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国民年金の育児免除が2026年10月スタート|父は最大12ヶ月・母は産前産後と通算13ヶ月——保険料21.5万円が消えても年金は満額のまま

2026年10月1日から、1歳未満の子を育てる自営業・フリーランス(第1号被保険者)の国民年金保険料が免除されます。父は最大12ヶ月・21.5万円、母は産前産後免除と通算13ヶ月・23.3万円。所得制限なし・休業不要で、免除期間は納付済みと同じ扱いのため年金は1円も減りません。対象者・期間・手続き・従来の免除との違いを、根拠法令から解説します。

会社員は育休中、厚生年金も健康保険も労使とも全額免除され、育児休業給付金も受け取れる。自営業・フリーランスには、そのどちらも存在しなかった——2026年9月までは。

2026年(令和8年)10月1日、国民年金に「育児期間の保険料免除」が新設される。1歳未満の子を育てる第1号被保険者(自営業・フリーランス・農業者など)の保険料が、父は最大12ヶ月分・215,040円、母は産前産後免除と通算で最大13ヶ月分・232,960円、納めなくてよくなる(令和8年度保険料 月17,920円で計算)。しかも免除された期間は「保険料を納付した」ものとして扱われ、将来の老齢基礎年金は1円も減らない。所得制限はなく、仕事を休む必要もない。

根拠は「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第47号)。2024年に成立した改正の中で施行が最も後ろに置かれていた措置が、いよいよ動き出す。この記事では、誰が・いつから・いくら免除されるのか、従来の免除制度と何が決定的に違うのかを整理する。

誰が対象か——「第1号被保険者の父母」だけ

国民年金の加入者は働き方で3つの区分に分かれ、今回の育児免除は第1号だけを対象にした制度だ。

区分該当する人育児中の保険料
第1号被保険者自営業・フリーランス・学生・無職など今回の育児免除の対象(2026年10月〜)
第2号被保険者会社員・公務員既存の育休中免除あり(厚生年金・健保とも労使全額免除)
第3号被保険者第2号に扶養される配偶者もともと負担なし(対象外)

会社員にはすでに育休中の社会保険料免除がある。第3号はそもそも保険料を払っていない。取り残されていたのが、育休という概念のない自営業・フリーランスの親であり、この穴を埋めるのが今回の制度になる。

対象になるための要件は次のとおり(日本年金機構の特設ページによる)。

  • 1歳未満の子を養育する第1号被保険者の実父母・養父母であること
  • 子と法律上の親子関係が継続していること(特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている要保護児童も対象)
  • 子と同一住所であること
  • 所得要件なし——収入がいくらあっても対象
  • 休業要件なし——仕事を続けたまま免除される

最後の2つが実務上は大きい。従来の全額免除・一部免除は前年所得の審査があり、稼いでいる自営業者は使えなかった。育児免除は「子どもが1歳になるまで」という事実だけで適用される。

いつからいつまで免除されるか——父と母で起点が違う

免除期間は父と母で設計が異なる。母にはすでに産前産後免除(出産予定月の前月から4ヶ月間・国民年金法第88条の2)があるため、育児免除はその「続き」として接続される。

対象者免除期間最大月数免除額(月17,920円)
実母産前産後免除の終了後に引き続く9ヶ月間9ヶ月(産前産後と通算13ヶ月)161,280円(通算232,960円)
実父・養父母子を養育することとなった月から1歳の誕生日の前月まで12ヶ月215,040円

注意したいのは、2026年10月1日より前に生まれた子も対象になること。ただし免除されるのは施行日以降の月分だけだ。

```
例:2026年3月生まれの子を育てる自営業の父
免除対象 = 2026年10月分〜2027年2月分(1歳の誕生日の前月まで)の5ヶ月
免除額 = 17,920円 × 5ヶ月 = 89,600円
```

つまり「うちの子はもう生まれているから関係ない」ではない。2025年11月以降に生まれた子がいれば、何ヶ月分かは必ず引っかかる

従来の免除と決定的に違うのは「年金が減らない」こと

「保険料の免除なら前からあるのでは?」——ここが今回の制度の核心だ。従来の全額免除は、免除期間の年金額が国庫負担分の2分の1しか反映されない。育児免除と産前産後免除は納付済みと同じ扱いで、満額が積み上がる。12ヶ月を「未納・全額免除・育児免除」で放置した場合の差を比べると、次のようになる。

12ヶ月の扱い保険料負担老齢基礎年金への反映年金の減少額(年額)
未納0円反映されない▲21,183円
全額免除(追納なし)0円2分の1だけ反映▲10,591円
育児免除0円満額反映▲0円

減少額は令和8年度の満額847,300円(月70,608円)を480ヶ月で割って計算した値だ。年1万円強の差は小さく見えるが、年金は終身で続く。65歳から20年受け取れば、全額免除との差は累計約21.2万円、25年なら約26.5万円になる。育児免除は「保険料21.5万円が浮いて、年金は満額のまま」——追納の必要すらない、免除制度の中で最も条件のよい特例といえる。

自分の基礎年金・厚生年金の見込み額は年金受給額シミュレーターで、加入期間や免除歴を変えながら確認できる。

夫婦ともに自営業なら、世帯で44.8万円

夫婦がともに第1号被保険者(たとえば夫婦で店を営む、ふたりともフリーランス)の場合、免除は両方に適用される

```
夫婦とも第1号・2026年10月以降に出産するケース
母:産前産後 4ヶ月 + 育児免除 9ヶ月 = 13ヶ月 → 232,960円
父:育児免除 12ヶ月 → 215,040円
世帯合計 25ヶ月分 = 448,000円
```

このうち産前産後の4ヶ月(71,680円)は2019年から存在する制度なので、今回の改正で新たに浮くのは21ヶ月分・376,320円。第1子が対象なら第2子・第3子でも同様に適用されるため、子どもが2人なら世帯で90万円近い保険料が消える計算になる。

浮いた保険料の使い道として相性がよいのが付加年金だ。育児免除の期間中も付加保険料(月400円)は納付できると日本年金機構が明言している。月400円×13ヶ月=5,200円の負担で年金が年2,600円増え、2年で元が取れる。仕組みは付加年金シミュレーターで確認してほしい。

それでも会社員との差は残る——「給付金」がない

制度の意義を認めたうえで、過大評価も禁物だ。会社員(第2号)の育休と並べると、埋まったのは一部にすぎない。

  • 免除される保険料: 会社員は厚生年金+健康保険(標準報酬月額30万円なら本人負担だけで月4万円超)が免除。第1号は国民年金の月17,920円のみ。国民健康保険料の育児免除はない
  • 収入の補填: 会社員には育児休業給付金(賃金の67%・出生後休業支援給付を使えば手取り10割相当の期間も)。第1号には給付金が一切ない。免除はあくまで「支出が減る」だけで、収入は補填されない
  • 働き方: 会社員の免除は休業が前提。第1号の免除は働き続けてよい——ここは自営業側が柔軟

会社員が育休を取った場合の給付金と手取りは育休中の収入シミュレーターで試算できる。独立を検討している人は、こうした保障の差も含めて正社員 vs フリーランス比較で並べてみると、年収の額面だけでは見えない違いが分かる。

なお、フリーランスの出産そのものには出産育児一時金(50万円)が第1号にも支給される。妊娠から1歳までにかかる費用の全体像は出産費用シミュレーターが目安になる。

手続き——届出しないと始まらない

産前産後免除と同じく、育児免除は届出制だ。自動では適用されない。

  1. 電子申請: マイナポータルから申請できる。原則添付書類不要
  2. 窓口申請: 市区町村の国民年金担当窓口に「産前産後免除該当届/育児免除該当届・終止届」を提出

すでに保険料を納付している期間や、全額免除・納付猶予が承認されている期間についても、届出をすれば育児免除期間として取り扱われる(日本年金機構)。全額免除で「2分の1反映」になっていた月を、届出ひとつで「満額反映」に引き上げられるということだ。心当たりがあれば施行後に忘れず届け出たい。

よくある質問

Q. この記事の数字の根拠はどこから?

制度内容は日本年金機構の特設ページ「令和8年(2026年)10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります」および「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第47号)に基づく。保険料月額17,920円・老齢基礎年金満額847,300円(月70,608円)はいずれも令和8年度の値で、免除額・年金減少額はこの2つから機械的に計算した。

Q. 免除された期間の保険料を、あとから追納する必要は?

ない。育児免除・産前産後免除は「保険料を納付したもの」として扱われるため、追納しなくても満額の基礎年金に反映される。追納が意味を持つのは所得審査型の全額免除・一部免除・納付猶予だけで、その違いは免除制度全体の比較で押さえておくとよい。

Q. 国民健康保険料や iDeCo はどうなる?

国民健康保険料の育児免除は今回の改正には含まれていない(一部自治体の独自減免を除く)。iDeCoは国民年金保険料の「免除者」は原則加入できないが、産前産後免除と同様の整理で扱いが定まるため、掛金を続けたい人は施行前に国民年金基金連合会・運営管理機関の案内を確認してほしい。付加年金(月400円)は免除中も納付できることが明言されている。

Q. 数字が実感と合わない場合は?

保険料や満額は毎年度改定されるため、2027年度以降は本記事の金額から少しずつずれていく。また多胎の場合は産前産後免除が6ヶ月になるなど個別の扱いがある。具体的な適用可否は市区町村の国民年金窓口・年金事務所で確認を。記事の計算に疑問があればお問い合わせから知らせてほしい。

施行までにやることリスト

  • 2025年11月以降に生まれた子がいる/出産予定がある第1号被保険者 → 2026年10月の施行後に忘れず届出(マイナポータルか市区町村窓口)
  • 前納・口座振替で先払いしている人 → 免除対象月の扱いを年金事務所に確認
  • 全額免除・納付猶予で通している人 → 対象期間を育児免除に切り替える届出で年金反映が満額に
  • 浮いた保険料の行き先を決める → 付加年金(月400円)は免除中も納付可。残りは年金受給額シミュレーターで老後の見込みを確認してから配分を

「自営業には育休がない」という状況は変わらないが、少なくとも「育児中も年金保険料だけは満額請求される」時代は2026年9月で終わる。届出制である以上、知っているかどうかがそのまま21万円の差になる。

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