残業代の計算方法を完全解説|月給別の早見表と割増率の仕組み
残業代は(基本給+手当)÷月平均所定労働時間×1.25×時間。月給25万円・20時間なら39,075円。60時間超・深夜75%・日曜出勤は60時間に数えない等の厚労省ルール、役職手当の算入、手取りの目安、未払いの時効3年まで解説。
「うちの残業代、ちゃんと合ってる?」——月給25万円で月20時間残業すれば、残業代は月39,075円、年間で約47万円になります。ところが実際の給与明細と見比べると、役職手当が基礎時給から抜けている、日曜出勤を60時間のカウントに入れている(または入れていない)、所定労働時間を176時間で割っているなど、計算の前提が少しずれているだけで年間数万円の差が出ます。
この記事では、厚生労働省の資料(確認日: 2026年10月23日)に沿って、割増率の一覧、基礎時給の正しい出し方、月給別・残業時間別の早見表、見落としやすい5つのルール、未払い時の対処法までまとめます。自分の数字で確かめたい方は残業代計算シミュレーターをご利用ください。
残業代の計算式は「基礎時給×割増率×時間」
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基礎時給 = (基本給 + 除外賃金以外の手当)÷ 1年間の1か月平均所定労働時間
残業代 = 基礎時給 × 割増率 × 時間外労働の時間
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厚生労働省「確かめよう労働条件」では、月給制の1時間あたり賃金を「各種手当を含めた月給 ÷ 1年間における1か月平均所定労働時間数」と説明しています。ポイントは2つです。
- 分子は基本給だけではない: 役職手当・資格手当・営業手当なども含めます
- 分母は「月平均の所定労働時間」: その月の実際の出勤日数ではなく、年間の所定労働時間を12で割った値です
月平均所定労働時間は「(365日−年間休日)×1日の所定労働時間÷12」で求められます。
| 年間休日 | 1日の所定時間 | 月平均所定労働時間 |
|---|---|---|
| 105日 | 8時間 | 約173時間 |
| 120日 | 8時間 | 約163時間 |
| 125日 | 8時間 | 160時間 |
| 120日 | 7.5時間 | 約153時間 |
分母が小さいほど基礎時給は高くなります。年間休日が多い会社や1日7.5時間の会社では、同じ月給でも1時間あたりの残業代が上がります。
割増率の一覧(労働基準法第37条)
| 種類 | 割増率 | 倍率 |
|---|---|---|
| 時間外労働(月60時間以内) | 25%以上 | 1.25倍 |
| 時間外労働(月60時間超) | 50%以上 | 1.50倍 |
| 時間外+深夜(22〜5時) | 25%+25% | 1.50倍 |
| 月60時間超+深夜 | 50%+25% | 1.75倍 |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 1.35倍 |
| 法定休日+深夜 | 35%+25% | 1.60倍 |
月60時間超の50%は、大企業は2010年4月から、中小企業も2023年4月1日から適用されています(厚生労働省リーフレット「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」)。同じリーフレットに「月60時間を超える時間外労働を深夜の時間帯に行わせる場合、深夜割増賃金率25%+時間外割増賃金率50%=75%」と明記されています。これらは法律上の最低ラインで、就業規則でより高い率を定めている会社もあります。
月給別・残業時間別の早見表
月平均所定労働時間160時間、法定の割増率で計算した月額の残業代です(基礎時給は円未満を四捨五入)。
| 月給 | 基礎時給 | 20時間 | 45時間 | 80時間 |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 1,250円 | 31,250円 | 70,313円 | 131,250円 |
| 25万円 | 1,563円 | 39,075円 | 87,919円 | 164,115円 |
| 30万円 | 1,875円 | 46,875円 | 105,469円 | 196,875円 |
| 35万円 | 2,188円 | 54,700円 | 123,075円 | 229,740円 |
| 40万円 | 2,500円 | 62,500円 | 140,625円 | 262,500円 |
80時間の列は「60時間×1.25倍+20時間×1.5倍」です。たとえば月給25万円なら117,225円+46,890円=164,115円。60時間を境に1時間あたりの残業代が1,954円から2,345円に上がります。
見落としやすい5つのルール
① 日曜出勤(法定休日)は60時間に数えない
厚生労働省のリーフレットでは「月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます」とされています。週休2日で日曜が法定休日なら、日曜出勤は1.35倍で別計算、土曜出勤は時間外労働として60時間に含めるのが基本です。
② 役職手当・資格手当は基礎時給に含める
割増賃金の基礎から除外できるのは次の7種類だけで、これは限定列挙です(労働基準法第37条5項・同施行規則第21条)。
- 家族手当
- 通勤手当
- 別居手当
- 子女教育手当
- 住宅手当
- 臨時に支払われた賃金
- 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
さらに名称ではなく実態で判断されます。愛知労働局の資料では、全員一律の定額の住宅手当や、扶養家族の有無だけで額が決まる手当は除外できない例として挙げられています。基本給25万円+役職手当3万円なら、基礎時給は28万円÷160時間=1,750円となり、月20時間の残業代は39,075円ではなく43,750円です。
③ 1日8時間以内の「法定内残業」は割増なしの会社もある
所定労働時間が1日7.5時間の会社で30分残業しても、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えていなければ25%の割増義務はありません。この部分を1.0倍で払うか1.25倍で払うかは就業規則次第です。
④ 端数処理は「月の合計」で行う
厚生労働省は、1か月の時間外労働の合計時間の30分未満切り捨て・30分以上切り上げや、1時間あたり賃金の50銭未満切り捨て・50銭以上切り上げを認めています。一方で1日ごとに15分単位で切り捨てるといった処理は認められません。
⑤ 時間外労働には上限がある
36協定を結んでも、時間外労働は原則月45時間・年360時間まで。特別条項があっても年720時間以内、時間外+休日労働で月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内、月45時間超は年6か月までです(厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。
固定残業代(みなし残業)があるときのチェック
| チェック項目 | 確認すること |
|---|---|
| 金額と時間数の明示 | 「月30時間分・5万円」のように両方が分かるか |
| 超過分の支払い | 固定時間を超えた分が別途支払われているか |
| 単価の妥当性 | 固定残業代÷時間数が、基礎時給×1.25を下回っていないか |
| 基本給と最低賃金 | 固定残業代を除いた基本給が最低賃金を下回っていないか |
月給30万円(うち固定残業代5万円・30時間分)の場合、基本給25万円÷160時間×1.25=1時間あたり約1,953円なので、30時間分は約5.9万円です。5万円では足りない計算になり、差額の支払いが必要か就業規則と照らし合わせる価値があります。
残業代の手取りはどのくらい?
残業代にも社会保険料と税金がかかります。会社員なら厚生年金9.15%、健康保険が約5%(協会けんぽ・本人負担の目安)、雇用保険を合わせて約15%、さらに所得税(復興特別所得税込み5.105%〜)と住民税10%が差し引かれるため、残業代の手取りは額面のおおむね7割前後です。月4万円の残業代なら手取りは約2.8万円が目安になります。年収ごとの正確な手取りは手取り計算シミュレーター、残業代で税率の段階が変わるかは所得税率シミュレーターで確認できます。
なお4〜6月に残業が多いと、9月からの標準報酬月額が上がり、1年間の社会保険料が高くなる点にも注意が必要です。
残業代が未払いのときの対処法
- 労働時間の記録を残す: タイムカード、PCのログオン・ログオフ記録、メール送信時刻、入退室記録、日々のメモ
- 自分で計算する: 給与明細の時間外時間と就業規則の所定時間で残業代計算シミュレーターに入力
- 会社に書面で請求する: 期間と金額を明示
- 労働基準監督署に相談する: 相談は無料
- 弁護士・社労士に相談する: 金額が大きい場合
賃金請求権の時効は、2020年4月1日以降に支払期日が来る賃金について5年(当分の間は3年)です(厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」)。月1万円の未払いでも3年で36万円になります。
よくある質問
Q. 夜勤シフトの深夜手当も同じ計算?
所定労働時間内の夜勤(たとえば22時〜翌7時の勤務)は時間外ではないため、深夜割増の25%だけが付きます。シフト制の深夜手当は夜勤手当シミュレーターで計算できます。
Q. 残業代込みの「実質時給」はどう変わる?
月給25万円・所定160時間で月20時間残業すると、基礎時給1,563円に対して残業込みの実質時給は約1,606円です。残業が長いほど実質時給は少しずつ上がりますが、生活時間とのバランスは時給換算シミュレーターや副業の時給価値シミュレーターと比べて判断するとよいでしょう。
Q. この記事の計算の前提データはどこから?
割増率は労働基準法第37条と厚生労働省リーフレット、基礎時給と端数処理は厚生労働省「確かめよう労働条件」、除外賃金は愛知労働局の解説資料、上限規制は厚生労働省「時間外労働の上限規制」、時効は厚生労働省リーフレットで確認しました(いずれも2026年10月23日確認)。早見表の所定労働時間160時間は「年間休日125日×1日8時間」とした計算用の仮定です。
Q. 数字が自分の明細と合わない場合は?
月平均所定労働時間、手当の算入範囲、固定残業代、変形労働時間制やフレックスタイム制の時間外の数え方で差が出ます。就業規則の値でシミュレーターに入れ直しても大きく違う場合は、勤務先の人事や労働基準監督署に確認してください。計算へのご指摘はお問い合わせからどうぞ。
出典(確認日: 2026年10月23日)
- 厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」 https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」割増賃金のチェック方法 https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q3.html
- 愛知労働局「割増賃金の基礎となる賃金について」 https://jsite.mhlw.go.jp/aichi-roudoukyoku/var/rev0/0119/6635/warimashikiso.pdf
- 厚生労働省「時間外労働の上限規制」 https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html
- 厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」 https://www.mhlw.go.jp/content/000617974.pdf