介護費用はいくらかかる?在宅・施設別の月額と総額を解説
介護にかかる費用を在宅介護・施設介護別に解説。介護保険の自己負担割合、要介護度別のサービス費用、公的制度の活用法をまとめました。
介護費用の平均総額は約580万円
生命保険文化センター『生命保険に関する全国実態調査(2021年)』によると、介護にかかる費用の平均は一時費用74万円+月額8.3万円×平均介護期間61ヶ月=約580万円です。ただし、介護の形態(在宅か施設か)、要介護度、介護期間によって大きな幅があります。
介護費用は「いつ」「どのくらいの期間」必要になるか予測しにくいため、早い段階で費用の相場を知り、家族で備えておくことが重要です。この記事では、厚生労働省の介護報酬データや各施設の全国平均費用をもとに、在宅・施設別の月額費用から公的制度の活用法まで詳しく解説します。
在宅介護の費用
介護保険サービスの自己負担
介護保険の自己負担割合は所得に応じて1〜3割です。2018年8月から一部の高所得者は3割負担になりました。
| 年金収入等の目安 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 280万円未満 | 1割 |
| 280万円以上〜340万円未満 | 2割 |
| 340万円以上 | 3割 |
※65歳以上の単身世帯の場合。夫婦世帯は基準額が異なります。
要介護度別の月額費用(在宅・1割負担の場合)
| 要介護度 | 支給限度額 | 自己負担(1割) | 主なサービス内容 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 約5,000円 | 週1回のデイサービス |
| 要支援2 | 105,310円 | 約10,500円 | 週2回のデイサービス |
| 要介護1 | 167,650円 | 約16,800円 | 週3回の訪問介護+デイサービス |
| 要介護2 | 197,050円 | 約19,700円 | 週4回の訪問介護+デイサービス |
| 要介護3 | 270,480円 | 約27,000円 | 毎日の訪問介護+デイサービス |
| 要介護4 | 309,380円 | 約30,900円 | 毎日の訪問介護+短期入所 |
| 要介護5 | 362,170円 | 約36,200円 | 1日複数回の訪問介護 |
※厚生労働省の介護報酬単価(2024年度改定)に基づく概算。地域区分により単価が異なります。
在宅介護のトータル費用(要介護3の場合)
在宅介護は介護保険サービスの自己負担だけでなく、保険外のサービスや消耗品費用もかかります。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 介護保険サービス(1割負担) | 27,000円 |
| 介護保険外のサービス(家事代行等) | 10,000円 |
| おむつ等の消耗品 | 8,000円 |
| 住宅改修の積み立て | 5,000円 |
| 月額合計 | 約50,000円 |
年間で約60万円、5年間で約300万円です。住宅改修(手すり設置、段差解消等)には介護保険から最大20万円(自己負担1〜3割)の給付がありますが、大規模なリフォームが必要な場合は自費負担が発生します。
在宅介護の「見えないコスト」
費用だけでは見えにくい負担として、介護離職のリスクがあります。総務省の調査では年間約10万人が介護を理由に離職しており、介護離職による生涯賃金の損失は数千万円にのぼるケースも。介護休業給付シミュレーターで、介護休業制度を活用した場合の給付額を事前に確認しておきましょう。
施設介護の費用
主な施設の月額費用
| 施設の種類 | 月額(目安) | 入居一時金 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 8〜15万円 | なし | 要介護3以上、待機期間あり |
| 介護老人保健施設(老健) | 9〜17万円 | なし | リハビリ目的、3〜6ヶ月 |
| グループホーム | 12〜18万円 | 0〜20万円 | 認知症対応、少人数 |
| 介護付き有料老人ホーム | 15〜35万円 | 0〜数千万円 | サービス充実、費用高め |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 10〜25万円 | 0〜数十万円 | 比較的自立した方向け |
※厚生労働省『介護給付費等実態統計』および各施設団体の公開データに基づく全国平均の目安。
特別養護老人ホームの費用内訳(要介護3・1割負担)
特養は公的施設のため月額費用が最も安く、入居一時金も不要です。ただし要介護3以上が入居条件で、全国平均で約2年の待機期間があります。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 介護サービス費(1割) | 約23,000円 |
| 居住費 | 約25,650円(多床室)〜約60,180円(個室) |
| 食費 | 約43,350円 |
| 日常生活費 | 約10,000円 |
| 合計(多床室) | 約102,000円 |
| 合計(個室) | 約137,000円 |
10年間の施設費用総額の比較
介護期間を10年と仮定した場合の総費用を比較します。
| 施設の種類 | 月額(中間値) | 入居一時金 | 10年間の総額 |
|---|---|---|---|
| 特養(多床室) | 10万円 | 0円 | 約1,200万円 |
| 特養(個室) | 14万円 | 0円 | 約1,680万円 |
| 有料老人ホーム | 25万円 | 300万円 | 約3,300万円 |
| サ高住 | 17万円 | 20万円 | 約2,060万円 |
特養と有料老人ホームでは10年間で約2,000万円の差が出ます。費用面だけを考えれば特養が圧倒的に有利ですが、待機期間や個室の有無、サービスの質を総合的に判断する必要があります。
シミュレーター実装値で見る4形態の費用比較
老人ホーム費用シミュレーターのデフォルト条件(要介護3・自己負担1割・介護期間10年・在宅は家賃5万円+訪問介護追加2万円+福祉用具1万円/月)で4形態を計算すると、次のようになります。
| 介護の形態 | 月額 | 年額 | 10年間の総額 |
|---|---|---|---|
| 特養(多床室) | 約10.3万円 | 約124万円 | 約1,238万円 |
| 在宅介護 | 約13.7万円 | 約164万円 | 約1,645万円 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 約19.2万円 | 約230万円 | 約2,303万円 |
| 介護付き有料老人ホーム(入居一時金300万円を按分) | 約28.5万円 | 約342万円 | 約3,423万円 |
※すべてシミュレーター実装式の実行値。在宅介護は「介護サービス費2.7万円+日用品3万円+住居費5万円+訪問介護追加2万円+福祉用具1万円」の合計で、持ち家で住居費がかからない場合は月8.7万円程度まで下がります。
要介護度による差は施設より在宅で大きく出ます(実装値・月額)。
| 要介護度 | 特養 | 在宅介護 | 介護付き有料 |
|---|---|---|---|
| 要介護1 | 約9.9万円 | 約12.7万円 | 約28.1万円 |
| 要介護3 | 約10.3万円 | 約13.7万円 | 約28.5万円 |
| 要介護5 | 約10.7万円 | 約14.6万円 | 約28.9万円 |
施設は食費・居住費など固定部分が大きいため要介護度が上がっても月額は微増ですが、待機期間中の在宅介護は要介護度が上がるほど訪問介護の追加利用が増え、実際の負担は表以上に膨らみやすい点に注意してください。
介護費用を軽減する制度
高額介護サービス費
月の自己負担額が上限を超えた場合、超過分が払い戻されます。
| 所得区分 | 月の上限額 |
|---|---|
| 住民税非課税世帯(年金80万円以下) | 15,000円 |
| 住民税非課税世帯(上記以外) | 24,600円 |
| 一般世帯 | 44,400円 |
| 現役並み所得(年収約383万円以上) | 44,400〜140,100円 |
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
低所得者は施設の居住費・食費が大幅に軽減されます。市区町村に申請が必要です。
- 第1段階(生活保護等): 居住費0円、食費300円/日
- 第2段階(年金80万円以下): 居住費370円/日、食費390円/日
- 第3段階(年金80〜120万円): 居住費370〜820円/日、食費650円/日
医療費控除
おむつ代(医師の証明書が必要)や一部の介護サービス費は、医療費控除の対象になります。年間10万円を超えた分が所得から控除されるため、確定申告で忘れずに申告しましょう。医療費控除の節税効果は医療保険シミュレーターでも確認できます。
介護休業給付金
家族の介護のために休業した場合、給与の67%が最大93日間支給されます。介護離職を防ぐために活用したい制度です。
介護期間はどれくらい?
| 要介護度 | 平均的な介護期間 |
|---|---|
| 要支援〜要介護2 | 3〜5年 |
| 要介護3以上 | 3〜7年 |
| 認知症(重度) | 5〜10年 |
全体の平均は約5年(61ヶ月)ですが、10年以上になるケースも約15%あります。介護期間が長期化するほど費用も増大するため、余裕を持った資金計画が必要です。
介護に備えるための準備
親の介護に備える
- 親の資産状況を把握: 年金額、貯蓄額、保険の有無を早めに確認
- 地域包括支援センターの場所を把握: いざという時の相談先。全国約5,000ヶ所に設置
- きょうだいとの役割分担: 費用と介護の分担を事前に話し合う(「介護の話し合い」は元気なうちに)
自分の介護に備える
- 介護保険料は40歳から天引き: 第2号被保険者として自動的に加入
- 貯蓄の上乗せ: 老後資金に300〜500万円を介護費用として加算。退職金の一部を充当する考え方もあり
- 民間の介護保険: 月2,000〜5,000円程度で、要介護認定時に一時金が受け取れる商品がある
老後の年金額がいくらになるかは年金受給額シミュレーターで試算できます。介護費用の準備と合わせて、退職後の収支計画を立てましょう。
在宅介護 vs 施設介護の判断
在宅が適しているケース
- 要介護度が低い(要支援〜要介護2)
- 介護できる家族がいる
- 住環境がバリアフリー対応可能
- 本人が自宅での生活を強く希望している
施設が適しているケース
- 要介護度が高い(要介護3以上)
- 認知症の進行で自宅生活が困難
- 介護する家族がいない・介護負担が大きい
- 夜間の見守りが必要
迷った場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談しましょう。在宅と施設を組み合わせた「ショートステイ+在宅」という選択肢もあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. この記事の費用データの出典は?
A. 介護保険の支給限度額・介護報酬単価は厚生労働省の2024年度改定後データ、施設別の月額相場は厚生労働省「介護給付費等実態統計」と全国老人福祉施設協議会などの公開データ、介護費用の平均総額約580万円は生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(一時費用74万円+月8.3万円×61ヶ月)です。「シミュレーター実装値」の表は老人ホーム費用シミュレーターの計算式をそのまま実行した値で、地域区分(1級地〜7級地)による±5〜10%の差は反映していません。
Q2. 特養の入居待ちの間の費用はどう考えればいい?
A. 特養の待機は全国平均約2年です。その間を在宅介護(実装値で月約13.7万円・持ち家なら約8.7万円)やサ高住(月約19.2万円)でつなぐと、待機2年間で在宅なら約330万円、サ高住なら約460万円が特養入居前に必要になります。入居申込は複数施設に並行して出せるため、待機費用を抑えたい場合は早めに申し込みつつ、ショートステイやデイサービスを組み合わせて家族の負担を分散するのが定石です。
Q3. 介護費用は親のお金と自分のお金、どちらから出すべき?
A. 原則は親自身の年金・貯蓄から出すのが鉄則です。子が自分の家計から補填すると、自分の老後資金や教育費を毀損し「介護の連鎖」を招きます。親の年金月14〜15万円(厚生年金の平均的な水準)なら特養の月約10.3万円は年金内で収まる計算です。まず親の年金額・貯蓄を把握し、不足する場合に高額介護サービス費・負担限度額認定などの軽減制度を申請し、それでも足りない分を家族で分担する順番で考えましょう。
Q4. 医療費と介護費の両方が高額になった場合の救済はある?
A. 「高額医療・高額介護合算療養費制度」があります。同一世帯で1年間(8月〜翌7月)の医療保険と介護保険の自己負担合計が基準額(70歳以上・一般所得で年56万円など)を超えた場合、超過分が払い戻されます。月単位の高額療養費・高額介護サービス費と併用できるため、入院と施設介護が重なった年は必ず確認してください。申請先は加入している健康保険(国保なら市区町村)です。
Q5. 数字が実感と合わない場合は?
A. 施設費用は地域・施設グレードで大きく変動し、都市部の有料老人ホームは入居一時金1,000万円超・月額30万円超も珍しくありません。また本シミュレーターは高額介護サービス費による払い戻し(一般世帯で月44,400円上限)を織り込んでいないため、介護サービス費の自己負担が大きいケースでは実際の負担がやや軽くなります。シミュレーターの詳細設定(自己負担割合・在宅の家賃や訪問介護追加費)を実情に合わせて調整し、大きく乖離する実例があればお問い合わせフォームからご指摘ください。
あなたの介護費用をシミュレーション
要介護度、介護の形態、所得区分を入力すれば、月額費用と介護期間別の総額が分かります。老人ホーム費用シミュレーターで施設タイプごとの費用を比較してみましょう。
関連シミュレーターもあわせてチェック
- 在宅介護費用シミュレーター — 要介護度別の在宅介護の月額・年額を詳しく試算
- 介護施設費用の比較 — 特養・老健・グループホームなど施設タイプ別の費用を比較
- 介護保険シミュレーター — 民間の介護保険に加入した場合の保障額と保険料を比較
- 年金受給額シミュレーター — 将来の年金受給額を試算し、介護費用の準備額を検討
- 老後の生活費シミュレーター — 退職後の毎月の生活費と必要な貯蓄額を計算
- 介護休業給付シミュレーター — 介護休業を取得した場合の給付金額を試算