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相続登記の義務化とは|過去の相続分は2027年3月31日が期限・怠ると過料10万円以下——自分でやれば実費6万円台、2026年4月からは住所変更登記も義務に

2024年4月に義務化された相続登記は、それ以前に相続した不動産も対象で、期限は2027年3月31日。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。登録免許税0.4%の実額計算、自分で申請と司法書士依頼の費用差、間に合わないときの相続人申告登記、2026年4月施行の住所・氏名変更登記の義務化(過料5万円以下)まで、法務省の資料を根拠に整理します。

約410万ヘクタール——九州本島の面積(約368万ヘクタール)を上回る土地が、日本では「所有者不明」の状態にあります(所有者不明土地問題研究会・2017年最終報告)。原因の大半は、相続や住所変更があっても登記簿が書き換えられないまま放置されてきたことです。

この状況を変えるために始まったのが相続登記の義務化(2024年4月1日施行)。そして見落とされがちですが、義務化より前に相続した不動産も対象で、その期限が2027年3月31日に迫っています。「実家を相続したけど名義は亡くなった親のまま」という人は、あと8ヶ月弱で手を打つ必要があります。

さらに2026年4月1日からは、引っ越しや結婚で住所・氏名が変わった場合の変更登記も義務化されました。この記事では、2つの義務の期限・罰則・かかる費用の実額を、法務省の公表資料を根拠に整理します。

制度の骨子——2つの義務を1枚で

相続登記の義務化住所・氏名変更登記の義務化
施行日2024年4月1日2026年4月1日
何をする不動産を相続したら所有権移転登記を申請登記名義人の住所・氏名が変わったら変更登記を申請
期限取得を知った日から3年以内変更から2年以内
施行前の分2027年3月31日まで(施行日から3年)2028年3月31日まで(施行日から2年)
罰則正当な理由なく怠ると10万円以下の過料正当な理由なく怠ると5万円以下の過料
税金登録免許税=固定資産税評価額×0.4%不動産1つにつき1,000円(オンラインの職権反映なら実質無料)

出典: 法務省「相続登記の申請義務化について」、政府広報オンライン「不動産の相続登記義務化」

ポイントは、どちらも過去にさかのぼって適用されることです。「2019年に父の家を相続して放置している」場合、義務発生は2024年4月1日、期限は2027年3月31日。「2010年に結婚して姓が変わったまま」の登記も、2028年3月31日までに変更が必要になります。

あなたの期限はいつか——3つの分岐

自分のケースの期限は、次の分岐で判定できます。

  • ① 2024年3月31日以前に相続した(または相続を知った) → 期限は一律 2027年3月31日
  • ② 2024年4月1日以降に相続を知った → 知った日から 3年以内(例: 2025年10月に死亡を知った → 2028年10月まで)
  • ③ 遺産分割協議がまとまらず、誰が相続するか決まらない → 3年以内にひとまず「相続人申告登記」(後述)を入れ、分割成立後さらに3年以内に正式な相続登記

なお、期限を過ぎたら即座に10万円を払うわけではありません。まず法務局の登記官から催告(申請するよう通知)が届き、それでも正当な理由なく応じない場合に裁判所へ通知され、裁判所が過料を決定する流れです。「相続人が極めて多数で戸籍収集に時間がかかっている」「遺言の有効性が争われている」「重い病気で手続きできない」などは正当な理由の例として法務省の通達に示されています。逆に言えば、「知らなかった」「面倒だった」は正当な理由になりません。

費用はいくらかかるか——実額で検算

相続登記の費用は「税金」「実費」「専門家報酬」の3層です。親の実家(土地の固定資産税評価額1,200万円+建物300万円=計1,500万円)を1人で相続するケースで計算してみます。

登録免許税(必ずかかる)

```
固定資産税評価額 1,500万円 × 0.4% = 60,000円
```

評価額は毎年春に届く固定資産税の課税明細書で確認できます。市場価格ではなく評価額ベースなので、「3,000万円で売れそうな家」でも評価額が1,500万円なら税額は6万円です。なお、評価額100万円以下の土地は登録免許税が免税になる措置が2027年3月31日まで延長されています(租税特別措置法84条の2の3)。地方の山林や原野を相続した場合は該当することが多く、確認する価値があります。

実費(必ずかかる)

戸籍謄本450円、除籍・改製原戸籍750円、住民票・評価証明書各300〜400円、登記事項証明書600円など。被相続人の出生から死亡までの戸籍をそろえるため通数が増えがちで、合計5,000円〜1万円程度が目安です。2024年3月から戸籍の広域交付(本籍地以外の市区町村窓口でまとめて取得)が始まり、収集の手間は以前よりかなり軽くなりました。

司法書士報酬(依頼する場合のみ)

相続登記の報酬相場はおおむね6万〜13万円。相続人の数、戸籍収集を代行してもらう範囲、不動産の数で変わります。遺産分割協議書の作成まで頼むと上振れします。

進め方かかる費用(上の例)向いている人
自分で申請税6万円+実費約7,000円=約6.7万円相続人が少なく、遺言か協議書が既にある
司法書士に依頼税・実費+報酬8万円前後=約15万円相続人が多い・戸籍が複雑・時間がない
放置過料10万円以下のリスク+将来の手続き費用が膨張(選択肢になりません)

法務局の「登記申請手続のご案内(相続登記①②③)」には記載例つきの様式があり、法定相続や遺言による単純なケースなら自分で申請する人も珍しくありません。相続財産全体の税金が気になる場合は、先に相続税シミュレーターで基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)に収まるかを確認しておくと、登記と申告の段取りを一度に考えられます。

3年で間に合わないなら「相続人申告登記」

遺産分割の話し合いが長引きそうなときのために用意されたのが相続人申告登記です。「私は相続人の一人です」と法務局に申し出るだけで義務を果たしたことになる簡易な制度で、次の特徴があります。

  • 登録免許税は非課税(無料)
  • 相続人のうち1人だけでも申出できる(他の相続人の分は義務履行にならない点に注意)
  • 必要書類は自分が相続人だと分かる範囲の戸籍だけ。被相続人の出生までさかのぼる必要がない
  • オンライン(かんたん登記申請)でも申出できる

ただし、これはあくまで「義務違反を回避する仮の措置」です。相続人申告登記のままでは不動産を売ることも、担保に入れることもできません。遺産分割がまとまったら、成立日から3年以内に正式な相続登記を入れる必要があります。実家を将来売却する予定があるなら、売却時の税金を不動産売却の税金シミュレーターで把握したうえで、早めに本登記まで済ませておくほうが動きやすくなります。

2026年4月から: 住所・氏名変更登記の義務化

今年4月に始まったもう一つの義務です。不動産の登記名義人は、引っ越しや結婚・改姓から2年以内に変更登記を申請しなければならず、怠ると5万円以下の過料の対象になります。施行前に住所が変わっていた人も、2028年3月31日までに変更すれば問題ありません。

負担軽減策として「スマート変更登記」が用意されました。個人が法務局に生年月日などの「検索用情報」を申し出ておくと、法務局が住基ネットで転居を把握し、本人確認のうえ職権で(手数料なしで)住所変更を反映してくれる仕組みです。2026年4月以降に不動産を取得した人は申出が自動的に組み込まれるため、実質的な対象は「それ以前からの所有者」。自宅を持っている人は、一度申し出ておけば以後の引っ越しのたびの手続きが不要になります。

放置の本当のコストは過料ではない

過料10万円は上限額であり、実際の痛手はむしろ時間の経過で相続人が増殖することです。

祖父名義の土地を父が相続登記しないまま亡くなると、次の相続では「祖父の相続人(叔父・叔母)」と「父の相続人(あなたと兄弟)」の全員の合意が必要になります。叔父が亡くなればその子(いとこ)に権利が移り、10人を超える協議もざらです。会ったこともない親族の実印と印鑑証明を集める作業は、司法書士に頼めば報酬だけで数十万円規模になることもあります。

「いらない土地だから放置」も解決になりません。2023年4月開始の相続土地国庫帰属制度(国に土地を引き取ってもらう制度)でさえ、審査手数料1筆1万4,000円に加えて原則20万円以上の負担金が必要で、建物付きや境界不明の土地は対象外です(法務省「相続土地国庫帰属制度について」)。手放すにも登記と費用が要る——これが現在のルールです。生前のうちに実家の扱いを決めておくなら、相続対策シミュレーターで全体の税負担を、生前贈与シミュレーターで移転コストを比べてから、遺言書作成費用シミュレーターで書面に残す費用を見積もる、という順番が現実的です。

FAQ

Q. 登記しなければ固定資産税を払わなくて済む?

済みません。固定資産税の納税義務は登記と無関係に相続人に承継され、市区町村は「現に所有している者」の申告を求める制度(地方税法384条の3)で相続人を把握します。登記を放置しても課税は続き、義務違反のリスクだけが積み上がります。

Q. 分譲マンションも相続登記の対象?

対象です。専有部分と敷地権が一体で登記されるため、申請自体は一戸建て(土地・建物で2つ)より単純なことが多く、登録免許税は敷地権の持分評価額を含めて0.4%で計算します。

Q. 相続人申告登記をすれば、もう何もしなくていい?

義務は果たせますが、売却・担保設定・賃貸経営上の手続きはできません。遺産分割が成立したら、その日から3年以内の本登記が改めて義務になります。

Q. この記事の根拠は?

法務省「相続登記の申請義務化について」「住所等の変更登記の申請義務化について」、政府広報オンライン、租税特別措置法84条の2の3(免税措置)、所有者不明土地問題研究会最終報告(2017年)に基づいています。過料の金額・期限は2026年8月時点の制度です。個別の判断は法務局の手続案内(予約制・無料)や司法書士への相談で確認してください。

今週できる3つのアクション

  1. 課税明細書を探す — 相続した(する予定の)不動産の固定資産税評価額を確認し、評価額×0.4%で登録免許税を概算する
  2. 法務局の登記事項証明書(600円)を取る — いま誰の名義になっているかを確認する。祖父母名義のままなら数次相続の可能性があり、早く動くほど相続人が少なくて済む
  3. 期限をカレンダーに入れる — 過去の相続分は2027年3月31日、住所変更の過去分は2028年3月31日。協議が長引きそうなら相続人申告登記(無料)を先に済ませる

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