退職後にかかるお金は年収500万円で1年約91万円|住民税24万・任意継続45万・国民年金22万の内訳【令和8年度改正対応】
2027年3月末に年収500万円・55歳で退職すると、退職後12ヶ月の住民税は約24.1万円、健康保険は任意継続45.1万円(国保なら49.2万円)、国民年金21.9万円で計約91万円。給与所得控除74万円への改正がどの年度の住民税から効くか、任意継続と国保の損益分岐(年収約460万円)、失業給付の初回振込までに必要な額をシミュレーター実装値で解説。
退職後にも「見えないコスト」がかかる
会社員時代は給与から天引きされていた住民税・健康保険料・年金保険料。退職すると、これらを自分で支払うことになります。しかも住民税と国民健康保険料は「前年の所得」で決まるため、収入がゼロになった月にも在職中と同じ水準の請求が届きます。
以下は退職後にかかるお金シミュレーターのデフォルト条件(2027年3月末に自己都合退職・年収500万円・賞与なし・55歳・扶養なし・勤続20年・退職金1,000万円)で計算した、退職後12ヶ月(2027年4月〜2028年3月)の支払いです。
| 費用項目 | 退職後12ヶ月の負担 | 計算の根拠 |
|---|---|---|
| 住民税 | 約24.1万円 | 令和8年度分の残り2ヶ月(4.0万円・最後の給与から一括徴収)+令和9年度分10ヶ月(20.0万円) |
| 健康保険(任意継続) | 約45.1万円 | 標準報酬月額32万円 × 11.75% = 月37,600円 × 12 |
| 国民年金 | 約21.9万円 | 令和9年度 月18,290円 × 12 |
| 合計 | 約91.1万円 | 月平均 約7.6万円 |
| (参考)退職金の税金 | 約15.1万円 | 退職金から源泉徴収されるため手出しは不要 |
ここに生活費が加わります。総務省「家計調査」の単身世帯の消費支出は月17万円前後なので、税・保険・年金だけで生活費の4割強の負担が上乗せされるイメージです。
年収別の早見表(実装値)
| 退職前の年収 | 住民税 | 健康保険(安い方) | 国民年金 | 12ヶ月合計 | 失業給付の総額(自己都合150日) |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 11.6万円 | 29.2万円(国保) | 21.9万円 | 62.8万円 | 86.6万円 |
| 400万円 | 17.6万円 | 38.8万円(国保) | 21.9万円 | 78.3万円 | 98.2万円 |
| 500万円 | 24.1万円 | 45.1万円(任意継続) | 21.9万円 | 91.1万円 | 104.2万円 |
| 600万円 | 30.5万円 | 45.1万円(任意継続) | 21.9万円 | 97.6万円 | 125.0万円 |
| 800万円 | 44.9万円 | 45.1万円(任意継続) | 21.9万円 | 112.0万円 | 136.7万円 |
| 1,000万円 | 61.4万円 | 45.1万円(任意継続) | 21.9万円 | 128.5万円 | 136.7万円 |
※ 2027年3月末退職・55歳・扶養なし・勤続20年・賞与なし。国保は東京23区の令和8年度料率。失業給付は45〜59歳の日額上限9,110円(令和8年8月1日〜)で頭打ちになります。
住民税:どの年度の、どの改正が効くのか
住民税は前年1〜12月の所得に対して、翌年6月〜翌々年5月の「年度」で課税されます。令和8年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に上がりましたが、住民税への適用は令和9年度分(2026年の所得)からです。退職のタイミングによって、どの年度の住民税をいくら払うかが変わります。
| 住民税の年度 | 納める期間 | 算定の基礎 | 給与所得控除の最低額 |
|---|---|---|---|
| 令和7年度 | 2025年6月〜2026年5月 | 2024年の所得 | 55万円 |
| 令和8年度 | 2026年6月〜2027年5月 | 2025年の所得 | 65万円 |
| 令和9年度 | 2027年6月〜2028年5月 | 2026年の所得 | 74万円(うち5万円は2年間の時限措置) |
| 令和10年度 | 2028年6月〜2029年5月 | 2027年の所得 | 74万円 |
住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きです(所得税の基礎控除が最大104万円に上がったのとは別扱い)。
計算式(年収500万円・令和9年度分)
- 給与所得 = 500万円 − 給与所得控除144万円 = 356万円
- 課税所得 = 356万円 − 社会保険料控除75万円(年収の15%概算) − 基礎控除43万円 = 238万円
- 所得割 = 238万円 × 10% − 調整控除2,500円 = 235,500円
- 年税額 = 所得割235,500円 + 均等割5,000円 = 240,500円
年収500万円では給与所得控除が「収入×20%+44万円」の区分なので、最低保障の引上げは影響しません。効いてくるのは給与収入が少ない年です。たとえば年収180万円相当の所得なら、住民税は2024年の所得(控除62万円)で50,500円、2025年の所得(65万円)で47,500円、2026年の所得(74万円)で38,500円と、同じ収入でも年度によって1万円以上違います。
退職月による払い方の違い
| 退職月 | 住民税の扱い | 2027年に退職した場合の12ヶ月負担(年収500万円) |
|---|---|---|
| 1〜5月 | その年度の5月分までの残りを最後の給与から一括徴収(義務) | 3月退職: 24.1万円 |
| 6〜12月 | 翌年5月までの残りを一括徴収か、自分で納める普通徴収(年4回)かを選択 | 6月退職: 22.5万円/9月退職: 20.7万円 |
6〜12月退職で12ヶ月負担が少し下がるのは、退職翌年の6月以降の住民税が「退職した年の、数ヶ月分しかない給与」で計算されるためです。逆に言えば、退職2年目にも住民税は来ます。1〜3月退職なら2年目の6月から、その年の1〜3月分の給与に対する住民税が届きます。
健康保険:任意継続か国保か
退職後の健康保険は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3択です。
| 選択肢 | 手続き期限 | 保険料の決まり方(令和8年度) |
|---|---|---|
| 任意継続(協会けんぽ) | 退職日の翌日から20日以内 | 標準報酬月額(上限32万円)×(9.90%+介護1.62%+子ども・子育て支援金0.23%)を全額自己負担。扶養家族は追加負担なし |
| 国民健康保険(東京23区) | 14日以内 | (前年所得−43万円)× 13.01%(40〜64歳)+ 均等割 1人約6.7万円+介護分1.78万円。限度額は医療67万・支援26万・介護17万・子ども3万円 |
| 家族の扶養 | 健保による | 年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)などの条件を満たせば0円 |
年収別の比較(55歳・扶養なし・12ヶ月)
| 退職前の年収 | 任意継続 | 国民健康保険 | 安い方 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 35.3万円 | 29.2万円 | 国保 |
| 400万円 | 45.1万円 | 38.8万円 | 国保 |
| 460万円 | 45.1万円 | 45.0万円 | ほぼ同額(損益分岐) |
| 500万円 | 45.1万円 | 49.2万円 | 任意継続 |
| 600万円 | 45.1万円 | 59.6万円 | 任意継続 |
| 1,000万円 | 45.1万円 | 104.3万円 | 任意継続 |
損益分岐は年収約460万円です。任意継続は標準報酬月額の上限32万円(令和8年度。令和6年度までは30万円)で頭打ちになるため、年収が高いほど有利です。判定を変える条件が3つあります。
- 扶養家族がいる: 国保は人数分の均等割がかかるため、扶養2人なら年収500万円で任意継続45.1万円 vs 国保62.6万円と差が広がります。
- 会社都合退職: 国保の非自発的失業者軽減で、前年の給与所得を30%として計算します。年収500万円でも国保は約16.8万円まで下がり、任意継続より28万円以上安くなります。
- 6〜12月退職: 国保は4月から年度が切り替わり、退職した年の(数ヶ月分の)所得で再計算されます。2027年9月退職なら12ヶ月の国保は42.7万円で、任意継続より安くなります。2022年1月以降は任意継続を自分の希望でやめられるので、翌年度の国保額が出た時点で切り替える選択肢もあります。
2年間で比べたい場合は任意継続vs国保の比較シミュレーター、自治体別の国保額は国民健康保険シミュレーターが便利です。
国民年金:令和9年度は月18,290円
60歳未満で退職すると国民年金の第1号被保険者になります。保険料は年度(4月〜翌3月)単位で決まっています。
| 年度 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 令和7年度(2025年4月〜) | 17,510円 | 210,120円 |
| 令和8年度(2026年4月〜) | 17,920円 | 215,040円 |
| 令和9年度(2027年4月〜) | 18,290円 | 219,480円 |
会社員に扶養されていた60歳未満の配偶者(第3号被保険者)も第1号に切り替わるため、夫婦2人なら年約43.9万円。配偶者ありのケース(扶養1人)では、12ヶ月合計が約109.8万円になります。失業を理由とする特例免除は前年所得を除外して審査されるので、手元資金が厳しいときは市区町村の年金窓口に相談しましょう。60歳以上で退職した場合は加入義務がなく、この負担はかかりません。
退職金の税金:控除が大きく、源泉徴収で完結
退職金には退職所得控除(勤続20年まで年40万円、20年超は年70万円)があり、控除後の金額をさらに1/2にしてから課税されます。所得税には復興特別所得税2.1%が上乗せされ、住民税は一律10%です。
| 退職金 | 勤続年数 | 退職所得控除 | 税額(所得税+住民税) | 手取り |
|---|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 20年 | 800万円 | 約15.1万円 | 約984.9万円 |
| 1,500万円 | 25年 | 1,150万円 | 約26.4万円 | 約1,473.6万円 |
| 2,000万円 | 30年 | 1,500万円 | 約40.6万円 | 約1,959.4万円 |
| 2,500万円 | 30年 | 1,500万円 | 約108.5万円 | 約2,391.6万円 |
| 2,000万円 | 38年 | 2,060万円 | 0円 | 2,000万円 |
| 800万円 | 3年 | 120万円 | 約117.6万円 | 約682.4万円 |
最後の行のように、勤続5年以下で控除後300万円を超える部分は1/2課税が使えません(短期退職手当等の規定)。「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば源泉徴収で完結し、確定申告は不要です。仕組みの詳細は退職所得控除の解説記事と退職金の手取りシミュレーターで確認できます。
失業給付でどこまでカバーできるか
基本手当日額は「賞与を除く退職前6ヶ月の給与÷180」の50〜80%で、年齢別の上限があります(令和8年8月1日〜、45〜59歳は9,110円)。
| 退職理由 | 給付制限 | 初回振込の目安 | 年収500万円・55歳・勤続20年の総額 |
|---|---|---|---|
| 自己都合 | 待期7日+1ヶ月(2025年4月改正) | 退職3ヶ月目 | 日額6,944円 × 150日 = 約104.2万円 |
| 会社都合 | 待期7日のみ | 退職2ヶ月目 | 日額6,944円 × 330日 = 約229.2万円 |
| 定年(60歳・勤続38年) | 待期7日のみ | 退職2ヶ月目 | 日額6,250円 × 150日 = 約93.8万円 |
支給が始まれば、月7.6万円の税・保険・年金は失業給付(月約20.8万円)で賄えます。問題は初回振込までの無収入期間で、自己都合なら最初の2ヶ月に約15.2万円(住民税の一括徴収4.0万円を含む)を貯蓄から払うことになります。会社都合なら約7.2万円です。
ケース別の「退職後12ヶ月」比較
| ケース | 住民税 | 健康保険 | 国民年金 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 基本(500万円・55歳・自己都合・3月退職) | 24.1万円 | 45.1万円(任継) | 21.9万円 | 91.1万円 |
| 会社都合退職 | 24.1万円 | 16.8万円(国保軽減) | 21.9万円 | 62.8万円 |
| 扶養2人(配偶者は第2号等) | 17.0万円 | 45.1万円(任継) | 21.9万円 | 84.0万円 |
| 第3号の配偶者あり | 20.8万円 | 45.1万円(任継) | 43.9万円 | 109.8万円 |
| 60歳で定年退職 | 24.1万円 | 45.1万円(任継) | 0円 | 69.2万円 |
| 3ヶ月以内に再就職 | 24.1万円 | 11.3万円(3ヶ月) | 5.5万円(3ヶ月) | 40.8万円 |
よくある質問(FAQ)
Q. 退職後にかかるお金は1年でいくら?
年収500万円・55歳・扶養なしで2027年3月末に自己都合退職した場合、退職後12ヶ月の住民税・健康保険・国民年金の合計は約91.1万円です(シミュレーター実装値)。年収300万円なら約62.8万円、1,000万円なら約128.5万円。生活費は別にかかります。
Q. 給与所得控除が74万円になったのに、住民税が下がらないのはなぜ?
住民税への適用が令和9年度分(2026年の所得)からだからです。2026年6月〜2027年5月に払う令和8年度分は2025年の所得で計算され、控除の最低額は65万円です。また引上げが効くのは給与収入がおおむね220万円以下の人に限られ、年収500万円では控除額は変わりません。
Q. 任意継続と国保、どちらがお得?
55歳・扶養なしなら損益分岐は年収約460万円で、それより上は任意継続、下は国保が安くなります。扶養家族がいる・高年収なら任意継続、会社都合退職・年の途中で退職して翌年度の所得が下がるなら国保が有利になりやすいです。
Q. 失業給付はいつから・いくらもらえる?
自己都合は待期7日+給付制限1ヶ月のあと、初回振込は退職からおおむね3ヶ月目。会社都合・定年は2ヶ月目が目安です。年収500万円・55歳・勤続20年の自己都合なら約104.2万円。総額と日数は失業給付シミュレーターで詳しく計算できます。
Q. この記事のデータの根拠は?
住民税は地方税法の標準税率と、国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」・名古屋市「令和9年度分個人住民税の主な変更点」の給与所得控除。任意継続は全国健康保険協会の令和8年度料率と上限32万円、国保は豊島区「特別区国民健康保険料の改定について」の令和8年度基準料率、国民年金は日本年金機構と江東区の公表額、失業給付は厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」(令和8年8月1日)です。本文の数値はすべて退職後にかかるお金シミュレーターを実行して検算しています。
Q. 数字が自分の状況と合わない場合は?
国保は市区町村ごとに料率が違い、健保組合の任意継続は上限額が協会けんぽと異なります。年収に賞与が含まれる場合は、シミュレーターの詳細設定で賞与額を入れると任意継続と失業給付が正確になります。計算の誤りにお気づきの場合はお問い合わせからご連絡ください。
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出典
- 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf
- 名古屋市「令和9年度分個人住民税の主な変更点」 https://www.city.nagoya.jp/kurashi/zeikin/1012153/1012174.html
- 全国健康保険協会「令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/news/r07_dec/1259.html
- 豊島区「特別区国民健康保険料の改定について(令和8年度)」 https://www.city.toshima.lg.jp/documents/55129/20260327165423.pdf
- 日本年金機構「国民年金保険料」 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html
- 厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_74837.html