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確定給付企業年金(DB)とは|加入者約900万人・会社が運用リスクを負う企業年金の仕組みと、転職・iDeCo併用の注意点

確定給付企業年金(DB)は、将来の給付額があらかじめ約束され、運用リスクを会社側が負う企業年金。加入者は約900万人と企業型DCに並ぶ規模なのに、自分が加入していることさえ知らない人が多い制度です。企業型DCと何が逆なのか、加入の確認方法、一時金と年金で変わる税金、転職時の4つの選択肢、iDeCo掛金上限の2027年改正まで、根拠を示して解説します。

「退職金とは別に、年金が出るらしいんです。何かはよく知らないんですが」

転職相談でこう話す人の勤務先を調べると、たいてい出てくるのが確定給付企業年金(DB: Defined Benefit Plan)です。厚生労働省の統計では加入者は約900万人(2023年度末)。会社員のおよそ4人に1人が加入している計算なのに、企業型DC(確定拠出年金)ほど話題にならず、自分が加入者だと知らないまま働いている人が大量にいる制度です。

知らないままだと、転職時に受け取り方を間違えて税金で損をしたり、iDeCoの掛金上限を勘違いしたりします。この記事で仕組みを一度整理しておきましょう。

DBの仕組み——「給付額を約束し、運用リスクは会社が負う」

確定給付企業年金は2002年施行の確定給付企業年金法に基づく企業年金で、名前のとおり給付(Benefit)が確定しています。「勤続30年・この等級なら一時金換算で〇〇万円」という給付水準を先に規約で約束し、それを賄うために会社が掛金を拠出して外部(信託銀行・生命保険会社など)で積み立て運用します。

ここが企業型DCとの決定的な違いです。

確定給付企業年金(DB)企業型DC(確定拠出年金)
決まっているもの給付額(もらう額)拠出額(会社が出す額)
運用するのは会社(委託先機関)従業員本人
運用がうまくいかないと会社が追加拠出して穴埋め自分の受取額が減る
受取額の見通し立てやすい運用次第で変動
転職時移換・脱退一時金など手続きが必要自分の口座ごと持ち運び

運用に失敗した場合の穴埋め義務が会社側にある、つまりリスクの置き場所が逆——これがDBを理解する鍵です。従業員から見れば、DBは「何もしなくても約束額が積み上がる、値動きのない資産」といえます。

なお、給付額を市場金利などに連動させるキャッシュバランスプランもDBの一種です。この場合、給付は完全固定ではなく緩やかに変動します。

自分が加入しているか、3分で確認する方法

DBは給与から天引きされないケースが多く(掛金は原則会社負担)、給与明細を眺めても存在に気づけません。確認手段は次の3つです。

  1. 退職金規程・企業年金規約を見る——社内ポータルの「退職金」「企業年金」の項目に「確定給付企業年金」の記載があるか
  2. 年1回の給付見込み額のお知らせを探す——DB実施企業は加入者への情報提供義務があり、書面や社内サイトで見込み額が通知されている
  3. 総務・人事に「うちにDBはありますか。私は加入者ですか」と聞く——最速で確実

このとき、あわせて「DB等の他制度掛金相当額(自分の分として毎月いくら拠出扱いになっているか)」も聞いておくと、後述するiDeCoの上限計算にそのまま使えます。

受け取り方で税金が変わる——一時金なら退職所得控除

DBの老齢給付は、年金(分割)と一時金(一括)から選べるのが一般的です。税金の扱いが大きく違います。

  • 一時金で受け取る → 退職所得として、退職金と合算のうえ退職所得控除を適用
  • 年金で受け取る → 雑所得として公的年金等控除を適用(65歳未満は最低60万円、65歳以上は最低110万円)

退職所得控除は勤続年数で決まります。

```
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) ※勤続20年超の場合

例: 勤続38年 → 800万円 + 70万円 × 18年 = 2,060万円まで非課税
さらに控除を超えた分も、課税されるのは超過額の2分の1だけ
```

会社の退職一時金とDBの一時金の合計が控除内に収まるなら、一時金受け取りが税制上は有利になりやすい構図です。一方、年金受け取りは公的年金等控除の枠を使いますが、公的年金と合算されるため、65歳以降に受け取りが重なると課税所得を押し上げ、国民健康保険料などに波及することもあります。自分の退職金にかかる税金は退職金手取りシミュレーターで確認できます。

転職・退職時の選択肢は4つ

DBのつまずきポイントは転職時です。放置すると不利な形で自動処理されることがあるため、選択肢を知っておく必要があります。

  1. 脱退一時金として受け取る——すぐ現金になるが、老後資産としては消える。勤続が短いと金額も小さい
  2. 企業年金連合会に移換する(通算企業年金)——将来の年金として通算される定番の選択肢
  3. 転職先のDB・企業型DCに移換する——転職先の規約が受け入れを認めている場合
  4. iDeCoに移換する——自分で運用を引き継ぐ。以後の掛金拠出も自分次第

どれが得かは、金額・年齢・転職先の制度で変わります。判断の軸は「老後資産として残すか、いま使うか」。数十万円程度でも、30代で移換して60歳まで置けば複利で育つ時間が長く、安易な現金化はもったいない場面が多いといえます。老後全体の収支から逆算したい人は老後収入プランシミュレーターをどうぞ。

DBがあるとiDeCoはいくらまで?——現行月2万円、2027年1月から拡大

DB加入者のiDeCo掛金上限は、現行では月2万円(企業型DCの事業主掛金やDB等掛金相当額との合計で月5.5万円以内)です。2024年12月の制度改正で、それまで一律月2.75万円とみなされていたDBの掛金相当額が実額で評価されるようになり、この5.5万円枠の計算に各社の実際の数字が使われています。

さらに2027年1月からは共通拠出限度額が月6.2万円に引き上げられ、DB加入者は「6.2万円 − 事業主掛金等の額」まで拠出できるようになります。DBの掛金相当額が小さい会社の人ほど、iDeCoの増額余地が大きく広がる改正です。改正の全体像はiDeCoの掛金上限引き上げの解説記事にまとめています。

「DBがあるからiDeCoはほぼ意味がない」と思い込んでいた人は、まず自社の掛金相当額を確認してから、iDeCoシミュレーター企業型DC vs iDeCo比較シミュレーターで節税額を試算してみてください。

よくある質問

Q. 退職金とDBは何が違う?

A. 退職一時金は会社が社内で用意して退職時に払うお金、DBは社外に積み立てて年金または一時金で払う制度です。実務上は「退職金の一部をDBで払う」設計の会社が多く、退職金規程を見ると「退職金=退職一時金+DB給付」と分解されていることがよくあります。合計額で自社の水準を把握するのが正解です。

Q. 会社が倒産したら年金は消える?

A. DBの年金資産は信託銀行・生命保険会社などに外部積立されており、会社の資産とは分離されています。倒産しても積立分は保全されますが、積立不足があった場合の不足分まで保証する仕組み(支払保証制度)はDBにはないため、給付が減額される可能性はあります。

Q. 在職中に給付を減らされることはある?

A. 給付減額には、加入者の3分の2以上の同意や労働組合の同意、厚生労働大臣の認可(または承認)といった厳格な手続きが法令で定められています。会社の一存で勝手に減らせる仕組みにはなっていません。

Q. DBとねんきん定期便の金額は別物?

A. 別物です。ねんきん定期便に載るのは国の年金(基礎年金・厚生年金)だけで、DBや企業型DCは含まれません。老後の見込みを立てるときは、年金受給額シミュレーターの結果にDBの給付見込み額を足して考える必要があります。

次のアクション

  1. 退職金規程か人事への確認で、自分がDB加入者かどうかを今週中にはっきりさせる
  2. 加入していたら、給付見込み額DB等掛金相当額の2つの数字を控える
  3. その数字を使って、iDeCoの増額余地と老後収支を試算する

出典: 厚生労働省「確定給付企業年金法」「企業年金・個人年金制度の現況」、国税庁「退職金と税」「公的年金等の課税関係」、企業年金連合会「通算企業年金」。

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