公表資料に沿って整理し、実際の負担額を検算する。

制度の全体像——支援は「減免」と「給付」の2本柱

修学支援新制度の支援内容は2つセットになっている。

  1. 授業料等減免 — 大学が授業料・入学金を減額・免除する(減った分は国が大学に補填)
  2. 給付型奨学金 — JASSOから毎月、返済不要の奨学金が振り込まれる(生活費に充てられる)

対象となる学校は大学・短大・高専(4・5年生)・専門学校で、要件を満たした「確認大学等」に限られる。大学の約98%が対象だが、ごく一部に対象外の学校があるため、志望校が対象かは文科省の対象機関リストで確認しておきたい。

満額支援(後述の第Ⅰ区分)の場合の金額は次のとおり。

区分授業料減免(年額上限)入学金減免(上限)給付型奨学金・自宅通学(月額)給付型奨学金・自宅外(月額)
国公立大学535,800円282,000円29,200円66,700円
私立大学700,000円260,000円38,300円75,800円

国公立大学は標準額の授業料535,800円がまるごと上限内に収まるため、第Ⅰ区分なら学費は実質ゼロになる。私立は上限70万円を超えた分が自己負担だ。

誰が対象か——住民税で決まる第Ⅰ〜Ⅳ区分

支援額は世帯の所得に応じて4段階に分かれる。判定に使うのは年収そのものではなく、住民税の課税情報から計算する「支給額算定基準額」だ。

```
支給額算定基準額 = 市町村民税の課税標準額 × 6% −(調整控除の額 + 税額調整額)
※ 父母など生計維持者2人分を合算。政令指定都市は調整控除に3/4を乗じる
```

区分支給額算定基準額年収目安(4人世帯・片働き)支援割合
第Ⅰ区分100円未満(住民税非課税)〜約270万円満額
第Ⅱ区分25,600円未満〜約300万円2/3
第Ⅲ区分51,300円未満〜約380万円1/3
第Ⅳ区分154,500円未満〜約600万円1/4(多子世帯・私立理工農系のみ)

年収目安はあくまで「本人・両親・中学生の4人世帯で片働き」というモデルケースの数字で、共働きか、きょうだいが大学生か、ひとり親かで大きく動く。境界付近の世帯は「年収」ではなく課税標準額ベースで機械的に判定される点、そしてふるさと納税をしても課税標準額は変わらないため区分は動かせない点に注意したい。

所得以外の要件も3つある。

  • 資産要件: 学生本人と生計維持者の資産(現金・預貯金・有価証券。不動産は含まない)が、生計維持者2人で2,000万円未満、1人で1,250万円未満
  • 成績・意欲要件: 高校の評定平均3.5以上、または3.5未満でもレポート等で学修意欲が確認できればよい。成績だけで門前払いされる制度ではない
  • 在学中の継続要件: 修得単位数が標準の5割以下、出席率5割以下などで「廃止(打ち切り)」。GPA下位1/4は警告で、警告が連続すると打ち切りになる

2025年度からの多子世帯支援——所得制限なし、ただし「減免だけ」

2025年度から、扶養する子どもが3人以上いる世帯(多子世帯)は、所得にかかわらず授業料・入学金の減免が受けられるようになった。ここが「大学無償化」と呼ばれる部分だ。ただし中身は第Ⅰ区分と同じ上限額(私立大なら授業料70万円・入学金26万円)の減免のみで、給付型奨学金は付かない。

検算: 年収800万円・子3人の佐野さん一家

東京都郊外に住む佐野さん(48歳・年収800万円)は、長女(18歳)・長男(15歳)・二女(12歳)の3人を扶養している。長女は来春、私立大学の文系学部に進学予定だ。文科省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査」の平均値(授業料931,000円・入学金241,000円・施設設備費180,000円)で4年間の納付金を計算すると——

```
総納付金 = 241,000円 +(931,000円 + 180,000円)× 4年 = 4,685,000円
減免額  = 241,000円(入学金・上限26万円内)+ 700,000円 × 4年 = 3,041,000円
自己負担 = 4,685,000円 − 3,041,000円 = 1,644,000円
```

従来なら支援ゼロだった年収800万円世帯でも、4年間で約304万円が免除される。一方で「無償化」と言いつつ約164万円(授業料の上限超過分と施設設備費)は残る。ここに下宿なら生活費が年100万円規模で乗る。トータルの資金計画は大学学費シミュレーターで国公立・私立・下宿の組み合わせ別に確認できる。

最大の落とし穴——「扶養する子3人」は毎年数え直される

多子世帯の判定は「生計維持者が扶養している子どもの数」で、支援を受けている間ずっと3人以上である必要がある。年齢の上限はないが、扶養している事実が必要だ。つまり——

  • 長女(大学2年)・長男(大学1年)・二女(高校生)→ 3人扶養で対象
  • 長女が卒業・就職して扶養を外れる → 扶養は2人になり、長男・二女は在学中でも対象外に

「第1子の進路・就職で下の子の支援が消える」構造は、児童手当の多子加算と似ているが、児童手当が「22歳年度末まで」の年齢基準なのに対し、修学支援は扶養の事実で数える。長子が就職する年度をまたぐ資金計画では、この打ち切りを織り込んでおかないと後半2年の負担が想定外に膨らむ。

第Ⅰ区分なら4年間でいくらになるか

住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)が受けられる支援の総額も検算しておこう。私立大学・自宅外通学の場合:

```
授業料減免 700,000円 × 4年 + 入学金 260,000円 = 3,060,000円
給付型奨学金 75,800円 × 48ヶ月 = 3,638,400円
合計 6,698,400円
```

4年間で約670万円。国公立・自宅通学でも約383万円(減免242.5万円+給付140.2万円)に達する。第Ⅱ区分なら支援はこの2/3、第Ⅲ区分なら1/3に逓減する(私立の授業料減免なら年約23.3万円、給付奨学金は月約25,300円)。

支援を受けてもなお足りない分は、貸与型奨学金や国の教育ローンで埋めることになる。借りる場合は卒業後の返済額を奨学金返済シミュレーターで先に見ておくと、借りすぎの歯止めになる。

手続きのタイミング——高3の夏を逃したら「在学採用」がある

申し込み窓口は2つあり、どちらでも支援内容は同じだ。

  1. 予約採用 — 高校3年の4〜7月ごろ、在学中の高校経由でJASSOに申し込む。進学前に採否がわかるので資金計画が立てやすい
  2. 在学採用 — 大学入学後、毎年春と秋の2回、大学の窓口で申し込む。予約採用を逃した人、家計が急変した人はこちら

いま高3で予約採用の締切を過ぎてしまった家庭も、進学後の在学採用(秋は9〜10月ごろ受付の大学が多い)で申請できる。また、失職・災害などで家計が急変した場合は、通常の判定を待たず急変後の所得見込みで随時申し込める。

よくある質問

Q. 児童手当や高校無償化と同じ「年収910万円」のような壁があるの?

A. 通常の第Ⅰ〜Ⅲ区分は年収目安270万〜380万円(第Ⅳ区分で約600万円)までが対象で、高校の就学支援金よりだいぶ狭い。ただし2025年度からの多子世帯(扶養する子3人以上)の授業料等減免に限っては、所得制限がない。

Q. 浪人すると対象外になる?

A. 高校卒業から2年以内(いわゆる2浪まで)に入学すれば対象になる。3浪以上や、すでに大学を卒業している人の学び直しは対象外だ。

Q. 授業料減免と給付奨学金のどちらかだけ受けることはできる?

A. 制度上はセットで、申請も一体だ。ただし多子世帯支援(所得制限なしの枠)だけは授業料等減免のみで、給付型奨学金は所得区分(第Ⅰ〜Ⅳ)に該当しなければ受けられない。

Q. この記事の前提データはどこから?

A. 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」の公表資料、日本学生支援機構(JASSO)「給付奨学金(新制度)」の支給額・選考基準、文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査」に基づく。区分の年収目安はモデル世帯の概算で、実際の判定はマイナンバーで取得される住民税情報による。制度の細部は年度で変わるため、最新は文科省・JASSOのサイトで確認してほしい。

Q. 数字が実感と合わない場合は?

A. 世帯構成・共働きか否か・住民税の控除内容で区分は大きく変わります。ご自身のケースで疑問があればお問い合わせからご連絡ください。

まとめ——支援の範囲と自己負担の早見表

世帯の状況授業料等減免給付型奨学金私立文系4年・学費の自己負担目安※
住民税非課税(第Ⅰ区分)満額満額(私立自宅外 月75,800円)約164万円
年収〜380万円(第Ⅱ・Ⅲ区分)2/3 or 1/32/3 or 1/3約264万〜366万円
多子世帯(子3人以上扶養・所得不問)満額区分に該当すれば約164万円
上記いずれにも該当しないなしなし約469万円

※ 平均授業料93.1万円・施設設備費18万円・入学金24.1万円で検算した学費のみの数字。生活費は別途。第Ⅰ〜Ⅲ区分は給付型奨学金(私立自宅外なら4年で約364万円)を生活費や学費残額に充てられる。

「無償化」の実像は、授業料の7割前後を上限に国が肩代わりし、残りと生活費は家庭が持つ制度だ。残りの部分をどう準備するかは、学資保険と新NISAの比較で15年スパンの積立額から逆算しておくと、高3の夏に慌てずに済む。

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