「50歳更新で月28,900円」の案内が来た——44歳・年収650万円、保険料月32,400円を遺族年金の検算から月10,900円にした記録【ケーススタディ】
30歳で入ったまま14年放置した保険の更新案内をきっかけに、44歳会社員が保障を一から検算し直した。令和8年度の遺族年金は年約185万円、2026年8月に上がった高額療養費の上限は月92,940円——公的保障を数字で確かめたら、死亡保障3,500万円は月10万円の収入保障保険で足りた。月21,500円・教育費ピークまでの10年で258万円を取り戻すまでの意思決定を追う。
きっかけは、7月に届いた一通のハガキだった。
「ご契約更新のお知らせ——更新後保険料:月額28,900円」
埼玉県郊外に住む高橋さん(仮名・44歳)は、メーカーの営業職で年収650万円。妻の恵さん(仮名・43歳)はパートで年収110万円、子どもは中学2年の長男と小学5年の長女がいる。30歳で長男が生まれたときに付き合いで入った定期付終身保険は、40歳の更新で月17,200円に上がり、次の50歳更新で月28,900円になるという。
「正直、何の保障に入っているのか即答できませんでした。言えたのは月々の保険料だけ」
高橋さんが払っていた保険料は全部で月32,400円・年388,800円。これが妥当なのかを、勘ではなく計算で確かめることにした。使った道具は年金の計算式と保険見直しシミュレーター。結論から書くと、保険料は月10,900円になり、保障の中身はむしろ実態に合った。その過程を順に追う。
見直し前:14年分の「入りっぱなし」の中身
| 契約 | 内容 | 月額保険料 |
|---|---|---|
| 定期付終身保険(30歳加入・10年更新型) | 死亡保障3,000万円(定期2,800万円+終身200万円) | 17,200円 |
| 医療保険(夫・終身型) | 入院日額5,000円+手術給付 | 4,100円 |
| 医療保険(妻・終身型) | 入院日額5,000円 | 3,600円 |
| 低解約返戻金型終身保険(学資目的) | 死亡保障500万円 | 7,500円 |
| 合計 | 死亡保障 計3,500万円 | 32,400円 |
検算:17,200+4,100+3,600+7,500 = 32,400円。年間388,800円、50歳更新を受け入れれば年529,200円(28,900+15,200円)に膨らむ。
問題は金額そのものではなく、「3,500万円」という保障額に根拠がなかったことだ。そこでまず、自分が死んだとき公的年金がいくら出るのかを計算した。
ステップ1:遺族年金を検算する——実は月15.4万円出る
会社員の高橋さんに万一があった場合、恵さんと子ども2人には遺族基礎年金+遺族厚生年金が支給される。
遺族基礎年金(令和8年度)は、基本額847,300円に子の加算(第1子・第2子 各243,800円)が付く。
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847,300円 + 243,800円 × 2人 = 1,334,900円/年
```
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3。高橋さんのこれまでの平均標準報酬額を42万円、在職中の死亡なので加入月数は300月みなしで計算すると、
```
42万円 × 5.481/1000 × 300月 × 3/4 ≒ 517,955円/年
```
合計で年約185万円、月あたり約15.4万円。子が18歳の年度末を迎えるたびに加算が1人分(243,800円)ずつ外れて減っていき、長女も18歳を過ぎて遺族基礎年金が終わった後は、恵さんに中高齢寡婦加算(遺族基礎年金満額の4分の3、年約63.5万円)を上乗せした遺族厚生年金が65歳まで続く。なお2028年4月から遺族厚生年金は段階的に見直されるが、子のいる配偶者は5年有期化の対象外だ。自分の条件での金額は遺族年金シミュレーターで確かめられる。
「月15万円という数字を見たとき、3,000万円の定期保険が『何と重複していたのか』が初めて分かりました」
ステップ2:必要保障額——足りないのは生活費ではなく教育費だった
次に、遺族の家計を月次で組んでみる。
- 支出:現在の生活費 月30万円 × 70%(1人減った後の目安)= 21万円。持ち家は団信で住宅ローン残2,100万円が消えるため住居費はゼロになるが、固定資産税と修繕積立てで月2.5万円は残る。計 月23.5万円
- 収入:遺族年金 月15.4万円 + 恵さんのパート収入 月9.2万円(年110万円)= 月24.6万円
月次収支は+1.1万円。日常の生活費はほぼ公的年金と妻の収入で回る。足りないのは一時金でかかるお金だ。
| 不足項目 | 金額の目安 |
|---|---|
| 教育費(2人とも私立文系大学を想定) | 約800万円 |
| 葬儀・死後整理 | 約200万円 |
| 生活費の予備(月次収支の変動・妻の就労リスク) | 約500万円 |
| 必要保障額 | 約1,500万円 |
現在の死亡保障3,500万円は、必要額の2.3倍。しかも更新のたびに保険料が上がる形で持っていた。
ステップ3:医療保障——2026年8月改定後の高額療養費で検算
ちょうど見直しの最中の2026年8月、高額療養費制度の自己負担上限が引き上げられた。高橋さんの年収(区分ウ:年収約370〜770万円)では、月の上限がこう変わっている。
```
改定前: 80,100円 +(総医療費 − 267,000円)× 1% → 医療費100万円の月で 87,430円
改定後: 85,800円 +(総医療費 − 286,000円)× 1% → 医療費100万円の月で 92,940円
```
上限は月5,700円ほど上がった。ただし4回目以降に適用される多数回該当の44,400円は据え置かれ、8月〜翌7月の自己負担に年間53万円の上限が新設された。つまり改定後でも、保険診療の自己負担はどれだけ長引いても年53万円で頭打ちになる。
高橋さん夫婦の貯蓄は450万円。差額ベッド代や食事代など制度外の出費を足しても、貯蓄で受け止められる範囲だ。自分の収入区分での上限額は高額療養費シミュレーターで計算できる。
判断はこうなった。医療保険を厚くする理由はない。ただし、いま入っている終身型医療保険2本(夫婦で月7,700円)は保険料が今後上がらない契約なので、解約せず維持。掛け直すと44歳・43歳の保険料で割高になるためだ。
ステップ4:入れ替えの実行——3本をこう動かした
- 定期付終身3,000万円 → 解約。終身200万円部分の解約返戻金 約85万円を受け取り、教育費の予備に回した
- 収入保障保険に新規加入:遺族年金の不足分として月10万円を60歳まで受け取れるタイプ。44歳・非喫煙の保険料は月3,200円(一般的な水準の概算)。加入直後の受取総額は月10万円×16年=最大1,920万円で、子どもの成長とともに必要額が減るのに合わせて保障も逓減する
- 学資目的の終身保険500万円 → 払済保険に変更。以後の保険料はゼロ。保障額は解約返戻金に応じて縮小するが、これまで積んだ約14年分は生き続ける。中途解約で元本割れを確定させるより有利と判断した
結果:月32,400円 → 月10,900円
| 見直し前 | 見直し後 | |
|---|---|---|
| 死亡保障 | 3,500万円(50歳更新で保険料急増) | 収入保障 月10万円×60歳まで+払済終身 |
| 医療保障 | 夫婦とも日額5,000円 | 変更なし(維持) |
| 月額保険料 | 32,400円 | 10,900円(3,200+4,100+3,600) |
| 年間保険料 | 388,800円 | 130,800円 |
| 削減額 | — | 月21,500円・年258,000円 |
50歳更新を受け入れた場合(月44,100円)と比べれば、差はさらに月33,200円まで開く。
浮いた月21,500円のうち、月2万円を新NISAのつみたて投資枠に回した。長女の大学在学が終わりに近づく10年間、年利5%(月次複利)で積み立てた場合の試算はこうなる。
```
月2万円 × 120ヶ月・年5% → 約310.6万円(元本240万円+運用益 約70.6万円)
```
「保険を削った」のではなく、掛け捨ての保障を必要額ぴったりに合わせ、余剰を貯蓄と投資に付け替えたというのが実態に近い。生涯で払う保険料の総額は保険料総額シミュレーターで、必要な死亡保障額そのものは生命保険必要保障額シミュレーターで自分の家族構成に合わせて計算できる。
FAQ
Q. この計算の前提データはどこから?
A. 遺族基礎年金847,300円・子の加算243,800円は日本年金機構が公表する令和8年度(2026年度)の年金額、遺族厚生年金は厚生年金保険法の報酬比例部分(5.481/1000・300月みなし)×3/4の計算式による。高額療養費の85,800円+(総医療費−286,000円)×1%・多数回該当44,400円据え置き・年間上限53万円は2026年8月施行の制度改正の内容。保険料(月3,200円等)は市場の一般的な水準に基づく概算で、実際の金額は年齢・健康状態・会社により変わる。
Q. 妻(パート)に万一があった場合の備えは?
A. 2014年以降は父子家庭にも遺族基礎年金が出るため、恵さんに万一があった場合も年1,334,900円(子2人の間)は支給される。ただし遺族厚生年金は恵さんの厚生年金加入状況次第で、パート収入の穴と家事・育児の外注費は残る。高橋さん宅では県民共済型の小さな死亡保障(月2,000円程度)を検討中だが、優先度は夫側より低いと判断した。
Q. 学資目的の終身保険は解約して投資に回した方がよかったのでは?
A. 一般論としては、低解約返戻金型を途中解約すると払込額を大きく割り込むため、「払済にして元本割れを固定しない」か「解約して損失を確定させ、運用期間の長さで取り返す」かは残り期間と返戻率次第になる。高橋さんは下の子の大学入学まで7年と短く、確実に使うお金だったため払済を選んだ。15年以上先の資金なら解約→投資の方が期待値は高くなりやすい。
Q. 医療保険は本当に増やさなくていい?
A. 高額療養費の2026年8月改定後も、区分ウなら月の上限は9万円前後・年間53万円で頭打ちになる。判断の分かれ目は「制度外の費用(差額ベッド・先進医療・収入減)を貯蓄で吸収できるか」で、貯蓄が生活費の半年分を切っている場合は掛け捨ての医療保障を残す判断にも合理性がある。
Q. 数字が実感と合わない場合は?
A. 遺族年金は加入歴・平均標準報酬で、保険料は個人の条件で大きく変わるため、この記事の数字はあくまで高橋さん夫婦の条件での検算例だ。ご自身の条件で計算が合わない、記事の計算式に誤りがあると思われる場合はお問い合わせから連絡してほしい。
見直しを再現するための4ステップ
高橋さんの手順はどの家庭でもそのまま使える。
- 公的保障を先に計算する——遺族年金と高額療養費。民間保険はこの「上乗せ」でしかない
- 不足額を月次と一時金に分けて出す——生活費の不足は収入保障型、教育費や整理資金は一時金で見積もる
- 今の契約を「解約・払済・維持」に仕分ける——更新型の掛け捨ては解約候補、貯蓄型は払済という中間の選択肢を忘れない
- 浮いた保険料の行き先を先に決める——口座に残すと消える。積立の自動化までが見直しだ
まずは保険見直しシミュレーターで、いまの保険料と保障額のバランスを数字にするところから始めるといい。