「4月入園なら申込は10月」——保育園の一次募集前に決める復帰時期の損得検算|時短復帰・育休延長・フルタイムの1年後の手取り差【2026年秋】
認可保育園の4月入園は、多くの自治体で10月〜12月上旬に一次募集が締め切られる。年収400万円の妻・500万円の夫、2026年6月生まれの第1子という埼玉県南部の夫婦をモデルに、①時短で4月復帰、②1歳児4月まで育休延長、③フルタイム復帰の3案を、育児休業給付金(67%→50%)・育児時短就業給付(10%)・保育料(世帯所得割で月4.5〜6万円)まで含めて12ヶ月分検算した。9月から保育料が下がる仕組み、2025年4月に厳格化された給付延長の条件、10月までにやることの一覧つき。
「4月に復帰されるなら、お申込みは10月ですよ」——。9月上旬、初めての園見学でそう告げられて、小野寺美咲さん(仮名・30歳)は言葉に詰まった。第1子の出産が2026年6月、育休に入ってまだ1ヶ月。復帰は「1歳になったころ」と漠然と考えていたが、認可保育園の4月入園は、その半年前に申込が締め切られる。「いつ復帰するか」は、来月までに決めなければならない問いになった。
美咲さんの世帯は、埼玉県南部(東京通勤圏)の賃貸暮らし。本人は年収400万円(月給28万円・賞与64万円)の事務職、夫の慎也さん(32歳)は年収500万円の会社員だ。この記事では、小野寺家をモデルに「時短で4月復帰」「1歳児クラスの4月まで育休を延長」「フルタイムで4月復帰」の3案を、給付金・保育料・手取りまで含めて12ヶ月分検算する。数字の前提はすべて本文中に示すので、自分の月給に置き換えて読んでほしい。
申込のスケジュールは「入園の半年前」に動き出す
認可保育園(認定こども園の保育部分を含む)の入園は自治体が選考する。4月入園の一次募集は、多くの自治体で10月中旬〜12月上旬に締め切られ、内定通知は1〜2月に届く。二次募集は2月ごろだが、一次で埋まった園には空きがほとんど残らない。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 9〜10月 | 園見学・自治体の「入園案内」入手 | 見学の予約枠は9〜10月に集中。希望順位を決める材料になる |
| 10月〜12月上旬 | 一次申込(自治体により締切が違う) | 就労証明書は勤務先に依頼するため、締切の2〜3週間前には手配 |
| 1〜2月 | 内定・不承諾の通知 | 不承諾なら二次募集へ。育休延長の手続きにも不承諾通知が要る |
| 2月 | 二次募集 | 空きは少ない。認可外・企業主導型の併願を検討 |
| 3月 | 面接・健康診断・入園説明会 | 持ち物リストの購入で1〜3万円 |
| 4月 | 入園・慣らし保育(1〜2週間) | 復帰日は入園月の末日までが条件の自治体が多い |
締切日は自治体ごとに1ヶ月以上ずれる。「東京23区は11月〜12月上旬が多い」「政令市には10月中旬締切もある」程度の相場感はあるが、必ず自分の市区町村の入園案内で確認したい。
小野寺家の前提——育休給付は月187,600円→140,000円
美咲さんの育児休業給付金は、育休開始前6ヶ月の給与総額を180で割った「休業開始時賃金日額」が基準になる(賞与は含まない)。月給28万円なら次の通りだ。
```
賃金日額 = 280,000円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 9,333円
育休開始〜180日目:9,333円 × 30日 × 67% = 187,600円/月
181日目以降 :9,333円 × 30日 × 50% = 140,000円/月
```
給付金は非課税で、育休中は健康保険・厚生年金の保険料も免除される。手取りベースでは67%期間で従来の約8割、50%期間で約6割に相当する。時系列で追うと、産休(5月〜8月上旬)を経て8月6日に育休を開始した美咲さんの67%期間は2027年2月1日ごろに終わり、以降は50%の140,000円が続く。
この時点で、選択肢は3つに絞られる。
- A案:2027年4月、0歳児クラスに入園して時短(6時間)で復帰
- B案:2027年4月は申し込まず、1歳児クラスの2028年4月まで育休を延長
- C案:2027年4月、0歳児クラスに入園してフルタイムで復帰
保育料は「世帯の住民税所得割」で決まり、9月に切り替わる
3案の差を大きく左右するのが保育料だ。認可保育園の0〜2歳児の保育料は、父母合算の市町村民税所得割額に応じた階層で決まる。国が定める上限(こども家庭庁「子ども・子育て支援新制度 利用者負担額」、3歳未満・保育標準時間)は次の通りで、実際の自治体額はこれより低いことが多い。
| 階層 | 市町村民税所得割額 | 国基準の月額上限 |
|---|---|---|
| 生活保護世帯 | — | 0円 |
| 市町村民税非課税 | — | 0円(無償化対象) |
| 第3階層 | 48,600円未満 | 19,500円 |
| 第4階層 | 48,600〜97,000円未満 | 30,000円 |
| 第5階層 | 97,000〜169,000円未満 | 44,500円 |
| 第6階層 | 169,000〜301,000円未満 | 61,000円 |
| 第7階層 | 301,000〜397,000円未満 | 80,000円 |
| 第8階層 | 397,000円以上 | 104,000円 |
見落とされがちなのが、判定に使う年度の切り替えだ。4〜8月分は前年度の住民税(前々年の所得)、9月〜翌3月分は当年度の住民税(前年の所得)で判定する。美咲さんは2026年の給与が1〜4月分の約112万円しかなく、産休・育休中の手当と給付金は非課税だ。つまり2026年の所得が減ったぶん、2027年9月分から世帯の階層が1段下がる。
小野寺家の場合、保育園 費用シミュレーターの階層区分に当てはめると、世帯年収900万円相当(2025年所得)の4〜8月は月6.0万円、世帯年収約612万円相当(2026年所得)の9月以降は月4.5万円という試算になった。
```
2027年4〜8月:60,000円 × 5ヶ月 = 300,000円
2027年9月〜2028年3月:45,000円 × 7ヶ月 = 315,000円
年間保育料 = 615,000円
```
なお東京都内の認可保育所等は、都の補助により2025年9月から0〜2歳の第1子も保育料が無償化されている。同じ世帯年収でも、荒川を渡るだけで年間60万円強の差がつく計算で、通勤圏で住まいを選ぶ家庭には無視できない要素だ。国の制度でも、きょうだいが同時在園なら第2子は半額・第3子以降は無償になる。
3案の12ヶ月検算——時短復帰と育休延長の差は年42万円
2027年4月〜2028年3月の12ヶ月で、世帯に残る金額を比べる。美咲さんの手取り計算は、社会保険料を給与の14.8%(協会けんぽ全国平均ベース)、所得税は概算とした。住民税は2027年6月以降、2026年の低い所得で計算されるためほぼゼロになる。4〜5月は2025年所得ベースの月約1.4万円が残る。
A案:時短6時間で復帰(給与は8時間勤務の75%)
- 月給:280,000円 × 75% = 210,000円
- 社会保険料:210,000円 × 14.8% ≒ 31,100円、所得税 約3,800円
- 手取り:約17.5万円(4〜5月は住民税分を引いて約16.1万円)
- 育児時短就業給付(2025年4月創設、2歳未満の子を養育し時短勤務した場合に賃金の10%):21,000円/月
- 賞与:64万円 × 75% = 48万円、手取り約39万円
```
手取り給与 175,000円 × 10ヶ月 + 161,000円 × 2ヶ月 = 2,072,000円
時短給付 21,000円 × 12ヶ月 = 252,000円
賞与手取り 約390,000円
収入合計 ≒ 2,714,000円
保育料 −615,000円
世帯に残る額 ≒ 2,099,000円
```
B案:1歳児クラスの2028年4月まで育休を延長
```
育休給付(50%)140,000円 × 12ヶ月 = 1,680,000円(非課税・社保免除)
保育料 0円
世帯に残る額 = 1,680,000円
```
C案:フルタイムで復帰
- 手取り:280,000円 − 社保41,400円 − 所得税約5,900円 ≒ 23.3万円(4〜5月は約21.9万円)
- 賞与64万円、手取り約52万円
```
手取り給与 233,000円 × 10ヶ月 + 219,000円 × 2ヶ月 = 2,768,000円
賞与手取り 約520,000円
収入合計 ≒ 3,288,000円
保育料 −615,000円
世帯に残る額 ≒ 2,673,000円
```
| 案 | 収入(12ヶ月) | 保育料 | 世帯に残る額 | A案との差 |
|---|---|---|---|---|
| A:時短で4月復帰 | 約271万円 | 61.5万円 | 約210万円 | — |
| B:育休を1年延長 | 168万円 | 0円 | 168万円 | −42万円 |
| C:フルタイム復帰 | 約329万円 | 61.5万円 | 約267万円 | +57万円 |
「復帰すれば保育料でほとんど消える」という印象を持つ人は多いが、時短復帰でも育休延長より年42万円、月に直せば3.5万円ほど多く残る。時短給付の10%上乗せと、住民税がほぼゼロになる復帰1年目の効果が効いている。逆に言えば、B案の「保育料ゼロ・給付は非課税」も決して小さくなく、月3.5万円の差で子どもとの1年を買うと考えれば、選ぶ価値は十分ある。
ただしB案には、お金以外に2つの前提がある。
B案の落とし穴——1歳児クラスの狭き門と、給付延長の厳格化
1つ目は入園のしやすさ。 0歳児クラスは4月に定員のすべてが空くが、1歳児クラスは0歳児からの持ち上がりで枠の大半が埋まる。こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」によると、全国の待機児童は2,254人まで減ったが、その約7割は1・2歳児だ。0歳児4月なら入れた園に、1歳児4月では入れないことは珍しくない。
2つ目は給付延長の条件。 育休給付は原則1歳までで、保育園に入れないときに1歳6ヶ月・2歳まで延長できる。2025年4月からハローワークの審査が厳格化され、次の3点を延長事由認定申告書で確認されるようになった。
- 申込の入園希望日が「子が1歳になる日」以前であること
- 自宅から通える園に申し込んでいるなど、申込内容が速やかな職場復帰を前提にしていること
- 市区町村の「不承諾通知(保留通知)」と申込書の写しを提出すること
つまり「延長したいから遠い園だけ申し込んで、わざと不承諾をもらう」やり方は通らない。B案を取るなら、1歳の誕生日(2027年6月)の前に途中入園を申し込み、不承諾なら1歳6ヶ月(2027年12月)で再度申し込んで不承諾を得る、という手続きを2回踏む必要がある。会社の育休規程が「最長2歳まで」になっているかも確認しておきたい。
10月までにやること——小野寺家のチェックリスト
美咲さんは検算を踏まえ、A案(時短で4月復帰)を第1候補に、入園できなければB案に切り替える二段構えにした。締切までにやることは次の通り。
- [ ] 市区町村の入園案内を入手し、一次募集の締切日と必要書類を確認する
- [ ] 就労証明書を勤務先に依頼する(復帰予定日を「2027年4月中」で記入)
- [ ] 通える園を5〜8園見学し、希望順位を決める(延長保育の有無・給食費・おむつの持ち帰り有無も確認)
- [ ] 夫が14日以上の育休を取っていない場合、出生後休業支援給付(両親とも14日以上の取得で最大28日間、給付率が67%→80%)の要件を満たせるか確認する
- [ ] 保育料の階層を、自治体の保育料表で自分の所得割額から確認する(源泉徴収票ではなく住民税決定通知書の「所得割額」を使う)
- [ ] 認可外・企業主導型保育の併願先を1〜2園押さえておく
- [ ] 復帰後の時短の可否と、時短給付の申請窓口(会社経由でハローワーク)を人事に確認する
慎也さんについても、1つ計算しておきたい数字がある。夫が育休を14日取得すると、出生後休業支援給付の上乗せ(賃金日額の13%、最大28日)が夫婦それぞれに付く。美咲さんの場合は9,333円 × 28日 × 13% ≒ 34,000円。夫婦で7万円前後の上乗せになる。手続きは会社経由なので、まだ間に合うなら検討する価値はある。
よくある質問
Q. 育休中も住民税の納付書が届きました。給付金は非課税なのになぜ?
住民税は前年の所得に対して翌年6月から課税されるためです。美咲さんの場合、2026年6月〜2027年5月分は2025年(フルで働いていた年)の所得に対する住民税で、育休中でも納める必要があります。給与天引きができないため、普通徴収の納付書が届くのが一般的です。住民税 計算シミュレーターで年間額を確認し、育休前に取り置いておくのが安全です。
Q. 時短で復帰すると、将来の年金は減りますか?
3歳未満の子を養育する期間は「養育期間の標準報酬月額の特例」を申請すれば、時短で下がった給与ではなく、育休前の標準報酬月額で年金額が計算されます。保険料は下がった給与ベースで納めるので、負担は減って年金額は維持される仕組みです。申請は会社経由で行います。時短とフルタイムの手取り差を年単位で比べるなら時短勤務 vs フルタイムが使えます。
Q. 0歳児4月入園と1歳児途中入園、どちらが現実的ですか?
地域差が大きいですが、0歳児クラスの4月が最も入りやすく、1歳児の途中入園が最も難しいのが一般論です。1歳の誕生日で復帰したい場合でも、4月の0歳児枠を押さえて「入園後に復帰」を選ぶ家庭が多いのはこのためです。自治体の前年の「入園指数(点数)の内定ライン」を窓口で聞くと、自分の点数で入れるかの見当がつきます。
Q. 保育料以外に毎月かかるお金は?
0〜2歳児は主食費・副食費が保育料に含まれますが、おむつ・着替え・布団カバー・延長保育料は別です。保育園 vs 幼稚園 費用比較では、3歳以降に幼稚園の預かり保育へ切り替えた場合との総額差も見られます。
Q. 給付金の額を自分の月給で確認したい
育児休業給付金 シミュレーターに月給と育休期間を入れると、67%・50%の各期間の月額、出生後休業支援給付の上乗せ、社会保険料の免除額まで出ます。産休中の出産手当金も含めた世帯全体の収入推移は育休中の収入 シミュレーターで追えます。
この記事の数字の出どころ
- 育児休業給付の給付率(67%・50%)、賃金日額の算定方法、出生後休業支援給付・育児時短就業給付(いずれも2025年4月創設):厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」、雇用保険法第61条の7
- 育児休業給付の延長手続の厳格化(2025年4月1日〜):厚生労働省「育児休業給付金の支給対象期間延長手続きが変わります」
- 保育料の国基準額(階層区分):こども家庭庁「子ども・子育て支援新制度 利用者負担(保育料)の上限額」
- 待機児童数:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」
- 0〜2歳第1子の保育料無償化(2025年9月〜):東京都「第1子の保育料無償化」
- 社会保険料率:協会けんぽ全国平均ベースの概算(被保険者負担 約14.8%)。所得税は概算で、扶養・控除の状況で変わる
保育料は自治体ごとに階層の刻みと金額が異なり、同じ所得割額でも月1万円以上ずれることがある。記事の数字はあくまで「決め方の型」として使い、実額は自分の市区町村の保育料表と、上のシミュレーターで置き換えてほしい。