相続のお金完全ガイド|相続税は10人に1人しか払わない——基礎控除・贈与・遺言書・終活費用まで総整理
相続税の課税対象になるのは亡くなった方の約1割(国税庁統計)。基礎控除の計算式「3,000万円+600万円×法定相続人数」、配偶者控除、暦年贈与と相続時精算課税の違い、遺言書・終活費用の相場まで、相続で動くお金を1記事で整理する。
相続税を払うことになるのは、亡くなった方のうち約10人に1人だけだ(国税庁「令和5年分相続税の申告事績の概要」、課税割合9.9%)。
つまり9割の家庭では相続税はかからない。にもかかわらず「相続」と聞くと反射的に「うちも何か対策しないと」と身構えてしまう人は多い。理由は単純で、自分の家が基礎控除の内側にいるのか外側にいるのかを、誰も計算していないからだ。
この記事では、相続税がかかるかどうかの判定方法から、生前贈与の使い分け、遺言書・終活にかかる費用まで、相続で動くお金を一度に整理する。
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相続で動くお金の3つの入口
相続関連の出費・税金は、タイミングによって3つに分かれる。
| 入口 | 発生タイミング | 主な内容 |
|---|---|---|
| ① 生前贈与 | 相続が起きる前 | 暦年贈与・相続時精算課税・住宅資金贈与 |
| ② 相続発生時 | 亡くなった直後 | 葬儀費用、相続税、遺産分割 |
| ③ 終活準備 | 元気なうちに | 遺言書作成、生前整理、お墓の準備 |
どこから手をつけるべきかは、資産額と家族構成によって変わる。まずは②の相続税から、自分が対象になるかを確認しよう。
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相続税がかかるかどうかは「基礎控除」で決まる
相続税の基礎控除額は、次の式で計算する。
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基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
```
遺産総額(プラスの財産からマイナスの財産と葬儀費用を差し引いた課税価格)がこの金額以下なら、相続税はかからず、申告も不要だ。
法定相続人数別の基礎控除ライン
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人(配偶者のみ、または子1人のみ) | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人(配偶者+子2人など) | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
例1: 相続人が子1人のみ、遺産総額3,000万円 → 基礎控除3,600万円 > 遺産総額 → 相続税ゼロ、申告不要。
例2: 配偶者+子2人(相続人3人)、遺産総額1億円 → 課税遺産総額は 1億円 − 4,800万円 = 5,200万円。ここに相続税がかかる。
都市部で持ち家がある家庭は、不動産の評価額だけで基礎控除を超えるケースも多い。まずは相続税シミュレーターで自分の家の遺産総額と基礎控除を照らし合わせてみるのが最初の一歩だ。
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モデルケースで税額を計算してみる
配偶者+子2人、遺産総額1億円(例2)のケースで、実際の相続税額を計算する。
STEP1: 課税遺産総額を法定相続分で仮分割
配偶者1/2(2,600万円)、子1人あたり1/4(1,300万円)とみなして、それぞれに税率をかける。
| 相続人 | 法定相続分の取得額 | 適用税率 | 控除額 | 税額 |
|---|---|---|---|---|
| 配偶者 | 2,600万円 | 15% | 50万円 | 340万円 |
| 子(1人目) | 1,300万円 | 15% | 50万円 | 145万円 |
| 子(2人目) | 1,300万円 | 15% | 50万円 | 145万円 |
| 相続税の総額 | 630万円 |
STEP2: 配偶者控除を適用
配偶者が実際に取得した財産が「法定相続分」または「1億6,000万円」のいずれか大きい金額以下であれば、配偶者の相続税は非課税になる(配偶者の税額軽減)。
配偶者が法定相続分どおり(1/2)取得した場合、総額630万円のうち配偶者の按分相当額(340万円)が控除され、実際に納税するのは子2人の合計290万円(1人あたり145万円)になる。
このように「相続税の総額」と「実際の納税額」は、配偶者控除の分だけ差が出る。二次相続(配偶者が亡くなったときの相続)まで見据えた按分にしないと、将来の税負担がかえって増えることもある。詳しい按分パターンは相続対策 節税シミュレーターで比較できる。
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生前贈与で先に減らす:暦年贈与 vs 相続時精算課税
相続税を心配する前に検討したいのが、生きているうちに財産を移す生前贈与だ。2つの制度があり、どちらを選ぶかで結果が大きく変わる。
| 暦年贈与 | 相続時精算課税 | |
|---|---|---|
| 非課税枠 | 年110万円(受贈者ごと) | 累計2,500万円+年110万円の基礎控除 |
| 相続財産への加算 | 相続開始前7年以内の贈与は加算対象 | 基礎控除内の贈与は加算対象外 |
| 向いている人 | 時間をかけてコツコツ移したい人 | まとまった額を早めに移したい人 |
| 一度選ぶと | 暦年贈与に戻れる | 相続時精算課税は撤回不可 |
暦年贈与を10年続ければ、単純計算で1,100万円(110万円×10年)を非課税で移転できる。ただし2024年の税制改正で「相続開始前7年以内の贈与」は相続財産に加算されるルールに変わったため、贈与は早く始めるほど有利になった。
住宅取得資金の贈与など、目的別の非課税特例を組み合わせるパターンもある。贈与税シミュレーターで自分のケースの手取り効果を確認できる。
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遺言書は「財産額が少ない家」ほど必要
「うちは財産が少ないから遺言書は不要」という思い込みは、実はリスクが高い。裁判所の司法統計では、遺産分割で揉める家庭の約75%が遺産5,000万円以下というデータもある。財産が少ないほど不動産の比率が高く、「誰が実家を継ぐか」で揉めやすいからだ。
遺言書が特に必要なケースをチェックリストにした。
- [ ] 相続人の1人に自宅などの不動産を継がせたい
- [ ] 法定相続人以外(内縁の配偶者・お世話になった人)に財産を渡したい
- [ ] 相続人同士の関係が疎遠、または不仲
- [ ] 子どもがいない夫婦(配偶者以外に親・きょうだいも相続人になる)
- [ ] 事業を特定の子に継がせたい
遺言書には自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類があり、費用と確実性のバランスが異なる。自筆証書は法務局保管制度を使えば数千円程度、公正証書は財産額に応じて数万円からと幅が出る。遺言書 作成費用シミュレーターで、自分の財産額でどの方式がいくらかかるか試算できる。
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終活費用も一緒に整理しておく
相続対策と切り離せないのが、自分自身の終活費用だ。主な内訳の相場感は次のとおり。
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 葬儀(一般葬) | 約100〜150万円 |
| 葬儀(家族葬) | 約50〜80万円 |
| 葬儀(直葬・火葬式) | 約20〜30万円 |
| お墓・納骨堂 | 数十万円〜200万円超 |
| 遺言書作成 | 数千円〜数十万円 |
| 生前整理 | 数万円〜数十万円 |
香典収入で葬儀費用の一部が相殺されるケースもあるため、実質負担は上記より下がることが多い。項目ごとの相場と合計額は終活 費用シミュレーター、葬儀単体の詳しい内訳は葬儀費用シミュレーターで確認できる。
実家が空き家として残るケースの具体的な損得は、相続した実家、維持は年19万円・解体は184万円・売却なら+382万円のケーススタディで検算しているので合わせて読んでほしい。
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よくある質問
Q. この記事の相続税の計算根拠はどこから来ていますか?
基礎控除額の計算式(3,000万円+600万円×法定相続人数)と税率表は相続税法に基づく現行制度(2026年時点)を使用しています。課税割合9.9%は国税庁「令和5年分相続税の申告事績の概要」によります。実際の税額は不動産評価や特例の適用有無で変わるため、正確な金額は相続税シミュレーターで確認してください。
Q. 遺産に実家(不動産)が含まれる場合、評価額はどう決まりますか?
土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」をベースに評価します。路線価は国税庁の路線価図で確認でき、時価より2〜3割低く出るのが一般的です。小規模宅地等の特例(要件を満たせば評価額を最大80%減額)が使えるかどうかで税額が大きく変わるため、不動産が絡む場合は早めに試算しておくと安心です。
Q. 生前贈与と相続、結局どちらが得ですか?
財産額が基礎控除内に収まる家庭では、無理に生前贈与をする必要はありません。基礎控除を超える見込みがある家庭では、時間をかけられるなら暦年贈与、まとまった額を早めに動かしたいなら相続時精算課税が候補になります。どちらも一長一短があるため、相続対策 節税シミュレーターで複数パターンを比較するのがおすすめです。
Q. 実感と数字が合わない場合はどうすればいいですか?
本記事の数字はあくまで一般的なモデルケースの概算です。不動産の評価額、相続人の数と続柄、特例の適用有無によって実際の税額は大きく変動します。正確な数字が必要な場合は、各シミュレーターへの入力内容を見直したうえで、税理士など専門家への相談も検討してください。
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相続は「起きてから慌てる」ものと「起きる前に整理しておく」ものが半々だ。基礎控除の計算だけでも先にやっておけば、少なくとも「相続税がかかるかどうか」の不安は消える。
まずは相続税シミュレーターで自分の家の基礎控除ラインを確認し、超えそうであれば相続対策 節税シミュレーターで対策の効果を比較してみよう。