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中古マンション5,800万円、管理費+修繕積立金30年で1,200万円|38歳共働き夫婦の購入判断【ケーススタディ】

築12年の中古マンション5,800万円を検討する38歳・世帯年収900万円の共働き夫婦が、ローン返済以外に発生する『管理費・修繕積立金・駐車場・固定資産税』の30年累計を試算。新築一戸建て6,500万円との実質コスト比較もシミュレーターで検証しました。

「ローン返済額だけ見て買える金額を判断していたら、後から苦しくなった」——マンションを購入した先輩から木下さん(仮名・38歳)はそう聞かされていた。

世帯年収900万円。貯蓄1,200万円。子どもは小学校入学を控えた1人。今住んでいるのは東京都郊外の2LDK賃貸(家賃12.5万円)。「そろそろ広い家に」と探しはじめて目に留まったのが、最寄り駅徒歩7分・築12年・3LDKの中古マンション5,800万円だった。

不動産会社の試算では「月の支払いは家賃と同等」と説明された。しかし木下さんは管理費と修繕積立金の存在に引っかかっていた。「今15,000円と12,000円。でも将来上がるって本当にいくらまで?」——その問いから、実質コストの徹底検証が始まった。

木下さん家の現状と検討物件

項目内容
夫(38歳)会社員・年収720万円・勤続15年
妻(36歳)事務パート・年収180万円
世帯年収900万円
貯蓄1,200万円(うち頭金充当予定800万円)
子ども1人(6歳・小学校入学)
現家賃12.5万円(東京都郊外・2LDK・築15年)

検討中の中古マンション:

  • 物件価格: 5,800万円
  • 築12年・3LDK・駅徒歩7分
  • 管理費: 月15,000円(現在)
  • 修繕積立金: 月12,000円(現在)
  • 駐車場: 月8,000円(区分所有でなく賃貸)

月の支払いだけ見ると確かに「家賃並」

住宅ローン月額シミュレーターに頭金800万円を引いたローン額5,000万円・35年・固定1.85%で入力すると、月返済額は約161,200円

ここに月々の管理関連費を加えると、

```
ローン返済 : 161,200円
管理費 : 15,000円
修繕積立金 : 12,000円
駐車場 : 8,000円
─────────────────────────
合計 : 196,200円/月
```

確かに今の家賃125,000円+駐車場(職場の月極15,000円)=月140,000円から、月5.6万円の上乗せに見える。「ローンを払いながら資産が積み上がるなら悪くない」と、不動産会社の担当者は言った。

ただ、木下さんが引っかかったのは「修繕積立金は段階的に上がる」という一行だった。

修繕積立金は『今の額』で見ては危険

国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年改訂版)」では、長期修繕計画に基づいた段階増額方式が一般的とされている。築年数が進むにつれ、外壁・防水・給排水管・エレベーターといった大規模修繕の費用が累積し、5〜10年ごとに月額が30%前後ずつ引き上げられるケースが多い。

マンション管理費・修繕積立金シミュレーターで、築12年スタート・現在12,000円・5年ごと+30%の段階増額を仮定して試算すると——

期間(築年数)修繕積立金(月額)5年累計
12〜17年12,000円72万円
17〜22年15,600円93.6万円
22〜27年20,280円121.7万円
27〜32年26,364円158.2万円
32〜37年34,273円205.6万円
37〜42年44,555円267.3万円
30年合計約918万円

「払い続ける額」が10年後にはほぼ倍。20年後には3倍超。木下さん夫婦が68歳になる頃には月44,555円の修繕積立金を支払い続ける計算になる。これに管理費15,000円・駐車場8,000円を足すと月67,555円。年金生活に入ったあとの固定費としては小さくない。

30年で出ていく「ローン以外」を全部足す

ローン返済以外の固定支出を30年分積み上げるとどうなるか、シミュレーターで横断的に試算した。

費目月額(平均)30年累計
管理費15,000円(一定と仮定)540万円
修繕積立金(段階増額)平均約25,500円約918万円
駐車場8,000円288万円
固定資産税月相当 約11,700円約420万円
火災・地震保険月相当 約5,000円約180万円
小計(ローン以外)約2,346万円

ローン総返済額は35年・固定1.85%で約6,770万円(うち利息1,770万円)。これに上記の「ローン以外30年分」を加えると、購入後30年で出ていく現金は約9,116万円。物件価格5,800万円の約1.57倍を払うことになる。

ここに、20年目前後で見込まれる専有部分のリフォーム(キッチン・浴室・給湯器・内装の更新で500〜800万円)が乗ると、実質コストは1億円に近い。

比較対象:新築建売一戸建て6,500万円ならどうか

木下さんは比較として、同じエリアの新築建売一戸建て6,500万円も検討していた。一戸建ては管理費・修繕積立金がない代わりに、修繕は自分でタイミングと金額を決める

費目マンション5,800万円一戸建て6,500万円
月返済(35年・1.85%・頭金800万)161,200円185,700円
管理費15,000円0円
修繕積立金(強制)平均25,500円0円(自前積立推奨15,000円)
駐車場8,000円0円(自宅敷地)
固定資産税(年)約14万円約16万円
30年累計(ローン+固定費)約9,116万円約8,940万円

一戸建てvsマンション総コスト比較シミュレーターで実額を入れると、30年累計の差は約180万円——意外と僅差だった。

ただし内訳の性質はまったく違う。

  • マンション: 管理費・修繕積立金が毎月強制徴収される。資金繰りが厳しくても止められない。一方、共用部の維持は管理組合が担うので「見積もりを取ったり業者と交渉する手間」がほぼない。
  • 一戸建て: 「修繕費」は自分の意思で先送り・節約できる。逆に言えば、意思の弱い世帯では修繕費を貯めず、必要な時に貯蓄を取り崩すか借入するケースが多い。屋根・外壁・給湯器・シロアリ対策は、放置すれば被害が10倍に膨らむ世界だ。

「払うのが嫌でもいつか払う」のはどちらも同じ。違うのは払うタイミングを自分で決められるかどうかだけだ。

中古マンションを選ぶなら「重要事項調査報告書」を必ず取る

木下さんが最終的にチェックしたのは、検討マンションの重要事項調査報告書だった。これは管理組合が作成する書類で、現時点の修繕積立金残高・長期修繕計画・大規模修繕の実施履歴・滞納戸数などが書かれている。

中古マンション購入のメリット・デメリット試算シミュレーターで、中古ならではのチェック項目を踏まえて再計算した結果、木下さんが気にすべきは以下だった。

  • 修繕積立金がガイドライン下限の60%以下だと、近い将来の一時金徴収リスクがある
  • 直近の大規模修繕(10〜15年周期)が実施済み or 計画ありかで、入居後の負担タイミングが大きく変わる
  • 滞納戸数が全戸の5%超なら、管理組合の財務体力に懸念

検討物件の調査報告書では、

  • 修繕積立金残高: 約2.4億円(戸数で割ると1戸あたり約400万円)
  • 直近の大規模修繕: 5年前に実施済み
  • 滞納戸数: 0戸

——という良好な状態。値上げペースも長期修繕計画上は「5年ごとに+25〜30%」と試算と一致していた。

木下さんの結論:マンションを買うが、貯蓄計画を組み直す

最終的に木下さんはマンション購入を決めたが、当初の家計シミュレーションを大幅に組み直すことにした。

  1. 頭金を800万円→1,200万円に増やす(妻のNISA枠の現金化を一部充当)。ローン額を4,600万円に圧縮し、月返済を約148,300円に下げた
  2. 修繕積立金の段階増額を見越して、毎月3万円の独立予備費口座を別途積み立てる(緊急予備費シミュレーターで算出)
  3. 子どもの教育費ピーク(中学〜大学)と修繕積立金値上げのピークが重なる45〜55歳の10年間は、家計予算を年単位で再点検する
  4. 65歳時点で住宅ローン残債を500万円以下にするため、繰上返済枠を年20万円ずつ確保

「物件価格=買える金額」ではない。月の総支払い+30年後の支払いピークまで見て初めて『買える』が分かる」——木下さんはそう語っていた。

マンション購入を検討する人へのチェックリスト

  • [ ] 検討物件の重要事項調査報告書を取り寄せたか
  • [ ] 修繕積立金が国交省ガイドラインの下限を超えているか
  • [ ] 直近の大規模修繕が10年以内に実施 or 計画ありか
  • [ ] 30年後の修繕積立金月額を試算したか(管理費シミュレーター
  • [ ] ローン返済以外の30年累計を計算したか
  • [ ] 同価格帯の一戸建てとの比較を行ったか
  • [ ] 子どもの教育費ピークと修繕積立金値上げのピークが重ならないか確認したか

よくある質問

Q. 修繕積立金が極端に安いマンションは買わない方がいい?
A. 「安い=お得」ではなく、長期修繕計画とガイドラインの下限を比べる必要があります。ガイドラインの下限を大きく下回る積立金は、将来の一時金徴収(戸あたり50〜200万円)や急激な値上げ(一気に2倍など)のリスクが高い傾向があります。重要事項調査報告書の長期修繕計画と照らして、5〜10年ごとの予定値上げ率を確認しましょう。

Q. 中古マンションは新築より修繕積立金が高いの?
A. 築年数が進んでいる物件は段階増額の途中にあるため、新築(築0〜5年)の物件より高いケースが多くなります。一方で物件価格自体が新築より安いため、月の総支払いとしては中古の方が抑えられることも多い。「物件価格+30年累計の管理関連費」で比較するのが妥当です。

Q. 駐車場は買うべき?借りるべき?
A. 区分所有(自分のもの)にできるマンションでは、駐車場の所有権を購入すると月額がゼロまたは管理費に含まれるケースがあります。ただし将来車を持たなくなった時の処分性は低い。車を持つかどうか30年後も読めない場合は、賃貸(毎月8,000〜20,000円)の方が柔軟です。

Q. ローンが終わってからもこれだけ払うの?
A. はい。管理費・修繕積立金・固定資産税は所有している限りずっと発生します。ローンを完済した65歳以降も、月67,000円程度(マンション)+固定資産税年14万円が出ていく計算。年金生活で月7万円超の住宅関連固定費は決して軽くないため、完済後の家計設計まで含めて購入判断するのが安全です。

Q. この計算の前提データはどこから?
A. 修繕積立金の段階増額モデルは国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年改訂版)」の標準パターン、固定資産税は東京都都税事務所の中古マンション平均評価額、ローン金利は2026年5月時点の主要銀行の固定金利(ARUHI/みずほ/三菱UFJの平均)を参照しています。詳細な前提条件は各シミュレーターのアコーディオン内で確認できます。

Q. 数字が実感と合わない場合は?
A. お住まいの地域・物件規模・築年・管理形態(自主管理 or 委託)で大きく変動します。「重要事項調査報告書」を不動産会社経由で取り寄せ、実物件の長期修繕計画を入力すると正確な30年累計が出ます。試算がうまくいかない場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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「家を買う」という決断は、物件を選ぶことではなく30年後の自分の家計に合意することだ。月の支払いだけでなく、修繕積立金が3倍になったときの月額・固定資産税・大規模修繕一時金まで含めて試算し、それでも納得できる物件を選ぶ。木下さん夫婦のように「月の支払いは家賃並」の罠に気づけるかどうかで、20年後の家計の余裕がまったく違う風景になる。

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